雷(落雷)の被害は火災保険で補償される?補償範囲から請求方法までわかりやすく解説

著者:みんかぶ編集室

監修:

太田 ひのき

2級ファイナンシャル・プランニング技能士 / フィナンシャル・エージェンシー所属

火災保険の見直しは今がチャンス!

2024年10月に、火災保険料の改定が行われました。

全国平均で参考純率が13%も引き上げられ、過去最大の上げ幅となりました。
保険会社によって保険料の引き上げ率が異なるため、見直せば保険料が安くなるケースも。満期が近づいたら、保険の見直しを検討しましょう。

年々、ゲリラ豪雨や台風などによる被害をニュースでよく目にするようになりました。そして、こうした豪雨の発生にともなって増えるのが雷(落雷)による被害です。

雷の観測と統計

気象庁:雷の観測と統計

確率こそ低いものの建物を直撃する可能性もありますし、近くに落ちた雷が原因で電化製品が故障してしまうことも考えられます。

こうした落雷の被害は「火災保険」で補償されるのでしょうか。この記事では、「落雷被害」が火災保険の補償対象になる場合とならない場合を解説します。

万が一被害に遭ってしまった場合に焦らなくて済むよう「保険金の請求手順」も紹介しているので、参考にしていただければ幸いです。

雷による被害(落雷等)の種類

雷による被害(落雷等)の種類

まずは、雷(落雷等)による被害にはどんな種類があるのかを確認しましょう。雷による被害の種類を把握することで、次の「補償される場合・されない場合」のイメージが明確になります。

主な雷の被害3種類

  • 落雷による家屋の損壊
  • 落雷が原因の火災
  • 落雷による電化製品の故障・損壊
落雷被害の種類 具体的な被害例
落雷による家屋の損壊
  • 落雷で屋根が破損してしまった
  • 落雷があたりカーポートが破損した
  • 物置に落雷があたり使えない状態になった
落雷が原因の火災
  • 落雷が原因で火事が発生した
  • 落雷が原因の火災が近隣家屋に飛び火してしまった
落雷による電化製品の故障・損壊
  • 落雷で電気が逆流して電化製品(テレビ、エアコン、PCなど)が故障してしまった

雷による被害で補償対象になるもの

雷による被害で補償対象になるもの

では、雷による被害で補償対象になるものは具体的にどんなものがあるのでしょうか。

前提として、火災保険の補償範囲は「火災保険の契約内容」によって異なります。具体的には「建物のみに火災保険をかけている場合」と「建物と家財の両方に火災保険をかけている場合」で異なります。

建物のみに火災保険をかけた場合

建物のみに火災保険をかけた場合の主な補償範囲

  • 屋根
  • 床・畳
  • 物置
  • 車庫・カーポート
  • 門や塀 など

基本的に、建物を含む敷地内に「設置されているもの」が補償の対象になります。ただし、土地そのものは対象に含まれないので覚えておきましょう。

建物+家財に火災保険をかけた場合

建物と家財に対して保険をかけている場合は、前述の以下項目に加え「家具、家電、自転車など」が補償対象になります。


建物 家財
補償対象
  • 屋根
  • 床・畳
  • 物置
  • 車庫・カーポート
  • 門や塀 など
  • 家具
  • 家電製品
  • 衣類
  • PC(データは除く)
  • 自転車
  • 原付自転車(125cc以下)

家財保険を付けると火災保険料も高くなってしまいますが、家電にこだわりがあってお金をかけている人や、家電を買い直す余裕はなさそうな場合には「建物+家財」を補償対象にしておくことをおすすめします。

家財保険に関しても、必要十分な保険金額に設定することで保険料を抑えることができます。

では、雷による被害で「補償対象外」になってしまうものは何があるのでしょうか。

雷による被害で補償対象外になるもの

雷による被害で補償対象外になるもの

補償対象外になってしまうもの・条件

  • パソコン等に保存されていたデータ・ソフトウェア
  • 落雷被害から3年以上経過した場合
  • 経年劣化や消耗が原因だと判断した場合

特に無形資産の「データやソフトウェア」は補償対象外になるので、前もってバックアップをクラウド上に取っておく、使わないときはコンセントを抜いておくなど「事前予防策」を行っておくことをおすすめします。

パソコン等に保存されていたデータ・ソフトウェア

先ほど記載した通り、パソコンやスマートフォンなどに入っていたデータやソフトウェアは補償されません。

もしあなたが業務に関わるデータ(画像・資料・納品物など)」をPC上のみに保存しているのであれば、万が一に備えて「クラウドサービス」を活用してオンライン上に保存しておくようにしましょう。

「きっと大丈夫」と思う気持ちはわかりますが、万が一が起きてからでは手遅れになってしまいます。ですから、補償されないデータ・ソフトウェアに対する対策を講じておきましょう。

落雷被害から3年以上経過した場合

保険金請求は、被害を受けたらいつ請求しても良いわけではなく、「被害発生から3年未満」で請求をする必要があります。

落雷の被害であっても、被害発生から3年以上経過してしまうと補償の対象外になってしまうので注意しましょう。

経年劣化や消耗が原因だと判断した場合

建物も家財も経年劣化していくものです。落雷が原因とはいえ「いつでも故障・破損する可能性があった」と判断される場合には保険金が支払われないので注意しましょう。

日頃から塀にヒビが入っていないか、耐用年数を超えた家電を使っていないかなどの確認はしておきたいですね。

雷の被害で貰える保険金額の目安はいくら?

では、雷(落雷)による被害で保険金はいくらくらいもらえるのでしょうか。まず、支払われる保険金のことを「損害保険金」といいます。

損害保険金は、以下の計算式で計算されるので覚えておきましょう。免責金額(自己負担額)が差し引かれることがポイントです。

損害保険金 = 被害額 - 免責金額

例えば、落雷により屋根の1部(5平方メートル程度)が損壊してしまった場合の保険金目安は以下の通りです。

保険金額支払いの例

落雷による屋根の被害:一部損壊

損害額  :10万円

免責金額 :2万円

損害保険金:8万円

また、家財が被害にあった場合も考えてみましょう。

保険金額支払いの例

落雷によるパソコンの被害:故障

損害額  :25万円

免責金額 :2万円

損害保険金:23万円

このように、火災保険に入っておくことで「自己負担分」をかなり減らすことができます。ただし、目安の金額は「被害内容と被害金額」に依存してしまうので一概に「いくら程度」ということはできません。

損害保険金は、あくまで「被害額」と契約している火災保険の「保険金額」「免責金額」によって算出されることを覚えておきましょう。

火災保険で雷による被害が補償されるケース【具体例】

火災保険で雷による被害が補償されるケース【具体例】

基本的に「雷(落雷)」が直接または間接的な原因の損壊・故障が補償対象となります。

ただし、保険金請求をする場合「本当に雷が原因なのか」の証明が必要になるので注意が必要。詳しくは「雷被害に合った場合の保険金請求手順」で解説しているので具体例を確認したあと、忘れずに読んでおきましょう。

一戸建ての場合

一戸建ての落雷被害で考えられるのが以下のような被害です。

  • 屋根の破損
  • 物置の破損
  • カーポートが壊れてしまった
  • 備え付けのエアコンが故障してしまった

上記のような被害を受け「落雷が原因」であると判断できる場合には、損害に応じた金額から免責金額を差し引いた額を受け取ることができます。

そのほかにも仮に建物が火災になり全焼してしまった場合でも、「かけている保険金額を上限」に保険金が受け取れます。

ただ、設定している保険金額以上の補償は受けられないので覚えておきましょう。

ここで注意しておきたいのが、保険会社への連絡より前に「電化製品の故障の修理」をしてしまうと保険金が支払われなくなってしまう可能性がある点です。

落雷による被害を受けてしまった場合には、加入している保険会社への連絡を先にしてから指示を仰ぐようにしましょう。

マンション(分譲・賃貸)の場合

マンションの場合は、落雷による過電流などが原因で、コンセントに繋いであったテレビやブルーレイレコーダー、PC、ゲーム機器、冷蔵庫などの電化製品が故障してしまうおそれがあります。

家財も補償の対象になっている場合には、実損害分の保険金(免責金額が引かれます)は受け取ることができますが、家財保険を盛り込んでいないケースでは補償されないので注意です。

一方、ビルドインタイプの備え付け家電は「建物」に区分されます。補償対象になりますので安心してください。

火災保険で雷による被害が補償されないケース【具体例】

火災保険で雷による被害が補償されないケース【具体例】

次は、火災保険で補償されないケースを確認していきましょう。

大切な建物や家財が補償されないと心理的にも経済的にも痛手になってしまうので、そうならないために今一度補償内容をしっかりチェックすることが重要です。

家財に保険をかけておらず、家財が落雷被害に遭ってしまった場合

家財に保険をかけていない場合、仮にPCやテレビなどの家電が故障してしまったとしても補償の対象になりません。

  • 高価な家電が多い
  • 家電の買い替え費用をすぐに捻出するのが難しい
  • 買ったばかりの家電が多い

という場合には、家財保険付きの火災保険を選ぶようにしましょう。

落雷被害を証明する書類が不十分な場合

また、被害が「落雷」によるものだと証明する書類が不十分だと、保険金が支払われないおそれがあります。

では、落雷被害を証明するのに必要な書類は何があるのでしょうか。

落雷被害を証明する書類が必要になる場合があるので注意

落雷被害を証明するためには、以下の情報のいずれかが必要になります。保険会社によっては「落雷証明書」が必要な場合があります。

  • 気象庁や気象観測会社が提供している観測情報
  • 電力会社のホームページ等にある落雷情報を印刷したもの
  • 新聞記事
  • 電力会社の雷による停電証明
  • 修理不能証明書

気象庁の落雷に関する証明は無料でできますが、証明書の発行には対応していないため、証明書が必要な場合は民間企業などに依頼して有償で発行してもらう必要があります。

気象庁で雷の発生を証明できるデータ

  • 気象官署における雷電、雷鳴、電光の観測記録
  • 気象官署で発表した雷注意報の発表状況

民間企業で落雷証明書を発行する場合は6000円前後かかってしまいますが、被害額の方が大きい場合には保険金請求のために発行依頼をしましょう。

雷(落雷)被害に遭ってしまった場合の保険金請求手順

最後に、雷による被害に遭った場合の保険金請求手順を解説します。主な流れは以下の6ステップです。

  1. 落雷被害を証明する書類を用意する
  2. 加入している損害保険会社へ連絡
  3. 請求書類の準備と記入
  4. 損害保険会社が支払いの可否を判断
  5. 保険金の金額などの確認
  6. 保険金が支払われて完了

1.落雷被害を証明する書類を用意する

まずは、落雷被害を証明する書類を用意しましょう。

  • 気象庁や気象観測会社が提供している観測情報
  • 電力会社のホームページ等にある落雷情報を印刷したもの
  • 新聞記事
  • 電力会社の雷による停電証明
  • 修理不能証明書

証明に使える主な書類は上記になりますが、「用意したのに使えないと言われてしまった」という事態を避けるためにも、まず保険会社に「落雷を証明する書類は何を用意したらよいか」を聞いておきましょう。

2.加入している損害保険会社へ連絡

保険会社へ連絡する際の注意点・コツはなるべく被害内容を具体的に伝えることです。

  • 何が
  • どれくらいの被害を受けて
  • どんな状況なのか

の3点を明確に伝えるようにしましょう。

具体的な被害を伝えることで、保険会社も今後どのように対応すればいいのか把握しやすくなるからです。ですから、雷の被害に遭ったタイミングで、被害内容をメモしておくことをおすすめします。

また、保険金請求に必要になるものを合わせて聞いておくとスムーズです。

3.請求書類の準備と記入

保険会社から「保険金請求書」などの必要書類が送られてくるので、漏れがないように記入しましょう。

焦って記入して記入漏れがあると、保険金の支払いまで時間がかかってしまう可能性があるので、不備のないようダブルチェックを行うことをおすすめします。

4.損害保険会社が支払いの可否を判断

この工程は、保険会社側の作業になるので注意事項はありません。

5.保険金の金額などの確認

支払いが決定したら、保険金の金額に間違いがないか確認しましょう。もし金額に違和感を覚えた場合には、鵜呑みにせず、請求金額の内訳や理由を詳しく聞いてみるのがおすすめです。

6.保険金が支払われて完了

あとは、保険金が支払われて無事完了です。おおまかな流れはイメージできたでしょうか?

まとめ

今回は、雷(落雷)による被害は火災保険で補えるのか?を解説しました。記事を読むにつれ「今の補償内容で本当に大丈夫かな」と不安に思った方もいるのではないでしょうか。

こうした不安を先延ばしにしてしまうと、いざ災害に巻き込まれた場合大きな後悔をすることになりかねません。「火災保険の見直し方」についても解説しているので、気になった方はチェックしましょう。

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みんかぶ編集室

資産形成メディア「みんかぶ」を中心に、金融商品の記事の執筆を行っています。資産運用のトレンド情報や、初心者が楽しく学べるお金の基本コラムなど、資産形成をするすべての人に向けた記事を提供します。

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