コラム千葉の台風被害から考える――10月から火災保険料が値上げ、それでも保険が必要なワケ

公開日:2019-10-03

保険を選ぶときに「知っ得」話~第25

 

 

10月に入り、消費税率アップと同じタイミングで、大手損保4社の火災保険が改定されています。10月1日以降に始まる火災保険は、これまでと保険料が変わり、値上がりとなる地域が少なくありません(火災保険料は保険金の請求発生率で地域差がある)。

 

損害保険料には消費税が掛からないので、10月の消費税率アップは今回の改定とは無関係です。では改定された理由とは? それは自然災害の増加等で、近年の保険金の支払いが増えたためです。

 

 

保険は「収支相等の原則」と呼び、私たちの支払った保険料と支払われる保険金(諸経費を含む)が原則、等しくなるように設計されています。そのため、現在の保険料の水準で保険金を賄えなくなれば、損保会社は保険料を上げざるを得ません。近年の自然災害による損害保険金の増加を受け、火災保険料は2015年10月に一度改定されています。

 

次いで今回の改定がありました。実はこの改定は2016年度までの保険金の支払い実績に基づいて保険料が算出されています。2018年は各地で災害が頻発し、保険金の支払額は1兆5000億円超と、過去に類のない水準となりました(上のグラフ)。

 

しかし、先に触れたように、今回の改定は2017年以降の支払い状況が加味されていません。ということは、再度の保険料(料率)の改定がいずれ行われることになりそうです。

 

相次ぐ負担増。それでも、火災保険に入っていなきゃダメでしょうか? これが今回の知っ得ポイントです。

 

保険料が引き上げられるのは「被災するリスクが上がったから」

 

そもそも火災保険料がどう決まるのか、サクッと説明しましょう。

 

保険料は、保険金額に保険の原価である「保険料率」を掛けて計算されます。この保険料率は、事故の際に保険金に充てられる「純保険料率」と、保険会社の必要経費に充てられる「付加保険料率」で構成されます。

 

 

各保険会社は、保険料率を自由に決めることができますが、純保険料率については業界団体から「参考純率」という参考値が提供されています。この参考純率が、自然災害や水濡れ損害による保険金支払いの増加によって、2018年6月に全国平均5.5%引き上げられました。これを受けて今回の大手損保4社による保険料率改定が行われたのです。

 

これはすなわち、私たちが自然災害等で被災するリスクが上がった、ということにほかなりません。

 

全壊世帯でも公的な支援金なしだった2018年の「台風21号」

 

自然災害で自宅や生活用家財が被害を受けると、数千万円レベルの経済的ダメージを負う可能性があります。住宅修繕がスムーズにいかずに、当面の間、思わぬ出費を強いられるかもしれません。住宅ローン返済中に被災して住居費の二重負担が発生することになれば、さらに厳しい状況に追い込まれてしまう可能性もあるでしょう。

 

留意しなくてはならないのは、自然災害によって住宅等に思わぬ被害を受け、後の生活再建が厳しくなるこのような場合でも、公的支援が極めて限られる日本の現実です。

 

我が国では、住宅の損壊程度でどのような公的支援を受けられるかがおおむね決まってきます。主たる制度は、自然災害による被害で住宅全壊や大規模な損壊を受けたときに最大で300万円の支援金が給付される「被災者生活再建支援制度」です。ただしこの制度が適用されるのは、原則、一市町村での住宅「全壊」が10棟以上となった場合です(第2回「災害で被災したとき、公的支援は期待できる?」参照)。

 

前述したように、2018年は各地で風水害が相次ぎました。とりわけ大きな被害を及ぼしたのが台風21号で、同台風による被災世帯がもっとも多かったのが大阪府です。しかし、この災害で被災した府内の世帯の99.9%は、「半壊」または「一部損壊」と認定されたため、支援金の対象になりませんでした。

 

さらに府内全体では全壊となった家屋は30棟ありましたが、市町村単位で10棟以上の全壊被害は生じなかったことから、全壊した30棟は大きな損害が出たにもかかわらず支援金を受け取ることができませんでした。

 

■2018年9月の台風21号での大阪府内の被害及び補償の状況

住家被害(棟数)
全壊30/半壊445/
一部損壊6万5932
被災者生活再建支援法
が適用された市町村
なし
火災・自動車・新種の各保険
の支払い保険金&件数
保険金総額 約6007億円
支払い件数   42万4435
注:住家被害データは大阪府公表(2018年12月25日時点)
保険金データは日本損害保険協会公表 (2019年3月末現在)
 

千葉県に大きな被害を及ぼした今年の台風15号の支援は?

 

今年は9月の台風15号で、主に千葉県内に大きな被害が生じています。被害の全容はいまだ明らかではありませんが、千葉県防災管理部によれば、住宅の全壊の被害が124棟、半壊が1457棟、一部損壊が2万3158棟となっています(10月1日時点)。

 

これだけの被害が出ていますが、内閣府によれば、被災者生活再建支援法の適用となったのは千葉で3自治体、東京都で2自治体となっています(9月30日時点)。なお、認定された自治体の中には、全壊世帯が10棟未満のところもありますが、自治体の規模を踏まえた算出方法で認定されています。

 

また今回のケースで千葉県では、最終的に支援制度が適用されなかった市町村にも、県独自で国と同等の支援を行う見込みです。一部損壊についても、修理費の2割程度を目安に自治体と国による支援が特例的に行われると発表されています。

 

火災保険・共済の加入率は82%

 

様々なものが失われ資金需要が増す被災時に、たとえ300万円でも支援金があるかないかは大違い。しかし、一世帯の被害ではなく被害規模で適用が決まる制度であるため、最大級の損害を受けても、最低限の公的支援すら受けられないことがあるのです。

 

千葉県のような特例措置があったとしても、全体でみれば貯蓄で賄えないレベルの経済的被害を受ける可能性があり、かつ公的支援は限られている。とになると、打てる手は保険ぐらいしかありません。火災保険は今や「自然災害保険」。誰もが被災と無縁でなくなった今、たとえ負担増でも、家計にとって優先度の高い保険になっているのです。

 

2018年台風21号で大きな被害を受けた大阪府の被災世帯には、5422億円もの火災保険金が支払われました(上の表の金額は火災保険以外の支払いも含む)。支援金が給付されないなか、支払われた保険金は、その後の暮らしの心強い支えになったのではないでしょうか。

 

しかし持ち家世帯の火災保険・共済の加入率は82%(内閣府試算)で、加入していない世帯もあるようです。実際に、住宅ローンに付帯した火災保険が満期を迎えたのち、保険に加入していない、あるいは以前から加入していないといったケースを見掛けます。

 

やや高齢世帯に多いように感じますが、年金暮らし世帯は被災後の生活再建が困難になりがち。別居の両親がいる方は、適切な火災保険に加入しているかどうか、一度声がけをしてみてはいかがでしょうか。

 

火災保険は「火」のみならず「水」「風」の損害も補償

 

また、火災保険は契約により補償内容が異なります。台風の「風」による損害は「風災」、洪水や浸水など「水」による損害は「水災」の補償があれば保険金が支払われます。ただし、契約している火災保険に、これらの補償が必ずセットされているとは限らないので、確認が必要です。実際、水災に備える補償を確保している持ち家世帯は先の試算では66%に過ぎません。

 

自分の契約火災保険に、必要な補償が確保されていなかったら、適切な保険に乗り換えることも検討しましょう。火災保険はパッケージ型の商品が多く、契約の途中から個別の補償を付加できないことが多いからです(地震保険を除く)。

 

また、火災保険料は都道府県と建物によって異なるので、今回の改定で上がるところもあれば下がるところもあります。最近は、築年数や設備により割引が適用されるなど、自動車保険同様、個々の状況によりかなり細分化しています。改めて補償内容や条件等を見直すと、保険料を抑えられる可能性もあるので、この機会に確認してみましょう。

執筆者情報
清水香(Kaori Shimizu)

清水香(Kaori Shimizu)
生活設計塾クルー  生活設計塾クルー・取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)/社会福祉士/自由が丘産能短期大学講師

1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。財務省“地震保険制度に関するプロジェクトチーム”委員


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