個人事業主のトラック運転手やトラック事業者ならば、一度は考えなければいけないのが「自動車保険への加入」です。
この記事では、こうした悩みを解決すべく「トラックに必要な自動車保険と補償内容」をわかりやすく解説します。
事前知識がなくても「納得のゆく自動車保険選び」ができるよう説明しているので、安心して読み進めていただければ幸いです。
トラックと一般乗用車で自動車保険に違いはある?
結論、トラックであっても一般乗用車であっても、自動車保険に大きな違いはありません。利用できる補償もほとんど同じです。
大きく異なる点としては、事業用のトラックの方が事故リスクが高くなるため「保険料が割高になること」くらいです。
では、トラックの場合は「どの保険・補償」を付保すべきなのでしょうか。トラック事業者が加入しなければいけない・加入すべき自動車保険は以下の2種類です。
トラック事業者が加入すべき自動車保険
- 自賠責保険
- 任意保険(自動車保険と聞いて思い浮かべる各社が提供している保険商品)
トラックを含め強制加入なのが自賠責保険
トラックを含む全ての車は「自賠責保険」への加入が義務付けられています。
自賠責保険とは、交通事故による被害者を救済するために、加害者が負うべき経済的な負担を補てんすることにより、基本的な対人賠償を確保することを目的とした保険のこと。
この自賠責保険では、相手を死傷させてしまった際に一定額の保険金が支払われます。ただし、人身事故による被害のみ対応しているため「対物等の被害額」は補償されません。
損害の範囲 | 支払限度額(被害者1名あたり) | |
---|---|---|
傷害による損害 | 治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料 | 最高120万円まで |
後遺障害 による損害 |
逸失利益、慰謝料等 | 神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害を残して介護が必要な場合 常時介護のとき:最高4,000万円 随時介護のとき:最高3,000万円 後遺障害の程度により 第1級:最高3,000万円~ 第14級:最高75万円まで |
死亡による損害 | 葬儀費、逸失利益、慰謝料 (本人および遺族) |
最高3,000万円まで |
死亡するまでの 傷害による損害 |
(傷害による損害の場合と同じ) | 最高120万円まで |
トラックの自賠責保険の保険料相場はいくら?
トラックの自賠責保険の保険料相場はいくらくらいなのでしょうか。
以下に「車種・保険期間(本土用)別の保険料一覧」を記載しました。
事業用の方が、自家用よりも保険料が高くなるので注意しましょう。とはいえ、強制保険なので自賠責保険で節約する方法は残念ながらありません。
強いて言えば、保険期間を長めに設定したほうが「1年あたりの自賠責保険料」は安くなります。
自賠責保険で補償される範囲・補償されない範囲
では、自賠責保険ではどのような事故が補償されるのでしょうか。自賠責保険の補償範囲を確認してみましょう。
自賠責保険で補償されるのは「人身事故(交通事故で相手をケガさせたり、死亡させたりすること)」のみです。また、補償の対象は「被害者」なので、ご自身の治療費や車の修繕費等は補償されません。
保険金が支払われない(補償されない)例
- 運転者自身のケガ
- 自動車の修理代
- 単独の人身事故(例:電柱に衝突してケガをしたなど)
- 物の損害
自賠責保険は、被害者を救うための「最低限の補償しか備わっていない」と覚えておきましょう。
そして、自賠責保険だけでは「心もとない」と感じますよね。だからこそ後述する「任意保険への加入」が必要になるのです。
トラック事業者なら加入しておきたいのが任意保険|任意保険の種類は何がある?
事業用トラックは、自家用車と比べて「運転機会が多く・距離も長くなる」ため、事故のリスクも高まります。
仮に、自賠責保険のみに加入していて任意保険に入っていなかった場合、思わぬ賠償金の支払いを迫られるリスクがあるということです。
賠償事例1
高速道路上の事故で約33億円の支払い命令
・訴訟内容
首都高を走っていたタンクローリーが炎上し、損害賠償請求訴訟が起こされた。運送会社は共済保険に加入済みで、およそ10億円の支払いをすでに原告に対して行っていたが、最終的に32億8千万円の賠償金支払い命令が下された。
賠償事例2
輸送中の事故で1億3千万円の賠償
・訴訟内容
呉服や毛皮など高価な商品を輸送中にトラック運転手が追突事故を起こし、輸送品が全焼。荷主が運送会社に対して2億6千万円超の損害賠償請求訴訟を起こした。そもそも運送会社は輸送品が億単位の荷物だと知らされていなかったが、賠償金は結果的に1億3千万円に上った。
数億円単位の賠償金はとても払える金額ではない人がほとんどのはずです。だからこそ、トラック事業者であれば「任意保険で不測の事態・事故に備えること」が必要なのです。
主な任意保険の種類と補償内容|任意保険に加入するとどこまでカバーできる?
では、任意保険にはどんな種類(補償)が用意されているのでしょうか。主な任意保険の種類は以下の通りです。
※その他にもオプションで選べる特約も商品ごとに用意されています。
保険の種類 | 対象 | 基本補償に含まれるか |
---|---|---|
賠償責任保険(対人・対物) | 事故の相手 | ○ |
傷害保険 | 自分 | ○ (人身傷害保険) |
車両保険 | 車(契約車) | 自分で追加 |
無保険車傷害保険 | 自分 | 自分で追加 |
運送業者貨物賠償責任保険 | 貨物 | 別途加入 |
それぞれの保険では「何が補償されるのか」を確認していきましょう。
対人賠償保険
対人賠償保険は、自動車事故で他人を死傷させてしまった場合に、加害者が負う損害賠償責任を補償する保険です。自賠責保険で支払われる限度額を超える部分について、保険金が支払われます。
主な補償内容
- 死亡 :相手の死亡により発生する損害
- 後遺障害:相手が負った後遺障害による損害
- 休業損害:相手が事故によって休業せざるを得なくなった場合の損害
- 医療費 :相手の治療費
- 葬儀費用:相手の死亡に伴う葬儀費用
- その他 :精神的損害慰謝料など
人に対する賠償責任は莫大な金額になることがあるため、保険金の限度額は「無制限」に設定することがおすすめです。
対物賠償保険
対物賠償保険は、自動車事故で他人の物や建物を壊してしまった場合に、加害者が負う損害賠償責任を補償する保険です。
主な補償内容
- 相手方の車両:相手の車やバイクなどの修理費用
- 建造物:電柱やガードレールなどの修理費用
- その他:看板や植木などの修理費用
対物賠償保険も、保険金額は「無制限」にすることをおすすめします。
人身傷害保険
人身傷害保険は、契約車に搭乗している人だけでなく、契約車以外に乗車しているときや、歩行中の事故もカバーできる保険です。
人身傷害保険は、自動車事故で ご自身や同乗者が 死傷した場合の損害を補償する保険です。ケガだけでなく死亡や後遺症が残った場合にも以下の補償が受けられます。
主な補償内容
- 休業損害 :仕事を休まなければならなくなった場合の収入減少
- 治療費 :治療にかかった費用
- 精神的損害:事故による精神的な苦痛に対する慰謝料
- 介護料 :後遺障害により介護が必要になった場合の費用
- 逸失利益 :将来得られるはずだった収入
車両保険
車両保険は、ご自身の契約車両が事故や盗難などで損害を受けた場合に、修理費用などを補償する保険です。
車両価格は減価償却していくものの、車両のローン残高が多いうちは付保しておいたほうが安心です。
主な補償内容
- 事故:自身の過失による事故や、相手方の過失が不明な事故、当て逃げなどによる損害
- 盗難:車両が盗難された場合
- 全損:車両が修理不能な状態になった場合
無保険車傷害保険
無保険車傷害保険は、事故相手が自動車保険に加入していないなど、 十分な賠償を受けられない場合に、ご自身や同乗者が死亡または後遺障害を被った時の損害を補償する保険です。
無保険車傷害保険は、保険会社によって特約として補償したり、人身傷害保険の補償内容に含めている場合もあります
主な補償内容
- 死亡:死亡した場合の損害
- 後遺障害:後遺障害が残った場合の損害
一般社団法人 日本損害保険協会:無保険車傷害保険は、どのような保険ですか。
運送業者貨物賠償責任保険
最後に紹介するのは、一般的な自動車保険とは別に加入できる「運送業者向け」の貨物保険です。
運送業者貨物賠償責任保険は、運送業者が輸送中に発生した貨物の損害について、荷主や元請運送人に対して負う賠償責任を補償する保険です。
運送業者は、貨物輸送中に貨物が損害を受けた場合、法律上または契約上、荷主に対して損害賠償責任を負います。この保険は、そのような損害賠償責任を補償することで、運送業者の経済的な損失を補います。
主な補償内容
- 運送中の貨物の全部または一部の損傷
- 貨物の滅失
- 荷物の引渡し遅延による損害
- 汚損、盗難、水濡れ、破損など、あらゆる偶然な事故による損害
事業としてトラックを利用するのであれば、加入しておいたほうが良い保険のひとつといえます。貨物をダメにしてしまった際の賠償金は数千万円単位になることもありますからね。
https://ins.minkabu.jp/columns/car-cargo-insurance-240926
以上が、トラックに必要な自動車保険の主な種類です。これらの基本的な保険にプラスして、ご自身の事業形態や考えられるリスクに応じて特約等を追加していきましょう。
「自分だと必要な補償や特約を選ぶ自信がない」という場合には、見積もり機能を通じて「自動車保険のプロ」に相談してみましょう。
契約方法はフリート契約とノンフリート契約の2種類
トラック事業者で「複数台」のトラックを保有している場合には、補償内容だけでなく「契約方法」も考える必要があります。
自動車保険には、以下2種類の契約方法があるので覚えておきましょう。
- フリート契約
- ノンフリート契約
ノンフリート契約 | フリート契約 | |
---|---|---|
対象となる車両数 | 9台以下 | 10台以上 |
割引 | 車両数に応じた割引なし | 台数に応じた割引あり |
契約・管理 | 車両ごとに個別契約 | 一括で契約・管理 |
車両管理 | 自身で管理 | 保険会社がサポート |
フリート契約とは
フリート契約とは、複数の車両をまとめて自動車保険に加入する契約です。一般的には、10台以上の車両を所有している場合に選ぶことができる契約方法です。
フリート契約のメリット
- 台数に応じた割引が適用されるため、車両保険料を大幅に節約できる
- 一括で契約・管理できるので、事務負担を軽減できる
- 事故発生時の対応を保険会社に一任できる
- 従業員の車両管理を徹底できる
フリート契約のデメリット
- すべての車両に同じ補償内容が適用される
- 車両入れ替えが頻繁な場合、契約内容の変更手続きが煩雑になる
- 一部の保険会社では、フリート契約を取り扱っていない
フリート契約に適している事業者
- 営業車両や配送車両など、複数の車両を所有する企業
- 車両管理を徹底したい企業
- 事務負担を軽減したい企業
ノンフリート契約とは
ノンフリート契約とは、自動車保険に加入する車両が9台以下の場合の契約を指します。一般的に、個人や小規模な事業者が加入する自動車保険がこの形態となります。
自家用車の契約をする際と変わらないため、イメージがしやすいのがノンフリート契約です。保有台数が10台未満の場合は、このノンフリート契約をすることになります。
トラックの任意保険は乗用車より割高になる?
トラックの任意保険は、乗用車より割高になります。しかし、加入しないリスクの方が大きいことを理解しておきましょう。
任意保険に加入しないリスク
- 車体が大きい・重いため、事故発生時の損害額が大きくなる可能性が高い
- 積載物 による損害リスクがある
- 業務用途 で使用されることが多いため、走行距離や事故のリスクが高くなる
自家用車よりも割高になる点はネックですが、必要経費として考えるしかありません。また、トラックの自動車保険料を少しでも抑える方法もあります。
トラックの自動車保険料を抑えるための方法は?
トラックの自動車保険料は、乗用車よりも高額になる傾向があります。しかし、以下で紹介する方法を実践することで、保険料を抑えることができます。
- 無事故を心がける(保険料が長期的に割安になっていくため)
- 利用用途と補償内容を考慮して必要十分な補償を選ぶ
- 保険料の支払い方法を工夫する
それぞれの具体的な節約方法を解説します。
無事故を心がける(保険料が長期的に割安になっていくため)
これは最も基本的な方法ですが、無事故を維持することで、保険等級が上がり、長期的に保険料が割安になります。安全運転を心がけ、事故を起こさないようにしましょう。
利用用途と補償内容を考慮して必要十分な補償を選ぶ
トラックの利用用途や走行距離、積載物などを考慮し、必要十分な補償を選ぶことで、保険料を抑えることができます。
ただ、必要十分な補償を選ぶのはなかなか骨の折れる作業です。特に「初めてトラックの自動車保険を選ぶ」という場合には、保険のプロと相談してから保険商品・補償を選ぶことをおすすめします。
保険料の支払い方法を工夫する
一括払いにすると割引が適用される場合があるので、検討してみましょう。また、クレジットカード払いにすることで、ポイントが貯まるというメリットもあります。
これらの方法を実践することで、トラックの自動車保険料を節約することができます。ご自身の利用状況に合った方法を見つけて、賢く自動車保険を活用しましょう。
トラックの自動車保険の選び方|おすすめは一括見積もりでプロに相談すること!
トラックの自動車保険は、乗用車よりも高額な傾向があります。また、車両の種類や用途、積載物などによって、必要な補償内容も異なります。
そのため、自分に合ったトラックの自動車保険を選ぶことが重要です。また、目についた自動車保険に加入するのは少々リスキーです。
複数の保険会社から見積もりを取り、プランを比較検討することで、最適な保険を見つけることができます。各社で補償内容や保険料が異なるため、以下のポイントを比較しましょう。
- 補償内容
- 免責金額
- 保険料
- サービス内容
- ロードサービスの内容
- 事故対応の評判
安心して事業を始めるには、安心できる保険への加入が第一歩です。保険のプロに相談して、安心できる保険選びをしてみてはいかがでしょう。