将来の不安に備えて、介護保険や医療保険に加入したいと考えている方は多くいらっしゃるでしょう。多くの費用が必要になる介護や治療において、保険に加入していることで負担は大きく軽減され、精神的にも安心を得ることができます。
とはいえ、大きなネックとなるのが保険料。毎月支払う保険料は決して安くはなく、そのような負担はなるべく抑えておきたいところですよね。
そんな方にご紹介したいのが「介護医療保険料控除」という控除制度です。国が定めた制度であり、介護保険や医療保険における保険料の金額に応じて所得税の控除が受けられるようになります。
このような、介護医療保険料控除に関するさまざまな疑問を解消していきます。家計の負担を少しでも抑えたい方は、ぜひご覧ください。
介護医療保険料控除とは
まずは、介護医療保険料控除とはどのような制度なのかについてご紹介します。
生命保険料控除制度のひとつ
介護医療保険料控除は、「生命保険料控除」という制度のうちのひとつ。介護医療保険料控除だけでなく「一般生命保険料控除」「個人年金保険料控除」というものまで用意されています。
生命保険料控除は2012年に制度が改正され、対象範囲や最大控除額が拡大されました。そのため、2012年以前の契約のまま更新されていない場合は、介護医療保険料控除の対象外となってしまいます。
支払った保険料に応じて控除が受けられる
介護医療保険料控除とは、介護保険と医療保険において支払った保険料に応じて控除が受けられる制度です。
介護保険や医療保険に加入すると、保険料の支払いが発生しますよね。そのような保険料の支払い額の高さに応じて、一定の金額が所得から差し引かれ、結果的に所得税が安くなります。
保険料の負担を減らしたい方にとっては、特に嬉しい制度でしょう。
介護医療保険料控除の対象となる保険料は?
介護医療保険料控除の概要についてご紹介してきましたが、どのような保険料が控除の対象となるのでしょうか?
これから解説するポイント
- 介護医療保険料の対象となる保険の種類
- 勘違いしやすい「対象外」の保険料
介護医療保険料の対象となる保険の種類
介護医療保険料控除の対象となるのは、「介護や医療に関わる第三分野の保険」となります。たとえば、
- 要介護状態もしくは要支援状態となった方が介護サービスを利用する際の費用を保障する「介護保険」
- 病気やケガの治療費を保障する「医療保険」
- がん治療の保障に特化した「がん保険」
上記の保険が該当します。
勘違いしやすい「対象外」の保険料
対象となる保険について解説したところで、次に「勘違いしやすい保険」についてご紹介します。申告の際に間違えないよう、事前に確認しておきましょう。
一般生命保険料控除と介護医療保険料控除の違い
先ほどご紹介したとおり「生命保険料控除」の中には介護医療保険料のほかにも「一般生命保険料控除」があります。一般生命保険料と介護医療保険料は、どのような違いがあるのでしょうか?
介護医療保険料控除は治療費を保障する保険が対象ですが、一般生命保険料控除に該当するのは、「生存または死亡に起因して保険金やその他給付金が支払われる保険」です。具体的には、死亡保険や学資保険などが対象となります。
申請の際に混同しないよう、区別についてきちんと把握しておきましょう。
保険期間が5年未満の保険や貯蓄保険、貯蓄共済は対象外
特に注意が必要なのは、保険期間が5年未満の「貯蓄保険」や「貯蓄共済」は対象外となる点についてです。こちらは、控除を受けることができません。
ご自身が加入している保険の種類や期間について、あらかじめチェックしておきましょう。
介護医療保険料控除の計算方法
介護医療保険料控除の対象となる保険料についてご理解いただいたところで、次に知るべきなのは具体的な控除額でしょう。
介護医療保険料控除では、金額の下限は設定されていないため、「〇〇円以上の支払いがなければ控除が受けられない」といったことはありません。そのため、対象となる介護保険や医療保険で保険料を支払った場合は、申請することで必ず控除を受けることができます。
控除額については、年間の支払い保険料に応じていくつかの区分が設けられています。
上記の区分によって、控除額は決定します。いくつかの具体例とともに、ここからさらに詳しく解説していきます。
所得税の控除額はいくら?具体例とともに解説
介護医療保険料控除は、年間の保険料の支払額の高さによって控除額が決定します。
保険料が15,000円の場合(20,000円以下)
たとえば1年間で支払う保険料が15,000円である場合は、支払った保険料と同額、つまり15,000円が所得から差し引かれることになります。
保険料が25,000円の場合(20,000円超40,000円以下)
年間で25,000円の保険料を支払っていると仮定した場合、控除額の計算方法は「支払保険料等×1/2+10,000円」です。したがって、
となり、22,500円が控除額となります。
保険料が64,000円の場合(40,000円超80,000円以下)
年間の保険料が64,000円であると仮定すると、「支払保険料等×1/4+20,000円」が控除額の計算式となります。
上記の計算の結果、控除額は36,000円となります。
保険料が85,000円の場合(80,000円超)
年間の保険料が80,000円を超えると、控除額は一律で40,000円となります。そのため、85,000円の保険料を支払うことになっても、控除額は変わらず40,000円です。
所得税控除による節税効果はいくら?
具体的な控除額が計算できれば、ご自身の所得に合わせて実際の節税効果について確認することも可能です。
所得税について計算する際は、国税庁が公表している下記の表を使います。
介護医療保険控除による節税金額は「介護医療保険控除額×所得税率」で求められます。
仮に、介護保険料控除額が20,000円の場合、所得税率別の節税額は以下のとおりです。
所得税率 | 節税効果 |
---|---|
5% | 1,000円 |
10% | 2,000円 |
20% | 4,000円 |
23% | 4,600円 |
33% | 6,600円 |
40% | 8,000円 |
45% | 9,000円 |
介護保険料控除額が40,000円の場合、節税額は以下のとおり。
所得税率 | 節税効果 |
---|---|
5% | 2,000円 |
10% | 4,000円 |
20% | 8,000円 |
23% | 9,200円 |
33% | 13,200円 |
40% | 16,000円 |
45% | 18,000円 |
介護医療保険料控除の手続き方法
介護医療保険料控除の対象や具体的な金額まで解説したところで、次に気になるのは「実際の手続き方法」ではないでしょうか?
介護医療保険料控除を利用する場合は、年末調整や確定申告の際に手続きが必要になります。
対象となる人 | 年末調整 or 確定申告 |
---|---|
会社員や公務員の方 | 年末調整 |
自営業の方やフリーランス、年末調整の際に申告できなかった人、年収が2,000万円を超える人、本業以外の所得金額が20万円を超える人、年の途中で退職し同年中に就職しなかった人 | 確定申告 |
手続きに必要な書類
介護医療保険料控除の手続きに必要なものは、通常の年末調整や確定申告のための書類に加えて、
- (年末調整をする場合は)保険料控除申告書
- 保険料控除証明書
のふたつです。
名前がとても似ていますが、
保険料控除申告書
控除を受けるために申請するための書類
保険料控除証明書
年に1回(10月から11月にかけて)、加入している保険会社から送られてくる、保険料の支払いを証明する書類
といったように、それぞれ内容や目的が異なります。
保険料控除申告書は国税庁のホームページよりダウンロードが可能です。
年末調整における保険料控除申告書の書き方
そんな必要書類のひとつ「保険料控除申告書」は、複数の控除について記入することが可能な書類であるため、記載する箇所について把握しておくことが重要です。
こちらが保険料控除申告書となります。用紙の左側「生命保険料控除」の欄のうち、真ん中にある「介護医療保険料」に記入していきます。
記入欄にはいくつか項目があり、具体的には
- 保険会社の名前
- 保険の種類
- 保険の期間
- 契約者氏名
- 保険金の受取人の名前と続柄
- 1年間で支払った保険料の金額
- 保険料の合計額
- 保険料をもとに算出される控除額
となります。通常、10月から11月にかけて各保険会社から保険料控除証明書が送られてくるので、その内容を参考に記入していきましょう。
12月末時点での支払い額を含めて記入する
保険料控除申告書に記入する支払い保険料の金額は、1月1日から12月末までの金額となります。しかし、保険料控除証明書の内容によっては、12月末時点での支払い予定額ではなく、証明書が発行された時点までの金額のみ記載されているケースも。
そのような場合は、証明書の金額をそのまま転記するのではなく、12月末時点での支払額も加味して記入しなければなりません。
確定申告における必要書類の書き方
自身で確定申告を行う場合は、保険料控除申告書を提出する代わりに確定申告書の第二表への記入が必要になります。
「確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)」国税庁
第二表の「生命保険料控除」の枠内にある「介護医療保険料」に金額を記入しましょう。「支払保険料等の計」には1年間(1月1日〜12月末日)で支払った保険料を記入します。年末調整を行いすでに控除を受けた別の保険料があるときは、それも併せて記入してください。
それらの金額のうち、年末調整による控除を受けておらず、確定申告時に初めて申告する保険料の金額は「うち年末調整等以外」の欄に書きます。
申告する金額での控除額を計算し、算出された金額を第一表の「所得から差し引かれる金額」内の「生命保険料控除」に記入してください。
「確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)」国税庁
介護医療保険料控除における注意点
ここまで、介護医療保険料控除の制度内容や手続きについて詳しく解説してきましたが、この制度を利用する際は、次のような注意点があります。
- 保険の契約内容によっては更新が必要
- 対象となる保険の種類が正しいか
- 特約の保険料も計算に含めているか
それぞれの注意点について解説していきます。
保険の契約内容によっては更新が必要
介護医療保険料控除は、2012年1月に新しく追加された制度です。そのため、2011年12月31日以前に保険の契約をし、その後更新していない場合は、控除の対象外となってしまいます。
ご自身の契約内容を確認し、2012年1月1日以降に契約を更新しているかどうか、気になる方は確認してみてください。
申告する保険の種類が正しいか
申告する保険の種類が、本当に控除の対象であるかどうかについても注意しておきましょう。
介護医療保険料控除の対象外となってしまうのは、以下のとおり。
- 介護保険や医療保険に該当しない保険(自動車保険、火災保険など)
- 保険期間が5年未満の「貯蓄保険」や「貯蓄共済」
- 2011年12月31日し、それ以降更新していない介護保険・医療保険等
控除の申告をする前にご自身の契約内容を見直し、上記に該当していないかどうかチェックしましょう。
特約の保険料も計算に含めているか
同じ保険会社においても、プランや特約の内容によって控除の対象かどうかが異なる場合もあります。そのため、基本的な保障だけでなく、対象となる特約もきちんと計算に含めているかどうか、確認が必要です。
各保険会社は、保障や特約ごとに介護医療保険料控除の対象となるかどうかを公表していることが多いです。詳しくは、契約している保険会社にお問い合わせください。
保険の見直しをするなら一括見積もりがおすすめ
ここまで、介護医療保険料控除について詳しく解説してきました。制度を利用するほかにも、保険のプラン内容や契約している保険会社を見直すことも、保険料を抑える上で有効な手段です。
みんかぶ保険では、保険の専門家に相談しながら保険の見直しができる「一括見積もり依頼フォーム」をご用意しています。見積もり依頼といっしょに、悩んでいることについても相談できるので、もっと保険料を抑える方法や乗り換えるべき保険会社などについて詳しく知ることができます。
何度でも無料で相談できますので、気になる方はお気軽に利用してみてください。
介護医療保険料控除についてよくある質問
介護保険と介護医療保険の違いについて教えてください。
介護保険と介護医療保険は、似たような文言ではありますが意味は異なります。
「介護保険」は、介護サービスを利用するのに必要な費用を保障する保険のことです。一方で「介護医療保険」は、介護保険に加え、病院での病気やケガの治療費を保障する「医療保険」もまとめて指すときに使われる言葉。
介護医療保険料控除においては、どちらも多く使用される単語です。制度について深く理解するためにも、両者の違いについてきちんと把握しておくことが重要ですね。
介護医療保険料控除の対象外となる費用はありますか?
介護医療保険料控除の対象外となる費用は
- 介護保険、もしくは医療保険に該当しない保険や保障、特約の保険料
- 短期間のみの契約となっている保険(貯蓄保険や貯蓄共済)の保険料
- 2011年12月31日までに契約し、その後更新されていない介護保険・医療保険
となります。まずは、ご自身が契約している保険の内容について確認してみましょう。
一般生命保険料と介護医療保険料、両方の控除を受けることは可能ですか?
両方の控除を同時に受けることは可能です。対象となる保険が異なるため、それぞれの控除対象の範囲を確認し、保険料をもとに控除額を算出しましょう。しかし、名前が似ていることで混同してしまう可能性も高いと考えられます。
- 一般生命保険:生存または死亡に起因して保険金やその他給付金が支払われる保険
- 介護医療保険料:介護サービス利用費や、通院・入院等による治療費に対して保険金が支払われる保険
それぞれの定義について理解しておきましょう。
介護医療保険料控除は先進医療特約の保険料にも適用できますか?
先進医療特約の保険料は、介護医療保険料控除の対象となります。申告可能な保険料として合算し、控除を受けるようにしましょう。