コラム教育資金の積立に学資保険は向いているの?

公開日:2020-02-20 (更新日:2020-09-25)
保険を選ぶときに「知っ得」話~第35回

 

 

昨年4月に長男が大学生になり、受験終了から丸1年経ちます。この1年間に掛かった教育支出について振り返ってみました。

 

長男は私大文系で、自宅から通学しています。大学受験の費用、および入学後に大学に納入した金額の合計はおおむね150万円ほど。以下の調査結果とほぼ同様の結果となりました。

 

■私立大学の受験から入学までの費用

費用の内訳
自宅外通学
自宅通学
受験費用
25万3300円
23万1000円
家賃
6万2800円
敷金・礼金
20万9300円
生活用品費
32万3000円
初年度納入金
133万3418円
133万3418円
合計
*218万1818円
**156万4418円
出所:「私立大学新入生の家計負担調査 2018年度(東京私大教連)」
注: * 仕送り年間約78万円を入れると初年度の負担は300万円ほどに
    **入学後は教科書代や定期代、昼食代、パソコンその他がかかることも
 

ですが、この時期にかかるお金は、これですべてではありません。長男が通っていた高校には制服がなく、卒業式までにスーツ一式が必要でした。入学後にはPCや教科書・テキスト類、サークルの入会金などもかかります。通学定期券や交通費、ランチ代は大学に通う限りかかるランニングコスト。これら必要最低限のものだけを含めても、この1年間の出費は200万円ほどにのぼっています。そして授業料その他費用は、2年生以降も続きます。

 

授業料が高めとなる私大理系だと、わが家のケースより高くなるでしょう。受験前に予備校や塾に通っていたら、それはまた別途。下宿生活になれば、生活費等の仕送りも必要です。上記の調査では、下宿入居時の費用も含めた初年度の負担は300万円ほど。教科書その他費用は別途ですから、大変な負担になります。

 

私の親世代の人にそんな話をすると、「そんなにかかるの!」と絶句されることもしばしば。しかし40年前と比べると、国家公務員の初任給は40年で2.2倍となっている一方、大学授業料は「ハイパーインフレ」。私大は4.8倍、国立大は14.9倍に増えている現実があるのです。

 

■大学授業料と国家公務員初任給の40年間の伸びの比較

出所:人事院「国家公務員の初任給の変遷」および文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」
注:国家公務員は大卒一般職
 

保護者が集まると、しばしば教育支出の話になり、「学資保険では全然足りなくて!」という声も一度ならず耳にしています。子どもが生まれた時は、頼れる額と思って貯めていたのに、満期保険金200万円では足りないどころか、1年で使い切るレベル。ここまで負担が重くなっているのです。子どもが複数いれば、支出は2倍、3倍です。

 

OECD諸国の中で「公財政教育支出が最低水準」の日本

 

日本では5割超の子どもが大学に進学するという、経済協力開発機構(OECD)諸国の中でも高等教育が十分に普及している国。ところが高等教育段階の教育支出は、53%が家計負担、17%がその他私的部門で賄われ、公財政支出が占める割合はわずか31%。OECD諸国中、最低水準です(OECD資料)。

 

日本は、親の負担がこのようにとても重いのです。しかし個人ができる努力には限界もあります。少子化が止まらないのは、安心して子どもを育てられる環境がわが国に整っていないことも大きな要因でしょう。新たな世代が子育てを躊躇せずに進める世の中を築くのが、私たち大人の責務であると強く思います。

 

ともあれ、子どもの成長は待ったなし。こうした現実の中、教育費負担についてある程度の見通しをもって準備を進めなくてはならないのも致し方ありません。

 

そこで今回の知っ得ポイントは、長い目で見た教育費準備についての考え方について見ていきます。

 

「生まれたらすぐ」コツコツ積み立てる

 

「教育資金作りは、生まれたらすぐ」と言われますが、その通り。時間を味方につけることは負担を軽くする近道。例えば出生後すぐに毎月1万円を積み立てれば、大学受験を控えた17歳時に200万円以上になります。10歳からだと毎月2万4000円が必要になるのですから、“善は急げ”。教育支出のピークめがけてコツコツ積み立てつつ、高校卒業までの教育支出は家計費の中で賄うことを基本とします。

 

■大学までの教育費と教育資金を積立で準備するイメージ

 

児童手当を活用して、300万円貯める!

 

その際、うまく活用したいのが「児童手当」です。これは0歳から中学校卒業までの子どもがいる世帯が受け取れるもので、子どもの年齢と人数、親の所得(生計中心者=父・母どちらか高い方の所得)で手当金は異なります。例えば親の所得が622万円未満だと、第1子が0~3歳まで月額1万5000円、3歳から中学卒業まで月額1万円の手当金が受け取れます。

 

この手当額にいくらかプラスして、18歳までコツコツ積み立ててしまいましょう。毎月5000円をプラスすれば、18歳までに297万円貯めることができます(9月生まれで10月から児童手当受給の例。預金利息を考慮しない)。毎月1万円をプラスすれば400万円超。所得制限を超える世帯でも月5000円の手当は受け取れるので、1万円をプラスして同様に積み立てれば303万円を貯められます。

 

■児童手当と積立の合計額の例

注:9月生まれの第1子の場合(10月から児童手当受給)

 

学資保険は今でも「ベスト」か

 

では、どのような方法で積み立てるのがよいか。

 

先日、子どもが生まれた知人(30代)が「学資保険に入らないとね」と言っていました。学資保険は生保会社が取り扱う貯蓄型保険。子どもの進学時期にあわせて満期保険金等を受け取れ、親死亡時には保険料の支払いが免除される保険です。

 

その昔、学資保険は教育資金準備の王道でした。バブル景気の頃、貯蓄型保険は大人気。その一角をなす学資保険は、1990年当時、月額約7000円の支払いで、15歳で20万円、18歳時に180万円と総額200万円を受け取れました。安全確実、しかも50万円増えてお金が戻ってきたのです。

 

「学資保険に入ったの?」。子どもが生まれた娘に、祖父母になった親がよく言っていたもの。なかば習わしとなっていた「子どもが生まれたら学資保険」は、かつては最良の選択だったのです。

 

■学資保険の過去と現在の比較

契約時期
1990
2019
商品名
簡易保険
「学資保険」
かんぽ生命
「はじめのかんぽ」
保険料(月払)
6960円
9800円
総額払込
保険料
約150万円
約212万円
総受取額
200万円
200万円
年齢別
受取額
15歳時 20万円
18歳時 180万円
 
18歳時 200万円
返戻率
約133%
約94%
注:契約者35歳男性/被保険者0歳男児の例性/被保険者0歳男児の例

 

しかし現在の経済環境下、生命保険会社の資金運用が困難になり予定利率は低下。有利なものでも、ギリギリ元本割れしないレベルまで学資保険の貯蓄性は低下しています。

 

よって教育資金の積立が目的であれば、過去のセオリーにこだわらず、財形や積立預金を用いてもよいでしょう。学資保険を用いる場合は、受け取れる満期保険金と保険料の支払い総額(月額保険料×12か月×保険料支払期間)を比較、元本割れするか確認します。また中途解約すると元本割れは避けられません。満期まで続けられることが前提です。

 

中学3年生に教育費のプチ・ピークがある

 

いうのも、公立学校に通う場合でも、中学3年生に教育支出のプチ・ピークが訪れるからです。

 

高校受験を控え、多くの中3が塾に通います。公立学校に通う高校までの子どもの塾等の支出は、中3で急激に高くなります(下図)。塾代や家庭教師代は最低でも月2万~3万円はかかります。

 

この金額は私立に通う中学3年生よりも高くなります。もちろん総額の学習費は私立に通う場合が高くなりますが、公立に通っていても中学3年生の時には塾代、それに受験費用などが大きくのしかかってくることは注意しておきたいことです。

 

この時点で、予測を超えた支出や、あるいは予定外の私立高校への進学で、当初の資金計画通りにいかなくなることもあります。こんなとき、学資保険をやむなく解約することは避けたいものです。

 

■塾など補習学習費の学年別動向(公立学校に通う場合) 

出所:「平成30年度子供の学習費調査」(文部科学省)
注:高校は全日制の例

 

子どもの成長とともに、待ったなしの教育支出。しかし授業料高騰などの外部要因、さらに子ども自身の望む進路という内部要因のいずれも変化の只中にあります。支出時期は見通せても、進学ステージにおける支出額を見通すことは容易ではありません。よって学資保険や投資信託での準備は一部にとどめ、預金など流動性の高い商品で予定外の事態にもある程度対応できるようにしておくのがよいでしょう。

 

思わぬ事態やお金が回らないときには助けもあります。それが奨学金や教育ローン。次回はこれらについて取り上げます。

 

記事内容は執筆時点(2020年02月)のものです。最新の内容をご確認ください。

執筆者情報
清水香(Kaori Shimizu)

清水香(Kaori Shimizu)
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表 生活設計塾クルー取締役ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)/社会福祉士/自由が丘産能短期大学講師  1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらFP業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年より FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。執筆や企業・自治体・生活協同組合等での講演活動など幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する政府委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災害復興学会会員。(略歴は執筆時時点です)


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