コラム自然災害で受け取った保険金に税金はかかる?

公開日:2019-01-24

保険を選ぶときに「知っ得」話~第8回

 

 

 もうすぐ確定申告の時期です(2018年分は、19年2月18日~3月15日)。被災して保険金を受け取った場合、税金は控除されるのでしょうか。保険金に限らず、被災で受け取った支援金はどうなるのか、被災で損害が発生した場合に税金の控除は受けられるのでしょうか。これらが今回の知っ得ポイントです。

 

 本題に入る前に、まず昨年発生した主な自然災害の損害保険金の支払い状況を確認してみましょう。下に挙げた5つの災害をみると、損保会社は145万件を超える保険金を支払っており、保険金も巨額になっています。6月に起きた大阪北部地震で支払われた地震保険金は1033億円と、東日本大震災、熊本地震に次ぐ歴代3位の額になっています。西日本豪雨や台風など風水害の保険金は1兆2000億円超と過去最大級の額となっています。

 

 

 保険金の支払いは今も続いていますから、額はさらに増えることになるでしょう。では本題の被災で受け取った損害保険金には、税金はかかるのでしょうか。

 

火災保険金や地震保険金、公的な支援金等も「非課税」

 

 住宅等が被災して受け取った損害保険金には、税金はかかりません。火災保険や地震保険は、受けた損害を穴埋めするのがその役割。損害の復旧を図るためのもので利益は生じないため、非課税です。

 

 被害を受けた建物や設備の所有者と、保険の契約者が異なる場合はどうでしょうか。まず火災保険金を受け取るのは、住宅等の所有者になります。保険では、補償(生命保険では保障)やサービスを受ける人(法人)は被保険者と呼ばれます。火災保険では通常、所有者が被保険者になります。

 

 マイホームなどでは所有者と保険の契約者が同一人物となるケースが多いと思います。その場合、特に迷うことはないでしょう。では、住宅の所有者は親ですが、保険の契約者は子で、子が保険料を負担している場合はどうなるのでしょうか。

 

 この場合も、保険金を受け取るのは、契約者の子ではなく被保険者である親になります。火災保険や地震保険では、保険料を負担した人と保険金の受取人が別の人でも、受取人に贈与税はかかりません。もちろん、所得税も非課税です。

 

 ちなみに、住宅や家財が「全損」と認定され、契約している保険金額満額の保険金が支払われたときは、その時点で保険契約は終了します。全損でなければ契約はその後も続き、満期まで条件が変わることもありません。

 

 連載第2回で紹介したように、被災した場合、火災保険金のほかにも、公的支援である被災者生活再建支援金や災害弔慰金、義援金を受け取れることがあります。これらも全て非課税です。

 

保険金で損害を補てんできない場合、税金が安くなる

 

 一方、大きな被害を受けたものの、保険に未加入で保険金を受け取れなかったり、受け取っても金額がわずかで損害が補填できなかったりした場合は、確定申告で所得税の減免または軽減を受けましょう。その方法は所得税法による「雑損控除」と「災害減免法」の2つで、いずれか有利な方を選択できます。

 

 まず「雑損控除」について解説しましょう。これは、住宅などに損害を受けたとき、算出した損失額を所得から差し引ける(=控除)制度です。支払う税金は、控除された課税所得に税率をかけた額になるので、通常より安くなります。

 

 対象になるのは住宅や家財、自家用車など、生活に必要な資産のみです。事業用資産や生活に通常必要でない資産(別荘など趣味・娯楽・保養または鑑賞の目的で保有する不動産、および不動産以外の資産(ゴルフ会員権など)や、一組30万円以上の書画・骨董品、貴金属等)の損害は対象外となっています。

 

雑損控除では被害額を時価で計算

 

雑損控除の計算で用いられる損失額は、住宅や家財等の「時価」をベースに計算します。時価とは、住宅等の取得価額から経年による償却分をマイナスしたもの。老朽化を加味した現状相当の金額ということです。取得価額が不明なら、国税庁公表の「地域別・構造別工事費用表」を用いて計算できます。

 

このようにして算出した住宅や家財等の損失額に、滅失した住宅や家財を除去するためにかかった費用を加え、そこから受け取った火災・地震等の保険金を差し引きます。差し引くのは損失を補てんする損害保険金などで、公的支援である被災者生活再建支援金、災害弔慰金等を差し引く必要はありません。

 

紹介してきた全てを加味して出したのが「差引損失額」になります。所得から差し引けるのは、差引損失額の一定額になります(表参照)。損失額が大きく、その年の所得金額から引ききれない場合には、翌年以降、3年間わたり損失額を繰り越し、各年の所得金額から差し引くことができます。

 

対象になる損害の原因は自然災害に限らず、盗難や横領、シロアリによる被害などでも控除を受けることができます。

 

 

災害減免法は所得1000万円以下の人が対象

 

 一方の「災害減免法」。こちらは自然災害や火災で被害を受けた場合に、税金の減免を受けられる仕組み。住宅や家財の時価に2分の1以上の差引損失額が生じた所得1000万円以下の人が対象で、所得に応じ所得税の免除または軽減を受けられます。雑損控除と異なり、損失額を翌年以降に繰り越すことはできず、単年だけの減免となります。

 

 以上、2つの制度を見てきましたが、問題は、どちらを利用するのが有利か、でしょう。

 

 具体的には個別ケースにより異なりますが、国税庁が示した以下の例が参考になるでしょう。損失額が大きくなると、雑損控除の方が有利になる傾向にあるようです。実際の利用にあたっては、税務署に問い合わせてみることをお勧めします。

 

 確実な手続きでこれらの税軽減を受けることはとても大切なこと。ですが、戻ってくるのはいうまでもなく自分が納付した税金の額が上限であり、生活再建時の一助を担う仕組みに過ぎないとも言えます。被災後に住宅や家財を復旧させ、暮らしを建て直すためには、やはり、平時から火災保険や地震保険で生活再建に足り得るお金の備えをしておく必要があるのです。

 

 

 いずれの制度を利用する場合でも、確定申告による手続きが必要です。り災証明書の写し、被害を受けた住宅の取得年月日などの分かるもの、源泉徴収票や確定申告関係の書類、保険金を受け取った場合はその金額が分かる書類などを揃えて所轄の税務署へ。確定申告で雑損控除の手続きをすると、住民税の軽減も自動的に受けられます。

 

 災害減免法による減免を受けられるのは所得税のみです。ただし市区町村によって条例で住民税等の減免制度を整えているところもあり、その場合は役所の窓口で申請が必要です。まずはり災証明書を携え、相談に行くとよいでしょう。

執筆者情報
清水香(Kaori Shimizu)

清水香(Kaori Shimizu)
生活設計塾クルー  生活設計塾クルー・取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)/社会福祉士/自由が丘産能短期大学講師

1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。財務省“地震保険制度に関するプロジェクトチーム”委員


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