カッコイイ!平成元年生まれ杉咲春の冒険

公開日:2020-03-23 (更新日:2020-03-24)

【ストーリー~保険に加入する理由~】シリーズVol.4

 

保険になぜ加入するのか?
 

この問いに対する答えは人それぞれだと思います。
 

本シリーズでは様々な登場人物の物語を通じて、”人それぞれの理由”を疑似体験して頂きたいと考えています。
 

お楽しみ頂けますと、幸いです。

 

タルト,スイーツ,美味しい
<写真=pixabay.com>

 

杉咲春の両親が相次いで亡くなった。
 

祖父母の代から大阪城にほど近い場所で、パン屋を営んできて、両親が大切に守ってきた店が残った。
 

短大を卒業してから製菓専門学校で学び、神戸のタルト専門店で働いていた春だが、歴史ある店をなんとか残したいと思うようになる。
 

両親の生命保険のお金を元手に、パン屋を改装して自家製スイーツを売りにしたカフェを昨年開業。
 

専門学校の同級生や後輩も手伝ってくれることになった。
 

女3人だけで自立し、スイーツブランド「HARU」を広めるための冒険がはじまった。

1. 杉咲春のON、スイーツづくり

果物,ベリー,ブランド
<写真=pixabay.com>

 

朝6:00に目覚ましが鳴って私、杉咲春の一日がはじまる。
 

大阪城の外周をランニングしてシャワーを浴びて7:30に1階の店に降りた。
 

私はいま、商店街の裏通りにあるスイーツ&カフェ「HARU」の2階に住んでいる。
 

「おはようございます!」晴れやかな笑顔で専門学校で同級生だった亜弥がやってきた。
 

「おはようございます。今日もよろしく。」私も答える。
 

続いて、息をきらし額に汗をにじませて後輩の未知が入ってきた。「走らんでもええのに」私は笑ってしまった。
 

毎朝、交代で朝食をつくってブレックファストミーティングを行う。今朝は私が担当で、フレンチトーストとサラダ、カフェオレを3人分つくってテーブルに並べた。
 

「昨日、岡山の友だちルートで桃が届いたから、これを使ったスイーツをつくりたいのよ」私の言葉に、「うわっ。桃、大好き」未知が頬をゆるめる。
 

朝食を終えて、手早く真っ白な仕事着に着替え、私たち3人は動きだす。

桃に包丁を入れると、じゅわっとみずみずしい果汁があふれ、高貴な香りが漂う。
小麦粉やバター、卵にはこだわり、厳選して仕入れている。生地を丁寧に練り、焼くと桃の甘い香りに香ばしさが加わった。
 

フィナンシェづくりが得意な亜弥は、カフェで出すフィナンシェのトッピングに桃を使うようだ。未知はジェラートづくりに真剣なまなざしを注ぐ。
 

頼もしい仲間を見わたして、私は幸せを感じる。
 

3人でいるのも私の信条の「何かあったらいけないから」だ。それぞれが考案したレシピもお互いに共有していた。
 

「おいしそう~!」
 

できあがった桃のタルトを見て、声をあげた亜弥がさっそくデジタル一眼レフカメラを構えた。亜弥のみずみずしさを余さず伝える画像のおかげで、Instagramのフォロワーも2000人を超えた。画像を見て、その日の夕方にはお客さんがやってくる。
 

「HARU」ブランドは着実に定着していっている手ごたえを感じた。

 

2. 杉咲春のOFF、いざ山へ

山,緑,休日
<写真=pixabay.com>

 

私は学生時代から”山ガール”で今も山に登っている。そのために朝もランニングをかかさない。
 

パティシエ兼経営者として活躍し続けるためには、体力が一番。
 

「何かあったら」の一番の「何か」は自分自身の健康だ。
 

必要ならバイトを入れて、みんなきちんと休みを取る。公私ともに充実することが、「HARU」ブランド確立への近道。亜弥はテニスを、未知はスキーを楽しんでいる。
 

私は亜弥と未知に店をまかせて二泊の予定で信州、白馬岳へと向かった。初日は移動だけで、2日目の早朝山へ向けて出発した。
 

6月、たっぷり太陽の光と水を吸ったまぶしい緑を背景に真っ赤なクルマユリが咲く道を、もくもくと歩く。背中にしょったリュックが肩にくいこみ、こめかみを汗が流れる。
 

比較的歩きやすい道から、尖った大きな石がある急な登りを慎重に進む。息があがり、太ももとふくらはぎの筋肉が張りつめていく。軽い足取りで登る男性に抜かされた。
 

「お先に!」と声をかけられても、うなずくことしかできなかった。最近の睡眠不足がたたっているのかもしれない。
 

少し平たくなったところで、足を止めて水を飲む。水が細胞のすみずみにまで染みとおっていく心地がした。木々を抜ける風が髪をとかし、すーっと冷たくなっていく。
 

「さあ、もうひと踏ん張り!」と自分を励まし、歩き出した。

 

3. 杉咲春のアクシデント、もうダメ?

山,青空,女性
<写真=pixabay.com>

 

後ろから楽しそうな男女の声が聞こえる。根っからの負けず嫌いが顔を出して、足をはやめる。トレッキングシューズがどんどん重くなっていくが、登りが途絶えるのが見えて元気づけられる。
 

岩場の登りが終わり、細い道を下る。右側が深い崖なのを見て、身体が自然に左へと傾く。
 

あっ!
 

膝がゆるみ、左足首をひねって転び、そのまま落ちていく。
 

私は大声で叫んだ。
 

2mほど落下したところで木の枝を掴み、かろうじて平たい場所で止まった。右足がおかしな風に捻じ曲がっていた。
 

大丈夫ですかー?
 

上から声がかかる。後ろを歩いていた男女のようだ。
 

助けてください!
 

私は声をはりあげた。
 

「足が痛くて動けないんです。」
 

「今そちらへ行きます!」と男性が返してくれる。

 

激痛で一歩も動けないーーー。これは骨が折れたかな・・。

 

男性はロープ伝いに降りてきて、慣れた様子で私の腰にロープを巻きつけ、しっかりくくった。
 

「一緒に上に引き上げますからね。少しの辛抱ですよ!」
 

男性は手袋をはめた手で岩をつかんで、歯をくいしばりながら私を引き上げてくれた。
 

その後、ほかの方々の助けも得て、なんとか麓の病院にたどり着いた。本当に、感謝してもしきれない・・。
 

レントゲンを撮ったら足首を骨折していることがわかった。
 

病室から店に電話をかけた。電話を取った未知に事の顛末を淡々と説明すると、
 

「春さんどうするんですか?」未知が泣き出してしまった。
 

足は痛いが、私は笑いながら「大丈夫だって。ちゃんとそのために備えてきたんだから」と明るく言った。

 

4. 杉咲春の「何かあったらいけないから」

家,支え,ステップ
<写真=pixabay.com>

 

私は3日後に信州の病院から店の近くの病院に転院した。
 

その夜、甘いにおいとともに、亜弥と未知が見舞いにきた。

「春さん……」
私の顔を見るなり、また未知が泣きそうになる。

「ほんま、かなんわ。もう山やめたら?」
亜弥が笑いながら、箱を差しだした。
 

蓋を開けると爽やかな柑橘系のにおいがする。
 

「わたし、ジェラートは持ってこれないからゼリーに挑戦しました」未知がスプーンと一緒にテーブルにのせた。
 

ひと口食べて首をかしげた。
 

「この柑橘は何?」
 

亜弥と未知は顔を見合わせて、ふふふと笑う。
 

「河内晩柑、グレープフルーツみたいやけど、純粋な日本産。おいしいでしょ? ゼリーにぴったりやわ」亜弥が得意そうに言う。
 

心があたたかくなっていくのを感じた。
 

「うれしいわ。わたしに何かあっても大丈夫やなあ、って。ただ、今回はちゃんと治るまでお店に出られへんから、2人に迷惑をかけてしまうかも。ほんま、ごめん。自分を過信してたわ。でも、まだ両親の保険のお金をちゃんとプールしてるし、バイトを雇う余裕くらいはあるからね!」
 

2人の顔を交互に見つめて言った。
 

「ええよ、気にせんといて、大丈夫や、まかして。何かあったときのための3人のチームやん。それに春のことやからぬかりはない、と信じてたよ」
 

亜弥が私の髪の毛をくしゃくしゃと撫でて、笑った。

 

5. 春と仲間たちが安心して暮らせるために

 

私は両親の生命保険金で今の自分があると思っている。
 

人間は強いけれど、いつ何がおこるかわからない、ということを身をもって知っている。
 

やっと世間に認められはじめた「HARU」ブランドを3人で育て、店が完璧に自立して3人の仲間が安心して働けるよう、「何かあったらいけないから」と私は考えてきた。
 

自営業の経営者として生きていくためには、時に細心の注意をはらう繊細さが必要だ。
 

どうやってリスクと向き合っていくか?
 

これからも「HARU」ブランドを育てていくなかで、私は考え続けていく。
 

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<共同執筆者>
美月 麻希
大阪文学学校小説クラスチューター/文芸同人誌『白鴉』同人
フルタイムで働きながら小説を書いています。『鳩の血(ピジョン・ブラッド)』にて神戸エルマール賞佳作受賞。

執筆者情報
垣内 結以

垣内 結以
フリーライター  2009年に大手損害保険会社へ入社し、営業事務、保険金お支払いセンター、総務、役員秘書などを経験。フリーライターとして独立後、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。現在は多数のWebメディアにて貯蓄や保険、節約に関する記事を執筆。


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