車を運転する方なら必ず耳にする「自賠責保険」。
法律で加入が義務付けられている保険ですが、補償される範囲や事故が起きたときの請求方法まで正確に把握している方は多くないかもしれません。
この記事では、自賠責保険の補償内容や保険料、加入方法、事故時の請求方法まで、初めての方にもわかりやすく解説します。
自賠責保険とは?基本の4ポイント
自賠責保険は、正式には「自動車損害賠償責任保険」といい、車やバイクを運転するすべての方に加入が義務付けられている保険です。
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)とは
加入義務がある強制保険
補償内容は法令で定められている
保険料は車種・期間ごとに一律
車の購入時や車検時に加入するのが一般的
以降では、4つのポイントをひとつずつ詳しく解説します。
自賠責保険の加入義務と罰則
自賠責保険は、自動車損害賠償保障法によって、すべての自動車に加入が義務付けられている保険です。「強制保険」とも呼ばれます。
未加入のまま運転した場合は法律により罰せられ、違反点数の付与や免許停止処分の対象となります。
加入義務がある車両の種類
加入義務があるのは、ナンバープレートが交付されるすべての車両です。

未加入・証明書不携帯の罰則
自賠責保険に加入せずに運転した場合や、自賠責保険証明書を携帯せずに運転した場合は、それぞれ次の罰則が科せられます。
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
自賠責保険に未加入で運転 | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 違反点数6点 即座に免許停止処分 |
自賠責保険証明書を携帯していない | 30万円以下の罰金 |
自賠責保険に加入していても、証明書を車内に携帯していなければ罰金の対象となります。証明書を紛失した場合は、契約している保険会社で再発行の手続きができます。
違反点数6点は1回の違反で免許停止処分となる点数のため、未加入のまま運転すれば即座に運転できなくなることを意味します。さらに事故を起こした場合は、本来であれば自賠責保険から支払われる賠償金がすべて自己負担になります。
車検が必要な車両は、車検を通すために自賠責保険の加入が必要な仕組みになっているため、車検期間中に自賠責保険が切れることは通常ありません。一方、車検制度のない125cc以下のバイクや原動機付自転車は、自分で更新管理をしないと有効期限切れに気付かないままになる場合があるため注意が必要です。
自賠責保険の補償内容
自賠責保険の補償内容は法令で定められており、どの保険会社で加入しても内容は同じです。
事故の被害者を救済することを目的としているため、補償される範囲は限られています。
補償される事故・補償されない事故
自賠責保険で補償されるのは、事故相手のケガや死亡など、人身事故による損害のみです。
補償される
事故相手のケガ・死亡・後遺障害
同乗者のケガ・死亡・後遺障害
補償されない
運転者自身のケガ
事故相手の車や物の損害
自分の車の修理費
ガードレールや電柱など物の損害
単独の自損事故
https://ins.minkabu.jp/columns/vehicle-insurance-221210
死亡・後遺障害・傷害の支払限度額
自賠責保険から受け取れる金額には、損害の種類ごとに上限が定められています。
| 損害の種類 | 支払限度額 |
|---|---|
傷害による損害(治療費・休業損害・慰謝料など) | 最高120万円 |
後遺障害による損害 | 程度に応じて75万円〜4,000万円 |
死亡による損害 | 最高3,000万円 |
後遺障害については、神経系統や精神・胸腹部臓器に著しい障害が残り介護が必要な場合は、常時介護で4,000万円、随時介護で3,000万円が上限となります。それ以外の後遺障害は、程度に応じた等級(第1級〜第14級)によって75万円〜3,000万円が上限となります。
傷害120万円の内訳
「傷害による損害は120万円まで」とまとめて表記される場合がありますが、これは治療費だけの上限ではありません。
治療関係費・文書料・休業損害・慰謝料の合計で120万円が上限となります。
| 項目 | 内容 | 支払基準の例 |
|---|---|---|
治療関係費 | 治療費・看護料・諸雑費・通院交通費・診断書発行料など | 治療に要した必要かつ妥当な実費 |
文書料 | 交通事故証明書・住民票などの発行手数料 | 発行に要した実費 |
休業損害 | 事故のケガで発生した収入の減少 | 原則1日6,100円(立証により1日19,000円が上限) |
慰謝料 | 交通事故による精神的・肉体的な苦痛に対する補償 | 1日4,300円×対象日数 |
たとえば入院や通院が長引いた場合、治療費だけでなく慰謝料や休業損害も合算されるため、120万円の上限に達してしまうケースもあります。重傷の場合は自賠責保険だけでは賄いきれない場合があります。
重大な過失がある場合の減額
事故の被害者側に重大な過失があった場合、支払われる保険金が減額される仕組みになっています。これを「重過失減額」といいます。
| 被害者の過失割合 | 傷害の場合の減額 | 後遺障害・死亡の場合の減額 |
|---|---|---|
7割未満 | 減額なし | 減額なし |
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 2割減額 | 3割減額 |
9割以上10割未満 | 2割減額 | 5割減額 |
被害者の過失が10割の場合は、自賠責保険の対象外となります。
被害者の過失が7割未満であれば減額はありませんが、7割以上になると保険金が減らされる扱いになります。
国土交通省告示「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」
自賠責保険の保険料
自賠責保険の保険料は、車種と保険期間ごとに金額があらかじめ決められており、どの保険会社で加入しても同じ金額です。
これは、自賠責保険が国の制度に基づく強制保険で、保険料率も損害保険料率算出機構によって一律に算出されているためです。
自家用乗用車・軽自動車・バイクの保険料例
主な車種の保険料は次の通りです。
| 車種 | 12か月 | 24か月 | 36か月 |
|---|---|---|---|
自家用乗用自動車 | 11,500円 | 17,650円 | 23,690円 |
軽自動車(検査対象車) | 11,440円 | 17,540円 | 23,520円 |
小型二輪自動車(250cc超) | 7,100円 | 8,760円 | 10,490円 |
軽二輪(125cc超〜250cc以下) | 7,100円 | 8,920円 | 10,710円 |
原動機付自転車(125cc以下) | 6,910円 | 8,560円 | 10,170円 |
36か月といった長期契約のほうが、12か月ごとに更新するよりも1か月あたりの保険料が安くなる仕組みになっています。
なお、沖縄県や離島地域では本土と異なる料率が適用されます。たとえば原動機付自転車の場合、離島地域・沖縄県では本土より低い料率が設定されています。詳しくは契約する保険会社または下記の参照元で確認できます。
2026年11月以降の新料率について
自賠責保険の基準料率は、損害保険料率算出機構が毎年検証を行い、必要に応じて改定されています。2026年4月に新たな基準料率が届け出られ、2026年11月1日以降に保険期間の始期を有する契約から新料率が適用されます。
2026年11月以降はすべての車種で保険料が引き上げられ、たとえば自家用乗用車の24か月契約では、17,650円から18,560円へと「910円」の引き上げとなります。
新車を購入する場合や保険を更新する場合は、契約の始期が2026年11月以降になるかどうかで適用料率が変わるため、契約時に確認するとよいでしょう。
自賠責保険の加入方法
自賠責保険は、損害保険会社や販売店、共済組合などで加入できます。車種によってはコンビニやインターネットでも手続きが可能です。
加入できる場所・必要なもの
自賠責保険は次のような場所で加入手続きができます。
損害保険会社の本店・支店
保険代理店
車・バイクの販売店
自動車整備工場・車検センター
一部のガソリンスタンド
共済組合(JA共済・全労済など)
250cc以下のバイク(軽二輪・原付)や特定小型原動機付自転車は、一部のコンビニやインターネットでも加入できます。
自賠責「保険」と「共済」の違い
自賠責の制度には「自賠責保険」と「自賠責共済」の2種類があります。
自賠責保険:損害保険会社が取り扱う
自賠責共済:JA共済(農業協同組合)などの共済組合が取り扱う
呼び方や取扱機関は異なりますが、いずれも自動車損害賠償保障法に基づく制度で、補償内容や保険料(共済掛金)は同じです。どちらに加入するかは、契約者が自由に選ぶことができます。
特定小型原動機付自転車(電動キックボード)の扱い
2023年7月の法改正により、一定の基準を満たす電動キックボードは「特定小型原動機付自転車」として区分され、自賠責保険への加入が義務付けられています。
特定小型原動機付自転車の自賠責保険は、一部のコンビニやインターネットでも加入できます。販売店で購入する場合は、購入時にあわせて手続きをするのが一般的です。
事故が起きたときの自賠責保険の使い方
実際に事故が起きたとき、自賠責保険はどう請求すればよいのでしょうか。自賠責保険の請求方法には3種類あり、状況によって使い分けます。
| 請求方法 | 請求する人 | こんなときに使う |
|---|---|---|
加害者請求 | 加害者 | 加害者が被害者に賠償金を支払ったあとに、自分が加入する自賠責保険の保険会社へ請求 |
被害者請求 | 被害者 | 加害者から賠償を受けられない場合などに、加害者が加入する自賠責保険の保険会社へ直接請求 |
仮渡金 | 被害者 | 治療費や葬儀費など当座の費用がすぐに必要なとき |
自賠責保険の場合は、加害者・被害者どちらからでも請求できる仕組みになっています。それぞれの方法を順番にお伝えします。
加害者請求とは
加害者請求は、事故を起こした加害者本人が、自分が加入する自賠責保険の保険会社へ自賠責保険金を請求する方法です。
加害者が被害者へ治療費や賠償金を支払ったあとに、その金額を保険会社へ請求して受け取る流れになります。実際に支払った金額の範囲内で請求できる仕組みです。
なお、加害者が任意保険にも加入している場合は、任意保険会社が自賠責保険分も含めて一括で対応する「一括払制度」が利用される場合が一般的です。この場合、加害者自身が個別に自賠責保険へ請求する手間は省かれます。
被害者請求とは
被害者請求は、事故の被害者が、加害者の加入する保険会社へ直接、損害賠償額を請求する方法です。
加害者が賠償に応じない場合や、加害者が任意保険に未加入で示談が進まない場合などに備えて用意されている制度です。
被害者が自分で書類を準備して請求する必要はありますが、加害者の対応を待たずに損害賠償額を受け取れる仕組みになっています。
仮渡金とは
仮渡金(かりわたしきん)は、治療費や葬儀費など当座の費用に充てるため、損害額が確定する前に一定の金額を先に受け取れる制度です。
通常、事故の損害賠償額は示談の成立や治療の終了を待って確定するため、受け取りまでに数か月かかる場合があります。仮渡金は、その間の経済的な負担を和らげる目的で設けられています。
仮渡金として請求できる金額
| 被害の状況 | 金額 |
|---|---|
死亡の場合 | 290万円 |
傷害の場合(程度に応じて) | 5万円・20万円・40万円のいずれか |
仮渡金は被害者が請求する制度で、加害者の同意は必要ありません。
請求できる金額は法令で定められた一定額で、後日確定する損害賠償額から差し引かれる扱いになります。仮渡金が確定した賠償額を上回った場合は、超過分を返還する必要があります。
仮渡金は「もらえるお金」ではなく「立て替えとして先に受け取るお金」という性格のため、最終的な精算が必要になる点には注意が必要です。
自賠責保険の請求権には時効がある
自賠責保険の請求には、3年の時効が定められています。
期間を過ぎると請求する権利が消滅するため、早めの手続きが大切です。
| 請求の種類 | 時効の起算日 |
|---|---|
加害者請求 | 損害賠償金を支払った日の翌日から3年 |
被害者請求(傷害) | 事故発生日の翌日から3年 |
被害者請求(後遺障害) | 症状固定日の翌日から3年 |
被害者請求(死亡) | 死亡日の翌日から3年 |
事情があって請求が遅れる場合は、時効を更新する手続きがあります。詳しくは加害者が加入する保険会社へ確認するとよいでしょう。
自賠責保険と任意保険の違い
自賠責保険のほかに、加入が任意の「任意保険」があります。一般的に「自動車保険」として広く知られているのは、こちらの任意保険のことです。
https://ins.minkabu.jp/columns/car-insurance-structure-0330
補償範囲・補償金額の違い
自賠責保険と任意保険では、補償される範囲や金額が異なります。
| 項目 | 自賠責保険 | 任意保険 |
|---|---|---|
加入義務 | あり(強制保険) | なし |
補償の対象 | 事故相手・同乗者の人身損害のみ | 事故相手の人身・物損/自分のケガ/自分の車など、契約内容により幅広い |
補償金額 | 限度額あり (傷害120万円・死亡3,000万円・後遺障害4,000万円まで) | 対人・対物賠償は無制限の設定も可能(その他は契約内容により異なる) |
保険料 | 車種・期間ごとに一律 | 年齢・等級・補償内容により異なる |
自賠責保険は事故相手や同乗者の人身損害が対象で、自分自身のケガや自分の車の修理費は補償されません。これらに備えるには、任意保険を検討する方法があります。
事故時はどちらを使う?
自賠責保険と任意保険の両方に加入している場合、事故が起きたときは自賠責保険でカバーできる範囲を優先的に使い、不足分を任意保険で補うのが基本的な仕組みです。
ただし実際の手続きでは、加害者が任意保険にも加入している場合、任意保険会社が自賠責保険分も含めて一括で対応する「一括払制度」が利用される場合が一般的です。被害者が自賠責保険と任意保険のそれぞれに別々に請求する手間はありません。
交通事故では賠償額が1億円を超える判例もあり、自賠責保険の限度額(死亡3,000万円・後遺障害4,000万円)だけでは不足する場合があります。不足分に備えるには、任意保険で補償を準備しておくと安心です。
https://ins.minkabu.jp/columns/voluntary-car-insurance-230208
自賠責保険についてよくある質問
自賠責保険を使うと保険料は変わる?
自賠責保険の保険料は車種と保険期間ごとに一律で決められているため、保険金を請求しても保険料が変わることはありません。
任意保険の場合は、事故の内容によっては等級が下がり、翌年度以降の保険料が上がる仕組みになっています。
https://ins.minkabu.jp/columns/downgrade-accident-insurance-230519
自賠責保険と任意保険ではこの点が異なります。
即日加入はできる?
損害保険会社の窓口や代理店で手続きをすれば、書類が揃っていれば即日で加入できます。
車・バイクの販売店、自動車整備工場、車検センターは保険代理店を兼ねていることが多いため、購入や車検のタイミングで一緒に手続きをするのが一般的です。
また、250cc以下のバイクや原動機付自転車、特定小型原動機付自転車は、一部のコンビニやインターネットでも即日加入が可能です。
自賠責保険にしか入っていない相手と事故になったらどうなる?
事故の相手が自賠責保険にしか加入していない場合、相手から受け取れる補償は自賠責保険の限度額まで(傷害120万円・死亡3,000万円・後遺障害4,000万円)となります。
これを超える損害が発生した場合、不足分は加害者本人に直接請求することになります。ただし加害者に支払い能力がなければ、回収が難しい場合もあります。
このような事態に備えるため、ご自身の任意保険で「無保険車傷害保険」や「人身傷害保険」を準備しておく方法があります。いずれも、相手の保険状況に関係なく、自分や同乗者の損害を補償できる保険です。
まとめ
自賠責保険について、要点をお伝えしました。
自賠責保険は車やバイクを運転するすべての方に加入が義務付けられた強制保険
補償の対象は事故相手や同乗者の人身損害で、限度額が定められている(傷害120万円・死亡3,000万円・後遺障害4,000万円)
保険料は車種・期間ごとに一律で、どの保険会社で加入しても同じ金額
事故が起きたときの請求方法には加害者請求・被害者請求・仮渡金の3種類がある
自分自身のケガや車の修理、相手の物への損害は自賠責保険では補償されない
自賠責保険は被害者救済を目的とした基本的な制度ですが、補償範囲や金額には限りがあります。自分自身のケガや、相手の車や物への損害にも備えるには、任意保険を検討する方法があります。