コラムこの保険金受取人は誰だ! ― 事実婚・同性パートナー編

公開日:2019-02-08 (更新日:2019-02-14)

話題のドラマ(時々ゴシップ)でつかむ

『保険』のカラクリ~第2回


 

 話題のドラマを使って保険金受取人の問題を解説する第2回目のテーマは、「事実婚・同性パートナー」。このテーマで取り上げるドラマといえば、もうお分かりですよね。

 

 そうです。『おっさんずラブ』(テレビ朝日系列)なんです♪

 

 2018年流行語大賞にもノミネートされた「おっさんずラブ」。平成最後の年に盛り上がりを見せた純愛ドラマの主役は、なんとおっさん! 強面の吉田鋼太郎さま演じる黒澤武蔵のオトメっぷりがおかしくて、おかしくて。

 

 私は武蔵を応援していたんですけどね~。武蔵がLove?の春たん(春田壮一)は、牧くん(牧凌太)と結ばれちゃいましたね。だけどこのドラマ、最後はそれぞれがカップルになって、みんなめでたし、めでたし、でした~。

 

 だったので、生命保険金の受取人も、パートナーに変更してしまいましょう!
 でも…。同性のパートナーを保険金受取人に指定できるのでしょうか?
 

 ということで、保険のことなら、どんなことでも「親身になって相談にのりま~す♪」がモットーの「保険のカラクリ相談所」に、春たんと牧くんがやってきました。

 

 既に所長はそわそわ、うきうき、しています。なぜなら春たんを演じる田中圭くんを、所長は以前から応援していて大、大、大ファンだからなんです。

 

――相談所にやってきた春たんを、じ~と見つめている所長――

 

春田

 
 

 僕たちパートナーなのですが、同性パートナーを保険金の受取人に指定できるのでしょうか。

 

――同性パートナーを生命保険金の受取人として指定する動きは最近出てきたので、春たんが疑問に思うのも当然です――

 

所長

 
 

 実はこれまでも2つの要件を満たした上で、さらに本当にカップルとして認められるのかを慎重に判断して、受取人に指定できるケースもありました。ですが、これは生命保険会社の社内マニュアルのような扱いで、あまねくお客様にご提示することはありませんでした。

 

 
 

 僕たち結婚式まで挙げたので、絶対に受取人を変更したいんです。

(知ってますよ、ドラマ観てたもんと、牧くんに嫉妬する所長)

 

所長

 
 

 お二人はご存知とは思いますが、2015年4月に渋谷区(東京都)で日本初の同性パートナーシップ条例が施行されました。これをきっかけに多くの企業がLGBT(性的少数者)にフレンドリーな企業を目指した取り組みを推進しています。生命保険業界でもLGBT対応の一環として、死亡保険金の受取人に同性パートナーを認める動きが広まってきました。

 

 
 

 やったぜ!

 

――その喜びように思わず微笑んでしまう所長――

 

所長

 
 

 渋谷区で『パートナーシップ証明書』の発行が始まったのを受け、大手生保の第一生命や日本生命などは、15年11月に保険金の受取人に指定できることを正式発表しています。両社のウェブサイトで確認できます。第一生命はここに、日本生命はここに掲載されています。その後、同様の発表が他の生保からも行われています。

 

春田

 
 

 ほんとだ。スムーズにお手続きできますって書いてある! じゃあ、受取人を牧に変更できるんですね?

 

所長

 
 

 『そうです』と、言いたいところなんですが…。

実は『パートナーシップ証明書』を提出すれば、

同性のパートナーを保険金の受取人に指定することが、

これまでよりはスムーズにできるようになりました」というのが実態なんです。

 

春田

 
 

 ???

 

所長

 
 

 分りやすく言い換えると、『手続きが面倒でなくなりました』ということです。

 

春田

 
 

 面倒でなくなった?

 

所長

 
 

 その説明の前に、まずお伝えしなければならないのは『誰でも生命保険の保険金受取人になれるわけではない』ということです。

 

基本的に多くの生命保険会社は、保険金受取人の指定を

 

(1) 配偶者

(2) 1親等(親・子)

(3) 2親等(祖父母・兄弟・姉妹・孫)

 

――までの親族と定めています。

 

 

 
 

 そうなんだ。

 

――所長が話を続けようとした、その時です。おっさんずラブに登場されていた、蝶子さんとマロくんこと栗林歌麻呂さんが相談所に入ってきました。え、誰って? 大塚寧々さん演じる蝶子さんは、春たんに恋してしまった武蔵の元奥さま。金子大地さんが演じるマロくんは、春たんと牧くんの後輩社員なんです。こちらのカップルも相変わらずいい感じにお付き合いが続いているようです――

 

春田

 
 

 あれ、二人はなんの相談に

 

――春田の問いかけに答えず(なにせ元夫を巡る恋敵ですから)、蝶子さんが所長に向かってしゃべり始めました――

 

蝶子

 
 

 私たち事実婚なんですが、私が入っていた生命保険金の受取人を、前の主人から彼(マロ)に変更できますか。

 

所長

 
 

 ちょうどこちらの春田さまと牧さまにも、関係するケースを説明しようとしていたところなのです。同姓パートナーも事実婚ですし、ここはご一緒に説明させてください。

 

――うなずく2組のカップル――

 

所長

 
 

 すでにお話したことのおさらいになるのですが、生命保険会社は保険金の受取人になる範囲を定めていて、多くの会社では下の図にある2親等までの親族になります。

 

 

蝶子

 
 

 え? 俺、いとこやおじさん、おばさんとかめちゃくちゃ仲良かったりしますよ。なのにだめなんっすか?

 

所長

 
 
 はい。保険会社には契約者に生命保険を安心して利用してもらうため、生命保険が不当な利益を得るために悪用されること(モラルリスク)を防ぐ義務があります。

 

 つまり、他人を誰でも受取人に指定できることを認めて、保険金目的の殺人事件なんかが起こったら大変なことなんです。

 

 ですので、配偶者や2親等以内の血縁者がいながら、それ以外の他人を受取人にするのは難しいというのが現状です。

 

 

蝶子

 
 

 そうなんだぁ・・・

 

所長

 
 

 ただし、ある一定の基準や要件を満たせば、事実婚(内縁関係)や、6親等内の血族・3親等内の姻族でも受取人に指定することができますよ。上の図をご覧ください。民法では親族の範囲を、6親等内の血族と、配偶者および、3親等内の姻族と既定しています。

 

蝶子

 
 

 姻族って。

 

所長

 
 

 配偶者の親族や、お子さんの配偶者だったり、兄弟姉妹の配偶者だったりします。

 

蝶子

 
 

 その姻族と親族ではなくても、一定の要件を満たせば内縁関係でも受取人に指定できるんですか。

 

所長

 
 

はい、その通りです。

 

春田

 
 

 これは、僕たちにも関係あることですよね!!

 

所長

 
 

 その通りで、同姓パートナーの場合も関係します。

親族以外でも受取人にできる条件は2つあります。

 

多くの保険会社が定めているのは

 

(1) 双方が法的に独身(戸籍上の配偶者がいないこと)であること

(2) 2年以上(保険会社によって3年以上のところもあります)にわたって同居し、

夫婦同然の生活をしており社会的にも事実上の夫婦とみなされていること

 

――になります。

 

春田

 
 

 確認ですけど、その条件は同性同士のパートナーでも同じなんですよね。

 

所長

 
 

 その通りです。

ただ、先ほどの2つの条件のうち、保険会社によっては(2)を確認するために、

 

住民票などの公的書類の提出が必要であったり、

保険会社の役付きの社員の訪問が必要であったりします。

 

 それに契約者と被保険者、受取人それぞれの収入状況や保険金のバランスなども考慮されますね。例えば細かな条件として、死亡保険金の額に上限を設けていたりしています。

 

 上限額は、災害死亡割増特約、傷害特約を含めて

3000万円以下

としている保険会社が多いようです。

 

蝶子

 
 

 私はもう離婚しているから(1)の要件はクリアしているわね。あと彼(マロ)と一緒に住んでいるのはもうすぐ2年たつのかな。うん? ということは受取人には指定できないの。

 

所長

 
 

 はい、できない可能性が高いと思います。でも逆に言うと、この2つの要件がクリアできたらお引き受けできる可能性があるということです。

 

蝶子

 
 

やった~♪

 

所長

 
 

 ただしなんですが、『2つの要件をクリア』=『内縁関係の人を指定可能』とならないんです。

 

蝶子

 
 

 え、なんでよ。役付き社員の訪問とかあっても。

 

所長

 
 

 例えば、実のお子さんがいらっしゃらないのかなどは、保険会社が必ず確認したい情報ですよね。正式な法定相続人がいるのに、赤の他人を受取人に指定したから、その実子が怒って事件になってしまった…というようなトラブルを防ぎたいわけです。

だからと言って絶対指定できないわけでなく個々のケースで判断してくれます。また偽装婚でないかということも、保険会社として慎重に見極めなくてはならないんです。

 

蝶子

 
 

 それはそうかもしれませんね。まあ、私とマロはみなが認めるカップルだし、元の旦那さんとの間に子供はいませんし、心配は不要よね

 

蝶子

 
 

 そうだね。1年なんて、すぐに過ぎちゃうから、もうしばらく待ってよう。じゃ、俺たち帰ります。

 

帰っていく二人を見送りながら、デジャヴを感じた所長。

あ、前回も事実婚の相談で、真璃子さん(ミポリン)にお越しいただきました。年下イケメンくんとカップルになるのって、流行っているのね…と、うらやましさを感じる所長なのでした。

 

 

――蝶子さんとマロくんの見送りから戻ってきた所長に、春田が尋ねます――

 

春田

 
 

 僕たちは、まだ知っておいた方がいいことがありますか。

 

所長

 
 

 お二人のような場合、「パートナーシップ証明書」があれば、本当のカップルなのかという確認の手間は省かれやすくなりました。しかし、将来トラブルにならないように先ほどの細かい条件などで慎重に判断していきますので、2つの要件をクリアし、同姓パートナーシップ制度で証明されいても、それだけで認められることになりません。

 

春田

 
 

 なるほどね。ともかくは「パートナーシップ証明書」をもらうことだね。

 

所長

 
 

 そうですね。ここも大事な点ですが、「パートナーシップ証明書」は、その制度を導入している自治体の住人でないともらえないんです。渋谷区以外に制度を導入している自治体はどれくらいあるのかというと…

 

 
 

 それで、どれくらいなんですか!

 

(今お伝えしようとしたのに、「あなたが話を遮ったんでしょ」と少しイラッとしたのを抑えつつ)

 

所長

 
 

 現在同性パートナーシップ制度を導入しているのは、予定も含めると10自治体で、今年の春までにさらに4自治体が加わるようです。この自治体以外にお住まいで、『パートナーシップ証明書』を取得できない場合は、お二人が正式なカップルであるとの確認は、異性同士の事実婚と同じように慎重に判断されます。

 

――バタン!!勢いよく立ち上がって椅子が倒れた音――

 

 
 

 そんなのおかしいです!第1回目のコラムでは、離婚して赤の他人同士になっても、受取人変更してなかったら、保険会社は元配偶者の請求に応じて、保険金を払っていたじゃないですか。なんで自分たちの場合は、れっきとしたパートナーなのに受け取れないんですか!!

 

所長

 
 

・・・は、はい。本当おっしゃる通りだと思います(汗)

 

(前回のコラムを春たんたちが読んでいてくれたことに感動しつつも、牧くんの剣幕ももっともだとドギマギしてしまう所長なのでした)

 

 いかがでしたでしょうか。

 いやぁ~、田中圭くんの顔が激好みの筆者は(顔って言ってしまっているし)、妄想劇場を書いている間中、圭くんの顔が頭に浮かんで楽しかったです。

 

 それはさておき、繰り返しになりますがモラルリスクを防ぎ、生命保険制度が健全かつ公平に運営していくために、保険会社は将来トラブルのリスクが高い契約に関しては慎重にならざるを得ません。この内縁関係の取り扱い、同性パートナーの取り扱いも、健全なカップルにしてみたら正直面倒くさいのですが、やっぱり必要なことなんですよね。

 

 筆者も過去に事実婚のお客さまの保険契約をお取り扱いさせていただいたことがあります。パートナーを受取人にするために、お客さまに書類をご準備していただいたり、社内での取り扱い報告書がいつもより多かったり、書き方が悪かったら、戻されてまた書き直しをしなければならなかったり・・・とその当時は何かと大変だった記憶があります。

 

 ですが、最近は事実婚に関しては、昔ほどの慎重さもなくなってきたように感じます(もちろん厳格な調査が行われますが)。これは、日本に事実婚がひとつのライフスタイルの形として、十分とはいえないまでも受け入れられてきた現状に即してきたためと思われます。

 

 LGBTに関しては、日本は現在、過渡期にあります。『おっさんずラブ』のようなテレビ番組が増えてきたように、今後LGBTに対する自治体の理解が深まって、同性パートナーシップ制度などが広まってくると、保険会社としても対応が明確化でき、同性パートナーを受取人にしたいという人たちにとっていい動きとなることは間違いないでしょう。

 

 では、まとめです。

 


■ポイント

A 保険金受取人に指定できる親族は以下の3通り
(1) 配偶者
(2) 1親等(親・子)
(3) 2親等(祖父母・兄弟・姉妹・孫)
 
B 事実婚の取り扱いで、多くの保険会社に共通する要件は次の2つ
(1)双方が法的に独身(戸籍上の配偶者がいないこと)であること
(2)2年以上(会社によっては3年以上)にわたって同居していること
 
C 同性パートナーを受取人にする場合>
自治体が発行する「パートナーシップ証明書」があると、上記2要件の中でカップルであるとの確認手続きが簡易化はされやすい。ただし、モラルリスクを軽減するために各種の確認が慎重に行われる。

 

以上になります。次回は「失踪」編になります。

構成/真弓重孝、イラスト/井川純一=みんかぶ編集部

執筆者情報
谷沢鮎美(Ayumi Tanizawa)

谷沢鮎美(Ayumi Tanizawa)
  学習院大学卒業後、大手生命保険会社に入社。入社4年目で、生命保険の販売上位成績者で構成する「MDRT」に入会する(当時、社内の最年少・最短期間を記録)。
2018年にキャリア形成のために独立、保険営業の第一線に立つ傍ら、自身の経験を活かした女性向けのビジネススキル、ワークライフバランス研修、マネープランセミナーなどの講師を務める。また司会やナレーション業と活動の場を広げている。ファイナンシャルプランナー2級。


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