医療費控除のやり方は?必要な書類や確定申告の仕方についてわかりやすく解説

著者:和 秀哉

監修:

杉本 大輔

2級ファイナンシャル・プランニング技能士 / トータル・ライフ・コンサルタント / フィナンシャル・エージェンシー所属

医療費控除とはどんな制度?

医療費控除とは、1年間に支払った医療費が家族で一定額を超えた場合に、超えた金額を所得から差し引くことができる制度です。

申請する所得額が低くなることで「所得税」と「住民税」を安くすることができます。

この記事ではどんなものが対象になるのか、自分は控除が受けられるのか?といった疑問から必要書類や申請の仕方まで詳しく解説していきます。

受けられる制度を有効に使って節税していきましょう!

医療費控除の対象となる費用は?

医療費控除の対象となる費用は?

まず、何が対象になるのか知らないと、使えるかの判断ができませんよね。

ここでは対象になる費用がなんなのか、かかった費用がどこで確認できるのかなど医療費控除の基礎の部分を解説していきます。

医療費控除は基本的に「治療にかかった費用」が対象となりますが、自由診療などの治療は対象外です。

具体的な例を出して、対象になる費用と対象外の費用をまとめました。


対象

対象外

医師による診察・治療費

治療目的の診察、入院、手術、検査など

美容目的の診察、入院、手術、健康診断※、予防接種など

薬局で購入した医薬品

処方薬、市販薬(病気の治療に必要なもの)

サプリメント(治療目的でない場合)

出産費用

妊婦健診、分娩にかかった費用

実家で出産するために帰省する交通費

歯科治療

虫歯、治療を目的とした歯列矯正

美容目的の歯列矯正

※病気が見つかり治療を継続した場合を除く

この他に、通院のための電車やバスの運賃やリハビリ、介護にかかる施設利用料や訪問介護にかかる費用なども対象です。

逆に対象外になってしまうものは、エステ・マッサージなどのリラクゼーションや、美容目的の処置や手術などです。

医療目的ではないものは対象外と認識しておきましょう。

間違いやすいところでは、治療のための入院でも、個室使用料金や食事代は特別な場合を除いて対象外になっているため注意が必要です。

対象となる医療費かどうかは「医療費通知」で確認

ここまで読んでみても、「1年間に家族が支払った医療費なんて覚えてられないよ。」という方もいたのではないでしょうか。

自分で領収書やレシートを管理するのは大変ですよね。

そんな方でも「医療費通知」を見れば、公的保険が適用された費用についていくら支払ったか確認できるので安心してください。

医療通知書には、医療費控除として申請可能な金額が記載されているので、普段の管理が大変という方でも諦める必要はありません。

医療費通知は、確定申告前になると届くので、自身で管理する手間も省けて申請までのハードルがグッと下がりますね。

医療費の合計額が所得の5%未満の場合は対象外

医療費控除は一定額を超えた場合に申請可能とお伝えしましたが、自分を含む家族全員で、1年間に支払った医療費の合計が10万円(所得が200万円以下なら、所得の5%)を超えた場合が対象です。

所得

1年間に支払った医療費の合計

200万円超の方

10万円を超えた場合

200万円以下の方

所得の5%以上を超えた場合

歯科矯正や手術をした場合には対象になる可能性が高いでしょう。

また、一回の金額は大きくなくても定期的な通院やリハビリなど長期に渡るものがあると、年間で見て見たら意外と超えていたという場合もあるのでしっかり確認しましょう。

また、そこまで医療費が高くなく医療費控除は対象にならないという方は、後半に「セルフメディケーション税制」についても解説しているので、ぜひチェックしてみてください。

医療費控除の対象期間は?

医療費控除の対象期間は?

医療費控除には対象期間があります。

期間は1年間で、翌年の確定申告で医療費を申告する必要があります。細かい規定を見ていきましょう。

1月1日〜12月31日の1年間で支払った医療費が対象

その年の1月1日~12月31日までに支払った医療費をもとに控除を受けることができます。

ただし、未払いの医療費については、実際に支払った年の医療費として医療費控除の対象となるので注意しましょう。

医療費控除の対象となる人は?

医療費控除は、自身と生計を一にする配偶者、その他の親族に係る医療費を支払った場合に適応されます。

この場合の「親族」とは、6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族をいいます。

難しい表現ですが対象範囲を図にするとこのようなイメージです。

医療費控除の対象となる人は?

とても範囲が広く見えますね。ただし、「生計を一にする」という箇所がポイントです。

被保険者本人と「生計が同じ」家族が対象

生計を一にするというのは簡単に言うと「生計が同じ、生活費の出所が同じ」ということです。

そのため、この条件を満たしていれば離れて暮らしていても対象になります。

例えば、子どもが進学で一人暮らしを始めたが、学費の支払いや生活費の仕送りをしている場合。両親が高齢になってきて同居はしていないが、医療費や生活費の送金をおこなっている場合等が対象です。

逆に、同居はしているもののそれぞれの収入で、それぞれが生計を立てているとなると対象にならないため注意が必要です。

医療費控除によって所得税はどれぐらい安くなる?

控除なので申請をした所得額に応じて、住民税や所得税が再計算され、払いすぎていた税が還付される仕組みです。

具体的な例を見ながらイメージしていきましょう。

医療費控除対象額の計算方法

医療費控除の金額は、次の式で計算した金額(最高で200万円)です。

((1)実際に支払った医療費の合計額-(2)の金額)-(3)の金額

(1)支払った医療費の合計

まず、1年間に支払った医療費の合計額を計算します。

医療費通知で確認するのが簡単ですが、その他に治療に必要な市販薬を購入していたり、交通費等があれば足すのを忘れないようにしましょう。

(2)保険金などで補てんされる金額

次に(1)で算出した費用から、生命保険契約などで支給される保険金、給付金などを差し引きます。

(3)10万円または総所得金額等の5パーセント

その年の総所得金額等が200万円以上の人は10万円。

総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5パーセントの金額を代入しましょう。

保険金を差し引く必要がある

「(2)保険金などで補てんされる金額」で簡単に触れましたが、計算の際に気を付けるべきポイントがあります。

加入している生命保険から入院・手術等の給付金が支給された場合や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金などは差し引く必要があるということです。

この際、保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きます。

例えば、肺炎の入院で25万円の支払をしたが、生命保険で入院・手術給付金など合わせて30万円を受け取っていたら5万円分は引ききれません。

しかし、その5万円を肺炎とは関係のない別の傷病(眼科や接骨院など)の費用から差し引く必要はないということです。

所得税率を確認する

医療費控除対象額の計算ができたら、つぎに所得税率を確認してみましょう。

所得税率は課税される所得金額によって変わります。

会社員や公務員の人は、源泉徴収票で課税される所得金額がわかります。

「給与所得控除後の金額」から「所得控除の合計額」を差し引いた金額が課税所得金額です。

課税所得金額の算出方法

課税所得金額 =(a) 給与所得控除後の金額 −(b) 所得控除の合計額

課税される所得金額がわかったら、つぎの表に当てはめてみましょう。所得税率がわかります。

〈表〉所得税率表(平成27年分以降)

課税される所得金額※

税率

1,000円〜194万9,000円

5%

195万円〜329万9,000円

10%

330万円〜694万9,000円

20%

695万円〜899万9,000円

23%

900万円〜1,799万9,000円

33%

1,800万円〜3,999万9,000円

40%

4,000万円〜

45%

※1,000円未満の端数金額を切り捨てたあとの金額

国税庁「所得税の税率」

所得金額が増えるほど所得税率は高くなります。つまり、控除によって所得金額を下げることで、所得税率が下がる可能性もあるわけです。

具体例を用いてシミュレーション

計算式に則って、具体的な例を見てみましょう。

総所得金額等が470万円の場合

条件:(1)年間医療費:32万8,450円、(2)生命保険による給付金:5万円、(3)年収200万円超の場合:10万円

((1)328,450円-(2)50,000円)-(3)100,000=178,450円

この場合、178,450円が医療費控除の対象額です。

総所得金額等が190万円の場合

医療費控除対象額の計算

条件:(1)年間医療費:428,450円、(2)生命保険による給付金:0円、(3)年収200万円未満の場合:1,950,000×5%=97,500

((1)428,450円-(2)0円)-(3)97,500=330,950円

控除額は30,950円になります。

この金額に課税所得額から出した所得税率をかけると、実際の還付額が割り出せます。

課税所得額は源泉徴収票で【給与所得控除後の金額-所得控除の額の合計】して算出します。

この課税所得額を元に国税省のホームページなどで所得税率を確認し、先の計算で算出した医療費控除対象額にかけると、具体的にいくら還付されるのか確認することが可能です。

国税省のホームページ

医療費控除の申請は確定申告期間に行う

医療費控除の申請は確定申告期間に行う

2024年(令和6年分)の医療費控除の期間は、令和7年2月17日(月)から同年3月17日(月)までです。

なお、医療費控除は確定申告の中でも、払いすぎた税金が戻る「還付申告」にあたるため令和7年1月1日(水)以降であれば2月17日(月)以前でも行えます。

医療費控除の申請方法を解説

医療費控除ができそうなことがわかれば、実際に申告する準備を始めていきましょう。

ここでは簡単に申請の準備から還付されるまでの流れをみていきます。

医療費控除の対象となる費用を確認する

まず、1年間で支払った医療費を確認していきます。

医療費通知や領収書をチェックして、医療費控除として申請できる費用がいくらあるのか、控除対象かを確認しましょう。

必要書類を準備する

医療費控除の申請に必要な書類は主に以下の5つです。

  • 確定申告書

  • 医療費控除の明細書

  • 医療費通知(医療費のお知らせ)

  • 給与所得の源泉徴収票

  • 本人確認書類のコピー

2017年より、医療費の領収書の提出が不要になった代わりに「医療費控除の明細書」の添付が必要になりました。

書類に記入する

医療費控除を申請するには確定申告書、医療費控除の明細書を作成する必要があります。

その他の必要書類に必要な項目は記載されているので、必要な情報をどこに書けばいいかがわかれば難しいことはありません。

後半でより詳しい書き方を説明します。

必要書類を税務署に提出する

申請書類は、インターネットで申告するe-Taxや郵送、税務署窓口への直接提出のいずれかの方法で税務署に提出できます。

それぞれメリット・デメリットがありますので自分に合った方法を選びましょう。

指定口座に還付金が振り込まれる

確定申告書の提出から還付金が銀行口座に振り込まれるまではe-Taxでは3週間程度、その他の場合には1カ月半ほどかかります。

申請が早く、確認事項がないまま交付手続きに進めればもう少し早く振り込まれることがあるかもしれませんが、あまり早く振り込まれることに期待はしない方が良いでしょう。

医療費控除の申請に必要な書類

医療費控除の申請に必要な書類

還付の流れが理解出来たら必要書類を準備しましょう。

【医療費控除の申請に必要な書類】

  • 確定申告書

  • 医療費控除の明細書

  • 医療費通知(医療費のお知らせ)

  • 給与所得の源泉徴収票

  • 本人確認書類のコピー

確定申告書

1年間の税額を計算し、申告するための書類です。

サラリーマンや公務員の方は通常であれば会社の年末調整でやってくれるので、馴染みがない方も多いかもしれません。

税務署や国税庁のホームページからダウンロードできるほか、オンラインで作成することも可能です。

医療費控除の明細書

1年間で支払った医療費の明細を記入する用紙です。制度内容が変わり、領収書をたくさん添付するかわりに「医療費控除の明細書」で済むようになりました。

ただし、領収書は自宅で5年間保管が必要で、税務署から求められたときは、提示または、提出が必要になるので医療費の領収書も必ず保管しておきましょう。

国税庁のサイトからダウンロードか、オンラインで作成することができるのでご自身に合った方法で作成しましょう。

医療費通知(医療費のお知らせ)

先にも登場しましたが、自身が加入している健康保険組合から送られてくる支払った医療費が記載されている書類のことです。

医療費控除で提出する場合には、以下の内容が記載されている必要があります。

  • 医療費控除に必要な記載事項

  • 健康保険の加入者などの氏名

  • 療養を受けた年月

  • 療養を受けた人の名前

  • 療養を受けた場所(病院、診療所、薬局など)の名前

  • 健康保険加入者が支払った医療費の額

  • 健康保険組合等の名称

医療費通知を添付することによって、医療費控除の明細書の記入を省略することが可能です。

給与所得の源泉徴収票

会社で働いている人や公務員の方は源泉徴収票も準備しましょう。

これは12月の給与明細と一緒に受け取るのが一般的ですので、確定申告まで無くさないようにしておきましょう。

給与や納めた所得税額について記載されていて、記載項目に沿って記入する箇所があります。提出は不要ですが、必要な情報が載っていますので手元に準備しておきましょう。

本人確認書類のコピー

マイナンバーカードや運転免許証といった本人確認書類のコピーを添付して送る必要があります。

マイナンバーカードを持っていない方は以下の書類で代替可能です。

  • 運転免許証

  • 公的医療保険の被保険者証

  • パスポート

  • 身体障害者手帳

  • 在留カード

ただし、マイナンバーカード以外の書類を利用する場合には、番号確認書類の添付も必要になるので覚えておきましょう。

医療費控除の申請に必要な書類の書き方

必要書類が揃ったら実際に記入していきましょう。

医療費控除の明細書

医療費控除の明細書

01. 医療費控除を受ける方の住所、氏名を記入します。

02. 医療費通知に記載されている医療費の合計金額を記入します。医療費通知が複数ある場合には対象となる人すべての合計額を書く必要があります。

03. 医療費通知以外に医療費がある場合は、以下の明細を記入します。

  • 医療を受けた方の氏名

  • 医療費を支払った医療機関の名称

  • 医療費の区分(診療や治療・医薬品の購入・介護保険サービスなど)のチェック

  • 支払った医療費の金額

  • 生命保険や社会保険などで補てんされた金額

また、領収書ごとに細かく分けず、同じ医療機関ごとにまとめて記入することも可能です。

  • 支払った医療費、保険金などで補てんされる金額それぞれの合計金額を記入します。

  • 4を転載し、差引金額を記入します。

  • 所得金額の合計額欄には、「給与所得の源泉徴収票」の「給与所得控除後の金額」を記入します(以下の源泉徴収票の「B」にあたる金額です)。

  • 差引金額から、10万円(所得合計金額が200万円までの方は、所得合計金額×5%)を引いた金額が最終的な医療費控除額となります。

【給与所得の源泉徴収票の例】

給与所得の源泉徴収票の例

控除額の計算がめんどくさい人は国税庁の医療費集計フォームなどを活用すると簡単に計算できます。

このフォームではエクセルに入力するだけで控除額が自動計算される仕組みになっているので、面倒に感じる方はこういったツールを活用するのもオススメです。

確定申告書

確定申告書

医療費控除は確定申告書の第一表に記入します。

01. 確定申告書に住所、マイナンバー(個人番号)、氏名、生年月日を記入します。

02. 給与所得の源泉徴収票」の各項目(A~D)を、確定申告書の所定の欄に記入します。

03. 「医療費控除の明細書」で計算した医療費控除額を、確定申告書の医療費控除欄に記入します。「区分」の欄は記入しなくて大丈夫です。

医療費控除の申告はオンラインでも可能

申告の方法は税務署へ直接提出、郵送による提出、オンラインでの提出が可能です

税務署へ直接持ち込む場合は、確定申告の時期は混雑するのが難点ですが、不明な点など職員へ質問ができるので、一人で申請を行うのが心配な方には安心です。

郵送の場合は混雑に巻き込まれませんが、印刷する費用や環境が必要になってくるので物理的に難しい方もいるかもしれません。

パソコンに抵抗がない方は、24時間自分の時間で作業ができるe-Taxが便利です。

自宅からパソコンやスマホでできれば税務署に行かずに、印刷や郵送費もかからず、添付書類も不要なので自分の都合の良い時に簡単に手続きができるのでオススメです。

時間を有効に使うこともできるので、より簡単に節税するためにも活用していきたいですね。

国税庁のサイトで医療費控除の明細書が作れる

医療費控除の明細書は国税庁 確定申告書等作成コーナーからオンラインでも作成可能です。

国税庁 確定申告書等作成コーナー

オンラインのためパソコンだけでなくスマホでも操作が可能なので自分の空いている時間で手軽に作成できるのが魅力です。

e-taxを使えばオンラインで提出まで可能

国税庁のサイトで作成した医療費控除の明細書はそのまま印刷して税務署に提出することも可能ですが、e-taxを使用すれば提出までオンラインで完結できます。

資料作成だけではなく、申告までオンライン完結できるのでハードルは一気に下がりますね。

医療費控除は会社がやってくれないの?

残念ながら医療費控除は年末調整では適応されません。

会社員の方は確定申告に馴染みがなくハードルが高いと思うかもしれませんが、ご自身で手続きを行う必要があります。

面倒に感じるかもしれませんが、流れに沿って記入していけば意外と簡単に申請することができますよ。

医療費控除はさかのぼって申告できる?

万が一、医療費控除の存在を知らず、「あの年なら申請できたかも...」と思った方はいませんか?

実は期日内であれば遡って申告することができるんです。

確定申告の有無によって申請可能期間が異なるので諦めずに次の項で確認してみましょう。

確定申告をした場合:更正の請求

確定申告をしたが医療費控除をし忘れている方がこちらです。

すでに提出した確定申告の申告額に誤りがあった場合に、「修正申告書」を提出することで金額を正しい額に訂正することができるのが更生の請求です。

これにより、確定申告後に医療費控除を忘れていたことが発覚しても、遡って還付を受けることができます。

また、確定申告の期限内であれば「修正申告」で申告内容の修正を行えます。

確定申告をしていない場合:還付申告

確定申告をしていない方が医療費控除をし忘れていた場合はこちらです。

還付申告は確定申告を行わなかった人が対象となるため、会社員で年末調整で終わっていた方が医療費控除が漏れていた場合などに申告を行うことで遡って還付を受けることができる制度です。

更生の請求・還付申告は5年前までさかのぼれる

上記で紹介したどちらも、5年前まで遡ることが可能です。

5年以内に医療費控除の申請を忘れていたということがあれば、今申請すれは還付を受けられる可能性があるということです。

2023年(令和5年)分の申告が漏れていた場合、2028年(令和10年)12月31日まで提出できます。

いつ申告すべき医療費控除だったかを確認し、諦めずにすぐに申告しましょう。

医療費控除をさかのぼって申告するやり方

還付申告は確定申告と同じ方法のため、専用の還付申告書というものはありません。確定申告書へ必要事項の記載と必要書類を添付して税務署へ提出します。

【還付申告に必要な書類】

  • 確定申告書

  • 源泉徴収票

  • 医療費控除の明細書や医療費通知(医療費のお知らせ)

  • マイナンバーカードなどの本人確認書類

医療費控除の手順を確認しながら進めましょう。

医療費の領収書は5年間保管しよう

ここまで何度か触れてきましたが、医療費控除として申請した医療費が書かれている領収書は、5年間保存しておく必要があります。

この5年間の起算日は、原則確定申告期限の翌日となります。

たとえば、2023年度の確定申告であれば、確定申告期限2024年3月15日の翌日から5年を経過する「2029年3月15日まで」となります。

この保存義務期間中は、税務署から領収書を見せて欲しいと言われたら、領収書を提出、または提示しなければなりません。

提出できない場合には脱税など要らぬ疑いを持たれかねませんので、いざという時に備えてきちんと保管しておきたいものです。

医療費控除の特例「セルフメディケーション税制」

医療費控除について具体的に解説してきましたが、さらに活用しやすい節税対策として「セルフメディケーション税制」があるのを知っていますか?

1年を通して風邪を引いた時に病院にかかる程度で、医療費控除を利用できるほど医療費を支払っていないという方も少なくないでしょう。

ちょっとした身体の不調などでドラックストアなどで買える市販薬を利用される方であれば、一定の条件を満たせば税金が還付・減額される制度が2017年1月に始まりました。

一定の条件とは、対象となる市販薬を1年間に12,000円以上購入し、更にその年に健康の維持増進および疾病予防への一定の取り組みをしていることです。

対象者は医療費控除と同じく本人および、本人と生計を一にする配偶者やその他の親族になります。

家族分を合算でき、大きな額を超える必要がないため。医療費控除よりも申請できる方が多いのではないでしょうか?

セルフメディケーション税制の対象は?

そもそもセルフメディケーション税制は、医療費控除の特例として「健康の維持増進及び疾病の予防への取組として自分でセルフケアを推進するため」に制定された制度です。

そのため、病院へ行くほどでもないが自宅で市販薬を飲んでケアした場合に使用する市販薬が多く適用されています。

例えば

  • 風邪薬(総合かぜ薬)

  • 鎮痛剤(解熱鎮痛薬)

  • 風邪薬(総合かぜ薬)

  • 湿布薬(鎮痛消炎薬)

※使用されている成分によって例に挙げた中でも対象とならない商品がある可能性があります。

対象商品にはこのようなマークがついている場合が多いので、薬選びに迷った場合には参考にしてみてください。

セルフメディケーション税控除対象

詳しく確認したい方は厚生労働省のホームページで確認することができます。

厚生労働省のホームページ

セルフメディケーション税制の計算方法

対象となる市販薬の購入費用として、年間1万2000円を超えて支払った場合に、超えた金額を8万8000円を上限として所得控除できます。

セルフメディケーション税制では、対象品購入額の1万2000円を超えた額が所得から引かれて、課税対象額が減額されるので、税金が低くなる制度であり、上限を超えた額が戻ってくるわけではないので注意が必要です。

例を見てみましょう。

<条件>

所得税率20%、住民税率10%のAさんが年間50,000円分の市販薬を購入。

12,000円を超えた差額分が対象金額なので、50,000円-12,000円=38,000円が控除の対象金額です。

【所得税と住民税の控除額】

38,000円(控除額)×20%(所得税分)=7,600円
38,000円(控除額)×10%(住民税分)=3,800円

減税額は7,600円+3,800円=11,400円 となります。

セルフメディケーション税制の申請に必要な書類

申請時に必要な書類とその記載に必要な事項を確認しておきましょう。

【セルフメディケーションに必要な書類】

  • 確定申告書

  • セルフメディケーション税制の明細書

確定申告書は住宅ローンやふるさと納税など確定申告がほかに必要なものがあれば同じ申告書で申告できます。

セルフメディケーション税制の明細書には、次の定められた事項の記載が必要です。

【セルフメディケーション税制明細書の必要記載事項】

  • 医薬品の購入費

  • 購入した医薬品の名称

  • 医薬品を購入した薬局・ドラッグストア等の名称

  • その他参考となる事項(保険金などで補てんされる金額等)

  • 健康の維持増進および疾病予防への一定の取り組み

また、対象となる健康の維持増進および疾病予防への一定の取り組みは以下のものです。

【健康の維持増進および疾病予防への一定の取り組み】

  • 保険者が実施する健康診査(人間ドック、各種健診など)

  • 予防接種(定期接種、インフルエンザの予防接種など)

  • 勤務先で実施する定期健康診断(事業主診断)

  • 特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導

  • 市区町村が健康増進事業として実施するがん検診

証明書類には、(1)氏名(2)一定の取り組みを行った年(3)取り組みに係る事業を行った保険者、事業者の名称もしくは市区町村の名称または取り組みに係る診察を行った医療機関の名称もしくは医師の氏名の記載が必要です。

領収書や結果通知表、証明書類の添付または提示は不要ですが、税務署から提示または提出を求められる場合があるため、5年間の保管が必要となります。

セルフメディケーション税制の申請手続きの流れ

医療費控除と別で申請する必要がありますが、手続きの流れは変わりません。

1.対象となる費用を確認する

2.必要書類を準備する

3.書類に記入する

4.必要書類を税務署に提出する

難しく感じるかもしれませんが、やってみるとそこまで手間はかかりません。

まずは、家族で1年間に市販薬をどのくらい購入しているか把握するところから始めてもみてはいかがでしょうか。

領収書やレシートは大切に保管

セルフメディケーション税制でも5年間は税務署から領収書や証明書の提示を求められることがあるので大切に保管しましょう。

また、オンラインで医薬品を購入している方は以下のポイントに注意してください。

自宅プリンターで印刷した領収書はセルフメディケーション税制・確定申告に使用できないので、カスタマーサービスに依頼したり、注文時に領収書の発行をする必要があるのでお忘れなく。

医療や健康維持は私たちにとって切り離せない存在です。制度をうまく使って、しっかり節税をしていきましょう。

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3級ファイナンシャル・プランニング技能士
保険業界で8年以上の経験を持ち、深い専門知識と豊富な実務経験を活かして、お客様のニーズに合わせたライフプランの策定と提案を行っています。さらに、管理職としての経験もあり、チームの人材育成に注力。お客様一人ひとりに最適な解決策を提供できるよう、プロフェッショナルなライフプランナーを育成してきました。

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