コラム

未来の保険ビジネスを考える

公開日:2021-09-21

保険業の基本的なビジネスモデルは、リスクを評価して保険料を設定すること。
つまり、これだけのリスクをカバーするためには、これくらいの費用が必要・・・ということを見極めることす。そのための重要なプロセスとしては、平均値を求めるということになります。
平均値を求めるためには膨大なデータが必要になります。
膨大なデータを収集するためには、膨大な顧客が必要になり、膨大な顧客を集めるためには、膨大な数の営業員が必要になります。さらには、集まってきた膨大なデータを分析するためには、膨大な統計学者や管理要員が必要になります。
従来の保険ビジネスの根底には、こうした膨大なデータの蓄積があり、それらを保険会社が膨大なコストを使って維持・管理しているという現状があります。
 

 

健康な人は損している!?

次に、保険にかかる費用の関係性について考えてみましょう。
保険の費用は、当然保険に加入するすべての人が負担することになりますが、病気にかかった際に支払われる保険金は、みなさんが支払った保険料から支払われることになります。
したがって、実際のところは、医療保険・生命保険ともに健康な人が健康でない人にかかる費用を賄っていることになります。少々乱暴に表現してしまうと、健康な人は、不要に高い保険料を負担することになり、契約上は常に損を被っていることになります。

 

 

健康な人だけの保険とは

では、この健康な人たちがこのような状況に嫌気をさして、健康な人同士で、自前の保険を作るとどうなるでしょうか。
健康で病気にかかるリスクの低い人たちが、保険から大量に離脱してしまうと、統計そのものが機能しなくなってしまうかもしれません。
また、保険会社は、保険料を賄うために保険料を引き上げる必要がでてきます。さもなければ、保険会社が破綻してしまうからです。一方で、保険料が引き上げられると、残った健康な人たちも他の保険に乗り換えようとする動きも出てくるかもしれません。

アメリカではまさにこのような事態が起き始めています。主役は分権型のピア・トゥ・ピア保険で、「クラウド保険」と呼ばれています。クラウド保険には仲介業者は存在しません。仲介業者の変わりは、テクノロジーが代役を務めます。アプリがデータベースにつながっており、その膨大なデータベースがAIボットにつながっています。この一連のテクノロジーが保険加入者のネットワークを運営します。加入者は健康保険を支払い、必要な場合は保険金を請求し、それをネットワークが承認する。こうしたクラウド保険の仕組みは、保険会社がこれまで行ってきた膨大な管理やコストは必要ありません。
 

 

米国レモネード(LMND)の事例

2019年4月にソフトバンクグループらが約3億ドルを投じたアメリカのレモネード(ティッカーLMND:NYSE)は、クラウド保険のスタートアップの中で、最も潤沢な資金を集めた会社です。(2020年7月NY証券取引所上場。上場時3億1900万ドルを調達。)
レモネードは、アプリを通じて小規模な加入者グループを取りまとめます。加入者が保険料を振り込むと、後の手続きはAIが引き受けます。
手続きはモバイル上で簡単に完了し、保険に加入するまでにはわずか90秒程度、保険金の請求から支払いまでには3分程度で完了し、いずれも面倒な書類を記入する必要はありません。
 

 

スイスのイーサリスクの事例

さらに別のテクノロジーを組み合わせているのがスイスの“イーサリスク”です。同社は暗号資産「イーサリアム」のブロックチェーン上で「オーダーメイド型保険商品」を販売しています。
スマートコントラクトによって従業員や書類など伝統的保険会社に必要だった様々な手続きが不要となり、まったく新しい保険商品が続々と生まれています。イーサリスクは、伝統的保険会社になかった飛行機の遅延や欠品を保証する保険を作りました。利用者がクレジットカードを使って加入すると、飛行機が45分以上遅延した場合には、直ちに保険料が自動で振り込まれる仕組みになっています。
 

 

保険ビジネスの今後

また、アップルウォッチなどのウェアラブル端末の普及も今後の保険ビジネスに大きな影響を与えるかもしれません。健康状態が常に最新の状態でアップデートされ、今よりも幅広いデータを正確に可視化することができれば、あなたの健康状態に連動して保険料が決定されるといった新しい保険商品が将来出てくるかもしれません。

こうした急速なテクノロジーの進化によって、従来型の保険ビジネスに大きな変革をもたらす日は間近に迫ってきており、そう遠い未来ではないかもしれません。
 

 

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みんかぶ(保険)クルーH

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