生命保険と医療保険の違いは?選び方やメリット・デメリットについて解説

著者:みんかぶ編集室

監修:

松井 翔子

3級ファイナンシャル・プランニング技能士 / フィナンシャル・エージェンシー所属

生命保険と医療保険、どちらもCMなどで聞いたことがある方も多いでしょう。

ですが保険に加入すべきか考える際、両者の違いをきちんと理解しておく必要があります。自分にどんな保障が必要で、どんな特徴を持つ保険がぴったりなのか考えるためには、正しい理解が必要不可欠。

今回は、民間の保険でもメジャーな生命保険と医療保険について、違いやメリット・デメリット、選び方までわかりやすく解説していきます。

生命保険とは?

生命保険とは

まずは生命保険とは何なのかについて確認していきます。特に生命保険という言葉は複数の意味で使われることがあるため、ややこしく感じている方もいらっしゃるでしょう

生命保険は主に次の2つの意味で使われます。

  • 様々な保険の総称
  • 死亡保険

さまざまな保険の総称

一般的に「生命保険」は、様々な保険の総称として使われることが多いです。具体例としては以下のようなものがあげられます。

  • 医療保険
  • 介護保険
  • 生存保険

上記のような生命保険会社が販売する保険商品をまとめて指す言葉として「生命保険」が使われる場合が比較的多いでしょう。

死亡保険という意味で使われることも

しかし「生命保険」は、場合によっては死亡保険を意味する言葉として使われる場合もあります。

死亡保険とは被保険者がなくなった場合において、残された家族に対し保険金が支払われる保険。死亡保険に入ることで、遺族の生活費用や葬儀費用、残された子供の教育費用をカバーできます。

今回の記事で主に扱うのは、死亡保険としての生命保険です。文脈やサイトによって使われる意味が異なるためややこしくなってしまうかもしれませんが、それぞれ区別して覚えておきましょう。

生命保険の種類

死亡保険としての生命保険には、主に次の3種類があります。

  • 定期保険
  • 終身保険
  • 養老保険

3つの保険の違いは「保障の対象となる期間(保険期間)の長さ」と「加入後にもらえるお金の有無」です。生命保険に加入することでもらえるお金としては、次の2つがあります。

  • 解約返戻金

生命保険を解約するともらえるお金

 

  • 満期保険金

保険期間が終わるまで生存することでもらえるお金

定期保険

定期保険とは、保障の対象となる期間(保険期間)が一定の長さに決められている保険です。保険料の支払い期間と保険期間は同じで、保険期間中だけ保険料の支払いが必要になります。

満期保険金は無く、解約返戻金が無い場合が多いのが、定期保険の特徴のひとつ。そのかわり、保険料は生命保険の中でも比較的低いです。

定期保険

終身保険

一方で、保険期間が一生涯続くタイプの生命保険のことを終身保険といいます

保障は被保険者が亡くなるまで続きますが、保険料の支払い完了時期は自分で決められるケースがあります。

保険料は定期保険や終身保険よりも高めですが、短期間で解約しない限り解約返戻金がもらえるタイプが一般的です。

終身保険

養老保険

養老保険も、定期保険と同じく保障が受けられるのは一定期間となります。しかし死亡時の保障に加え、養老保険では満期保険金が用意されています

満期保険金があるため、定期保険よりも保険料は高めに設定されていることが多いです。

養老保険とは

生命保険の種類については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。

医療保険とは?

医療保険とは

生命保険の概要について解説してきたところで、次に医療保険とはどのような保険なのかについてご紹介します。

医療保険は生命保険とは保障内容が大きく異なるため、きちんと区別して理解しましょう。

入院や手術の費用をカバーする保険

医療保険は、病気やケガによって発生する医療費をカバーするための保険です。さまざまなタイプの保険商品が存在しますが、メインの保障内容としては以下の2つが挙げられます。

  • 入院給付金

契約時に決めた「1日あたりの金額」を、入院日数に応じて受け取れる

 

  • 手術給付金

手術を受けたら、一定の金額を受け取れる

日本では公的医療保険によって個人が支払う医療費は大きく抑えられます。しかしすべての費用が公的医療保険の対象ではなく、入院時の差額ベッド代や先進医療の技術料などは自分で支払わなければなりません。

民間の医療保険に入れば、そのような自己負担費用にもさらに手厚く備えられます。

がんに特化した医療保険も

医療保険の中でもがんに特化したタイプの保険が「がん保険」です


医療保険 がん保険
保障の対象 病気(がん含む)・ケガ  悪性新生物・上皮内新生物(一部例外あり) 
基本的な保障内容 入院給付金
手術給付金
など 
がん診断給付金
がん入院給付金
がん手術給付金 
保険料 がん保険よりも高め  医療保険よりも低め 

上記のように、保障の対象だけでなく保障内容や保険料にも違いがあります。

医療保険とがん保険の違いについて、詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

生命保険と医療保険の違い

ここからは、生命保険と医療保険の違いをさらに明確化してみましょう。

主に以下の3つの観点から、どのような違いがあるのかについてご紹介していきます。

  • 保険の目的
  • 保障内容
  • 保険金の受け取り方

生命保険  医療保険 
保険の目的  残された家族の経済的負担を抑える  医療費の支払いによる経済的負担をカバーする 
保障内容  死亡保険金
満期保険金 
入院給付金
手術給付金 など 
保険金の受け取り方  受取人を指定する、もしくは法定相続人に振り込まれる  被保険者の入院 or 手術などが終わった後、所定の手続きをして受け取る 

保険に加入する目的

まずは、生命保険と医療保険それぞれの目的について解説します。

生命保険は、被保険者が亡くなってしまった場合に、残された家族の経済的な負担を和らげるためにお金が支払われます。

一方で医療保険は、被保険者が支払う医療費による経済的な負担をカバーするタイプの保険。高額で支払いきれない医療費や、入院・手術によって減少してしまう収入を補填できます。

一言でまとめるなら、以下のようになるでしょう。

  • 生命保険

「残された家族の経済的負担をカバー」が目的

 

  • 医療保険

「医療費による被保険者本人の負担をカバー」が目的

「誰にお金を残すのか」が目的における最大の違いでしょう

保障内容

目的が異なる保険であるため、生命保険と医療保険では保障内容も異なります

生命保険では、被保険者が亡くなると生命保険金が支払われます。生命保険文化センターの調査によると、生命保険金の平均は2,027万円です。

一方の医療保険では、入院給付金や手術給付金がメインです。契約内容に基づき、一定の金額を受け取ることが可能です。入院給付金の場合、日額を自分で選択できます。

参考:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」

保険金や給付金の受け取り方

生命保険の場合、被保険者が亡くなってから保険金が支払われます。保険金を受け取れるのは本人ではないため、受取人をあらかじめ決めておくのがおすすめです。

一方の医療保険では、入院や手術があった際に被保険者本人が給付金を受け取ります。入院・手術が終わったら保険会社に連絡し、必要な手続きを行うことで被保険者に給付金が支払われます。

生命保険に加入するメリット・デメリット

生命保険についての理解が深まってきたところで、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのかについて確認しておきましょう。

生命保険に加入すべきかを考える上で、メリットだけでなくデメリットについてもチェックしておくのが重要です。

生命保険に加入するメリット  生命保険に加入するデメリット 
  • 残された家族にお金を準備できる
  • 貯蓄性のある保険が利用できる 
  • 保険料の支払いが必要になる
  • インフレによる影響を受けやすい 

生命保険に加入するメリット

生命保険に加入するメリットとして、次の2つが挙げられます。

  • 残された家族にお金を準備できる
  • 貯蓄性のある保険が利用できる

残された家族にお金を準備できる

生命保険の最大のメリットは、残された家族が経済的な安心を得られることです。

特に一家の主な収入源となる人が亡くなると、残された家族は大きな経済的負担を強いられます。しかし生命保険金を用意すれば、遺族の生活を支え、子どもの教育資金や家のローンの返済、日々の生活費など、様々な費用をカバーできます。

貯蓄性のある保険が利用できる

生命保険の中には、貯蓄性の高い商品もあります。

解約返戻金や満期保険金がもらえる保険なら、一定の金額が保険契約者やその遺族に支払われます。そのため、長期的な貯蓄計画の一環として活用することが可能です

老後の生活費や、子どもの教育資金などお金が必要になるタイミングに合わせて、満期保険金や解約返戻金を利用するのがおすすめです。

貯蓄するのが苦手な人や、何かあっても確実にお金を用意しておきたいと感じる方にとっては大きなメリットですね。

生命保険に加入するデメリット

一方で、生命保険に加入するデメリットは以下のとおりです。

  • 保険料の支払いが必要になる
  • インフレによる影響を受けやすい

保険料の支払いが必要になる

生命保険に加入する最大のデメリットは、定期的に保険料を支払わなければならない点です。

保険金額、加入者の年齢などによって異なりますが、一般的に保険料は毎月数千円から数万円程度となることが多いです。年間にすると数十万円にのぼるケースも多いでしょう。

もしものときには心強い生命保険ですが、普段から一定額の支払いを続けなければなりません。ただし貯蓄性のある保険であれば、契約期間や加入年齢によっては支払った分のお金を回収することも可能です。

インフレによる影響を受けやすい

もうひとつのデメリットは、インフレによる影響です。

生命保険は通常、契約時に保険金額を決定します。しかし契約が長期間にわたると、その間の経済状況によって貨幣価値が変わるため、契約時に決めた保険金では不十分になる可能性があります。

もし大幅なインフレが発生してしまったら、インフレ前に決めた保険金では足りなくなってしまうでしょう。

特に若いうちに死亡保険を契約する場合は、将来の経済的な変動によるリスクについて理解しておく必要があります。

医療保険に加入するメリット・デメリット

医療保険に加入するメリットとデメリットについても確認しておきましょう。制度内容が異なる保険であるため、生命保険とは違ったメリットが得られます。

医療保険に加入するメリット 医療保険に加入するデメリット
  • 公的医療保険よりも幅広い保障が受けられる
  • 預貯金が不十分でも入院や手術に備えられる
  • 保険料の支払いが必要になる
  • 病気になってからでは加入できない場合もある

医療保険に加入するメリット

まずは、医療保険に加入することで得られるメリットから確認してみましょう。

  • 公的医療保険よりも幅広い保障が受けられる
  • 預貯金が不十分でも入院や手術に備えられる

公的医療保険よりも幅広い保障が受けられる

医療保険に加入することで、公的医療保険よりも幅広い治療や費用に対応できるようになります。

公的医療保険ではすべての費用がカバーされるわけではありません。差額ベッド代や、先進医療の技術にかかる費用といった特定の治療費は高額になるケースも少なくありません。

しかし公的医療保険では対象外となる費用に対しても、医療保険で備えられます

預貯金が不十分でも入院や手術に備えられる

預貯金だけで医療費を賄おうとすると、かなり大きな額が必要になることもあります。しかし預貯金が貯まる前から医療費を準備できるのも、医療保険に加入するメリットです

例えば、重い病気の治療や大掛かりな手術が必要になっても、医療保険に加入していれば、経済的な不安を大きく軽減できるでしょう。

貯蓄が少ない状態で医療保険に未加入の場合、病気やケガの内容によっては必要な費用が支払いきれず、治療内容の選択に影響が出てしまう可能性があります。

医療保険に加入するデメリット

一方で、医療保険のデメリットとしては次のようなものが挙げられます。

  • 保険料の支払いが必要になる
  • 病気になってからでは加入できない場合もある

保険料の支払いが必要になる

医療保険に加入すると、生命保険と同様に定期的な保険料の支払いが必要になります

保障の手厚さやカバー範囲によって異なりますが、毎月の家計に一定の負担がかかります。医療保険に加入すれば「もしものときの安心」を手に入れられますが、その分保険料とはトレード・オフとなります。

そのため「医療保険に入るのは損だ」と考える方もいらっしゃるでしょう。ただし医療保険はお守りとしての役割が強いため、医療保険が損かどうかは個人の考え方にもよります。

病気になってからでは加入できない場合もある

既に病気が発覚している場合や過去の傷病歴によっては、医療保険では加入が難しく、注意が必要でしょう。

医療保険に入る際には健康状態に関する審査があります。加入時点で病気が判明している場合や過去の傷病歴によって、審査で断られてしまう可能性が高いです。

そのため医療保険に加入したい場合は、健康なうちに早めに手続きをしておきましょう。

生命保険と医療保険のメリット・デメリットを比較

ここまで生命保険と医療保険のメリット・デメリットについてお伝えしてきました。改めて、両方の保険におけるメリット・デメリットを比較してみましょう。


生命保険  医療保険 
メリット 
  • 残された家族にお金を準備できる 
  • 貯蓄性のある保険が利用できる
  • 公的医療保険よりも幅広い保障が受けられる 
  • 預貯金が不十分でも入院や手術に備えられる 
デメリット 
  • 保険料の支払いが必要になる
  • インフレによる影響を受けやすい
  • 保険料の支払いが必要になる
  • 病気になってからでは加入できない場合もある

デメリットについては共通する部分があるものの、どちらも異なるメリットを持っています。どのようにして選べばいいか、悩んでしまいますよね。

生命保険や医療保険の選び方

生命保険や医療保険の特徴について詳しく説明してきたところで、いよいよ「おすすめの選び方」について解説していきます。

生命保険や医療保険をどのように選ぶかについては、ライフプランや個人のリスク観によって異なります。

そのため、おすすめの選び方は以下の2つです。

  • ライフプランに合わせて選ぶ
  • リスクの高さから選ぶ

ライフプランに合わせて選ぶ

ひとつ目の選び方は「ライフプランに合わせて選ぶ」です。

将来の予定や目標、家族構成の変化など、この先予想される変化に合わせて、最も適した保険を考えてみましょう。例えば……

  • まだ若く、これから貯蓄をしていく段階→病気や怪我による医療費をカバーする医療保険
  • 結婚や出産など、家族が増えるタイミング→家族の生活費などをカバーするための生命保険

上記のように、これからの計画や自身の状況にあわせて考えることで、人生設計に沿った保険選びが可能です。

リスクの高さから選ぶ

個人や家族にとってのリスクの大きさも、保険選びの重要な要素です。

例えば、特定の病気のリスクが高い場合、医療保険の必要性が高まります。また十分な貯蓄ができていない方も、支払いきれなくなる医療費に対応しておくのが望ましいでしょう。

さらに、家族構成の変化、特に結婚や出産においては、生命保険の必要性が高まります。家族が増えると、収入の柱となる人が亡くなった場合の経済的リスクも高まると考えられます。家族の経済的な安定を確保するために、生命保険の必要性が高くなるタイミングでしょう。

避けたい出来事やリスクを考えてみることで、必要な保険を考えやすくなりますね

生命保険や医療保険に入らないと後悔する?

保険に入らず後悔するかどうかは人によるため、結論はお伝えできません。

保険は基本的に、万が一の出来事に対するお守りのようなもの。そのため、実際に保険金や給付金を受け取る機会がなくても「損」とは言いきれません

大切なのは、自分や家族が抱く「将来に対する不安」の大きさを考慮し、適切な保険を選択することです。自力での備えだけでは大きな不安が残る場合、保険は大きな安心感をもたらしてくれます。

生命保険と医療保険を併用することも可能

より幅広いリスクに備えるために、生命保険と医療保険の両方に加入することも可能です

個人のライフスタイルや将来の計画に応じて、複数の保険を組み合わせることで、より充実した保障が得られます。中には、生命保険と医療保険が一体となった複合型の保険商品も存在します。

多くの人にとって、保険選びは難しいものです。特に家族構成や健康状態、将来の目標などが変わると、保険に対するニーズも変化します。そのため、生命保険と医療保険の両方を併用すれば、さまざまなリスクにも幅広く対応できるようになるでしょう。

保険料と保障のバランスに注意

保険を併用する際の最大の課題は、保険料の負担です。併用する分、支払う保険料も増えてしまいます。そのため、家計を圧迫しすぎないか、慎重に考えましょう。

将来の万が一のときのため備えても、今のうちから支払いがつらくなってしまっては元も子もありません。あくまで無理のない範囲で、保険を活用するようにしましょう。

迷ったら保険のプロに相談

それでも、保険選びには頭を悩ませてしまう方も多いはず。

決して安くはない金額の保険商品を決めるために、さまざまな情報をインプットする必要があります。各種保険の特徴、自分のライフプラン、保険会社や保険商品の情報など……。保険を選ぶのは、多くの方にとって難しい作業になります。

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