コラム外貨建て生命保険に加入する前と後に知っておくこと

公開日:2019-12-12

保険を選ぶときに「知っ得」話~第30回

 

 

外貨建て保険の苦情が急増しています。

 

生命保険協会によれば、銀行等代理店で発生した苦情件数は、2014年以降、年々増加しており、2018年には2543件に上っています。国民生活センターの消費生活相談のデータベース「PIO-NET」で収集された結果もしかり。

 

近年、外貨建ての生命保険も含めた投資性のある生命保険の相談は年400~600件程度でしたが、2019年は2018年度の同期件数を上回り、増加傾向にあります。

 

■銀行等代理店で発生した外貨建て生命保険の苦情件数

年度
2014
15
16
17
18
苦情件数
922
1239
1665
1888
2543
苦情発生率*
0.12%
0.10%
0.10%
0.09%
0.08%
注:苦情発生率は苦情件数÷期末保有件数

 

生命保険協会の資料によると、銀行等の代理店で販売された外貨建て保険に対する苦情の原因は、7割が「説明不十分」となっています。国民生活センターには、以下のような相談事例が寄せられています。

 

 
元本割れしない商品であることを繰り返し確認し、
定期預金だと思って契約したが、実際は外貨建て生命保険だった
 
 
子どもに生前贈与として毎年お金を渡したいと相談に行ったところ、
生命保険を勧められた。翌年、支払われたお金が少なかったので
尋ねたところ、その時初めて外貨建て生命保険で為替レートの影響を
受けることがわかった
 

出所:金融庁金融審議会「市場ワーキンググループ」令和元年10月23日 「国民生活センター」提出資料

 

外貨建て保険は、円建ての保険にはないリスクがあり、仕組みも複雑な商品で、リスクや手数料について十分な説明が必要です。ところが、そもそも契約者が生命保険であることを認識していない事例が多数見られ、資産運用の知識が十分でなく、またこの商品を望んでいない人までが、加入に至っている現状があるようです。

 

トラブルが相次ぐ外貨建て保険とは、どのような商品? 今回の知っ得ポイントは、外貨建て保険の仕組みと、トラブル対策についてです。

 

日本円で受け取る保険金は「為替次第」で変動する

 

外貨建て保険とは、外国の債券などで運用される保険です。契約者はドル、豪ドルなどの外貨で保険料を払い込み、解約返戻金や保険金も外貨で受け取る仕組みです。円建てでは一般的な終身保険や養老保険、個人年金保険なども、外貨建ての保険がラインナップされています。

 

日本で超低金利が続く中、日本円での運用にはもはや限界があります。そこで、相対的に金利が高めの外国債券で運用することで、外貨建て保険の積立利率(金利)は2~3%と、円建てには見られない比較的有利な条件が提示されているものもあり、魅力的に映ります。

 

一方で注意が必要なのは、円建てとは異なり、外貨建て保険には「為替リスク」が存在していることです

 

国内に居住していれば、普段の生活は日本円のみでほぼ問題なく過ごせます。しかし、外貨建て保険の契約時に保険料を払い込むには、まず日本円を外貨に換えなくてはなりません。外貨でいくらになるのかは、いうまでもなくその時の為替相場次第です。

 

保険料が1万ドルの商品に加入するときに必要になる日本円は、為替レートが1ドル=100円なら100万円、110円なら110万円と、相場次第で払込み金額が変わります。

 

保険金を受け取るときも同様で、日本円に交換するときの為替相場が1ドル=110円なら110万円になりますが、円高で1ドル=100円になれば100万円しか受け取れません。保険金を外貨で受け取るなら、為替の影響を受けませんが、日本円で受け取る場合は為替次第で金額が変動するのです。

 

さらにお金を外貨に、あるいは日本円に替えるとき、為替手数料が掛かることにも注意が必要です。為替手数料として保険料を払い込む時は、1ドルにつき50銭~1円が上乗せされ、保険金を受け取るときには逆に50銭~1円が差し引かれることになります。そのため実質的な払い込み保険料はその分多くなり、一方で受け取れる保険金はその分少なくなるわけです。

 

保険ですから、死亡や高度障害に対する保障のための保険料も掛ります。さらに契約の締結・維持費用、運用のための費用なども加わります。これらは積立金から定期的に差し引かれます。

 

そのため比較的有利に見えた積立利率も、それがそのまま実質的な利回りにはなりません。さらに為替相場が値下がりすれば、比較的高い積立利率も吹き飛ぶ可能性すらあるのです。

 

クーリング・オフはできるが元本は戻らない

 

このように複雑で、為替次第で支払う額も受け取り額も変わるのが外貨建て保険です。こうした仕組みをよく理解した上で、すぐ使わないお金があり、それを日本円だけでなく外貨で運用したいということであれば、外貨建て保険もひとつの選択肢になり得るかもしれません。しかし、「定期預金だと思っていた」のに加入していたのだとしたら、それはもうビックリ仰天でしょう。

 

実際に、国民生活センターに寄せられた苦情には以下のようなものがあります。

 

 
定期預金の手続きをしたら、後日、書類が違っていたとの連絡があり、
書き直した。
定期預金だと思い込んでいたため、書類はよく見なかったが、
外貨建ての変額個人年金保険に加入していたことがわかった
 
 
担当者に勧められて定期預金を外貨預金に預け替えたつもりが、
外貨建て生命保険の契約だったとわかった
 
出所:金融庁金融審議会「市場ワーキンググループ」令和元年10月23日 「国民生活センター」提出資料

 

思いもしなかった商品だとわかれば、契約を取りやめたいと考える人もいるでしょう。こんなときは、外貨建て保険でももちろん「クーリング・オフ」が利用できます。契約者が一方的に契約撤回できる仕組みで、「クーリング・オフに関する書面を受け取った日」または「申込日」のいずれか遅い日から、その日を含めて8日以内(保険会社により異なる)であれば撤回でき、保険料が契約者に返金されます。

 

ただし外貨建て保険の場合、クーリング・オフで戻ってくるのは外貨で支払った保険料であり、円建てで支払った額でない点に注意が必要です。再び日本円に戻す際には為替手数料が掛かることになり、為替相場の状況によっては元本割れとなる可能性もあります。つまり外貨建て保険の場合、クーリング・オフの手続きをしても、お金は契約前の状態には戻らないのです。

 

相談窓口も知っておこう

 

トラブルが増加する現状から、生命保険協会は外貨建て保険の資格制度を導入する検討を始めたと報道されています。一方で私たち生活者も、円建てとは異なるリスクやコストが存在することを知り、理解できるまで詳細な説明を求め、それでも理解できない商品は買わないといった基本的なことを徹底することが大切です。判断しかねて困ったら、下記のような相談窓口が利用できることも知っておきましょう。

 

■外貨建て保険も含めた生命保険に関する相談窓口

機関
窓口
電話番号
内容
消費者庁
188
(局番なし)
消費生活相談の最初の一歩を手伝う窓口。「188」にダイヤルすると、身近にある消費生活センターや消費生活相談窓口の案内を受けられる。
年末年始を除き、原則毎日利用できる
金融庁
0570-016
-811/
03-5251
-6811*
利用者と金融機関との個別トラブルについて、話を聞いて他機関の紹介や論点の整理などのアドバイスを行う(あっせん・仲介・調停は行わない)。
受付は平日10~17時まで
生命保険
協会
03-3286
-2648
生命保険に関する苦情や相談を受ける。電話での相談の他、全国50カ所に生命保険相談所の連絡所もあり、面談でも相談できる。
受付は平日9~17時まで
生命保険
協会
03-3286
-2967
生命保険会社の営業職員・代理店の説明等に
疑問や不適切な点があった場合の窓口。
受付は平日9~17時まで
注:作成筆者。*IP電話の場合

 

外貨建て保険も含めた投資性のある生命保険の契約当事者は、60歳以上が7割超、80歳以上が2割を占めます。かんぽ問題(「第22回かんぽ・養老保険の不適切営業、契約者が考えるべきは」参照)と同様、高齢者が当事者となっている契約で、トラブルが多く発生しているわけです。

 

80代以上では契約者以外の親族からの苦情の申し立てが約4割をして占めているのが現状で、高齢者の保険契約には親族等のサポートが必要な状況があるといえそうです

 

これまで見てきたように外貨建て保険では、意向に沿わない契約とわかってクーリング・オフをしても、支払ったお金(日本円)が全額戻るわけではありません。親など別居の家族がお金に関して提案を受けたときには、決してひとりで決めることなく、契約前にまず一声かけてくれるよう、約束しておいてはどうでしょうか。

 

自分らしい老後を思わぬ形で阻害されることのないよう、まずは相談して一緒に考える、という普段の関係づくりが最大の守りになるはずです。

執筆者情報
清水香(Kaori Shimizu)

清水香(Kaori Shimizu)
生活設計塾クルー  生活設計塾クルー・取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)/社会福祉士/自由が丘産能短期大学講師

1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。財務省“地震保険制度に関するプロジェクトチーム”委員


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