コラム新型コロナ騒動で再確認、海外旅行中のトラブルを保険でカバーできること

公開日:2020-01-31 (更新日:2020-02-04)

保険を選ぶときに「知っ得」話~第34回

 

 

新型コロナウイルスによる肺炎感染の拡大が世界中を震撼させています。春休みに海外旅行を計画している人は、海外旅行保険の加入はもはや必須の状況です。新型コロナのような恐ろしい病気に限らず、旅行先での様々なトラブルに対応してくれるものだからです。

 

今回の知っ得ポイントは、海外旅行保険の上手な加入法と利用法についてです。

 

自宅出発から戻るまでの全旅行行程が補償される海外旅行保険は、海外旅行の行程中に

 

・病気やけがで治療を受けた
・第三者に賠償請求された
・持ち物が損害を受けた

 

――時などに、その損害を補償する保険です。

 

自宅を出発して帰着するまでが旅行行程となるので、その間に起きた事態なら海外でなくても補償を受けられます。渡航直前に空港で加入することもできますが、出発日の前に加入しておけば、自宅から空港までの事故でも補償を受けられることになります。

 

補償は一般に以下のようなものになります。ツアー参加の際に勧められるのは、これらの補償を一定のパッケージにしたタイプが通常で、手厚いものから手軽なものまで、複数のプランから手軽に選べます。

 

一方、ネットで加入するタイプは必要な補償や補償額を自分で選択でき、希望に合わせてリーズナブルに保険を組み立てられます。

 

■海外旅行保険の補償概要(詳細は商品により異なる)
損害内容
補償内容
傷害死亡・
後遺障害
旅行中に事故でけがを負い、それが原因で180日以内に死亡・後遺障害が生じた場合
疾病死亡
旅行中に病気で死亡、旅行が原因の病気で30日以内に死亡した場合など
傷害治療
旅行中に事故によりけがを負い、治療を要したとき180日以内の治療費用等
疾病治療
旅行中または終了後一定期間内の発病などで180日以内に要した治療費用等
救援者費用等
搭乗する航空機や船舶が行方不明になって被保険者の親族が負担した捜索救助費用 *
個人賠償責任
旅行中に事故で他人の身体に障害を及ぼしたり、他人の財物の滅失、汚損・損傷させたりして、法律上の賠償責任を負ったときの損害
携行品損害
旅行中に携行する所有物の偶然な事故(盗難、破損、火災など)による損害
帰宅手荷物遅延
航空機に預けた手荷物が目的地到着から一定時間以内に到着しなかった場合に購入した身の回り品の費用 **
航空機遅延
搭乗予定の航空機に生じた出発遅延、欠航、運休および着陸地変更等で、被保険者が負担した費用の一定限度
旅行変更費用
近親者**** の死亡や入院、自宅の火災等で、一定額以上の損害が発生し、出国中止または旅行途中の帰宅での実費
注:*ケガや病気で死亡あるいは一定期間の入院も含む
   **6時間など、***2万円等 ****被保険者も含む

 

経済的リスクや、困り具合の深刻さを踏まえると、

 

「治療費用」
「救援者費用」
「個人賠償責任保険」
「携行品損害」

 

――などは欠かせない補償といえます。

 

中でも重視すべきなのが、けがや病気の「治療費用」の補償です。以下のデータは、海外で虫垂炎の手術を受けたときの費用を都市別に記しています。

 

日本でなら、健康保険証を用いて治療を受けるので、自己負担の上限は9万円程度(年収370万~770万円の場合)でも、医療事情は国により大きく異なります。表に上げた都市のほとんどが国内よりぐっと高く、米ロサンゼルスに至っては、2日の入院で約162万~216万円、また同じ米国でもホノルルでは250万円もかかります。

 

海外旅行保険に未加入などで支払能力が証明できないと、治療をしてもらえないこともあるのだとか。恐い話です。

 

■虫垂炎の手術を受けた場合の都市別総費用
都市
総費用
平均入院日数
ホノルル
256万円
2
ロサンゼルス
162.4万~216.58万円
2
バンクーバー
110.86万~177.38万円
2
ロンドン
130.28万~173.71万円
2~3
ローマ
121.76万円
4
パリ
86.05万円
3
ゴールドコースト
102.11万円
2~3
メキシコシティ
75.8万~86.63万円
5~6
バリ
83.16万~88.44万円
3
イスタンブール
52.09万円
4~5
サンパウロ
41.52万円
3
北京
4.5万~9万円
7
出所:ジェイアイ傷害保険会社調べ。日本損害保険協会「損害保険Q&A」より抜粋

 

海外で受けた診療でも、日本で保険診療になっている診療では、日本の保険報酬点数換算の金額をベースに費用の7割を払い戻す「海外療養費制度」が受けられます。

 

ただし、一旦は立て替えが必要になります。海外の医療機関で治療内容の証明となる所定の書類を請求し、それに翻訳文を添付して加入する公的医療保険の窓口で申請しなくてはなりません。

 

手続きにしろ、立て替えにしろ、旅慣れない人にはハードルは高いものになるかもしれません。海外旅行保険の「治療費用」でカバーするのがベストでしょう。

 

補償のみならず病院や医師の紹介、キャッシュレス治療も

 

海外旅行保険の「治療費用」は、事故でけがを負った日および病気で治療を開始した日から、その日を含め180日以内に要した治療費用等が、保険金額を上限に補償されます。

 

具体的には診療費用や薬剤費等の治療費のほか、交通費や移送費、通訳雇入費、通信費や身の回り品購入費、さらに治療による旅行行程の変更で生じた費用や帰国費用まで、幅広く補償されます。

 

病気の場合は、旅行中に原因が発生した病気であれば、保険期間終了後72時間以内に発病した場合も対象になります。今回の新型コロナウイルスによる肺炎も同様ですから、早めの受診が大切ですね。あるいは旅行中に細菌性赤痢や腸チフスといった特定感染症で、保険期間終了後30日以内に治療を開始した場合も対象です。

 

細菌性食中毒のほか、黄色性ブドウ球菌やボツリヌス菌などによるウイルス性食中毒、さらにテロ行為や地震や噴火、津波等によるけがも補償されます(商品により詳細は異なります)。渡航先特有の疾病事情や医療事情を踏まえ、適切な保険金額を設定しておきましょう。

 

加えて、海外旅行保険に加入するメリットに「アシスタンスサービス」を受けられることがあります。急なけがや病気、困った事態が起きたとき、24時間365日、日本語によるトラブル対応が受けられるものです。

 

たとえば急病になった時、

 

提携病院の紹介、
患者負担なしに医療機関に保険会社が治療費を直接支払うキャッシュレスサービス、
必要に応じ受診時の通訳派遣、
電話で医療通訳、

――などが含まれます。さらに、

 

病人やけが人の緊急移送、
救援者の渡航手続きやホテルの手配、
パスポートがなくなったときのサポート、

――も受けられます。

 

渡航先のアシスタンスサービスの連絡先を事前に確認しておき、困った時に速やかに連絡できるようにしておきましょう。

 

こうしたサービスは通常は電話を通じて行われますが、最近はLINEで事故連絡から保険金請求まで完了する保険会社も登場しています。ネット環境があれば、書類や画像のやり取りも簡単です。事故連絡から保険金請求まで30分で終了した案件もあったそうです。

 

サービスや使い勝手は商品により変わってきているので、こうした点にも着目したいところです。

 

「マタ旅」は注意!妊娠・出産等のトラブルは対象外

 

旅行保険では補償の対象外になる場合もあります。山岳登坂やスカイダイビング、ハンググライダーなどの危険な運動によるけが、あるいは虫歯治療などは対象外になります。

 

また、妊娠に絡む一連のトラブルも補償を受けられません(一定期間のみ補償する特約を扱う保険会社もある)。「マタ旅(=マタニティ旅行)」という言葉があるほど、妊婦の旅行は珍しくないようですが、妊娠期間には思わぬ事態が起こり得ます。

 

特に海外でトラブルが起これば、保険が使えずとんでもない費用負担を強いられるだけでなく、つらく悲しい事態に陥ることも考えられます。保険が効かないというだけではなく、自分の命よりも大切と思えるものを守るためにも、渡航は慎重になるべきでしょう。

 

そのほか、戦争や内乱によるけが、闘争行為(ケンカ)、無資格や酒気帯び、および麻薬使用等による運転でのけがなどは言うまでもなく対象外です。

 

クレジットカード付帯の海外旅行保険の注意点

 

クレジットカード付帯の海外旅行保険を利用する方法もあります。カードのグレードが高いほど補償が手厚くなる傾向がありますが、補償内容や利用条件はカードにより異なり、事前確認が欠かせません。

 

“海外旅行保険付き”といっても、傷害死亡および後遺障害以外の補償がないものや、キャッシュレス治療は受けられず、医療費の立て替えが必要な仕組みもあります。あるいは、補償の適用についてもカードがあれば手続き不要なケースもあれば、旅行費用をカード決済した場合のみという仕組みもあります。自分が持っているクレカに付帯旅行保険が付いている場合、補償の適用はどちらのケースなのか確認しておきましょう。

 

以下の表に示したカードは、治療費用を中心に、比較的厚めの補償が得られる一例です。いずれもキャッシュレス治療可能、200万~300万円が補償上限、90日程度の旅行まで補償を受けられます。

 

■クレジットカード付帯の海外旅行保険比較(表示した補償は一部)
カード
セゾンブルー
アメリカン

エキスプレスカード
エポス
VISAカード
JACCS
(VISA・JCB・Mastercard)
楽天カード
治療費用
300万円
傷害 200万円
疾病 270万円
200万円
200万円
キャッシュレス
治療
賠償責任
3000万円
2000万円
2000万円
2000万円
携行品損害
1品限度
免責
30万円
10万円
3000円
20万円
10万円
3000円
20万円
10万円
3000円
20万円
10万円
3000円
救援者費用
200万円
100万円
200万円
200万円
補償の適用
自動付帯
自動付帯
自動付帯
利用付帯 *
日数限度
最長90日
最長90日
最長90日
3カ月後の
12時まで**
注: *ツアー料金や旅行のための交通費等をそのカードで決済した時のみ補償適用。 **  日本出発から
 

これのみでは心許ないという場合は、別途、海外旅行保険を契約します。ネットで加入できるバラ売りタイプで、必要な補償のみを足すとよいでしょう

 

カード付帯の保険と海外旅行保険と、契約が2つになるこの場合の給付ルールは以下の通りです。治療費用や賠償責任、携行品損害等については、両方の保険金額を積算したものが限度額となり、実際の損害額が支払われます。死亡および後遺障害については、カードと保険のそれぞれから保険金が支払われます。

 

保険金を請求するときは、カード・保険会社の両方に請求する必要はありません。どちらかに請求すれば、両方の補償を踏まえた保険金が支払われます。

執筆者情報
清水香(Kaori Shimizu)

清水香(Kaori Shimizu)
生活設計塾クルー  生活設計塾クルー・取締役
ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)/社会福祉士/自由が丘産能短期大学講師

1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任、現在に至る。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。財務省“地震保険制度に関するプロジェクトチーム”委員


ページTOPへ