コラム教育費を賄う奨学金のいろいろ、20年度から基準緩和も

公開日:2020-03-05 (更新日:2020-09-25)

保険を選ぶときに「知っ得」話~第36回

 

 

学費負担が膨らみ続ける中、主たる学生の学費調達手段である「奨学金」の存在は大いに頼りになるもの。ですが、一口に奨学金と言ってもさまざまなものがあります。今回の知っ得ポイントは、大学生が使える奨学金をみてみます。

 

学生本人が貸与を受ける「奨学金」

 

奨学金とは、優秀で修学困難な学生の経済的負担を軽減する制度で、学生本人が貸与または給付を受けるもの。多くの団体がさまざまな奨学金を実施しています。

 

まず知っておきたいのは、奨学金は基本的に大学入学以降に発生する学費を賄うものであるということ。大学生になってから申し込むものが多く、高校3年生で申し込めるものでも、奨学金の入金は大学入学後が一般的です。よって入学前後に必要になるまとまった支出には間に合いません。早めに合格が決まるAO入試や指定校推薦も同様です。

 

入学前後にまとまった資金を調達する必要がある場合は、教育ローンを利用します。ただし教育ローンを借り入れ、返済義務を負うのは学生ではなく保護者。日本政策金融公庫の「国の教育ローン」が代表的です。

 

■奨学金と教育ローンの違い

制度
日本学生支援機構(JASSO)
「第二種奨学金」
日本政策金融公庫
「国の教育ローン」
借りる人
(返す人)
学生本人
保護者
申し込み基準
世帯年収が上限未満
/一定基準の学力
世帯年収が上限未満
申込時期
募集時期(通常、春)に
学校を通じて申し込む
いつでも申し込める
借りられる額
原則月額2万~12万円
(1万円刻み・大学の場合)
350万円以内
(外国大学等は450万円)
お金の振込
入学後に初回入金、
その後毎月振り込まれる
一括で振り込まれる
(申し込みから20日前後)
注:筆者作成

 

JASSOの「貸与型」奨学金

 

話を奨学金に戻しましょう。代表格は日本学生支援機構(JASSO)の奨学金です。返済を要する貸与型と、返済不要の給付型があり貸与型には特に優秀で経済的理由から就学困難な学生を対象にした「第一種(無利子)と、第一種よりも緩やかな基準の第二種(3%上限の有利子。在学中は無利息)があります。

 

第一種の貸与金額は入学年度や学校種別、通学種別などで定められていて、例えば2018年度以降の入学で国公立・自宅外の場合、月額2万、3万、4万、5万1000円のいずれから選択します。第二種では月額2万~12万円の範囲内で、1万円刻みで金額を選択します。

 

高3になった春(「予約採用」)、あるいは大学入学後(「在学採用」)に、いずれも学校を通じて申し込みます。学力基準のほか、世帯人員により異なる家計基準があり、家族4人の場合、世帯収入の上限は、第一種747万円第二種1100万円が目安です(予約採用・給与所得者の場合)

 

いずれの制度も返済が必要ですから、JASSOのウェブサイトにある「奨学金貸与・返済額シミュレーション」で試算をするとよいでしょう(注:記事下にリンク先掲載)。例えば、4年間にわたり第二種で月額3万円の貸与を受けると、貸与総額は144万円。卒業後は13年にわたり、毎月9327円を返還、といった計算ができます(金利0.15%、2024年10月から156回返還の場合)。

 

奨学金とはいえ“借金”ですから、申し込み時には人的あるいは機関による「保証」を求められます。人的保証では、連帯保証人は原則父母になり、奨学生と同じ返還責任を負います。保証人は奨学生と連帯保証人の返還不能時に一定の責任を負い、原則は一定の親戚がなります。

 

一方、機関保証は保証料を支払い、連帯保証を受けます。返済中に延滞すると奨学生に代わり保証機関がJASSOに代位弁済、その後奨学生はJASSOではなく保証機関に返還をすることになり、親や親戚に返還請求はいきません。

 

月額保証料は奨学金の種類や貸与金額等で変わり、例えば大学4年間、月額4万円の第二種奨学金の貸与を受けたときの保証料は約1500円になります。この金額が毎月の奨学金貸与額から差し引かれます。

 

卒業後に万が一、返還が難しくなったときには、減額や猶予などの制度を利用して当座を乗り切ることになります。しかし返還が滞れば、人的保証では家族が請求を受けることになります。コストが掛かっても機関保証を選択する人は近年増加傾向にあります。

 

2020年度から「給付型」は新制度に

 

「給付型」は、2020年度から新制度に改められます。これまでは学業や部活動で優秀な成績を修める住民税非課税世帯等の学生が対象でしたが、一定の成績基準を満たす必要はあるものの緩和され、所定の世帯収入基準を満たしていれば対象になります。

 

給付額は世帯収入と家族構成、学校種別、通学種別により異なります。例えば対象となる私立大学に下宿して通う学生は、年額91万円の給付型奨学金のほか、約26万円を上限に入学金が、年額約70万円を上限に授業料免除も受けられます(それぞれ申し込みが必要)。ただし、これは住民税非課税世帯の場合で、世帯収入が上がれば給付額は減ります。対象となる収入基準はかなり厳しめで、やはり狭き門です。

 

大学にも給付型奨学金がある

 

給付型奨学金と言えば、大学が実施する独自制度は見逃せません。例えば早稲田大学の「めざせ!都の西北奨学金」は、首都圏以外の国内高校の出身者約1200人を対象に、最長4年間にわたり授業料が半額免除となるというありがたい制度。父母の合算収入800万円未満が対象とJASSOよりも緩やかです。申し込みは年4回。早稲田大学には他にも制度があります。

 

こうした奨学金は各大学のウェブサイトに掲載されています。志望校が決まったら、必要に応じて調べみてはいかがでしょうか。

 

民間団体などの奨学金

 

奨学財団や、民間団体の奨学金にも給付型は多くあります。学業優秀かつ家計の状況により進学困難な生徒が対象ですが、応募条件はそれぞれで、条件が合えば利用できる可能性もありそうです。下の表は高校3年生の時点で申し込める奨学金です。

 

給付額や条件は異なりますが、月8万円を4年間給付するという充実した給付もあります。募集締切が高3になった春というところや、高校の推薦が必要な制度もあるので、早めに調べて動いた方が良さそうです。

 

■高校3年生の時に申し込む民間給付型奨学金の例

実施団体
内容
キーエンス財団
大学の新1年生が対象。4年制大学の学部問わず4年間にわたり月額8万円を給付。制度は異なるが大学2~4年生向けのものも
伊藤謝恩
育英財団
大学の新1年生対象、指定の国公私立大学を志望する者が対象。入学金30万円、月額7万円を4年間にわたり給付
コカ・コーラ教育
・環境財団
大学の新1年生が対象。大学における正規の最短修業年限について月額1万5000円を給付
教育支援
グローバル基金
ひとり親家庭や児童養護施設に住む大学の新1年生(浪人生も可)が対象。年間50万円を給付、併せて国内外の人材育成プログラムに参加できる。1年間の給付
注:筆者作成。2020年2月時点の公表情報

 

地方公共団体の給付型奨学金も

 

都道府県や市町村が給付型奨学金を実施していることもあります。1年以上住んでいる、あるいは住所ないし本籍がある人などが対象で、月額奨学金を給付する、教育ローンを借り入れた人の返済利子の一部または全部、あるいは保証料の全部または一部を給付するなど。給付期間や応募期間は自治体により異なります。

 

このように、一口に奨学金と言ってもさまざまで、給付金額や申し込み時期なども異なるため、ネット検索が近道です。JASSOのウェブサイトには、JASSO以外の奨学金情報も提供されているので参考するとよいでしょう。

 

奨学金制度は入学年度により給付金額や制度が変わります。高校3年生になる春までに、ある程度の情報を集めておき、万全の態勢で臨みたいところです。

 

【参考】
 
 
記事内容は執筆時点(2020年03月)のものです。最新の内容をご確認ください。
執筆者情報
清水香(Kaori Shimizu)

清水香(Kaori Shimizu)
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表 生活設計塾クルー取締役ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)/社会福祉士/自由が丘産能短期大学講師  1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらFP業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年より FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。執筆や企業・自治体・生活協同組合等での講演活動など幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する政府委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災害復興学会会員。(略歴は執筆時時点です)


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