コラム保険ショップに行く前に、準備しておくことはなに?

公開日:2020-03-19

保険を選ぶときに「知っ得」話~最終回

 

 

生命保険に加入する際に、今では様々な窓口があります。ウェブサイトや通信販売を通じて加入することもできますが、わが国では人を介して加入する例が多いでしょう。保険会社の営業職員の訪問を受けるほか、銀行や郵便局、保険ショップなどを利用した人もいるでしょう。

 

とりわけ保険ショップは、様々なところで目にするようになっています。最近は様々な業種が参入し、ニトリやヤマダ電機、ドコモなど、異業種の店舗にショップが設置されているほか、日本生命や住友生命など大手生保会社も異業種提携を行うなどして店舗展開しています。

 

生命保険文化センター「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」によれば、営業職員の訪問を受けるなどして加入した人は減っている一方、若者を中心に、保険ショップで加入した人が増えています。

 

保険ショップとは、そもそもどんなところで、注意点は? 今回の知っ得ポイントは「保険ショップ」についてです。
 

保険ショップは「代理店」

 

保険ショップは、生保会社や損保会社の委託を受け、保険販売を業務とする保険代理店。かつ1社専属ではなく、複数の保険会社の様々な保険商品を取り扱う「乗合代理店」です。「無料だし行ってみようか」などと耳にすることがあるのですが、ショップは無料相談が業務ではありません。保険ショップは“保険を売るところ”です。

 

生命保険といえば、かつては営業職員を通じて契約するのが一般的でした。就職した時などに、訪ねてきた営業職員に生命保険を勧められ加入したという人は、中高年の方には多いのではないでしょうか。自宅に営業職員が訪ねてくることもよくあることでした。生保営業網は私たちの暮らしに緻密に入り込んでいて、そのようなわけで生命保険には、誰もが加入しているものだったのです。

 

ですが、ひところから企業のセキュリティが厳しくなり、また共働き世帯も増えたことから、営業職員がこれまでのように訪問営業活動を行うことは難しくなりました。そのため営業職員から直接勧誘を受けることは減り、結婚や子どもの誕生をきっかけに、初めて保険を検討する、という人もでてきました。

 

現在は保険料の安い通信販売やWeb経由で加入できる保険も多く提供され、かつてより商品や加入窓口の選択肢は広がっていますし、ネット検索すれば、生命保険に関する情報をいくらでも得ることができます。

 

しかしながら、生命保険はなじみのない人にはよくわからないといわれます。前述の調査によれば、生命保険や個人年金に関する知識全般について「ほとんど知識がない」との回答は約7割にものぼります。どのような保険にどのように加入したらよいかわからず、資料を携えて保険ショップに足を運ぶ。こうした流れができ、年々ショップ数も増え、最近ではすっかり定着した感があります。

 

かつてのように訪問を受けることなく、自分の都合で自ら足を運んで保険相談が無料で受けられる。保険が必要であれば、たくさんの保険商品の中から、自分にピッタリ合った保険をプロの立場からアドバイスしてもらえる。そんなイメージでしょう。

 

顧客にとってベストな保険を勧める義務はない

 

ただし、保険会社の委託を受け、保険会社のために保険販売をする代理店に、顧客に最適な保険を勧めなくてはならない「ベストアドバイス義務」は業法上課せられていません。多くの商品を扱っていることが、自分にピッタリ合った保険のアドバイスを保証するわけではないのです。

 

保険ショップの販売のあり方等に関しては、以前から様々な指摘があります。2013年の金融審議会では「手数料の高い保険を勧めている恐れ」があるとされ、2016年の法改正で保険募集ルールが見直されました。

 

現在は、顧客が商品内容を理解するための情報等を提供し、さらに顧客の意向を十分に確認し、なぜその商品を勧めるのかについても説明しなくてはなりません。しかし、こうした中でもなお、金融庁が懸念するのが、顧客の意向よりも受け取る手数料などが商品の推奨に影響すること。

 

そこで生保業界は2021年以降、顧客の意向に沿った販売を徹底させるため、業界を挙げて保険ショップの手数料基準を統一するとも報道されているのです。

 

保険が「必要か」を軸に検討を

 

保険ショップは本来、多くの商品を比較検討して、様々な商品からより良いものを“決めてもらう場”ではなく、“自ら選ぶための場”であるはずです。そしてそれを実現させるためには、どの保険を選ぶかという以前に、整理しておきたいことがあります。それは、そもそも「わが家に保険が必要なのか」です。

 

いざというときの家計はどうなるのか、社会保障給付や企業保障はあるのか。それを踏まえ、わが家に保険は必要なのか、必要ならどれだけの保障が、どの程度の期間に必要なのか(第19回「公的年金制度は現役世代も支える「保険」」第12回「老後に負担する生命保険料はどれくらい?」参照)。まずはこれらを自ら整理してみることが出発点です。

 

家計の状況は個々に異なり、抱える生活課題もそれぞれ。検討の結果、「保険は不要」とする結論もあり得ます。

 

どの保険を選ぶかは、これらを整理した後の段階で考えるべき問題であり、それをせず「保険ありき」で販売側に判断を丸投げすることは避けるべきです。

 

保険は、「入らなくてはならないもの」などではなく「必要に応じて検討すべきもの」です。家計防衛の一手段に過ぎす、他に合理的な手段があるならなくてもよいのです。保険料負担が重すぎれば長年にわたり家計を痛める可能性もあることから、加入にあたっては慎重な検討と判断が求められます。

 

 

よって「ほとんど知識がない」のだとすれば、販売を業とするところへの「相談」は、より慎重であるべきでしょう。保険販売を業とする以上、より売り上げを上げることを目指すのは営利企業として正しい姿勢。販売する側にとって保険は必要であるというのが前提であり、販売しないという選択肢はないのです。

 

本連載は今回で最終回です。これまでご愛読ありがとうございました。

執筆者情報
清水香(Kaori Shimizu)

清水香(Kaori Shimizu)
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表 生活設計塾クルー取締役ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)/社会福祉士/自由が丘産能短期大学講師  1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらFP業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年より FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。執筆や企業・自治体・生活協同組合等での講演活動など幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する政府委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災害復興学会会員。(略歴は執筆時時点です)


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