コラム災害で被災したとき、公的支援は期待できる?

公開日:2018-10-25 (更新日:2018-11-05)

保険を選ぶときに「知っ得」話~第2回

 

 日本では毎年、どこかで何らかの災害が起きています。とりわけ今年は福井豪雪に始まり、大阪北部地震、西日本豪雨、台風21号、そして北海道胆振東部地震……と、大きな災害が続いた年となってしまいました。報道の枕詞には毎回のように「想定外」が使われますが、もはや被災は誰にとっても「他人事」ではない時代となってしまったのです。

 

 災害で住宅に被害を受けたら、修繕や再築に多額の費用がかかることがあります。被災状況によっては、すみやかに住宅再建に取り掛かれるとは限りません。仮住まい生活が長引いて生活コストがかさめば、思い描いていた人生設計の軌道修正を迫られることもあり得ます。

 

 そんなときは、国や自治体がどうにかしてくれるのでは――。そう思う人も少なくないようです。「地震危険に関する消費者意識調査(損害保険料率算出機構、平成26年調査)」によれば、大地震で住宅が居住不能になるような被害を受けたとき、再築や修繕費用の工面方法として、国や地方自治体の行政による支援に期待する人が「5割程度」との結果が出ています。多くの人は、公的支援に期待を寄せているのです。

 

日本では自助が前提

 

 しかし日本の災害時に行う公的支援では、それだけで生活再建を行える水準の給付を受けられません。マイホームを失うという人生最大級のダメージを受けたとしても、公からの支援の総額はこれから説明するように500万円にも届かないのです。

 

 なぜこの程度の金額なのでしょうか? そもそも災害で被った損害からの再建は自助努力が主体で、公の役割は側面支援が前提だからです。災害で住宅やクルマに被害を受けたとしても、そもそもそれらは私有財産で所有者に管理責任があります。

 

 つまり自ら備えが必要です。災害時に受けられる公的支援の効用と限界を知っておけば、適切な備えができるでしょう。そこで今回は、主に住まいに関する公的支援の内容について、具体的に確認していきます。

 

 日本の災害対策法制は、平時の防災から災害直後、復旧・復興までをカバーする災害対策基本法を根幹に置いています。そして災害が発生したら、災害の規模やステージ(段階)に応じて後に紹介する個別法が適用されて、住民に対し具体的な支援が行われるしくみとなっています。

 

 まず災害発生直後は「災害救助法」による救助が、その後の復旧・復興フェーズでは「被災者生活再建支援法」による支援金給付が行われます。私たちが被災すると、被災直後から生活再建に至るまで、この2つの法律を根拠にした支援を受けることになります。

 

 

 

住宅の応急修理では58万円ほど

 

 災害救助法は、災害の発生直後から、国や自治体が被災者に必要な救助を行うためにあります。たとえば、災害が起きてすぐに開設されるのが避難所(下の図「救助の種類」の1参照)。身ひとつで逃げてきても、避難所では食料や飲料水、寝具など、当座をしのぐために必要なものなどが現物支給されるようになっています(同2、3)。救助を受ける際、被災者は事情や経済状況を問われず、自ら申請をする必要もほぼありません。

 

 住宅の修繕が受けられる「住宅の応急修理(同6)」もあります。住宅が半壊したが修理が経済的に困難な世帯、大規模半壊で大がかりな修理を要する世帯を対象に、1世帯あたり58万4000円以内(2018年度の額)で修理が受けられます。

 

 ただし、修理工事は自治体が手配するもので、金銭給付を受けるのではありません。修理の対象になるのは、日常生活に必要な最小限度の部分、たとえば居室や炊事場、トイレなどに限られます。

 

 

 

 

 被災すると、私たちがこれまで当然に享受していたインフラが失われ、暮らしが混乱します。そこで、企業や役所によって、さまざまな特別措置を講じられ、被災者の暮らしが速やかに正常化できるよう、様々な局面から支援体制が敷かれます。

 

 具体的には、被災自治体に災害救助法が適用されると、各省庁から監督下にある企業などに対し、被災者の状況に応じて、きめ細かく弾力的・迅速な対応に努めるよう各種の要請を出します。

 

 たとえば金融庁は、被災地にある銀行に対し、キャッシュカードなどを失った被災者の預金の引き出しに柔軟に応じたり、住宅ローンを返済猶予したりするよう求めます。

 

 被災したことを銀行に申し出れば、落ち着くまでの当面の間、住宅ローン返済をストップしても延滞扱いにならず、個人信用情報(いわゆる「ブラックリスト」)に登録されることもありません。

 

 また保険会社には、生命保険料や損害保険料の支払いについて、一定期間の猶予を要請します。被災して更新できなくても保険が失効しないよう、特別措置などが講じられたりするのです。

 

最大でも300万円の「被災者生活再建支援金」

 

 生活再建の段階では、被災者生活再建支援制度があります。1市町村に10世帯以上の住宅全壊など一定規模の被害が出た自治体で、住宅全壊または大規模半壊世帯などを対象に、支援金が支給されるもの。

 

 住宅の壊れ具合に応じた「基礎支援金」と、その後の住宅の再建方法等に応じた「加算支援金」を合計して最大300万円が支給されます。単身世帯はその4分の3、最大225万円が支給されます。持ち家世帯だけでなく賃貸世帯も対象です。

 

 該当世帯は役所で「罹災(りさい)証明書」の交付を受けて支給を申請します。り災証明書の被害認定区分は「全壊」「大規模半壊」「半壊」「半壊に至らない」の4つですが、半壊以下には支援金が支払われません。


 

 

 生活再建のフェーズに入ると、住宅再建や修繕、移転等に伴い、大きなお金の問題が発生します。しかしこれまで見てきたように、住宅の再建・修繕等に関して受けられる公的支援は先に触れた「応急修理」の約58万円と「支援金」の300万円のみです。

 

 マイホーム世帯の場合、たとえ支援を受けられても、これだけで生活再建を図るのは困難でしょう。また、支援対象になるのは大きな被害を受けたときが中心です。被害によっては公的支援を受けられず、すべて自力で対応しなくてはならない場合もあるのです。

 

 住まいを失うリスクに貯蓄で対応することは、多くの人にはほぼ不可能であり、保険以外の手段は見当たりません。何も準備をしなければ、ライフプランが足元から崩れてしまうほどのリスクです。こうした現実を踏まえると、災害リスクを火災保険や地震保険などに加入して備えることには、誰も異論はないでしょう。

執筆者情報
清水香(Kaori Shimizu)

清水香(Kaori Shimizu)
生活設計塾クルー  生活設計塾クルー・取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)/社会福祉士/自由が丘産能短期大学講師

1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。財務省“地震保険制度に関するプロジェクトチーム”委員

執筆者の紹介

みんかぶ保険編集部
みんかぶ保険編集部

保険に関する役立つ情報を独自の視点でわかりやすく配信いたします。

最新の記事


ページTOPへ