コラム保険を選ぶときに「知っ得」話

公開日:2018-10-11

第1回

人と物、二つのリスクに対応する公的制度が多いのはどっち?

 

 

「最近、地震や暴風雨の被害が増えているから」

「子供の幼稚園に入学したから」

「老後の医療費が心配だから」

 

 

 人生の転機や世の中の変化などをきかっけに、保険に入ろうと考えている人は多いでしょう。生命保険の加入率が8割を超えているように、日本では保険に入るのが当たり前といっていい状況です。でも、そもそも何のために保険に入るのでしょうか。

 

 「万が一のときのために備えるため」というのは答えの一つでしょう。

 

 私はライフプランニング(生活設計)の視点から、20年近くお金に関するアドバイスをしてきました。「自分らしい暮らし」(ライフプラン)を実現するために、将来に向けてお金の面からコツコツと手を打つお手伝いをしています。このコラムでは、ライフプラニングの視点から、保険を選ぶ上で知って得するポイントを紹介していきます。

 

 連載初回の「知っ得ポイント」は、二つあります。一つ目は、自分らしい暮らしを実現するために備えておく「万が一」には、保険で対応できるものもあれば、できないものもある――ということです。

 

 二つ目は、保険で対応可能な万が一のリスクには、「人」にかかわるものと「物・賠償」にかかわるものがあること。そして、この二つのリスクに対して、公的制度によってどの程度カバーされるかを見極めておくことが大切だということです。

 

 

 

離婚や加齢のリスクは保険の対象外

 

 まず第1のポイントについて見ていきましょう。下の表は、人生に起き得るネガティブな出来事、多くの人が嫌だなあと感じる事柄をいくつか挙げています。この中にはそもそもお金では解決できない「心配ごと」が含まれていますし、お金で解決できるけれども保険では対応できない問題も含まれています。

 

 

 保険で対応できるのはピンク(主に損害保険)とブルー(主に生命保険)で塗った部分のみです。グレーの部分は対象にはなりません。さらに保険で対応できる事態であっても、支払い要件を満たさなければ保険金を受け取れません。残念ながら保険に加入しても、あらゆる「不測の事態」に備えられるわけではないのです。

 

 将来どのようなことが起きるのか、前もって知ることはできません。保険でカバーできないことも含めて備えるためにも、まずは貯蓄を手厚くしておくことが基本であり、万能の備えとなります。大切なのは自分の抱えるリスクについて、その特徴や程度の大きさで切り分け、必要に応じて適切な対応策を講じておくことです。

 

 

 

公的制度が整備されている「人」にかかわるリスク

 

 ここからは第2のポイントである、「人」と「物・賠償」にかかわるリスクについてみていきましょう。

 

 下の表は、「人」にかかわるリスクと、それに対応する公的制度と民間保険を整理したものです。家計を支える「生計維持者」の死亡をはじめ、健康を害しての入通院や要介護状態になったり就業不能になったりすることは、多くの人が心配するリスクです。

 

 だからこそという面もありますが、こうしたリスクに関しては我が国では社会保障制度が整備されています。たとえば老後不安の上位に挙がる医療費の負担については、私たちは国民皆保険制度によって何らかの公的医療保険に加入していることを踏まえておかなくてはなりません。

 

 医療費の自己負担は現役世代では原則3割、65歳以上は同2割、75歳以上は同1割になっています。さらにひと月(暦月)あたりの負担に上限額が設けられる「高額療養費制度」によって、自己負担は青天井にはなりません。

 

 たとえば、年収500万円のサラリーマンが入院し、3割負担の医療費が30万円となるケースで考えてみましょう。高額療養費を加味した最終的な自己負担は、9万円に届きません。このケースでは、自己負担限度額の計算式が8万100円に総医療費から26万7000円を引いた額の1%を加えるからです。

 

 このように日本では医療費を一定の負担に抑える仕組みがあり、入院時の医療費はある程度の貯蓄があれば対応できるのです。そのほかにも、生計維持者が死亡したとき遺された家族には遺族年金が、一定の要介護状態になったら公的介護保険が利用できます。「人」に関するリスクの備えでは、公的制度による給付内容を踏まえて、不足があればより合理的な手段で補うことが鍵になります。

 

 

 

自助が必要な「物・賠償」のリスク

 

一方、「物・賠償」のリスクには公的制度がほとんどありません(下の表)。

 

 

 まず「物」といえば、まず頭に浮かぶのが住宅や家財ではないでしょうか。これらは取得や処分が自由な私有財産であることから、自ら守るのが基本です。日本は自然災害の多い国であり、毎年、どこかで風水害や地震による被害が起きています。自然災害で住宅が全壊等となった世帯には被災者生活再建支援金が支払われますが、その額は最大でも300万円と見舞金程度。住宅再建も含む暮らしの立て直しは、自助が基本とされているのです。

 

 特に大きな問題となるのが、住宅ローン返済中に被災した場合です。低金利が続く昨今、多額で長期の住宅ローンを組むことが一般化しています。住宅ローン返済中に自然災害で住宅が全壊となり住む家を失っても、住宅ローンはそのまま残ります。しかし新たな暮らしには住まいが必要であり、建て直すにしろ借りるにしろ、新たな住居費がかかることになります。その負担は、数千万円レベルとなることも少なくないはずです。

 

 こうした住居費の二重負担という過酷な状況の中で生活再建を図ることは、多くの人にとって困難です。災害を生き延びた後にやってくるのは、「生活再建」というとても高いハードル。必要な備えをしていなければ、「自分らしい暮らし」どころか、それまでの生活設計が崩れ、不本意な選択を余儀なくされることになりかねません。

 

 次に「賠償」で代表的なのが、自動車事故でしょう。クルマの運転中に人を死傷させてしまった場合、国の強制保険である自賠責保険で賠償されます。といっても自賠責保険の目的は、最低限の被害者救済で、発生した賠償責任の全額をカバーすることではありません。

 

 昨今社会問題化している自転車の交通事故では、億単位の損害賠償金の負担が発生する可能性があります。これを貯蓄で賠償することはほとんどの人が不可能で、民間保険の加入以外に備える手段は見当たりません。

 

 公的支援が限定的であり、かつ貯蓄では対応が困難な「物・賠償」には、保険での備えが必要です。自然災害により住宅や家財が被った損害をカバーするのは火災保険や地震保険。災害が頻発する昨今、もはや私たちに欠かせない非常用グッズとなっているのです。

執筆者情報
清水香(Kaori Shimizu)

清水香(Kaori Shimizu)
生活設計塾クルー  生活設計塾クルー・取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)/社会福祉士/自由が丘産能短期大学講師

1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。財務省“地震保険制度に関するプロジェクトチーム”委員

執筆者の紹介

みんかぶ保険編集部
みんかぶ保険編集部

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