医療保険は、病気やケガに備えるために重要な存在です。
しかし、多種多様な医療保険が存在するため、選ぶのが難しいと感じることもあるでしょう。
この記事では、医療保険の種類や特徴、選び方と注意点まで詳しく解説します。
公的医療保険制度と民間の医療保険の違いや、各種医療保険のメリットとデメリットを比較し、自分に最適な保険を選ぶためのポイントを学ぶことができます。
公的医療保険制度と民間の2つがある
日本の医療保険は、大きく分けて「公的医療保険制度」と「民間の保険会社が提供する医療保険」に分かれます。
公的医療保険制度は国や自治体、健康保険団体が主体となって運営し、全国民が加入することが義務付けられている保険制度です。
例えば、国民健康保険や健康保険(社会保険)などがこれに該当します。
公的医療保険制度の目的としては、基本的な医療費の負担を軽減し、国民の健康を維持・向上させることになります。
一方、民間の医療保険は保険会社が提供する補助的な保険です。これらの保険は、公的医療保険制度でカバーされない部分や、より充実した医療サービスを受けるための費用を補填する目的で加入されます。
公的医療保険制度と民間の医療保険の違い
公的医療保険制度と民間の医療保険は、それぞれ異なる特徴や目的を持っています。具体的な違いとしては次のようになります。
公的医療保険制度は国や地方自治体が主体となって運営する制度であり、全国民が加入することが義務付けられています。
一方、民間の医療保険は保険会社が提供する任意加入の保険で、公的医療保険だけでは保障内容が不足する場合もあるため、補完的な役割でより充実した医療保障を受ける事ができます。
両方の医療保険制度を上手に活用することで、自分や家族の将来に備えることができるでしょう。
公的医療保険の種類
公的医療保険制度には、
国民健康保険
健康保険
共済組合
船員保険
といった複数の種類が存在します。それぞれの特徴について以下で説明します。
国民健康保険
国民健康保険は、主に自営業者やフリーランス、無職など健康保険に加入していない人が対象となる公的医療保険です。地方自治体が運営しており、所得に応じて保険料が決定されます。医療費の自己負担は基本的に30%です。
健康保険(社会保険)
健康保険は、会社員や公務員などの雇われている人が対象となる公的医療保険です。健康保険は、厚生労働省が所管し、全国健康保険協会や企業主導の健康保険組合が運営しています。保険料は所得に応じて決定され、給与から天引きされることが一般的です。医療費の自己負担は基本的に30%です。
共済組合
共済組合は、特定の業種や職種に従事する人を対象とした公的医療保険です。例えば、教職員共済組合や警察共済組合などがあります。共済組合は、それぞれの組合が独自に運営しており、保険料や保障内容は組合によって異なります。医療費の自己負担は基本的に30%です。
船員保険
船員保険は、船舶に乗務する船員を対象とした公的医療保険です。船員保険は、厚生労働省が所管し、全国船員保険協会が運営しています。保険料は所得に応じて決定され、給与から天引きされることが一般的です。医療費の自己負担は基本的に30%です。
医療保険は掛け捨て型と積立型に分類できる
医療保険は、掛け捨て型と積立型の2つに分類され、それぞれ異なる特徴とメリット・デメリットがあります。
掛け捨て型と積立型の医療保険は、保険料の使い道や保障期間、払い戻しの有無などが異なるため、加入者のニーズや将来設計に応じて選択しましょう。
具体的な特徴や違いは次のようになります。
掛け捨て型医療保険:
保険期間と保険料払込期間が基本的に同じであることを想定した保険です。掛け捨て型医療保険は、貯蓄性が無い分保険料が比較的安価であることが特徴。ただし、保険期間中に保険金の支払事由に該当しなかった場合、支払った保険料は戻ってこないため、「掛け捨て」と呼ばれます。掛け捨て型医療保険は、希望する期間だけ保障が必要な場合に適しています。
特徴:保険料が安く、短期でも長期でも希望期間で保障可能。
メリット:加入しやすく、必要な期間だけ保障を受けられる。
デメリット:保険期間終了時に払い戻しや満期金がない。
積立型医療保険:
医療費用に備えるだけでなく、貯蓄することも目的とした保険です。このタイプの医療保険は、契約者が一定期間保険料を支払い続けることで、保険金が支払われるだけでなく、満期時や解約時に積立金が返戻されます。積立型医療保険は、長期的な医療費用の備えや将来の資産形成を目的としています。
特徴:保険料が積立金として蓄積され、将来的な払い戻しや満期金が受け取れる。
メリット:長期的な保障が可能で、将来的に資産形成にも役立つ。
デメリット:保険料が掛け捨て型よりも高くなることがある。
それぞれにメリットとデメリットがあるため、自分のニーズや将来のライフプランに合わせて適切なタイプの医療保険を選択することが重要です。
医療保険にはどんな種類がある?
民間の医療保険にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特徴や保障内容があります。ここでは、医療保険の種類とそれぞれのメリット・デメリットを解説します。
定期医療保険
定期医療保険は、一定期間だけ保障を受けられる保険で、契約期間が終了すると保険の効力がなくなります。このタイプの保険は、短期間で高額な保障が必要な場合や、一時的な保障が求められるケースに適しています。
メリット
保険料が比較的安いため、予算に応じて選びやすい
- 保険料が終身医療保険に比べて低いため、負担が軽減される
- 短期間で高額な保障が可能で、一時的なリスクに対処できる
- 保障期間を自由に設定できるため、自分のニーズに合わせて選べる
- 短期間のリスクをカバーできるため、ライフステージの変化に対応できる
デメリット
- 保障期間が過ぎると保障が受けられないため、長期的な保障を求める場合には不向き
- 基本的には返戻金がない
- 保障期間終了後に新たな保険に加入する際、年齢や健康状態の変化により保険料が高くなることがある
保障期間中に特定の疾患が発覚した場合、次の保険加入が難しくなる可能性がある
終身医療保険
終身医療保険は、生涯にわたって保障を受けられる保険で、加入者が亡くなるか契約を解除するまで保障が続きます。このタイプの保険は、将来の医療費用に備えたい方に適しています。
メリット
- 終身で保障が受けられるため、老後の安心が得られる
- 高齢になっても更新が不要で、一度加入すれば手間がかからない
- 高齢期においても、新たな保険加入の手間や審査が不要である
加入後の年齢や健康状態の変化が保険料に影響しないため、安心して保障を受けられる
デメリット
- 保険料が定期医療保険に比べて高いため、予算が限られている場合は検討が必要
- 若い時期の加入が望ましいため、加入を遅らせると保険料が高くなる可能性がある
保険料の支払いが長期にわたるため、継続的な支払い能力が求められる
女性保険
女性保険は、女性特有の疾病や妊娠・出産に関連するリスクに対応した医療保険です。乳がんや子宮がんなどのがん保障、妊娠・出産に関する保障、更年期障害や骨粗しょう症など、女性に特化した保障内容が特徴です。
メリット
- 女性特有の疾病やリスクに対応した保障が提供される
- 出産に関連する保障が含まれることが多いため、ライフステージに合った保障が得られる
- がん保障の範囲が広く、乳がんや子宮がんなど多くのがん種に対応している
デメリット
- 女性特有の疾病以外の疾病に対する保障が不十分な場合がある
- 妊娠や出産に関連する保障が不要な場合、不要な保障が含まれることになる
子供向け医療保険
子供向け医療保険は、子供のケガや病気に関連する医療費用をカバーすることを目的とした医療保険です。
「自治体の医療費助成が充実している」「幼稚園や学校などの教育機関を通して共済制度に加入する場合が多い」などの理由から、子供に医療保険は要らないという意見もあります。しかし、万が一小児がん等になってしまった場合のベッド代や先進医療費など、共済制度で保障されない部分や健康保険適用外の部分は全額を自己負担で賄わなければなりません。
また、社会人になってから健康診断で異常が見つかり、保険に加入できなくなってしまう可能性もあるため、子供のうちから医療保険に加入するという方もいます。
メリット
- 子供の万が一に備えられるため、親子の安心感が得られる。
- 社会人になって病気になった後では加入しにくくなるため、健康なうちに加入ができる
- 公的な医療制度や自治体の医療助成ではカバーしきれない支出を補う事ができる。
- 子どものうちに終身保険に加入すると、成人してから終身保険に加入する場合と比べて保険料が安くなり、その安い保険料が終身続く。もしくは全て払ってしまうことで子どもに保険をプレゼントすることもできる。
デメリット
- 自治体の医療費助成が充実しているしているため、医療保険を使わない可能性もある。
- 子供のうちに終身保険に加入した場合、将来的に、その時の医療事情に合わない保障になる可能性がある。
引受基準緩和型医療保険
引受基準緩和型医療保険は、健康状態によっては一般的な医療保険の加入が難しい人でも加入できるように、審査基準が緩和された医療保険です。これにより、慢性疾患を抱える方や過去に病歴がある方でも保障を受けることが可能になっています。
メリット
- 持病がある人や高齢者でも加入が可能
一般的な医療保険よりも加入が容易であり、持病既往症の再発や悪化も対象になる 一般的な医療保険では加入が難しい人にとって選択肢が広がる
デメリット
- 保険料が一般的な医療保険に比べて高い場合がある
- 保障内容が限定的な場合があり、一部の疾病に対する保障が不十分なことがある
- 加入時の健康状態によっては、保険料がさらに高くなる場合がある
- 一部の商品では、保険期間や保障内容に制限が設けられていることがある
無選択型医療保険
無選択型医療保険は、医療保険の加入において健康状態の申告が不要な医療保険です。これにより、健康状態に関わらず保障を受けられることが特徴です。
メリット
- 健康状態の申告が不要で、手続きが簡単
- 持病がある人や高齢者でも加入が可能
年齢による加入制限が比較的に緩い
デメリット
- 保険料が一般的な医療保険に比べて高い場合がある
- 保障内容が限定的であり、一部の疾病に対する保障が不十分なことがある
- 一部の商品では、保険期間や保障内容に制限が設けられていることがある
- 無選択型のため、保険料が割増されていない医療保険に加入できる方が加入した場合、必要以上に高い保険料を支払うことになる可能性がある
一部の商品では、免責期間が設定されており、加入直後の病気やケガに対する保障が受けられないことがある
医療保険選ぶ時に確認したほうが良い加入条件
医療保険に加入する際には、いくつかの条件と選択基準が存在します。これらを理解し、自分に適した保険を選ぶことが大切です。
年齢制限
医療保険には、加入できる年齢に制限が設けられていることがあります。保険会社によっては、加入時の年齢や満期時の年齢に上限が設定されている場合があります。年齢制限を確認し、自分の年齢に合った保険を選びましょう。
健康状態
医療保険に加入する際には、健康状態の申告が求められることが一般的です。持病や既往症がある場合、加入できない保険があるかもしれません。また、無選択型医療保険や引受基準緩和型医療保険のように、健康状態に関する引受基準が緩和されている保険や健康状態の告知がない保険もあります。
加入期間
医療保険には、加入期間が設定されていることがあります。定期医療保険や終身医療保険など、加入期間に応じた商品が存在します。自分の保障ニーズに合わせて、適切な加入期間の保険を選びましょう。
医療保険の選び方と注意点
医療保険を選ぶ際には、自分のニーズに合った保険を選ぶことが重要です。以下に、医療保険の選び方と選ぶ際の注意点を解説します。
必要な保障内容を確認する
自分や家族がどのような医療保障が必要か検討しましょう。入院や手術、がん治療、高額な医療費の保障など、必要な保障内容を確認し、それに応じた医療保険を選びましょう。また、特定の病気や治療に特化した保険を検討することもできます。
保険料と保障のバランスを見極める
医療保険の保険料と保障内容は、バランスが大切です。高額な保険料であっても、自分に適した保障が得られる場合は、その保険を検討する価値があります。逆に、安い保険料であっても、必要な保障が得られない場合は適切な保険とは言えません。保険料と保障のバランスを見極め、最適な医療保険を選びましょう。
将来の生活設計を考慮する
医療保険を選ぶ際には、将来の生活設計も考慮しましょう。加入期間や保険料支払い方法など、将来的なライフプランに合った医療保険を選ぶことが重要です。また、加入者の年齢や健康状態が変わることを考慮し、適切な更新時期であるか、掛け捨てか積立かなどを検討しましょう。
契約前の確認事項
医療保険に加入する前に、以下の点を確認しておきましょう。
解約条件: 保険契約を途中で解約した場合の条件やペナルティがあるか確認しましょう。また、解約返戻金がある場合はその額も把握しておくことが重要です。
保険会社の信頼性: 保険会社の信頼性や評判を確認し、安心して加入できる会社を選びましょう。顧客満足度や対応力も検討ポイントに入れると良いでしょう。
免責期間: 医療保険には、加入後一定期間は保障が適用されない免責期間が設定されていることがあります。免責期間の内容を確認しましょう。
保険金受取人の指定: 給付金を請求できない(意思表示できない)状況になる可能性を考慮し、万が一の際でも迅速に給付金の請求ができるよう代理請求人を指定しておくと良いでしょう。
まとめ
今回は医療保険の種類や選び方について解説しました。まず、医療保険は公的医療保険制度と民間の医療保険に大別され、それぞれに特徴があります。
長く付き合っていくことになる「医療保険」。この機会に、保険のプロに相談して金額的にも内容的にも「自分に合った」医療保険を選んでみてはいかがでしょうか。