カッコイイ!「晴れた日の折り畳み傘」

公開日:2020-03-18 (更新日:2020-03-24)

【ストーリー~保険に加入する理由~】シリーズVol.1

 

保険になぜ加入するのか?
 

この問いに対する答えは人それぞれだと思います。
 

本シリーズでは様々な登場人物の物語を通じて、”人それぞれの理由”を疑似体験して頂きたいと考えています。
 

お楽しみ頂けますと、幸いです。

 

傘,晴れ,未来
<写真=pixabay.com>

 

今年の春、2年付き合った彼女と結婚した。29歳での結婚で親が安心したうえ、義理の両親も優しい人たちで自分はツイてると思っている。
 

結婚して、子供のころから憧れていた念願のマイホームを購入した。中古とはいえ一国一城の主となった俺は、駅前のマンションで妻のミホと生きていく。
 

1. 新妻が持たせてくれた折り畳み傘

晴れ,青空,未来
<写真=pixabay.com>

 

「じゃあ、お先に行くね。今日は割と早く帰れるはずだから」
 

晴れ上がった秋の空に目を細めながら玄関扉を開け、まだ出勤準備中のミホに向かって声をかける。
 

ミホは「はーい」と言いながらパタパタとやってきて、「傘、持った?」と聞いた。
 

……あ、傘か。うーん……今日も持っていくの?
 

若干、うんざりとはした。だって、見事な秋晴れで大変気持ちのよい朝だった。金曜日に降った雨の“あ”の字がカケラも見えないような、素晴らしい天気。なのに、ミホは折り畳み傘を持っていけと言うのだ。
 

ちらりと見たミホの顔は、まだ化粧途中で眉毛が半分しかない。肌がツヤツヤしていて健康そうで、真剣な表情だった。
 

俺は手を伸ばして、ラックにかけた折り畳み傘を持った。ミホはにっこりと笑う。
 

じゃあねと手を挙げて、駅に向かって歩き出した。
 

こんなに晴れた日でも折り畳み傘を持っていく。それは、結婚したときミホに約束させられたことだった。
 

若干荷物になる。しかも、そのグリーンに黒いラインが入った傘は俺の好みのデザインではない。だけど、毎日カバンにしまって持ち歩く。
 

「これを毎日持っていってね」そう言ったときのミホは多少緊張しているようだった。目は真剣で、俺をじっと見ていた。「親からもらったものなのだけど」と言っていた。だから、ただ頷いた。
 

多少荷物になっても、構わない。好みじゃなくても問題ない。それが妻となった彼女の最初の頼みだったので、文句は言わないことにしている。
 

いつもはカバンに入れっぱなしだが、金曜日は雨が降って使ったので開いて干していた。土日は自宅でゆっくりしていたからつい忘れていたけれど、ミホはそれに気付いていたんだな。
 

2. 突然の雨と先輩の言葉

雨,突然,不安
<写真=pixabay.com>

 

その日の夕方、何と突然雨が降ってきた。
 

夕日がにじんだような空が一天にわかにかき曇り、ザザーッと来たのだ。
 

うわあ!
 

驚いて、とっさに目についた店先の軒下に駆け込む。
 

3か月かけた追い込みで粘りに粘って、やっと大きな契約を締結できた日の帰り道だった。思わず胸に抱えたカバンの中には、大切な契約書類が入っている。これだけは濡らすわけにはいかない。
 

そこで、はたと思い出した。傘だ。ミホが持たせてくれた傘が、俺にはあるじゃないか!
 

時刻は16時を過ぎたところで、これから会社に戻って17時までにはパソコン入力を済ませる必要があった。雨宿りしている暇はないのに、と考えて、傘のことを思い出したのだ。
 

良かった……。何てラッキーなんだ。
 

いそいそと折り畳み傘を出して、意気揚々と歩き出す。急な雨も傘で対処でき、雨宿りをしている人たちからの羨ましげな視線を浴びる。大きな契約が取れたこともあり、良い気分だった。
 

会社に戻り仕事をしていると、隣の席の先輩が声をかけてきた。
 

「おお、戻ったんだな。契約取れたんだろ? おめでとう。雨大丈夫だったのか?」
 

俺は良い気分のままで、折り畳み傘を持っていたことを報告する。妻が「毎日持っていけ」って言うんですよ、と。
 

「今日みたいな日にはさすがに必要ないだろうと思っていましたが、こんなこともあるんですね」
 

先輩はちょっとにやついて、「外回りにとって折り畳み傘は確かに良い保険だよな、気が利く奥さんだな」と言う。それを聞いて益々得意になった俺に、続けて言った。
 

「で、保険といえば、お前は保険入ったのか? 医療とか就業不能保険とか、いろいろあるだろ」
 

え、保険?
 

俺は手を止めて考えた。そうか、そういえば、まだ何もしてなかったな……。
 

「そんなすぐに必要ですかね? うちはまだ子供もいないし。それに死亡保障だったら住宅ローン組んだから、団信がありますよ」
 

楽しい気分に水をさされたように感じて、少しむっとしながら言う。すると先輩は、呆れたように笑った。
 

「保険ってのは、自分じゃなくて相手のために入るもんだよ。ずっと健康で仕事もできりゃ、そりゃ必要ないものだけどさ。子供ができて奥さんが育児に専念しだして、もしおまえに末期のガンが見つかったらどうなんの? 団信だって完璧じゃないだろ?」
 

俺は一瞬、ぐっと詰まった。確かに、今まで健康だったからってこれからも健康である保障はない。現に元気で有名だったうちの課長にガンが見つかって、大変だったし。「まだ住宅ローンがあるのに治療費がかかる」って、真っ白な顔をして言ってたよな……。
 

「結婚すれば相手の人生に責任が生まれるし、リスク管理は社会人の基本だよ。今すぐでなくてももちろんいいけどさ、結婚っていい機会なんだよ、人生設計を考えるには」
 

言い返せなくなった俺の肩を叩いて、お疲れさんと先輩は去っていく。
 

相手のことを思って考える……。
 

「うーん……。」
 

今朝、玄関先で見たミホの笑顔が瞼の裏でちらついた。

 

3. 夫として自分ができる愛情のお返し

夫婦,愛情,思いやり
<写真=pixabay.com>

 

帰りの電車で、いろいろと考えてみた。
 

先輩が言った「折り畳み傘は保険」って言葉だ。
 

晴れた日には、意味がない折り畳み傘。だけど今日みたいに、突然雨に降られることだってある。持っていなければ契約書類が濡れたかもしれないし、帰社が遅くなって入力期限に間に合わなかったかもしれない。
 

妻が傘を持たせてくれたおかげで、今日は全部がうまくいった、そう思える。
 

保険だって一緒だよな。健康なときは必要がない。だけど、事故に遭ったり病気になったりして仕事に行けなくなる可能性があるし、団信がおりない介護状態になることもあり得る。俺が介護状態になってしまったら、ミホは……。
 

夫として、俺がミホにできることって何だろう。あの優しい義理の両親を安心させるために、俺にできることって何だろう。
 

そんなことを考えながら、電車に揺られていた。
 

夕食はできるだけ一緒に取る、これも、結婚したときに交わした約束の1つだった。
 

俺は食事をしながら、「保険に入ろうと思うんだけど」と話してみた。反対されるかもしれない、と思いながら。「今はお金を貯めるべきときじゃない?」って言われるかも……。
 

だけど、妻は驚いた顔をした後、「すごいねえ!」って笑顔で言った。
 

「実はね、私も今日同じこと考えていたんだよ。万一に備えて私が保険に入っておけば、死亡したり病気で働けなくなったりしたときに、あなたの負担を軽くできるんじゃないかって」
 

顔を見合わせて、笑ってしまった。同じこと考えてたんだな、それが分かったから。
 

4. 義理の両親との絆を感じた

食卓,家族,絆
<写真=pixabay.com>

 

休みの日、たまに義理の両親と妻の実家で食事をしている。ミホには年の離れた兄・タカシさんがいたが、残念なことに社会人になったと同時期に事故で亡くなっている。
 

そのためなのか家族の結束が固く、ミホは付き合っているときにも両親との約束を大切にしていた。だから俺も、できるだけ家族一緒の機会を設けるようにしていた。
 

義理の両親が用意した美味しい中華料理をいただきながら、近況を聞いてきた義父に言う。
 

「そろそろ保険に入ろうと思ってるんですよ。俺に何かあったとき、家族の経済的な不安のことを何も考えてなかったなあって反省して」
 

真面目な表情で話を聞いていた義理の両親は、一瞬ぽかんとした。だけどすぐに2人で顔を見合わせて、笑みがこぼれる。心なしか目が潤んでいるようで、俺は慌ててしまった。
 

「ありがとう」そう言って喜んでいた。「ミホのことを真剣に考えてくれて」って。「おかげさまで、私たちも幸せだ」と。
 

ぞわって全身の毛が逆立つようだった。何だこれは、感動か? 俺、今かなり感動したのか? 何が一体――。
 

 

だけどその日の夜、ベッドへ横になったときにはっきりと分かったのだ。
 

ああ、そうか。もう1つの家族ができたって、実感したんだな。ミホという女性を通して義理の両親とできた絆を、しっかりと感じたんだ。
 

義理の両親に受け入れられたような感じ。自分の居場所ができた感じ。喜ばれたことが、ただ嬉しい……。
 

5. 人生で急な雨に降られても慌てず家族を守りたい

二人,夫婦,未来
<写真=pixabay.com>

 

妻が持たせてくれた折り畳み傘は、急な雨から俺や大切な書類を守ってくれた。晴れてるのに要らないよって、つれなくしないで本当に良かった。
 

晴れた日の折り畳み傘みたいに、俺だってそっと妻を守りたい。夫としてできることは、いろんな面で安心させてあげることなんだ。いつも大丈夫だよって、心配ないよって……。
 

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<共同執筆者>
関目 いちこ
フリーライター
別名義でウェブ小説やイラストを書く。

執筆者情報
服部 椿

服部 椿
AFP/2級ファイナンシャル・プランニング技能士  金融代理店での勤務経験と、自身の投資経験を活かしたマネーコラムを多数執筆中。
子育て中のママFPでもあり、子育て世帯向けの資産形成、ライフプラン相談が得意。


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