コラムこの保険金受取人は誰だ! ― 認知症編(上)

公開日:2019-02-26
「この保険金受取人は誰だ!」のイメージ画像

話題のドラマ(時々ゴシップ)でつかむ~『保険』のカラクリ(第4回)

これまで死亡保険金の請求にまつわる話題を紹介してきましたが、今回は給付金の請求についてお話します。「保険金でなく給付金??」という方もいらっしゃるかもしれませんが、2つの違いは後ほど説明しますので、まずは妄想劇場にご注目ください。

舞台にするドラマは昨年10月から放映された『大失恋~僕を忘れる君と』(TBS系列)です。若年性アルツハイマーにおかされた女医の主人公・北澤尚(戸田恵梨香さん)と、自分を忘れていく恋人の尚を明るく健気に支える元小説家・間宮真司(ムロツヨシさん)の10年にわたる愛の奇跡を描いた純愛ラブストーリーです。ネット上でも回を重ねるごとに話題になり、毎回泣けて、いろいろと考えさせられるドラマでした。

いつもの「保険のカラクリ相談所」に、真司が尚の保険の給付金請求について相談にいらっしゃいましたよ。

真司

真司

 
 

尚ちゃんが入院したので、入院給付金を請求しに来ました。

 

(でた!尚ちゃん!? 結婚してからも妻のことを「尚ちゃん」と呼ぶ真司、所長的に最高にキュンポイントです。この2人のラブラブっぷりがますます涙を誘うんです)

 

所長

所長

 
 

はい、すぐ給付金請求書をお作りしますね。尚さんにご署名いただくことはできますか?

真司

真司

 
 

いいえ、尚ちゃんもう鉛筆すら思い出せない状態なんです。なので難しいと思います。尚ちゃんが書けないと請求できませんか?

 

所長

所長

 
 

はい。請求書は原則、保険の対象となる被保険者の尚さんでないと記入できません。実際に、尚さんが記入するところしかないんですよ。

 

保険は誰のためのもの!?

真司

真司

 
 

えー!でもこの保険、実は僕が契約者なんです。僕は売れない小説家だけど、万が一の備えはちゃんとしようと思って、契約者は僕、被保険者は尚ちゃんで入ったんです。保険料も僕が払っています。

 

(真司さん、偉い!)

 

所長

所長

 
 

そうですね。契約者はその保険の持ち主なんですから、給付金を請求できると考えるのは当然かもしれません。ですが、請求に関しては被保険者からの請求でなければ保険会社はお支払いしません。

 

そもそも保険とは、いざというときに被保険者が金銭面の保障(補償)を受けられるようにと掛けられているものです。学資保険や個人年金保険、死亡保険は被保険者=受取人にはならない例もありますが、おおむね保険は被保険者が給付金の受取人になっています。

 

この被保険者が受け取るべきお金を、たとえ契約者であろうと請求して受け取ってしまったら、それこそ保険金詐欺になってしまいます。

 

真司

真司

 
 

そ、そんな~。だけど、今回は入院給付金の請求だけど、最近は介護保険とか、その名も認知症保険なんていうのも流行ってるって聞きますよ! じゃあ、被保険者が介護状態だった場合、それらの保険は誰も請求できないってことになりませんか!?

 

知っておいてほしい「指定代理請求制度」


所長

所長

 
 

そうなんです、真司さん! だからこそ知っておいてほしい制度があるんです。

真司さんは「指定代理請求制度」というものをご存知ですか?

 

真司

真司

 
 

れはなんですか?

所長

所長

 
 

指定代理請求制度とは、被保険者、この場合尚さんが受取人となる保険金、給付金などについて、尚さんが請求できない「特別な事情」があるときは、あらかじめ指定された代理人が尚さんに代わって、保険金や給付金などを請求できる制度です。

 

真司

真司

 
 

はぁ。つまりその制度を使えば僕でも請求ができるということですか?

 

所長

所長

 
 

はい、そうなんです。なのでご安心くださいね(ニッコリ)

 

真司

真司

 
 

なぁんだ。先に言ってくださいよ~

(だって読者の皆さんを引き付けたかったんだもーん、と計算していた所長なのでした)

ここで少し語句の説明を。ここから先、保険用語が出てくるので面倒くさかったら飛ばして妄想劇場に戻ってくださいね。(笑)

保険金と給付金の違いとは

まずは冒頭で触れました保険金と給付金の違いです。保険法では、保険契約で死亡時や生存時、傷害疾病時などに支払われるお金のことをまとめて保険給付と定めています。それを保険会社は保険金と給付金とわけています。

その方が分かりやすくないでしょうか? え、かえって混乱するって(汗)
では分かるように説明いたします。

保険金は、被保険者が死亡・高度障害状態のときや満期まで生存したときなどに受取人に支払われるお金のことです。死亡保険金や高度障害保険金、満期保険金などがあります

給付金は、被保険者が入院したとき、手術をしたときなどに受取人に支払われるお金のことをいいます。入院給付金や手術給付金などがあります。

上の説明でさらっと「受取人」と言ってしまいましたが、保険金や給付金によってその受取人が違うってことがポイントなんです! なぜかというとそれぞれの保険金、給付金の請求は受取人がしないといけないから。スムーズに保険金や給付金を受け取るためにも、受取人は誰になるのかは是非、知ってもらいたい情報です。

下の表の通り死亡保険金以外は、全て被保険者(=保険の対象となる人)が受取人、すなわち請求人です。
唯一、死亡保険金は被保険者でなく、死亡保険金受取人が請求人です。だって亡くなってしまったら請求したくてもできませんものね。ですから死亡保険は契約申込時に死亡保険金の受取人を指定します。

■保険金と給付金の受取人の違い

区分

種類

受 取 人

保険金

・死亡保険金

死亡保険金受取人

・高度障害保険金

被保険者


(=その人の生死・病気・ケガなどが保険の対象となっている人)

・満期保険金

・特定疾病保険金* など

給付金

・入院給付金

・手術給付金

・特定疾病給付金*

・先進医療給付金 など

*支払事由が同じでも、主契約(契約の本体)では「保険金」、特約では「給付金」と呼び分ける

 

指定代理請求を保険会社が認める「特別な事情」の例

ではここから妄想劇場に戻ります。

真司

真司

 
 

それで、その指定代理請求とは何ですか?

 

所長

所長

 
 

まず、被保険者が請求できない「特別な事情」ですが、

例えばある保険会社では、

  • (1) 保険金等の請求を行う意思表示が困難であると当会社が認めた場合
  • (2) 悪性新生物等の当会社が認める傷病名の告知を受けていない場合
  • (3) その他(1)または(2)に準じた状態であると当会社が認めた場合

とあり、他の保険会社もこれとほぼ似たような条件を「特別な事情」としています。

 

真司

真司

 
 

尚ちゃんは若年性アルツハイマーだから(1)に当たるわけですね。

 

所長

所長

 
 

そうです。一般的には加入している保険契約に「指定代理請求特約」を付加して、指定代理請求人を指定します。「特約」となっていますが保険料は不要です。

 

真司

真司

 
 

え!そんな特約を付けてたっけなー?

 

所長

所長

 
 

特約ではなく、契約時に死亡保険金受取人と併せて指定代理請求人を指定する生命保険会社もありますよ。というか、今はそれがほとんどですね。

 

指定代理請求特約は2004年頃から、各保険会社が取り入れていった制度です。同時に、契約時の申込書に指定代理請求人を指定するための記入欄もでき、最初から指定できるようにもなりました。04年以降に加入した保険でしたら、すでに指定している確率が高いですよ。

 

真司

真司

 
 

あ、じゃあ大丈夫だ。

 

所長

所長

 
 

保険証券を見ればすぐに分かります。大体、死亡保険金受取人の下あたりに、指定代理請求人が印字されているはずです。もし付いていなくても、契約の途中で被保険者の同意を得て、指定代理請求人を指定できますし、すでに指定してあっても、これも被保険者の同意を得て変更することもできます

 

真司

真司

 
 

尚ちゃんの保険に指定代理請求特約がちゃんと付いていたとして、それって誰になってるんだろう?

 

所長

所長

 
 

真司さん。それが今回のメーンテーマなのですが、少々、ここまで時間が経ってしまいましたから、指定代理請求人になれる人については、休憩を挟んで紹介します。読者の皆さんは、「認知症編(下)」をご覧ください。

  

構成/真弓重孝、イラスト/井川純一=みんかぶ編集部

執筆者情報
谷沢鮎美(Ayumi Tanizawa)

谷沢鮎美(Ayumi Tanizawa)
  学習院大学卒業後、大手生命保険会社に入社。入社4年目で、生命保険の販売上位成績者で構成する「MDRT」に入会する(当時、社内の最年少・最短期間を記録)。
2018年にキャリア形成のために独立、保険営業の第一線に立つ傍ら、自身の経験を活かした女性向けのビジネススキル、ワークライフバランス研修、マネープランセミナーなどの講師を務める。また司会やナレーション業と活動の場を広げている。ファイナンシャルプランナー2級。


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