コラム賃貸住宅の火災保険は自分で選べる!

公開日:2019-03-07

保険を選ぶときに「知っ得」話~第11回

 

 

 賃貸借契約を結ぶとき、たいていセットで火災保険の手続きをしています。契約の一連の手続きのなかで行われ、流れ作業のように判を押しているためか、その内容はおろか、「そんなの入ったっけ?」ぐらいの感覚で捉えている人が少なくないようです。 

 

 ですが、これから述べるように、これらの保険は賃貸世帯には欠かせないものであると同時に、その入り方を誤ると困った事態になりかねない、実は入り方がかなり重要なものになります。ではどんな入り方をすべき? これが今回の知っ得ポイントです。

 

賃貸世帯向けの火災保険って、そもそもどんなの?

 

 賃貸世帯が入る火災保険とは、そもそも、どんなものなのか説明しておきましょう。

 

 持ち家世帯は、住宅を所有しているため、住宅建物の火災保険に加入します。同時に後から運び入れた家財(歯ブラシのような生活用品から電化製品・家具まで)についても、別途火災保険に入ります。

 

 一方で賃貸世帯の住宅は借り物。ですから、賃貸世帯は所有する家財についてのみ、「火災保険」に加入することになります。

 

 なぜ家財についても火災保険に入る必要があるのかー。それは日本には通称「失火責任法」という民法の特別法があり、一方的な延焼被害でも、原則として火元から補償を受けられないからです(詳しくは「オール電化住宅に火災保険は不要?」)。

 

 持ち家と違い、賃貸住宅の場合、補償対象は家財です。建物に比べれば金額は小さいですが、とはいえ生活用品が全て失われ、かつそれを新たに揃えるとなると大変な出費となります。そこで持ち家世帯、そして賃貸世帯であっても、火災保険は暮らしに欠かせない非常用グッズなのです。

 

火災保険はさらに、風水害などの自然災害や、偶然な事故による損害も補償します。これらによって所有する家財が損害を受けたときに補償を受けられれば、暮らしに受ける大きな経済的ダメージを緩和することができます。

 

 また、自転車事故やマンションの漏水事故など、日常生活上で第三者に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負うことになれば、家計には深刻なダメージが及びます。こうしたときの損害をカバーする「個人賠償責任保険」、及び住宅のオーナーに火災などで一定の損害を与え、賃貸借上の原状回復義務を求められた場合の「借家人賠償責任保険」です。

 

 この2つの補償が火災保険にセットされたものが、一般的な賃貸世帯の火災保険です。「家財保険」と呼ばれることもあります。

 

契約時に勧められたものに入らなくてもよい

 

 冒頭で述べたように、賃貸借契約時に火災保険を契約する方が多いでしょう。募集図面などに「当社指定の火災保険加入のこと」などと記載され、「指定の保険の契約は義務」と考えがちです。しかし、賃貸借契約と抱き合せて保険契約を求めることは、保険業法に抵触する行為であり、加入は義務ではありません。賃貸借契約時に同時契約してもいいし、あるいは別のところで加入してもよいのです。

 

 賃貸世帯が契約している火災保険は、最近は少額短期保険が多くなっています。少額短期保険とは、金融庁の監督傘下にある事業規模の小さな保険会社のこと。その商品は「ミニ保険」と言われることもあり、損害保険契約は最長2年、かつ保険金額は1000万円が上限と少なめ。少額短期保険会社99社のうち、半数近くが賃貸世帯向け火災保険を扱っています(2018年12月3日現在)。

 

 各会社により補償内容は若干異なりますが、賃貸世帯が勧められる火災保険は、以下のようなタイプが一般的。一定の補償を束ねたパッケージタイプで、家財の保険金額はプランから選択できます。地震保険はセットできません。補償は家財・賠償いずれも1000万円までが上限です(賠償は示談交渉サービスなし)。

 

■家財の火災保険(少額短期保険)の例

 

補償プラン

A

B

C

D

 


家財の保険金額

補償内容:
火災・落雷・破裂・爆発/
風災・ひょう災・雪災/
水濡れ/水災/物体飛来・衝突/
暴力・破壊行為/盗難/
各種費用保険金

300万円

500万円

700万円

900万円

 
 

個人賠償保険金・借家人賠償保険金
の保険金額

1事故1000万円限度
(免責金額5000万円)

 

一時払保険料(保険期間2年)

1万円

1万3000円

1万6000円

1万9000円

 

 

家財の金額は“身の丈”でOK

 

 契約時に各プランを検討せず、提示されたまま契約する方が多いかもしれません。ですが、一口に賃貸世帯と言っても、年齢の若い一人暮らしの方もいれば、家族の多い世帯もいます。どのような暮らしぶりかはそれぞれで、所有する家財も異なります。そのため、どの家財金額が適切かは、個々の世帯によって変わってきます。

 

 生命保険と異なり、災害等で生じた家財の損害は、被災時に「幾らぐらいの何が損害を受けたか」を自ら書面で申告して保険金を請求するのが基本です。ですから、実態からかけ離れた保険金額で契約しても無駄が生じますし、少な過ぎても役に立ちません。

 

 損保各社は、保険金額を設定するときの目安として、世帯構成と世帯主の年齢をもとにした家財の「簡易評価表」を提示しています。会社によって数字は異なりますが、ある会社では親子4人で1500万円程度の家財金額が提示されており、これを過大と感じる人も少なくないようです。そこで少し面倒ですが、自分の所有する家財をざっくりと積算するのが、現実に近い家財の保険金額になると思います。

 

個人賠償責任保険の保険金額に要注意

 

 もう1つのポイントは、個人賠償責任保険の保険金額です。自転車事故で他人に障害を負わせ、億レベルの賠償命令が出たり、自宅マンションで深刻な漏水騒ぎを起こして数千万円の賠償金を負担したりするケースも実際に起きています。事故は事前に予測ができず、負担する賠償金もまたしかり。

 

 よって個人賠償責任保険の保険金額は、できるだけ高く設定しておく必要があります。提示されたそのままに、確認せずに契約してしまうと、「こんなはずでは」といったことにもなりかねません。さらに、加害者になったとき、被害者との間に保険会社が入ってくれる「示談交渉サービス」があるかないかは大きな差。しっかり確認すべきでしょう。

 

保険をカスタマイズすると…

 

 自分の身の丈に合う保険金額で、かつ深刻な損害にもしっかり対応できるようにしておきたいなら、自分に合った形で保険をカスタマイズするのが最もリーズナブル。以下は、損保会社でカスタマイズした賃貸世帯の火災保険の例です。

 

■賃貸世帯の火災保険証券の例(表)

注:東京海上日動火災保険の保険証券を参考に概略を作成

 

 この契約は、2年ではなく、保険料が抑えられる5年で契約、保険料を1年ごとに支払う契約にしています。火災保険金額400万円の保険料7,380円(賠償特約付き)、地震保険金額200万円の4,060円のセットで、年間保険料は年1万1440円です。

 

■賃貸世帯の火災保険証券の例(裏)

注:東京海上日動火災保険の保険証券を参考に概略を作成

 

 この世帯は世帯主が50歳で、大人2人が住む世帯です。大手損保の提示する簡易評価表では、家財金額のめやすは1580万円です。しかしこの世帯では自ら家財を積算した結果、400万円で十分との結論でした。地震保険はその半分の200万円設定しています。

 

 補償内容は、火災をはじめ、風水害、盗難、水濡れ、地震など、破損等を除く損害を幅広くカバー。高層マンションの27階なので水災補償は不要ですが、パッケージなので水災補償を外すことはできない点が唯一残念なところです。

 

 一方で、個人賠償責任保険は国内無制限、示談交渉付きでほぼ問題なし。これなら、ほかで賠償保険を確保する必要はありません。借家人賠償責任保険は1000万円です。

 

 賃貸世帯も、保険料だけでなく補償条件もしっかり確認して、本当に困ったときに役立つリーズナブルな保険を選択しましょう。

執筆者情報
清水香(Kaori Shimizu)

清水香(Kaori Shimizu)
生活設計塾クルー  生活設計塾クルー・取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)/社会福祉士/自由が丘産能短期大学講師

1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。財務省“地震保険制度に関するプロジェクトチーム”委員


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