コラム​​​​​​​高齢時のための保険、高齢だから利用できない?

公開日:2019-06-13

保険を選ぶときに「知っ得」話~第17回

 

 

「高齢になったときの備え」として、生命保険や医療保険に加入している人は多いでしょう。ところが高齢になったからこそ、保険を使えないトラブルが生じ得ることをご存じでしょうか。

 

自分が高齢になったとき、何が起こるかは予測できません。だからこそ、留意しておくべき点があります。これが今回の知っ得ポイントです。


「夫も妻も高齢で保障内容を理解できない」

 

生命保険協会は、消費者の声を把握し、生命保険事業に対する正しい理解を促進することを目的に、消費者行政・団体と「生命保険意見交換会」を開催しています。2013年に公表された「超高齢社会における生命保険サービスについて~高齢者対応の向上~」には、意見交換会で出された高齢者に関する事項についての、様々な意見を見ることができます。

 

■「生命保険意見交換会」で出された意見

 

項目

 

具体的な意見・要望・質問等

 契約サービスに
 関する高齢者
 対応全般

 •夫が高齢で内容を理解できなくなり、
 妻も約款・保険証券を見ても内容を理解できない

 •一人暮らしや認知症のの高齢者が契約内容や
 契約したこと自体を忘れてしまう

 指定代理
 請求制度

 •指定代理請求制度について、知らない契約者が多い

 •指定代理請求人の手続きがされず、被保険者から
  の請求ができない

 請求手続き

 ・保険金等の受け取りで、成年後見人をたてる以外の
  方法は検討しているか

 ・身寄りのない人が入院後、意識がなくなり本人が
   保険金受け取り手続きができない場合

 ・保険金受取人が認知症等の場合、成年後見人の
  選定をするのが煩雑で時間がかかる

 解約手続き

 •認知症の父の保険を解約したいが、契約者本人で
  ないと解約できないといわれた

注:「超高齢社会における生命保険サービスについて~高齢者対応の向上~」(生命保険協会2013年6月)より抜粋

 

高齢になると、本人が契約内容を忘却したり、理解すること自体が難しい現状があったりすること分かります。また医療保険や、高度障害保険金といった生前に受け取る保険は、本人が保険金を請求しますが、本人の状態によっては、請求が難しくなることもあります。

 

家族が代理で受け取れる「指定代理請求人」の制度を知らず、指定をしていないケースもあるようです。一方、保険の満期金を受け取ったり、保険金の受取人を変更したり、解約できるのは契約者本人です。他の人が代理できず、困った事態が生じることもあるのです。

 

このように、高齢化に伴い、保険周辺で様々な問題が生じています。25年には、認知症の患者が700万人を超えるといわれる中、誰でも困った事態に陥る可能性があります。高い保険料を負担して老後に備えたつもりでも、いざというときに請求や適切な活用ができないとすれば、誰のための、何のための保険なのか分かりません。

 

「指定代理請求人」の指定を忘れずに

 

死亡に関する保険金は、保険の対象となる被保険者以外の人が受け取ります。確実に保険金を請求してもらうには、保険金受取人、あるいは法定相続人に保険契約がある旨を共有することが大切です。いくら本人が「お金を残してあげたい」と思って契約したとしても、契約があることを受取人が知らなければ、請求はできないからです。

 

一方、入院給付金など生前に支払われる保険金を受け取るのは被保険者自身です。しかし、本人が病気やけがで昏睡状態や寝たきり、あるいは認知症になっていたら、本人の保険金請求は難しくなります。このような事情で本人が保険金請求できないときのために、あらかじめ指定した一定の人が代理で請求できる「指定代理請求制度」があります。1992年に始まり、現在ではたいていの生保会社、及び共済団体でこの制度があります。請求ルールや指定できる親族の範囲、保険など詳細は保険会社で異なりますが、いずれも保険料は不要で、92年以前の契約でも手続きをすれば利用できます。

 

代理で請求できるのは、被保険者が受取人となっている保険金や給付金。例えば入院給付金や高度障害保険金、特定疾病保険金、リビング・ニーズ給付金や介護保険金などです。この問題が起きるのは、高齢者に限らないので、若い人でも契約時には必ず指定しておきたいところです。

 

指定できる人は、
被保険者と同居、または生計を一にしている
「戸籍上の配偶者」「3親等内の親族」、「直系血族」
――など一定の親族です。
 

内縁関係や同性のパートナーでも所定の要件を満たせば指定できる場合があります。契約時に指定していなくても、契約途中で指定できます。死亡や離婚等で状況が変化したら、変更もできます。

 

被保険者が自ら指定するのでなく、生保会社があらかじめ設定した被保険者と一定の関係者の中で、かつ保険会社が約款で規定した順序で、要件を満たした場合に被保険者の代理人として請求できるようにしているケースもあります。指定していなくても一定の場合については請求を可能にしているケースもあります。自分の契約がどうなっているのか、確認しておきましょう。

 

元気なうちに“卒業”がおススメ

 

もし、指定請求代理人を指定していないとか、他に代理請求できる仕組みがなく請求できない場合、成年後見人を立てて手続きすることになります。全体の4%と少ないものの、保険金を受け取るために後見開始の申し立てをしたケースも実際にあります(「成年後見関係事件の概況平成30年1月~12月」最高裁判所事務総局家庭局)

 

保険金の請求でなく、保険の満期金受取や解約、受取人の変更などの契約変更手続きができるのは、本人のみ。毎月、高い保険料を支払っているのに、本人の意思確認ができず、支払いを止めることができない、あるいは満期が来たのに満期金を受け取れないなどの事態は、家族にとって厳しいものですが、成年後見人を立てるほかに手段はありません。

 

ところが、成年後見制度の利用は、なかなかハードルが高めです。例えば法定後見制度を利用するには、書類を揃えて家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てることになります。専任されるまでには4カ月ほどの期間が掛かり、さらに費用負担も発生します。そのため成年後見制度の利用率は、判断能力が不十分と推計される人の2%程度と、ほとんど普及していません(「成年後見制度の現状と課題」地域後見推進プロジェクト 2017年現在)。

 

長く続く保険こそ安心と感じる方が多いでしょう。しかし本人がコントロールできなくなった生命保険は、その後家族に大変な手間と労力をかけることになりかねません。老後も長く続く終身などの保険は、老化によって、自分で保険と向き合うのが難しくなる可能性にも思いを致す必要があるのです。

 

元気なうちに、加入している保険がそもそも「必要なのか」を検証しましょう。必要性が低いなら、元気なうちに“卒業”するのも1つ。契約がなければ、この問題が起きることはないのです。きれいな「老い支度」には「保険じまい」も入ります。これも、人生100年を快適に過ごすあり方のひとつではないでしょうか。

執筆者情報
清水香(Kaori Shimizu)

清水香(Kaori Shimizu)
生活設計塾クルー  生活設計塾クルー・取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)/社会福祉士/自由が丘産能短期大学講師

1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。財務省“地震保険制度に関するプロジェクトチーム”委員


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