水災は年々増加傾向にあるので、火災保険において水災は必須の補償になりつつあると考えられます。
水災(土砂災害)が多い8月の災害件数としては、令和3年で448件発生しており、直近10年の平均件数の177件を大きく上回る件数の土砂災害が発生しています。
今回は火災保険における水災補償のポイントと補償範囲について解説します。
火災保険における水災とは?
水災とは、台風や暴風雨等によって起こる洪水、高潮、土砂崩れなどの水による災害のことです。
日本の年平均気温は、100年あたり1.19℃の割合で上昇しており、猛烈な雨(1時間降水量80mm以上の雨)の年間発生回数も増加しています。
地球温暖化の進行に伴って、大雨や短時間に降る強い雨の頻度はさらに増加すると予測されているため、水災補償の重要度は今後さらに高まっていくでしょう。
ただ、水災補償が重要といわれても、どれくらいの被害が起きる可能性があり、火災保険に入っているとどこまで補償されるのか分からないと「付保しよう」とは思えませんよね。
ここからは、具体的な水災の種類と被害例を紹介していきます。
洪水による被害
洪水が原因による、建物や家財の被害の例と被害額の目安を記載します。
被害例
- 台風による洪水が発生し、床上浸水の被害を受けてしまった。
- 床上浸水が発生した際、一部の家電製品、家具などが使えなくなってしまった。
被害額例
- 108万円(床上浸水復旧費:60万円 + 家電製品等48万円)
※当社調べによる
また、洪水による床下浸水は補償の対象外となるケースがあるので注意が必要です。
高潮による被害
高潮が原因による、建物や家財の被害の例と被害額の目安を記載します。
被害例
- 高潮により浸水被害があり、建物が被害を受けてしまった。
- 1階にある全ての家具、家電が被害を受けてしまった。
被害額例
- 580万円(建物被害:80万円 + 家財被害:500万円)
※当社調べによる
土砂崩れによる被害
土砂崩れが原因による、建物や家財の被害の例と被害額の目安を記載します。
被害例
- 土砂崩れに巻き込まれてしまい、建物の4割が倒壊してしまった。
- 一部の家具、家電が被害を受けてしまった。
被害額例
- 1,300万円(建物被害:1,000万円 + 家財被害:300万円)
※当社調べによる
火災保険に水災補償は必要!
日本の平均気温は、100年あたり1.19℃の割合で上昇しています。地球温暖化の進行に伴って、大雨や短時間に振る強い雨の頻度はさらに増加すると予想されています。
火災保険に水災の補償を付けていなかった場合、水害による損害に対応できないことは非常にリスクがあります。
ですから、この記事では「水災の補償は火災保険に必要」という結論です。では、火災保険に水災の補償をつけると「どんな補償」が受けられるのでしょうか。
水災で補償対象になるのは建物?家財?
火災保険の補償対象は3つの選択肢があります。
- 建物のみの補償
- 家財のみの補償
- 建物と家財の補償
補償対象の範囲が狭いと、その分保険料は安くなります。一方で、範囲が狭いと万一の事があった際に保険金が受け取れない可能性が高くなるので注意しましょう。
また基本的に、家財は現金やデジタルデータ、自動車等が補償の対象外になります。
自動車については自動車保険の車両保険で補償されるので、火災保険では対象外となり、デジタルデータに関しても値段を付けることが難しい等の理由で補償の対象外となります。
※家財の定義保険会社によって異なるので各社へ確認は必要です。
水災が火災保険の補償対象になる事例
水災が火災保険の補償対象になるのは、
- 保険価額(立て直しにかかる費用)の30%以上の損害を受けた場合
- 床上浸水または地盤面から45cmを超えて浸水した場合
の2つのパターンです。
地盤面から45cm以下の床下浸水等のケースは補償の対象外となるので、補償の対象となるケースは被害が一定数大きいものに絞られます。
保険価額(立て直しにかかる費用)の30%以上の損害を受けた場合
保険価額(立て直しにかかる費用)の30%以上の損害を受けた場合による、建物や家財の被害の例と被害額の目安を記載します。
被害例
- 大雨による土砂災害によって、建物に土砂が流れ込み、建物の約40%が被害を受けた
被害額例:建物代金:2,000万円 × 40% = 800万円
床下浸水で保険価額の30%以上の損害を受けるケースは少ないと考えられますが、水災が原因で建物外に付いている空調設備や充電発電設備等が壊れてしまった場合に備えて「特約」でカバーできるかどうかを確認した方がよいでしょう。
「特定設備水災保障特約」という特約を付ければ、水災による損害の程度に関わらず、ご自宅の空調・冷暖房設備、給湯設備等が水災によって生じた損害を補償できます。
※保険会社によって特約の有無が異なります。
床上浸水または地盤面から45cmを超えて浸水した場合
床上浸水または地盤面から45cmを超えて浸水した場合による、建物や家財の被害の例と被害額の目安を記載します。
被害例
- 大雨により、近くの川が氾濫して自宅の床上まで浸水してしまった
建物:泥や汚水の除去と床の張替、断熱材の交換、壁紙の張替等が必要になった
家財:家電やソファー等の家具、洋服が被害にあった
被害額例:約700万円
床上浸水になると、建物だけでなく家財への被害も出ます。
家財一式を新しく揃えるとなると、金額は思っている以上に高くなってしまいますよね。その場合、家財補償に入っていると万一の時でも安心です。
水災で火災保険の対象外になってしまう事例
水が原因であれば、水災の補償の対象となるという認識をお持ちの方もいると思います。
しかし、水災として扱われない被害もあるので注意が必要です。
水災による被害で補償対象外になるケースは主に4つあります。
- 地震による津波・土砂崩れ被害
- 豪雨などが原因の水漏れ被害
- 経年劣化が主原因と判断される場合
- 被害発生から3年以上経過している場合
地震による津波・土砂崩れ被害
津波(高潮)や土砂崩れは大雨だけでなく、地震でも起こります。
地震が原因による損害に関しては、水災の対象外です。主契約である火災保険の補償ではなく、地震保険で補償の適用がされるので注意が必要です。
例
- 地震が原因の津波によって家屋被害が出た
- 地震が原因の土砂崩れによって家屋被害が出た
これからは万が一のことを想定して、地震保険に加入することで安心でしょう。
豪雨などが原因の水漏れ被害
豪雨などが原因で、もともとあった隙間から水漏れ(雨漏れ)した場合は補償の対象となりません。
強風による屋根の損害や、飛来物による損害が原因で雨漏りが発生した場合は補償の対象となります。
例
- もともとあったすきまに雨水が入り込み、雨漏れが発生した
経年劣化が主原因と判断される場合
経年劣化が原因と判断される場合は、火災保険の対象外になります。
火災保険は偶発的に起きた自然災害や事故等によって損害を受けた際に補償される保険であるため、徐々に進行していく経年劣化は補償の対象外になります。
例
- 経年劣化により床が損傷した
- 経年劣化により屋根が壊れた
被害発生から3年以上経過している場合
火災保険には請求期限があります。期間は被害発生から3年以内と定められている所が多いです。被害があってからは素早く請求することで請求漏れを防ぐことができるでしょう。
※保険会社によって異なります
例
- 被害に遭ってから5年後に請求をした
水災に遭った場合保険金はいくらもらえるの?
水災被害にあった場合、保険金がいくらぐらい請求できるのか目安を記載します。
- 土砂災害によって建物被害があったケース
土砂災害により、建物が被害を受けてしまい、修繕費として「700万円」が必要になった。
保険会社の審査により全額保障を認められた場合は、修繕費全額の700万円が保障されます。
特約として、費用保険金(※1)を付けていた場合は保険金額の10%が追加で受け取ることが出来るので、770万円受け取ることが可能です。
※当社調べによる
- 床上浸水で家電等に被害があったケース
川の氾濫によって床上浸水になってしまい、損害を受けた家財一式を買いなおすのに「400万円」が必要になった。
保険会社の審査により全額保障が認められた場合は、修繕費全額の400万円が保障されます。
特約として、費用保険金(※1)を付けていた場合は保険金額の10%が追加で受け取ることが出来るので、440万円受け取ることが可能です。
※当社調べによる
※1…費用保険金は各保険会社によって上限金額が異なります。
覚えておきたい損害保険金の請求手順
保険金請求時の流れについては以下の順番で行っていきます。
- 保険会社への連絡
- 必要書類の作成
- 必要書類を保険会社に送付
- 保険会社が審査・調査を行い支払いの可否を判断
- 保険金が支払われる
請求する際に必要な書類として以下が挙げられます。
保険金請求書
加入している保険会社から保険金請求をした際に送られて来る請求書のことで、保険の請求を行う時に必要な書類になります。
修理(修繕)見積書
修理(修繕)会社に作成してもらった見積り書のことで、これを元に保険金の支給額が変わってくる可能性があります。
被害状況の写真
罹災証明書(被害の程度を証明するもの)を発行する際に必要になるケースがあります。また、言葉では伝えきれない情報を写真に残す事により、より正確な査定を受けることが出来ます。家の外から・中からをどちらとも撮影し、寄りの写真と引きの写真も取っておくと万全でしょう。
事故内容報告書(事故届書)
事故の概略を記載する書類のことで、保険金請求書と同じく保険会社から送られてくる書類になります。
損害明細書
家財などの損害品等を記載する書類のことで、こちらも保険会社から送られてきます。
罹災証明書
自然災害の場合は自治体、火災の場合は管轄の消防署から取り寄せます。住民票自治体から取り寄せます。
建物登記簿謄本
法務局や登記所等の出張所から取り寄せます。
印鑑証明書
自治体から取り寄せます。
委任状
保険金の請求を第三者に委任する場合に必要な書類になります。
これらの必要書類を保険会社に送付しなくてはなりませんが、損害の状況等によって必要な書類が異なります。保険会社の方が教えてくれるので、不明点があれば電話で確認した方が良いでしょう。
また、請求時の注意点として2点を把握することが必要です。
- 損害部分を漏れなく写真に収める
保険金の請求査定は写真のみで行う場合もあります。その場合は、提出された写真が大きな情報源になるので、漏れや画像が粗い場合は正確な査定を行えないと考えられます。
損害部分の洗い出しと漏れなく写真を収めることは非常に重要です。
- 罹災証明書の取得によって、自治体からの補償金を受けられることがある
罹災(りさい)証明書によって自治体等から補償金を受けられる可能性もあります。資金の負担が軽くなる可能性があるので、必ず確認が必要です。
まとめ
水害被害を受けてしまうと、修繕のために多額のお金が必要になります。
特に夏から秋にかけて、水による災害の数は全国で多く発生するので、火災保険における水災の補償を付けて加入しておくとより安心できます。
ただし、補償を付けることで保険料はもちろん高くなってしまうので、お住まいの住所のハザードマップを確認し、水災の補償は必要かどうかの見極めは非常に重要となります。
また、商品によっては水災の補償を外せない商品も存在するので、各保険会社の比較は火災保険を加入するにあたって必須条件となります。
ただし、何社もある保険会社の見積もりを1社ずつ取っていくには、時間と労力が相当かかります。みんかぶ保険であれば、複数社の見積もりを一括で見積もることが可能です。ご不明な点や補償内容の変更希望があっても、何度でも無料でご相談いただけます。