コラム「保険金を使って住宅修理」は要注意

公開日:2019-02-07 (更新日:2019-10-18)

保険を選ぶときに「知っ得」話~第9回

 

 

 「保険金詐欺」というと、どんな例を思い浮かべるでしょうか。

 

 自殺と見せかけて死亡保険金をだまし取る? もしくは事故や火災を装って保険会社に治療費や修理代などを請求する? これらはミステリー小説の題材になりやすく、きっと思い浮かべる人も多いでしょう。

 

 こうした“古典的な”手口とは別に、最近増えているのが住宅修理に伴うもので、保険金詐欺になりかねないトラブルです。どんなやりかたなのでしょうか?  実例を見てみましょう。2016年に起きた熊本地震に関して、国民生活センターに次のような相談が寄せられています。

 

 地震被害を調査していると電話があった5分後に男性が来訪。外壁を見て「地震のせいにして地震保険を使って修繕したほうがいい」と言う。

 

 古い家だから地震のせいではないと思うと伝えたら「それは保険会社には絶対言わないように」と怒られた。勝手に家に上がりこみ、保険会社に電話をかけ、つながるとメモを渡され「この通り言えばよいから」と言われた。

 

 後刻、男性にキャンセルを伝えたら「2時間話をした自分の経費を支払え」と暴言を吐かれ、怖くなった――

(2017年9月受付 80歳 女性 宮崎県)

出所:国民生活センター「平成28年熊本地震で寄せられた消費生活相談情報(第3報)」より抜粋

 

 まったくひどい話です。業者は突然現れ、頼まれてもいないのに勝手に住宅を調査、地震が原因の損傷でないにもかかわらず保険金請求を勧めています。事実を捻じ曲げて保険金を騙し取れと言っているわけで、この業者の言いなりに請求をすれば、保険契約者自身が刑法上の詐欺罪、及び民法上の不法行為に問われる可能性があります。「知らなかった」では済まされません。

 

 また、この業者は当事者がキャンセルを伝えると経費を請求していますが、高額の違約金等を請求するような契約は、消費者契約法第9条に定められている「不当条項」に該当し、契約自体が無効である可能性もあります。つまりこの業者は、決して関わってはいけない「悪徳業者」なのです。

 

相談件数は9年間で30倍以上に

 

  近年、被災地の混乱に乗じて、このような悪徳業者が現地に多数入り込んでいます。災害が相次ぐなかトラブルは増え続けており、住宅修理サービス、及び保険金の請求代行に関する国民生活センターへの相談件数は、2008年度から17年度までの9年間で30倍以上と激増しています。

 

 

 トラブルは被災地に限りません。新聞折り込みチラシや投げ込みチラシなどを通じて契約に至るケースもあり、被災地以外でもトラブルの報告が上がってきています。

 

 今回は、相次ぐ住宅修理トラブルに巻き込まれないために、どんな点が問題なのか、どうしたらよいかを事例を踏まえて確認していきましょう。これが今回の知っ得ポイントです。

 

公的機関を装ったり、自称コンサルタントも

 

 住宅業者が勧めてくる契約には、火災保険金や地震保険金の請求代行と住宅修理をセットにした契約のほか、保険金の請求サポートのみを行うものもあるようです。

 

 いずれの場合も、住宅業者は「○☓協会」「▲□機構」などと業界団体や公的機関を装い信用させようとしたり、「コンサルタント」を名乗り、訪問や電話で突然、勧誘してきたりします。こうした人物が現れたら、まず「怪しい」と思ってください。

 

 こうした人物が何より強調するのが「無料」や「自己負担なし」。「無料なら…」と思うかもしれませんが、無料で修理ができるかは、損害調査の結果と見積もりで決まることであり、勧誘時点でわかることではありません。

 

 そもそも火災保険は、火災や自然災害などが原因で被った住宅の損害をカバーするもの。地震保険は地震等が原因で住宅等が損害を受けたときが対象です。一方、経年劣化による損害は必然ですから、いうまでもなく火災保険では補償されません

 

 にもかかわらず、保険金請求ありきで強引に勧誘、うっかり契約し、後でキャンセルしようとすると、高額の違約金を請求されるといったケースが多く見られます。

 

 また「保険の請求は非常に難しい」と煽って請求の代行を依頼させ、その手数料として保険金の3~4割をかすめ取るトンデモ業者もいます。しかし、保険金請求までの一連の手続きは、特に難しいことではありません!

 

 災害で被害が生じたら、見ず知らずの「自称コンサルタント」ではなく、まずは火災保険の契約をしている代理店や保険会社に連絡をしましょう。

 

 

 こんな事例もあります。

 

 突然事業者が訪れ「風水害や雪害などが原因で家屋に壊れたところはないか。損害保険で負担なく修理ができる。当社で見積もりを出し、保険適用されれば保険金が出る」と言われ数年前の大雪でベランダの屋根がゆがんだことを話した。

 

 後日その事業者の調査員が来ると言われ、申込書にサインしたが、契約している保険会社に問い合わせると「怪しい話ではないか」と言われ、心配に。

 

 申込書をよく見たら、保険会社に認定された保険金額が見積金額より大幅に減額され、「修理工事が困難な場合は、30%の手数料を払う」との記載。30%の手数料の話は聞いていない。保険金額によって修理工事をするかどうかが決まるのも不審。申し込みをやめたい――

(2018年2月受付 契約当事者 70歳代 女性 埼玉県)

出所:国民生活センター「保険金を使って住宅を修理しませんか」がきっかけでトラブルに!-高齢者からの相談が増加しています-」より

 

 突然来訪した業者に契約を迫られ、契約書を十分に確認することなくサインをしてしまい、トラブルになることもあるようです。こんな時は、契約を一方的に解除できる「クーリング・オフ」が利用できることを知っておきましょう。

 

 慌てて契約しがちなこんな場面で、一定期間は契約者が頭を冷やし、一方的に契約をやめる機会が与えられているのです。

 

 訪問業者や電話勧誘による契約では、業者には特定商取引法の法定書面交付が義務付けられていて、この書面の受け取りから8日以内なら、たとえ工事開始後でもクーリング・オフによる契約解除が可能です。業者が法定書面を交付していなければ、無期限で契約解除が可能です。

 

 クーリング・オフは必ずはがきなどの書面で、かつ特定記録郵便や簡易書留など証拠が残る方法で行使します(国民生活センター『クーリング・オフってなに?』)。

 

 住宅修理契約については、過大な見積もりだったり、ずさんな工事が行われたりなど、工事内容そのものに問題があるケースもあるようです。工事を依頼する場合には、複数の業者から見積もりを取るようにしましょう。

 

 また、国土交通省指定の相談窓口「住まいるダイヤル」では、契約前の見積書を送ると見積もり項目や形式、見積もり金額の妥当性などについてアドバイスを受けることができます。万が一トラブルに巻き込まれてしまったときも、相談窓口は複数あることを覚えておいてください(下の表参照)。

 

■住宅修理等のトラブル相談窓口

サービス名/実施団体

電話

受付時間

内容


消費者庁
188

(全国共通)
午前10時~午後4時
        
(原則毎日、
         年末年始除く)

「188」をダイヤルし郵便番号等を入力すると、最寄りの市区町村や都道府県の消費生活センター等の相談窓口を案内される


住宅リフォーム・紛争処理支援センター

0570-
016-
100

午前10時~午後5時
(土日休祝日、
               年末年始除く)
国土交通省指定の住宅専用の相談窓口。住宅リフォーム工事のほか、取得に関するトラブルや不安を電話で相談できる

日本損害保険協会

0570-
022-
808

午前9時15分
         ~午後5時
(土日休祝日、
            年末年始を除く)

専門の相談員による損害保険に関する相談を無料で受けられる


 こうしたトラブルは、当たり前の事の実践で、ある程度防ぐことが可能でしょう。自分の加入する火災保険がどのようなものか把握しておくことはもちろん、

 

  • 「無料」「負担ゼロ」などの一見おいしい話を鵜呑みにしない、
  • 不要ならきっぱり断る、
  • 契約の内容がどうなっているかしっかり確かめることも、

 

外せないポイントとなります。

 

 また相談を寄せた7割超が60歳以上で、判断能力が低下しがちな高齢者が狙われていることには留意が必要です。実家の親と申し合わせをしておいて、

 

  • 勧誘を受けてもその場で依頼したり契約したりしない、
  • すぐに家族に相談の連絡をいれる、

 

など家族で水際作戦を講じておきましょう。

 

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執筆者情報
清水香(Kaori Shimizu)

清水香(Kaori Shimizu)
生活設計塾クルー  生活設計塾クルー・取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)/社会福祉士/自由が丘産能短期大学講師

1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。財務省“地震保険制度に関するプロジェクトチーム”委員


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