最新!法人保険の損金計上と変額保険のメリットとは?-小規模事業主も必見

著者:和 秀哉

監修:

松井 翔子

3級ファイナンシャル・プランニング技能士 / フィナンシャル・エージェンシー所属

経営者の皆様、2019年以前に加入した法人保険の解約返戻金ピークが近づいていませんか?

2019年以前に多くの経営者が加入していた法人保険(平準定期保険等)は、以下の特徴を持っていました。

  • 税務上の効果: 保険料の大半を損金算入可能

  • 高い解約返戻率: 加入後数年で高額の解約返戻金

  • 短いサイクル: 約4.5年で解約返戻金がピークに

  • 乗り換えの慣行: ピーク時に解約し、新規加入を繰り返す

保険料の大半を損金計上できるうえに、解約返戻率も高かったので節税保険全額損金保険と呼ばれ、人気を集めていました。

しかし、2019年2月の業法改正(通称:バレンタインショック)により、このタイプの法人保険の販売が制限されました。

これまでは、受け取れる解約返戻金が減少する前に、ピーク時に保険を切り替え、解約返戻金を元手に新たな法人保険への加入を繰り返していましたが、切り替えの受け皿がなくなったのです。

そこで、注目を浴びているのが変額保険です。

最新!法人保険の解約返戻金と死亡保険金の増やし方

最新!法人保険の解約返戻金と死亡保険金の増やし方

業法改正後の法人保険では、解約返戻率を合法的に高めることが重要なポイントになります。

現在も、死亡保険金額や解約返戻金が確定しているこれまでと同じタイプの法人保険も販売されていますが、今の基準ではこれらの保険に節税効果はありません。

新たに保険契約を検討する際は、新しい基準を十分に理解し、企業の資金計画にどのように影響を与えるかを評価することが必要です。

改正後の保険加入判断基準

変額保険なら、新制度下でも節税効果と資産形成を両立させる可能性を持っています。

例えば、3%の予定利率で設定された保険が、加入後に10%で運用されたとしても、解約返戻金相当額の計算には契約時の3%を用いて損金算入ができます。全額損金計上はできませんが、運用成果によっては、解約返戻率が100%を上回るケースもあり得ます。設定している予定利率は会社によって異なりますが、概ね3%前後です。このように運用成果によって返戻金が増える可能性を含めたまま、損金算入をすることができます。

変額保険とは?

変額保険とは?

変額保険は運用結果に応じて保険金額や解約返戻金額が変動する保険です。契約者が選択したファンドのパフォーマンスによって、保障金額や積立金額が増加することも、減少することもあります。特別勘定の保険では、契約者自身が投資先を選び、その運用結果によるリスクとリターンを享受します。

投資において「時間」はリスクを軽減し、リターンを最大化する重要な要素です。保険では、長期にわたって保険料が運用されるため、「時間」を味方につけて積立投資を行うことができます。リスクを軽減して運用が成功することで得られる成果は将来の保障金額に直接反映されます。このように保険を「金融商品」としての視点で考えることが、今まで以上に重要になっています。

さらに、保険を選ぶ際に、保障は必要か、必要な保障額はいくらかという基本的な検討だけでなく、支払った保険料をどのように効率的に運用して、資産を増やしていくかという計画を立てることも大切です。このように考えることで、運用と保障を効果的に両立させ、より賢く保険を活用することができます。

変額保険は解約返戻金・死亡保険金が増える可能性がある

長期平準定期保険は解約返戻金や死亡保険金は一定です。一方で変額保険は運用の成果が好調な場合、その運用益が解約返戻金や死亡保険金に上乗せされるため、加入当時の設定よりも多くの死亡保険金額を受け取れる場合があります。

設定当時は80%の解約返戻率だった契約が、100%を超える解約返戻金になるケースや、死亡保険金額が1億円が、運用益によって2億円に増額となるケースもあります。

ただし変額保険には、市場の状況や運用成果が思わしくない場合、解約返戻金や死亡保険金が減少する可能性もあるため、変額保険を選ぶ際には、運用リスクをしっかりと理解し、自分のリスク許容度に合った選択をすることが大切です。

オルカンに10年積立てたら利率は何%?

オルカンに10年積立てたら利率は何%?

変額保険は投資信託と同じようなイメージで国内株式・外国株式・債権・リートなどご自身でファンドを選び、支払った保険料を運用していきます。変額保険にもeMAXIS Slim全世界株式(略称:オルカン)に相当するような全世界株式のファンドがあります。

では、ここでみなさんに1つ質問です。

オルカンに10年間積立てを継続した場合、利回りは何%以上になるでしょうか。

保険会社が契約時に示している解約返戻率が3%です。将来のことは不確実ですが、3%以上の数字が思い浮かんだ場合、変額保険の解約返戻金は契約時の金額より上回っていることになり、損金算入をしながら解約返戻金を増やすことに成功したということになります。

みんかぶサイトによると2024/6月末時点において、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)では、2019/5から2024/5までの年次リターン率は19.77%です。

みんかぶ「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」

全損保険販売停止後の解約返戻率の保険に加入するのと、将来の解約返戻金は約束されていませんが、支払う保険料を運用に回す保険と、どちらが魅力的でしょうか。法人保険の新しい形は運用を行い、資産形成をすることをお勧めします。

変額保険のメリット

変額保険のメリット

これらの背景を踏まえ、特別勘定で運用する変額保険は、現代に適した保険と言えるでしょう。また、変額保険には多くのメリットがあります。

①インフレ対策ができる

仮に2%でインフレが進んだ場合、20年後には現在100万円の価値は約67万円にまで目減りをしてしまいます。一般勘定の保険で1億円の保障を持っていた場合、20年後に亡くなった時は約6700万円になってしまいます。インフレが進む中で保障を増やすと保険料も膨らんでしまいますが、変額保険は株などで運用されるため、運用成果によって死亡保障金額が増え、インフレ対策が可能です。このため、十分な保障を維持し続ける変額保険は、企業経営を支える合理的な保険と言えるでしょう。

②事業承継・相続税対策ができる

会社経営者にとって、世代交代や自社株の分配は重要な課題です。事業承継や相続税対策が必要になります。会社の成長に伴い自社株の評価も高まるため、死亡保険金で自社株対策をしていても将来的に不足する可能性があります。変額保険はこのような場面でも有効です。経営者が存命中に事業承継を行う場合でも、運用成果に応じた解約返戻金を受け取ることで納税資金として利用できます。

③現金に名前をつけることが可能

財産を次の世代に継承する場合、現金で残すと遺留分を巡る相続争いの火種となる可能性があります。NISAやiDeCoなどで積み立てた財産も遺言を残さない限り、現金化した後は預金同様、積立てた金額を特定の人だけに遺すことができません。しかし、保険は受取人を指定できるため、現金を確保する手段として有効です。相続争いを減らすためにも、保険を活用することは経営者にとって非常に有効な手段です。

法人保険の新たな形

法人保険の新たな形

一般勘定の保険でも特別勘定の保険でも、保険契約時に設定された解約返戻金の割合で損金算入が可能です。保険は人生の中で高額な買い物であり、長期間に渡って継続します。保障を準備するための必要経費として捉えるか、保障を準備しながら資産を増やす投資として捉えるのかで、選択肢が広がります。

プロに相談をすることで、簡単に、シンプルに、自分の必要保障額が算出でき、現在加入している保険のメンテナンスも可能です。自分の会社や家族を守るために、「知らないこと」を無くすためにも、一度無料相談を受けることをお勧めします。

和 秀哉

3級ファイナンシャル・プランニング技能士
保険業界で8年以上の経験を持ち、深い専門知識と豊富な実務経験を活かして、お客様のニーズに合わせたライフプランの策定と提案を行っています。さらに、管理職としての経験もあり、チームの人材育成に注力。お客様一人ひとりに最適な解決策を提供できるよう、プロフェッショナルなライフプランナーを育成してきました。

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