豪雪地帯に住んでいる場合、雪による被害は切っても切り離せない問題です。
雪は自然現象なので、いくら気をつけていても規格外の降雪や雪崩による被害に遭ってしまう可能性があります。
また、確率こそ低いものの、雪国以外でも雪や雹による突発的な被害をニュースで目にすることもあります。
では、雪による水漏れや外壁の破損は火災保険の補償対象になるのでしょうか。
結論から言うと「雪」が原因の被害は、火災保険の補償対象になるケースが多いです。
ただ、雪による水漏れ(すが漏り)は屋根に破損がない場合もあるため、その場合は補償対象外になってしまうので注意しましょう。そのほかにも補償対象となるケースとならないケースがあるため、この記事では「雪による被害が補償される場合」と「補償されない場合」についてわかりやすく解説します。
万が一、被害に遭ってしまっても焦らなくて済むよう「保険金の請求手順」も紹介しています。参考にしていただければ幸いです。
雪害による被害の種類
一口に雪害といえど、雪害の種類には主に4つの被害があります。
- 積雪の重みが原因の被害
- 雪崩による被害
- 落雪による被害
- 雹による被害
また、雪害は、積雪や雪崩など「雪が直接の被害を生んだ」場合だけではありません。
ここでは、それぞれの被害について代表的な被害例とともに詳しく解説します。
積雪の重みが原因の被害
積雪害は、大雪による重みで引き起こされる被害のことを指します。
積雪害の代表的な被害例
- 雪の重みでカーポートが破損した
- 雪の重みで家の屋根が歪んでしまった
また、カーポートの補償は火災保険の対象となりますが、車については火災保険で保険金は出ません。車の補償も受けたい場合は自動車保険の加入を検討しましょう。
雪崩による被害
雪崩による代表的な被害例
- 近くの山で起こった雪崩に巻き込まれ、家や家財が被害にあった
また、火災保険では、補償の対象を「建物のみ」「家財のみ」「建物+家財」の3つの中から選ぶことができます。
雪崩による被害の補償範囲は選んだ補償対象によって変わるため、自宅の立地を考えて雪崩の被害が想定される場合は、「建物」と「家財」の両方を補償対象に設定しておくことがおすすめです。
家財保険はいらないかなと思うかもしれませんが、いざ計算してみると家財の合計金額は数十万円〜百万円以上になることもありますから、建物+家財がセットになっている火災保険がおすすめです。
落雪による被害
落雪による代表的な被害例
隣家からの落雪で窓ガラスが割れた
落雪により屋根瓦が破損した
また、自宅の屋根に積もった雪が落ち、隣家の屋根や窓を壊した場合は補償の対象となりません。火災保険の対象となるのは、あくまで「自分の家や家財」になるため、隣家の被害は補償対象外となります。
雹による被害
雹による代表的な被害例
- 雹が当たって窓ガラスが割れてしまった
- 雹によって家の瓦や外壁が破損してしまった
雹は5〜6月にかけて最も降りやすく、北海道から東北の日本海沿岸域、および北関東を中心とする内陸域で多く発生します。そのため、雪国以外でも被害に遭う可能性があります。
被害に遭ってしまった時に慌てないためにも、雹被害は雪害に含まれる事を覚えておきましょう。
雪害による被害で補償対象になるもの
雪害による被害で火災保険の補償対象となるものは、保険加入時に選択する「補償対象」によって異なります。
補償対象としては「建物のみ」「家財のみ」「建物+家財」の3つから選ぶ事ができます。
では、雪害による被害で補償対象になるものは、どのようなものがあるのでしょうか。
雪害で多く発生している代表的な被害
- 雨樋の破損
- 屋根の損傷などが原因の雨漏り
- ウッドデッキなど屋外の設備の損傷
- 雪解け水が原因の浸水被害
これらの例を元に、雪害による被害がどのように補償されるか詳しく解説していきます。
雨樋の破損
雹や雪による雨樋の破損は、火災保険の補償対象となります。
具体例 | 雹によって雨桶が破損した |
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補償の有無 | 有 |
補償される被害内容 | 雨桶の交換 |
補償金額の目安 | 5万~40万円 |
雨樋の部分的な破損であれば数万単位で補修できますが、全面的な交換になると20万円〜40万円ほどかかります。
雨樋の破損を放置しておくと、外壁を伝って雨水が侵入し、建物を腐敗させていく可能性があるため、速やかに修理するようにしましょう。
屋根の損傷などが原因の雨漏り
雪の重みによる屋根の破損は、雪害の中でも多いケースとなります。
屋根瓦の葺き替え工事費の相場は100〜270万円と高額なため、火災保険の補償対象になる事を覚えておくと良いでしょう。
具体例 | 屋根に積もった雪の重みにより屋根が破損し、雨漏りが発生 |
---|---|
補償の有無 | 有 |
補償される被害内容 | 屋根瓦の葺き替え工事費 |
損害金額の目安 | 100万~270万円 |
ウッドデッキなど屋外の設備の損傷
雪害によるウッドデッキなど屋外設備の損傷は、火災保険の補償対象となります。
具体例 | ウッドデッキが雪の重みで破損 |
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補償の有無 | 有 |
補償される被害内容 | ウッドデッキの修理費 |
損害金額の目安 | 25万〜40万円 |
雪解け水が原因の浸水被害
雪解け水が原因の浸水被害は、火災保険の対象となりますが、雪害ではなく水害として補償されます。
補償を受けるには、火災保険の「風災・ひょう災・雪災」補償ではなく、「水災補償」への加入が必要です。
具体例 | 雪解け水で洪水が起きて床上浸水し、家財が被害にあった |
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補償の有無 | 無 |
補償される被害内容 | 家財(損害保険金) |
損害金額の目安 | 1万〜225万円 |
雪害による被害で補償対象外のもの
次は、火災保険で補償されない雪害・雪災のケースを確認していきましょう。
大切な建物や家財が補償されないと心理的にも経済的にも痛手になってしまうので、そうならないために補償内容をしっかりチェックすることが重要です。
経年劣化・老朽化が原因の場合
経年劣化・老朽化が損害の一因になっているものは、雪害の補償対象外になります。
火災保険の対象になるのは、「雪が直接的な被害の原因」、もしくは「雪が間接的な被害の原因」になっている場合になります。
例えば、雪の重みで屋根が壊れたと思っていても、屋根の経年劣化による被害と認められるケースもあります。
保険会社から経年劣化による被害だと認められてしまうと補償金が受け取れないため、建物や設備、家財には気を配り、経年劣化と認められそうな箇所は日常的にメンテナンスしていきましょう。
被害発生から3年以上経過した場合
保険法により、被害発生から保険会社に申告せず、3年以上経過した場合は補償の対象外と定められています。
保険法第95条
「保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第六十三条又は第九十二条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、これらを行使することができる時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する」
雪害による被害が発生した場合は、速やかに保険会社に連絡してください。
また、保険法で定められている期限とは別に、保険会社が独自に期限を設定している場合があります。
そのため、あらかじめ保険会社に保険請求期限の時効を確認しておきましょう。
家財または建物の一方しか補償対象にしていなかった場合
火災保険の補償対象として「建物のみ・家財のみ」にしていた場合は、どちらかしか補償対象になりません。
- 高価な家電が多い
家電の買い替え費用をすぐに捻出するのが難しい
買ったばかりの家電が多い
上記のような場合には、家財保険付きの火災保険を選ぶのがおすすめです。
雪害の被害で貰える保険金額の目安はいくら?
実際に被害を受けた際に、損害保険金はいくら貰えるのでしょうか。
まず、保険の対象である建物や家財などが被害を受けた場合に、保険会社から支払われるお金の事を「損害保険金」と言います。
損害保険金は、損害額から免責金額(自己負担しなければならない金額)を差し引いた金額になります。
また、補償金額の上限は「契約時に決めた保険金額」になります。
たとえば、「雪害による雨樋の被害が発生した場合」の保険金の目安は以下の通りです。
保険金額の例
(例)保険金が10万円で免責金額が3万円の場合
被害:雪害による雨樋の一部破損
損害額:10万円
免責金額:3万円
損害保険金:7万円
損害額から免責金額を差し引いた7万円が支払われる保険金となります。
そのため、自己負担額は3万円となります。
次に「ウッドデッキが被害にあった場合」の例も見てみましょう。
保険金額の例
(例)保険金が10万円で免責金額が3万円の場合
被害:雪害によるウッドデッキの被害
損害額:30万円
免責金額:3万円
損害保険金:7万円
損害額が免責金額を超えた分の27万円の内、保険金額の上限10万円が、支払われる保険金となります。
自己負担額は、23万円となります。
このように、火災保険に入っておくことで「自己負担額」をかなり減らすことができます。
損害保険金は「被害額、免責金額」によって算出されることを覚えておきましょう。
火災保険で雪害による被害が補償されるケース【具体例】
基本的に「雪」が直接または間接的な原因の損壊・故障が補償対象となります。
ただし保険金を請求をする場合「本当に雪が原因なのか」の証明が必要になるので注意が必要。
詳しくは「雪被害に合った場合の保険金請求手順」で解説しているので具体例を確認したあと、忘れずに読んでおきましょう。
一戸建ての場合
一戸建ての雪害被害で考えられる被害
屋根の破損
屋根の破損による雨漏り
カーポートの破損
雨樋の破損
- 大雪によるアンテナの破損
上記のような被害を受け「雪が直接的な原因」、「雪が間接的な原因」であると判断できる場合には、損害金額から免責金額を差し引いた額を受け取ることができます。
そのほかにも仮に雪解け水が原因の浸水被害が発生した場合でも、水災補償に加入していた場合は保険金が受け取れます。
ただ、設定している保険金額以上の補償は受けられない点は覚えておきましょう。
注意点として、保険会社への連絡より前に「被害物の故障の修理」をしてしまうと保険金が支払われなくなってしまう可能性があります。
雪による被害を受けてしまった場合には、加入している保険会社への連絡を先にしてから指示を仰ぐようにしましょう。
マンション(分譲・賃貸)の場合
マンションの場合は、雹による窓ガラスの破損が発生する恐れがあります。
また、雹により窓ガラスが割れ、室内に入り込んできた雪により家財が被害に遭う可能性もあります。
家財も補償の対象になっている場合には、実損害分の保険金(免責金額が引かれます)は受け取ることができますが、家財保険を盛り込んでいないケースでは補償されません。
一方、ビルドインタイプの備え付け家電は「建物」に区分され補償対象になりますので安心してください。
火災保険で雪害による被害が補償されないケース【具体例】
次は、火災保険で補償されない具体的なケースを確認していきましょう。
大切な建物や家財が補償されないと心理的にも経済的にも痛手になってしまうので、そうならないために補償内容をしっかりチェックしましょう。
雪害が発生してから3年以上経過した場合
雪害が発生してから3年以上経過した場合、仮に屋根や雨樋などが破損してしまったとしても補償の対象になりません。
- 雨樋の破損
- 外壁の破損
- カーポートの歪み
これらの被害は、すぐには実害が発生しないため、修理を後回しにしてしまうことがあります。
後々になって実害が発生して保険会社に連絡しても、補償を受けられない可能性があります。
雪による被害が発生した場合は、すぐに保険会社に連絡するようにしましょう。
経年劣化や消耗が原因とされる場合
雪害の被害に遭っても、保険会社に経年劣化や消耗が原因と認められた場合は、補償が受けられない可能性があります。
- 屋根
- 雨樋
- 外壁
などは、経年劣化や消耗が原因と認められる可能性がある代表的な箇所。建物の築年数が進むことで必ず劣化してしまいます。
そのため、日々のメンテナンスを行い、定期的に「状態と日付の分かるメモや写真」を記録として残しておきましょう。
雪害被害に合った場合の保険金申請手順
最後に、雪による被害に遭った場合の保険金請求手順を解説します。
雪による被害に遭った場合の保険金請求手順
- 雪害被害の影響範囲をメモ&写真を取る(日付記入も忘れず)
加入している損害保険会社へ連絡
請求書類の準備と記入
損害保険会社が支払いの可否を判断
保険金の金額などの確認
保険金が支払われて完了
雪害被害の影響範囲をメモ&写真を撮る(日付記入も忘れず)
被害にあった場合は、どうしても焦ってしまいますよね。
まずは落ち着いて、雪による被害の影響範囲のメモと写真を撮りましょう。
影響範囲のメモを取ることで、保険会社への連絡がスムーズに行えます。
加入している損害保険会社へ連絡
保険会社へ連絡する際の注意点・コツはなるべく被害内容を具体的に伝えることです。
- 何が
- どれくらいの被害を受けて
- どんな状況なのか
上記の3点を明確に伝えるようにしましょう。
具体的な被害を伝えることで保険会社も今後どのように対応すればいいのか把握しやすくなるからです。ですから、雪の被害に遭ったタイミングで、被害内容をメモしておくことをおすすめします。
また、保険金請求に必要になるものを合わせて聞いておくと今後の手続きがスムーズです。
請求書類の準備と記入
保険会社から「保険金請求書」などの必要書類が送られてくるので、漏れが無いように記入しましょう。
焦って記入して記入漏れがあると保険金の支払いまで時間がかかってしまう可能性があるので、不備のないようダブルチェックを行うことをおすすめします。
損害保険会社が支払いの可否を判断
この工程は、保険会社側の作業になるので注意事項はありません。
保険金の金額などの確認
支払いが決定したら、保険金の金額に間違いがないか確認しましょう。もし金額に違和感を覚えた場合には鵜呑みにせず、請求金額の内訳や理由を詳しく聞いてみるのがおすすめです。
保険金が支払われて完了
あとは、保険金が支払われて無事完了です。おおまかな流れはイメージできたでしょうか?
まとめ
今回は、雪による被害は火災保険で補えるのかを解説しました。記事を読むにつれ「今の補償内容で本当に大丈夫かな」と不安に思った方もいるのではないでしょうか。
こうした不安を先延ばしにしてしまうと、いざ災害に巻き込まれた場合大きな後悔をすることになりかねません。
別の記事で「火災保険の見直し方」についても解説しているので、気になった方はチェックしておきましょう。