コラムこの保険金受取人は誰だ! ― 離婚編

公開日:2019-01-31

話題のドラマ(時々ゴシップ)でつかむ

『保険』のカラクリ~第1回

 

 

読者の皆さん、はじめまして! ファイナンシャルプランナー(FP)の谷沢鮎美です。これから皆さんに、生命保険の話を紹介させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。

 

 突然ですが、皆さんの中には、「自分は生命保険に加入しているから、もう安心だ」と思っている方はいませんか。もしかしたら保険証券を保管している場所を忘れてしまったという方もいるかもしれませんね。

 

 保険は掛けて安心の商品ではありません。あなたが望む人が保険金を受け取って、ようやく目的が達成されるのです。どんな保険に入るのかと同様、誰を保険金の受取人にするのかも、とっても重要なことなんです。

 

 このコラムでは、話題になったテレビドラマを参考にして、保険金の受け取りに関して様々なポイントを紹介していきます。「なんでテレビドラマ?」というと、とっつきにくい保険の仕組みをわかりやすく説明するため。というのは建前で、本音はドラマ大好き女子だから~♪。

 

 「ドラマなんかに興味がない」という人もいらっしゃるかもしれませんが、どうかお付き合いください。

 

『黄昏流星群』(フジテレビ系列)から妄想しました

 

 少々前置きが長くなってしまいましたが、「保険金受取人シリーズ」の第1回目は「離婚」がケースになります。約2分に1組のカップルが離婚している日本。ドラマでもよく取り上げられるテーマですね。最近放映された離婚ドラマといえば、『黄昏流星群』(フジテレビ系列)があります。

 

 「え、知らない!?」。そんな人のために簡単に説明すると、佐々木蔵之介さん演じる瀧沢完治とミポリンこと中山美穂さん演じる真璃子は夫婦。二人には美咲(石川恋さん)という娘がいます。完治には目黒栞(黒木瞳さん)、真璃子には日野春輝(藤井流星さん)と、それぞれ好きな人ができてしまい、結局は離婚してしまいました。

 

 この結末にFPとして思わずテレビに向かって叫んでしまいました。「離婚したら、すぐに保険の受取人を変更してください!」。二人はそれぞれの保険で、保険金の受取人を娘の美咲に変更したのでしょうか。

 

 さて、ここから妄想劇場の始まりです。ここは、とある町の「保険のカラクリ相談所」。保険のことは何でも相談に乗っているのですが、なぜだか保険金の受け取りに関しての相談が多いのです。

 

そんな相談所の所長は保険業界に15年携わり、先日独立してこの相談所をオープンさせたばかりの「ドラマ大好き女子」です。

 

♪♪カラン、カラ~ン(ドアが開く音)

所長

 
 

 いらっしゃいませ。

 

 今日は、先ごろ離婚したばかりの元夫婦の完治さんと、真璃子さんが、
 お二人それぞれの保険の受取人の変更について相談するためにご来店されました。
 

完治

 
 

 僕たち離婚したので、それぞれの保険の受取人がお互いになっていたのを娘の美咲に変更しようと思っています。実は、娘は今、ロンドンにいるのですが。

 

(そういえば娘の美咲は駆け落ちしたのだった、と思い出す所長)

 

所長

 
 
 娘さんを受取人にされるのですね。たしかに離婚したときに、次のパートナーがいない場合は実のお子さんを受取人に変更するケースは多くあります。受取人の変更には、美咲さんご本人の署名(自著)は必要ないので、すぐにできます。
 
 なお契約者と被保険者(保険の対象となる当事者)が別の場合に保険金受取人を変更するには、被保険者の同意が必要になります。ご相談の保険は契約者も被保険者も完治さんですね。それなら特に問題はないでしょう。
 

完治

 
 

 それはよかった!

 

所長

 
 

 未成年のお子さんを受取人に指定される場合は、注意が必要なことがありますが、美咲さんはもう成人していらっしゃいます。お二人に万一のことがあっても、美咲さんが死亡保険金の請求手続きをすることに何も問題はありません。

 

完治

 
 
 ゆくゆくは今のパートナーの栞との再婚を考えています。
 その時はまた受取人の変更はできますか?

 

 

所長 

 
 

 はい、変更は保険契約が有効な限り、「何度でも」「いつでも」することが可能です。

 

真璃子 

 
 

 私はパートナーの春輝とは年がかけ離れているので(なにせ娘の彼氏でしたから!)、今のところ再婚は考えてはいません。でも事実婚といえるので、できたら彼を受取人にしたいのですが?

 

所長

すみません真璃子さん。それは次回のテーマなんです。
また来ていただいても、よろしいでしょうか…(ペコリ)
 
 二人を見送りながら清々しい離婚もあるものだと、原作を書いた弘兼憲史さんの創作力を改めて感じた所長なのでした。

 

なんと『西郷どん』の愛加那さんも来店

 

 しばらくして、今回は連載開始を記念して、もう一人素敵なお客さまがご来店されました!

 

 NHK大河ドラマ『西郷どん』から西郷吉之助(隆盛)さんの2人目の妻、愛加那さんです。
ちょっと破天荒かもしれませんが、そもそも妄想劇場なのでお許しください。
「もし愛加那さんが今の時代にいたら」という設定です。

 

愛加那

 
 

 こんにちは!

 

所長

 
 

  あ、あ、愛加那さんじゃないですか~!! 

 

実は、所長の父は鹿児島出身で、所長にも半分薩摩の血が流れているのです。
西郷さんの家族に会えるなんて、と最高に感激しております。
 

所長

 
 

 大変失礼しました。今日はどのようなご相談でしょうか?

 

愛加那

 

 

 吉之助さんとの婚姻中に、契約者と被保険者が私、受取人を夫にした死亡保障保険に加入しました。
 
 吉之助さんと離縁した後に、受取人を3歳の息子の菊次郎に変更しました。私に万一のことがあった場合、ちゃんと菊次郎に保険金が渡されるのでしょうか?

所長

 
 
 そうですね。お子さんは3歳ということであれば、まだ字は書けませんし、誰が手続きをすることになるのか考えてしまいますよね。
 
 確認ですが、親権者は、愛加那さんでよろしいでしょうか?

 

 

愛加那

 
 

 はい!!

 

所長

 
 
 
 未成年である子どもは、請求手続きができないため、これから紹介する4つの方法が考えられます。
 
1つ目は、子が成人するまで待って請求手続きを行う
 
2つ目は、家庭裁判所に選任された未成年後見人が請求手続きを行う
 
3つ目は、未成年は結婚をすることにより、成年に達したものとみなされるため、誰かと婚姻後に請求手続きを行う
 
4つ目は、父が家庭裁判所に親権変更の申立てを行い(母が死亡したとしても親権変更は勝手には行われないんです)、これが認められた後で父から請求手続きを行う
 
――という方法があります。

 

契約者・被保険者の死亡後に受取人の変更はできる?

 

愛加那

 
 

 そうなんですね。実は、他にも吉之助さんが掛けていて、私が受取人になっていた保険でも分からないことがあるのですが?

 

所長

 
 

 何でしょうか。

 

愛加那

 
 
 正確にいうと契約者と被保険者が吉之助さんで、受取人が私になっていたました。
 
 この保険の受取人を菊次郎に変更しようと思っていたのですが、吉之助さんはあの通りご多忙で、変更するのをすっかり忘れていたんです。そして、そのまま西南戦争で亡くなってしまって。
 
 吉之助さんがいなくなってしまった今、どのようにしたらよいのでしょうか。

 

所長 

 
 
 心より悔み申し上げます。ご質問の件ですが、受取人を変更する前に契約者が死亡した場合には、
 
 たとえ西郷さんが将来的に受取人を菊次郎さんに変更する意思を持っていたとしても、契約上の受取人からの請求があれば、
 
 保険会社は元妻の愛加那さんに死亡保険金を支払います。

 

愛加那

 
 

 離縁して、今は赤の他人になってしまった場合でも……

 

所長

 
 
 そうなんです。ここはポイントですね。受取人に指定された元夫もしくは元妻から請求があれば、保険会社はその方にお支払いする義務があるのです。もちろん請求の際には、保険会社は元配偶者の方に必要な書類をすべてそろえていただくなどをお願いしますが。
 
 ですから保険金は愛加那さんが受け取っていただいて、その後をどうするかは愛加那さんの自由です。
 

愛加那

 
 
そうなんですか…。
私は子どもたちが立派に生きてくれたら、それでいいのです。
 

 そう話して帰っていく愛加那さんの背中を見ながら、最終的に子どもたちを糸さん(西郷さん3人目の妻)の元に預けて島にひとり残り、再婚もせずにずっと西郷さんと子どもたちの未来を想い続けていた姿を思い浮かべ、涙が溢れてきた所長でした。

 

 

 いかがでしたでしょうか。離婚は夫婦二人だけの問題にとどまらないことは、保険金の受取人の話からも分かっていただけと思います。

 

「保険証券は再発行」が、イラっとを回避

 

 ここで離婚についてのデータを少し紹介します。厚生労働省が2018年8月に調査した最新の人口動態統計によると、離婚率が高い年齢では、夫の場合は35歳〜39歳、妻は30歳~34歳になっています。また婚姻期間では、5~10年でした。

 

 ということは、婚姻期間中に産まれた子どもは大きくても10歳で、離婚時点では未成年の場合が多いということになります。この妄想劇場では、愛加那さんのケースに似ています。

 

 離婚後、自分の生命保険の受取人を(未成年の)子どもに変更していても、万一のことがあった場合、その手続きは誰に任せたらよいのかを、しっかりそこまで考えておく必要があります。できれば、離婚の話し合いの時に入れておいてほしい項目です。

 

 ちなみに、再婚して新たなパートナーを受取人に指定する際は、保険証券が手元にあったとしても「証券再発行」の依頼も同時にすることをお勧めします。再発行をしなかった場合、保険会社からは1枚ほどの、「受取人を変更しました」というような用紙が送られてくるだけです。そのときは、保険証券と一緒に保管することをお忘れなく。

 

 当然、その保険証券には前配偶者の名前が受取人として印字してあるので、パートナーが見るとちょっとイラっとしちゃうかも。新たな結婚生活のため、前の保険証券は捨てて新しいものにすることをお勧めします。

 

 

 では最後に、まとめです。

 


■今回のポイント

A 離婚したら保険金受取人の変更を検討する
B 保険が有効の間は、保険金受取人を何度でも変更できる
C 内にいない場合でも保険金の受取人に指定できる
D 契約者と被保険者が異なる場合に保険金受取人を変更するには、被保険者の同意が必要になる
亡保険金の受取人が未成年で保険金受け取りの請求手続きができない場合は以下の4つの方法がある
 
(1)子が成人するまで待って請求手続きを行う
(2)家庭裁判所に選任された未成年後見人が請求手続きを行う
(3)民法第753条では、満20歳に満たない者が、結婚をすることにより、成年に達したものとみなす(成年擬制という)ため、婚姻による成年擬制後に請求手続きを行う
(4)父が家庭裁判所に親権変更の申立てを行い、これが認められた後で父から請求手続きを行う
 
F 元配偶者でも、必要な書類を揃えて請求し保険会社が死亡を確認すれば、保険金を受け取れる

 

 以上になります。次回は「事実婚・同性婚」編について紹介します。
はたして、どんなドラマの登場人物が妄想劇場にやってくるのか。お楽しみに。
 

構成/真弓重孝、イラスト/井川純一=みんかぶ編集部

執筆者情報
谷沢鮎美(Ayumi Tanizawa)

谷沢鮎美(Ayumi Tanizawa)
  学習院大学卒業後、大手生命保険会社に入社。入社4年目で、生命保険の販売上位成績者で構成する「MDRT」に入会する(当時、社内の最年少・最短期間を記録)。
2018年にキャリア形成のために独立、保険営業の第一線に立つ傍ら、自身の経験を活かした女性向けのビジネススキル、ワークライフバランス研修、マネープランセミナーなどの講師を務める。また司会やナレーション業と活動の場を広げている。ファイナンシャルプランナー2級。


ページTOPへ