医療保険

医療費控除の対象となる費用は?対象期間や対象者、計算方法について解説

著者:みんかぶ編集室

監修:

杉本 大輔

2級ファイナンシャル・プランニング技能士 / シニア・ライフ・コンサルタント / フィナンシャル・エージェンシー所属

2023年10月20日 掲載

医療費控除は、1年間で支払った医療費の金額に応じて所得税や住民税が安くなる制度です。確定申告の際に申請することで、医療費による経済的負担を抑えることができます。

しかし、必ず知っておかなければならないのが「医療費控除の対象」。医療費控除の対象ではない費用を申告してしまった場合、ペナルティが発生してしまうこともあります。

「でも、医療費控除の対象となる費用ってどんなもの?」

「いつ支払った医療費なら控除の対象になる?」

「医療費控除は家族の医療費も対象になる?」

上記のポイントについて、きちんと把握しておくことが大切です。

今回は医療費控除の対象について、わかりやすく解説していきます。医療費控除によって受け取ることができる金額の計算方法についてもご紹介するので、どれぐらい医療費による負担が軽くなるかについてもチェックしてみましょう。

医療費控除の対象となる費用は?

1年間で支払った医療費に応じて納税額を抑えることができる「医療費控除」。申請することで、最大200万円までの還付金を受け取ることができます。しかし、具体的にどんな費用が控除の対象となるのか、気になるところですよね。

まずは、医療費控除の対象となる費用をご紹介します。

医療費控除の対象となる費用一覧

対象になる費用

医療費控除の対象となるのは、以下のような費用です。

  • 医師・歯科医師による治療費、入院費、通院費(自家用車のガソリン代・駐車代は除外)
  • 医師の送迎費
  • 治療や療養に必要な医薬品の購入費
  • 介護保険の対象となる介護費
  • はり師、きゅう師、柔道整復師による施術費(治療と関連するもののみ)
  • 医療器具(コルセット、補聴器など)の購入費・レンタル料
  • 妊娠後の検診・検査・通院費
  • 出産入院時のタクシー代
  • 歯科矯正費用(年齢や必要性に基づく)

治療費や入院費はもちろん、検診の費用や医療器具のレンタル費まで、さまざまな費用が医療費控除の対象となります。

また、医師から指定されたお薬の代金や医療機関で支払った医療費のうち、公的医療保険が適用されないものも医療費控除の対象になる場合があります。

ご自身が支払った医療費のうち、上記に当てはまるものは合計何円になるのか確認してみましょう。

医療費控除の対象とならない費用一覧

医療保険控除の対象にならない費用

もちろん、すべての医療費が控除対象ではありません。以下は対象外となる主な費用です。

  • 美容や容姿を変えるための費用(ほくろ除去など)
  • 食事療法を行った場合の食品購入費
  • 医師や病院のナースセンターへの贈り物
  • 自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車代金
  • 健康診断や人間ドックの費用
  • 入院時に個室を希望した際の差額ベッド代
  • 眼鏡やコンタクトレンズの購入費用
  • 交通費(自家用車で通院した場合のガソリン代、駐車場代含む)
  • 未払いの医療費

直接治療に関係しない費用や、自己都合によって発生した費用は医療費控除の対象外となります。具体的には、美容や視力矯正、自己都合の差額ベッド代は治療目的の行為とはみなされないため、医療費控除の対象にはなりません。

医療費の合計額が10万円未満の場合は対象外

医療費控除を受けるためには、対象となる医療費が10万円を超えている必要があります。しかし年間の課税所得が200万円を下回っている場合は、「課税所得の5%以上」が基準となります。

年収が200万円を超えていても、税金や所得控除などを差し引いた「課税所得」は200万円を下回っている場合もあります。申請する際は、きちんと所得額を確認しておきましょう。

医薬品の購入費用は対象にならない

医師から治療のために処方箋を出され、該当する医薬品を購入する場合の費用は医療費控除の対象となります。一方、ドラッグストアやコンビニで購入可能な「市販の医薬品」は医療費控除の対象外となります。

ただし、医療費控除の特例として「セルフメディケーション税制」という制度が用意されています。そちらを活用すれば、市販の医薬品でも控除の対象として申請することが可能です。

詳しくは記事後半の「医療費控除の特例『セルフメディケーション税制』とは?」で解説します。

医療費控除の特例『セルフメディケーション税制』とは?

医療費控除の対象となる期間

医療費控除の対象となる期間

医療費控除の対象となる費用に関しては、対象期間も決められています。対象外となるタイミングで発生した費用を申告しても、医療費控除が受けられません。

1月1日〜12月31日の1年間で支払った医療費が対象

医療費控除の対象となる期間は1年間です。具体的には、確定申告期間の前年の1月1日〜12月31日で支払った医療費が控除の対象となります。

例えば、2024年の3月に確定申告をする場合、2023年1月1日から12月31日までの医療費を申告することが可能。1年間の支払い金額や内容をしっかり確認して、漏れの無いよう申請しましょう。

医療費控除は5年前までさかのぼって申告できる

医療費控除は、過去5年間までの医療費であればさかのぼって申告することができます。

最近になって医療費控除のことを初めて知った方の中には、医療費控除の対象となる費用を申請していない「申告漏れ」をしてしまっている方もいらっしゃるでしょう。せっかく控除を受けられたのに、もったいなく感じてしまいますよね。

しかし、医療費控除は過去の医療費についてもさかのぼって申請が可能。5年前までの医療費であれば「還付申告」をすることによって控除が受けられます。

医療費控除の対象となる人

医療費控除の対象となるのは、被保険者本人だけではなく、その家族も対象となります。一方、同じ家に住んでいる家族であっても対象外となる場合があるので、事前の確認は必要不可欠です。

被保険者本人と「生計が同じ」家族が対象

医療費控除の対象となる人には、被保険者本人だけでなく「生計が同じである」家族も含まれます。そのため、住んでいる家が異なる場合でも、生計が同じであれば医療費控除の対象となります。

具体例を用いて考えてみましょう。被保険者Aさんには、実家から離れて暮らす大学生のBさんという息子がいるとします。

もしAさんからBさんに対し、学費や生活費、医療費など一定の金額が送られている場合、BさんはAさんと生計が同じであると言えます。そのため、BさんはAさんの家族として医療費控除を受けることが可能。

一方、Cさんと娘のDさんは同じ家で生活していますが、それぞれが収入を得て、独立して生計を立てているとします。この場合、DさんはCさんの娘であっても医療費控除の対象とはなりません。

所得が最も高い人が申請するのがおすすめ

家族の分もまとめて申請する場合は、対象者の医療費をすべて合算した金額を申告することになります。その際、家族内で最も所得が高い人が申請するとよりお得になる可能性が高いです。

あとで詳しく解説しますが、医療費控除によって還付金をいくら受け取れるかは、申請する人の「所得額の高さ」によって異なります。所得が高いほど、還付金の金額も高くなる可能性が高いです。

そのため家族の分を申請する場合は、所得額が最も大きい人が申請するようにしましょう。

医療費控除によっていくら戻る?

医療費控除について最も気になるのは「実際にはどれくらいの額が戻ってくるのか」でしょう。そのような方に向けて、ここでは基本的な計算方法についてわかりやすく説明します。

計算式だけでなく、具体例をもとにしたシミュレーションもご紹介していきます。

控除額の計算方法

医療費控除によって何円返ってくるのか計算する際に、その基準となる金額を「控除額」といいます。医療費控除の申請をする際は、自身で控除額を書類に記入しなければなりません

控除額の計算式は次のとおりになります。

「1年間で支払った医療費の合計」-「A」-「B」=医療費控除額

A:10万円(総所得200万円以下の場合は総所得の5%の金額)

B:高額療養費制度や医療保険を通じて1年間で受け取った金額

医療費控除額の計算方法

Aの計算をする際、年収ではなく総所得をもとに計算する必要があります。年収が200万円を超えていても、給与所得控除を差し引いた総所得は200万円を下回っていることがあるため、注意が必要です。

還付金の計算方法

控除額が計算できれば、実際に手元に戻ってくる「還付金」の金額も計算できます。

会社員や公務員であれば、源泉徴収票に記載されている「総所得」から「所得控除の額の合計額」を差し引き、課税所得を算出することができます。また、課税所得ごとに「所得税率」が定められているため、ご自身が当てはまる所得税率を確認しましょう。

所得合計金額(課税所得額) 所得税率 控除額
195万円未満 5% 0円
195万円以上 330万円未満 10% 9万7,500円
330万円以上 695万円未満 20% 42万7,500円
695万円以上 900万円未満 23% 63万6,000円
900万円以上 1,800万円未満 33% 153万6,000円
1,800万円以上 4,000万円未満 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

引用:国税庁「No.2260 所得税の税率

医療費控除に所得税率をかけ合わせることで算出される金額が、最終的に戻ってくる還付金額となります。

具体例を用いてシミュレーション

具体的な控除額や還付金額

とはいえ、式だけわかっても、具体的な金額はまだ掴めないですよね。そこで、以下の想定ケースをもとに、具体的な控除額や還付金額をシミュレーションしてみましょう。

  • 年収400万円のサラリーマン
  • 所得額:276万円
  • 所得控除の額の合計額:60万円
  • 1年間で支払った医療費の合計:50万円
  • 医療保険によって補填された金額:20万円

上記のケースをもとに、控除額や還付金額を計算してみましょう。

控除額の算出

まずは控除額を算出してみましょう。控除額の計算式は次のようになります。

「1年間で支払った医療費50万」-「10万」-「医療保険によって補填された金額20万」=20万円

上記の結果から、控除額は20万円です。

還付金の算出

控除額をもとに、実際にいくら手元に戻ってくるのか計算してみましょう。

今回のケースにおいて、課税所得は

「所得額276万」-「所得控除60万」=216万円

となります。所得税率は10%となるため、実際に手元に戻ってくるのは

「控除額20万」×「所得税率10%」=2万円

したがって、還付金は2万円となります。

医療費控除の対象外の費用も申告してしまったら?

医療費控除の申告を行う際に、ついうっかり「医療費控除の対象とならない費用」も誤って申告してしまうかもしれません。その場合、どのように対応すべきでしょうか?

確定申告の期間中は再提出が可能

確定申告の期間中であれば、再度提出することで修正が可能です。

確定申告期間は2月16日〜3月15日です。その期間中に誤りに気づいた場合は、確定申告に必要な書類を再度準備し提出しましょう。

確定申告期間を過ぎたあとは修正申告が必要

もし確定申告期間を過ぎてしまった場合は「修正申告」という手続きを別途行う必要があります

手続き方法は通常の確定申告とほとんど同じです。「申告書第一表」と「申告書第二表」を税務署に提出しましょう。

放置していると税務署から連絡が来ることも

間違ったまま放置していると、税務署からの連絡が入る可能性があります。その場合、延滞税やペナルティを支払わなければなりません。

このような事態を避けるためにも、確定申告の際はなるべく間違えないよう注意しましょう。もし税務署からの問い合わせがあった場合は、迅速に対応することが大切です。

医療費控除の申告漏れがあったら?

逆に「せっかく控除の対象だったのに、医療費の領収書を見落としていた!」といったケースも考えられます。医療費控除の対象費用だったのに、うっかり申告し忘れてしまった場合、どうしたらいいのでしょうか?

更正の請求で還付金を受け取れる

実は、医療費控除の申告を忘れてしまった場合でも、あとから「更正の請求」を行うことで還付金を受け取ることができます。

更正の請求は対象期間が5年以内と定められています。対象期間が過ぎると還付金がもらえないため、必ず期限までに申請するようにしましょう。

また確定申告と異なり、更正の請求は申請期間が定められていません。そのため、申告漏れに気づいたらなるべく早く手続きしておきましょう。

医療費控除の特例「セルフメディケーション税制」とは?

医療費控除の特例セルフメディケーション税制

ドラッグストアやコンビニなどで販売されている医薬品についても控除の対象とする制度が、医療費控除の特例「セルフメディケーション制度」です。

「病院にはあまり行かないけれど、かわりに医薬品を購入した」という方も少なくないでしょう。そのような方は、医薬品の購入費用が高額になっても、従来であれば控除を受けることができません。

しかし、セルフメディケーション制度によって、市販医薬品の購入費用も控除の対象となります。

医薬品の購入や健診、予防接種の費用が対象

セルフメディケーション税制では、対象となる医薬品の購入費用が年間1万2,000円を超えた場合、所得税の控除を受けることができます。

対象となる医薬品については、厚生労働省のホームページで公開されています。また、対象商品にはマークがついているため、店頭でも確認することが可能です。

対象期間は1年間

セルフメディケーション税制の対象期間は、通常の医療費控除と同じ1年間です。1月1日〜12月31日の期間内に支払った医薬品の購入費用を申告することで、税金の還付を受けることができます。

被保険者本人と生計が同じ家族が対象

セルフメディケーション税制は、被保険者本人とその家族が対象となります。医療費控除と同じく、生計が同じ家族であれば、住んでいる場所が違っても申請が可能です。

健康のために一定の取組を行っている必要がある

セルフメディケーション制度を利用するためには、健康維持や病気の予防のために一定の取り組みを行っている必要があります。

  1. 保険者(健康保険組合等)が実施する健康診査【人間ドック、各種健(検)診等】
  2. 市区町村が健康増進事業として行う健康診査
  3. 予防接種【定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種】
  4. 勤務先で実施する定期健康診断【事業主検診】
  5. 特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導
  6. 市区町村が健康増進事業として実施するがん検診

上記の取り組みを行っていない人は対象外となるため、注意が必要です。

医療費控除との併用はできないため注意

セルフメディケーション制度は、通常の医療費控除との併用ができません。そのため、医療費控除を利用する場合は、セルフメディケーション制度による控除は受けることができなくなります。

医療機関で支払った費用と医薬品の購入費用、どちらが高くなったか事前にチェックして選ぶようにしましょう。

医療費控除の申請方法

最後に、医療費控除の申請方法について簡単に解説します。

  1. 申請費用の確認:どの費用が控除の対象となるか確認し、合計金額を計算
  2. 控除金額の計算:医療費や所得をもとに、控除金額を算出
  3. 必要書類の提出:「確定申告書」「医療費控除の明細書」「本人確認書類」「源泉徴収票」を準備し提出
  4. 還付金の受け取り」指定した口座に還付金が振り込まれる

申請の流れは上記の通りです。必要書類や申請方法については、別の記事で詳しく解説しています。

まとめ

今回は、医療費控除の対象となる費用や期間、対象者について詳しくお伝えしてきました。

納税額が少なくなる医療費控除ですが、申告内容にミスがあるとペナルティが発生してしまいます。制度内容についてきちんと理解した上で、ミスがないよう申請することが大切です。

確定申告期間が始まる前から、余裕を持って準備を進めておきましょう。


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みんかぶ編集室

資産形成メディア「みんかぶ」を中心に、金融商品の記事の執筆を行っています。資産運用のトレンド情報や、初心者が楽しく学べるお金の基本コラムなど、資産形成をするすべての人に向けた記事を提供します。

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