コラム台風19号で受けた水の損害、保険金を受け取るイロハとは

公開日:2019-10-24

保険を選ぶときに「知っ得」話~第27

 

台風19号で被災された方に、心よりお見舞い申し上げます。

 

未だ被害の全容は明らかになってはいませんが、内閣府によれば10月22日現在、14都県391市区町村に災害救助法が適用されるという前代未聞の事態にあります。今回の19号は記録的大雨により広い範囲で河川の氾濫などの水による被害が発生したためで、多くの家屋(住家)が損害を受けました。

 

総務省消防庁によれば10月23日時点で判明している住家の被害は、全壊が222棟、半壊が2153棟、一部損壊が3427棟、床上浸水が2万9383棟、床下浸水が3万3402棟となっています。

 

被害から1週間以上たち、今は片付けや応急の補修など被害の復旧に取り組まれている被災者の方にとって、その次に必要になるのが生活再建、つまりお金の問題です。住宅修繕や改築、新築、そして家財の取得、その他もろもろと大変なお金が必要になります。

 

生活再建は今後のお金の見通しを付けることと表裏一体の問題になります。そこで役立つのが火災保険です。

 

水害による被害は、火災保険からカバーを受けられる可能性が

 

洪水や高潮による床上浸水、土砂崩れなど水害による住宅や家財の損害は、火災保険の「水災」として補償を受けることが可能です。火災保険のほか、生活協同組合等が扱う火災共済でも、水害による損害をカバーできるものがあります。契約している火災保険に水災補償を付けているのか、チェックしてみてください。

 

水災補償を受けられる人で住宅や家財に損害を受けた場合は、早めに契約先の保険会社や共済団体に連絡し、速やかに保険金請求手続きをしましょう。今回の知っ得ポイントは、水災にまつわる保険金請求のイロハです。

 

できる限り早めの連絡を保険会社に

 

ある損保会社の調査担当者によれば、水害の損害状況を確認するときは、最速で連絡がきた当日中、遅くても2週間以内に、契約者の自宅に訪問するのが基本といいます。訪問時には、まず契約内容について保険会社の担当者から契約者に説明が行われ、その後担当者と一緒に被害状況を確認、保険金の算定を行います。契約者は納得できたら、保険金の請求手続きに入ります。

 

保険会社への連絡が速やかなほど、その分保険金も早く支払われます。被災すると、様々なことに取り組まなくてはなりませんが、保険会社の連絡を可能な限り早めに行えば、その後の進展もスムーズになります。あわせて私たちが火災保険の契約内容を把握していれば、当日の話し合いも円滑に進みます。

 

被害状況を写真に撮っておこう

 

状況によっては、保険会社にすぐ連絡できないこともあるでしょう。そもそも水害が補償されるのを知らなかったり、気づかなかったりした場合、しばらく後に連絡をすることになるかもしれません。しかし、その時に既に修理を済ませていて保険会社が被害状況を確認できないと、契約者は保険金の受け取りに苦慮することになってしまいます。

 

こんなとき、被害状況の写真があれば証拠になります。水害の場合、水に浸かった場所の水位がわかるように撮るのがポイントということです。写真があれば連絡が遅くなった場合でも、対応が可能になるということです。

 

水害では保険会社が独自の損害調査を行うことから、市町村長が住宅の損害程度を証明する「罹災証明書」は不要です(一部の保険会社・共済団体で罹災証明書を判定基準とする場合もあります)。

 

なお罹災証明書は公的な支援を受ける際に必要になります。先の写真は、罹災証明書の交付を受ける際に役立つこともあるため、被災後は可能な限り被害状況を写真に撮っておくとよいでしょう。

 

「火災保険で無料修理」の住宅業者・自称コンサルタントには警戒を!

 

被災後に「火災保険で無料修理ができる」「保険金の請求を手伝う」という業者が現れたら警戒を。保険金請求代行の報酬金として受け取った保険金の4割など法外な請求をする、事実はそうでないのに、あたかも自然災害で被害を受けたとウソの保険金請求を唆すなどのトラブルが各地で続発しています。国民生活センターには2018年、10年前の22倍にも及ぶ相談が寄せられ、その7割超が60代以上と高齢者が狙い撃ちされています。

 

「無料修理」以前に、保険金支払いの可否を判断するのは業者ではなく、そもそも保険会社です。保険金の請求も難しいわけではなく、自分でできます。こうした業者が現れても安易に契約を結ぶことなく、まずは保険会社に連絡を入れましょう。

 

詳しくは第9回「保険金を使って住宅修理」は要注意をご覧ください。

 

火災保険証券が見つからない場合でも大丈夫

 

災害で火災保険証券が行方不明になってしまっても、保険の効力は失われません契約先や契約内容がわかるなら、契約先に連絡すれば請求手続きを進めることができます。

 

しかし、住宅流失や床上浸水によって契約先がわからない事態になれば、連絡すらできません。こうした場合に備え、各業界団体が契約を探し出してくれる窓口を設けています。災害救助法適用地域契約者が対象で、本人のほか、一定の家族が利用できます

 

■被災後、保険契約の有無や契約先がわからないときは

契約
団体/制度
問い合わせ先
損害保険会社の取り扱う
各種損害保険
一般社団法人 日本損害保険協会
「自然災害損保契約照会制度」
0120-501331
受付は9:15~17:00
土・日・祝日および
12月30日から1月4日までを除く
生命保険会社の取り扱う
各種生命保険
一般社団法人 生命保険協会
「災害地域生保契約照会制度」
0120-001731
受付は9:00~17:00
土・日・祝日、年末年始を除く
JA共済、
こくみん共済co-op、
co-op共済、
都道府県民共済の各種共済
一般社団法人 日本共済協会
「災害時共済契約照会制度」
0570-023140
受付は9:00~17:00
土・日・祝日、年末年始を除く

 

ただ、契約を見つけ出すには少し時間もかかり、日本損害保険協会の「自然災害損保契約照会制度」では、2週間ほど必要なようです。その間、お金がどうなるのか、心配しながら過ごすのはつらいもの。普段から、契約を取り扱う代理店さんと仲良くしておく、非常用持ち出し袋に保険証券のコピーを入れておくなど、非常事態で困らない対策を講じておきましょう。

 

水害の補償は「非常用グッズ」、事前に補償内容の確認を

 

保険はいわば「非常用グッズ」。事前の適切な対策がより重要です。

 

水害では、しばしば深刻な被害が生じます。たとえば床上浸水になれば、たとえ1メートル未満の浸水でも、家具や電化製品、畳などの建具にいたるまで、使用不能になることが多いでしょう。これらの修理や買い直し、清掃負担は何百万円超になることもあります。

 

しかし、1メートル未満の浸水は、罹災証明書では「半壊」と認定されます。キッチンやトイレ、浴室など、住宅機能として欠かせない部分の修理を受けられる災害救助法の「住宅の応急修理」の対象ですが、その金額は約60万円までで収入制限もあります。被災者生活再建支援制度による最大300万円の支援金の対象には、そもそもなっていません(第2回「災害で被災したとき、公的支援は期待できる?」参照)。

 

■住宅に関わる公的支援と火災保険(2019年10月現在)

住宅の損壊具合
全壊
大規模半壊
半壊
一部損壊
 住宅の応急修理
 (災害救助法)
 △ *
 被災者生活
 再建支援制度
 火災保険
注: *は収入制限あり。 
火災保険では「全壊・大規模半壊・半壊・一部損壊」という認定はしないが、
これらに該当する損害のいずれでも補償対象になるとの意。
 

深刻な浸水被害でも公的支援は限定的で、生活再建費用は手元の貯蓄を総動員しても困難なことが多いでしょう。そこで欠かせないのが、小さな被害から住宅喪失まで丸ごとカバーできる火災保険の水害補償です。

 

想定を超える被害を受けることもある昨今、優先的な検討が必要になっています。今回、川崎市や世田谷区の高層マンションでトイレが流れなくなるなど排水が困難になる状態が生じました。

 

台風による大雨が原因で排水不能となり、オーバーフローで住宅内や家財に浸水による損害が出ることも考えられます。この場合、「水災」として補償を受けられます。都市部のマンション高層階でも水害と無関係とは、もはや言い切れないのです。

 

保険金は再取得価額で設定、「古い家は無価値」ではない

 

火災保険は、失った住宅や家財を再取得あるいは修繕し、新たな暮らしを立てていくためにあります。最近の火災保険は、住宅の築年数に関わらず再取得に必要な金額(再調達価額・再取得価額)を保険金額として設定するのが主流です。再取得し得る適切な火災保険金額を設定していれば、住宅を失う最悪の事態でも、まとまったお金を受け取れます。

 

「古い家で価値もないから、保険をかけても仕方ない」と耳にすることがありますが、生活の基盤である住宅や家財を失い、新たにそれらを再取得するとなれば、かなりのお金が必要になります。失った住宅が古かろうと新しかろうと、新たな暮らしの立て直しでお金がかかることに変わりはありません。

 

しかし、今コラムで何度か指摘しましたが、内閣府の調査によれば、水害をカバーする保険等に加入している持ち家世帯は66%に過ぎません。水害補償があっても、住宅再建費用、修理費の全額をカバーできないものもあります。水害補償の有無、および水害で受け取れる最大の保険金がいくらになるかについて、事前確認が欠かせません。

 

最後に、前回の記事「台風で倒壊、市原のゴルフ練習場の補償はどうなる?」でも触れましたが、これから火災保険で水災も対象にしようと考えている方に、保険・共済の最大補償額の例を記しておきます。

 

■火災保険・火災共済の最大補償(保障)額の例

商品名
(取扱先)
補償(保障)内容/最大保険(共済)金
・火災
・落雷
・破裂
・爆発
・風災
・ひょう災
・雪災
・水災
・地震
・噴火
・津波
・年間保険料
・掛金
じぶんでえらべる火災保険
(セゾン自動車火災)
保険期間1年
2000万円
2000万円
1000万円
6万0400円*
住まいる共済
(大型タイプ・こくみん共済co-op)
共済期間1年
同上
1550万円
600万円
4万7000円
住まいる共済
(標準タイプ・こくみん共済co-op)
共済期間1年
同上
1150万円
400万円
3万6000円
火災共済
(こくみん共済co-op)
共済期間1年
同上
150万円
なし
1万4000円
新型火災共済
(地震特約付 都民共済)
共済期間1年
同上
600万円
400万円
3万0400円

注:所在地:東京都 新築木造住宅(H構造・2000万円)2019年10月現在。 *うち3万5000円が地震保険料

執筆者情報
清水香(Kaori Shimizu)

清水香(Kaori Shimizu)
生活設計塾クルー  生活設計塾クルー・取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)/社会福祉士/自由が丘産能短期大学講師

1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。財務省“地震保険制度に関するプロジェクトチーム”委員


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