生活保護を受ける場合、医療費は気になるポイントのひとつでしょう。生活保護の受給中に入院や手術が必要になった場合、もし医療保険が使えればお金の不安を大きく軽減できそうです。
しかし生活保護の受給中は、資産や生活に不要なものの所有ができなくなるだけでなく、公的医療保険にも加入できなくなるのをご存知でしょうか?生活保護を受けている間の保険について理解しておくことで、医療費に関する不安を大きく軽減できます。
今回は
- 生活保護を受けている間は公的・民間医療保険に加入できるのか
- 生活保護の受給者が利用できる制度
- すでに加入している医療保険の扱い
など、気になるポイントについてわかりやすく解説していきます。
生活保護を受給すると公的医療保険の被保険者から除外される?
まずは、日本国民に加入が義務づけられている「公的医療保険」には継続して加入できるのかについて確認してみましょう。
日本においては、国民は何らかの公的医療保険に加入するよう義務づけられています。しかし生活保護を受給する場合、公的医療保険への加入義務に関するルールが変わるため、注意が必要です。
国民健康保険と後期高齢者医療制度は被保険者から除外される
生活保護を受けると、国民健康保険と後期高齢者医療制度は利用できなくなります。
- 国民健康保険:会社員が対象の「健康保険」や「後期高齢者医療制度」に加入していない人が対象
- 後期高齢者医療制度:75歳以上の方と一定の障害があると認定された65歳以上の方が対象
公的医療保険を利用できる場合、医療費の自己負担額が大きく抑えられます。そのため国民健康保険や後期高齢者医療制度から除外されてしまうと「医療費は全額自己負担しなければならないのか」と不安に感じるかも知れません。
しかし、過度に不安になる必要はありません。このあと解説するように、生活保護の受給者は別の制度の対象になります。
会社員が対象である健康保険には加入できる
ちなみに、生活保護を受給しても「健康保険」には加入できます。そのため健康保険に加入している場合、わざわざ脱退する必要はありません。
健康保険
企業に勤務する人や公務員が対象の公的医療保険
健康保険は国民健康保険よりも保険料が安く、さまざまな公的制度が使えます。何らかの企業に勤務しているのであれば、健康保険に加入しておくのがおすすめです。
働いている方であっても、生活保護を受けることは可能です。実際、生活保護の受給ストップとなる条件のひとつに「安定した職につき、自立した生活を一定期間送れるようになった」というものもあります。
生活が安定したと判断されるまでは、生活保護の支給額を調整しつつ仕事をする期間が必要になります。そのため、働きながら生活保護を受ける期間が発生する方も一定数いらっしゃるでしょう。
生活保護を受給すると医療扶助の対象となる
先述した通り、生活保護を受けると国民健康保険や後期高齢者医療制度の加入者から除外されてしまいます。しかしそのかわり、生活保護受給者は「医療扶助」の対象となり、公的医療保険とは別の制度が使えるようになります。
そのため、医療費は全額自己負担になるわけではありません。過度に不安を抱く必要はないでしょう。
医療扶助には以下のような3つの特徴があります。
- 対象となる医療費の自己負担額が無料になる
- 指定された医療機関での治療が対象
- 通院する前にケースワーカーへの申請が必要
対象となる医療費の自己負担額が無料になる
医療扶助を使えば、医療費の支払いは全額免除されます。
「健康保険に加入している人」や「障害者自立支援法等の公費負担医療が適用される人」の場合、それぞれの制度における自己負担額分が支給されます。そのため「自分で支払うお金は0円で済む」という点は共通しています。
対象となる医療費は幅広いです。
- 診察
- 薬剤又は治療材料
- 医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術
- 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
- 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
- 移送
(引用:厚生労働省「生活保護の医療扶助について」)
ただし、すべての医療費が無料になるわけではありません。医療扶助を利用する場合、一定の制限が設けられています。
指定された医療機関での治療が対象
医療扶助を利用する場合、指定の医療機関を利用しなければなりません。決められた医療機関とは異なる場所で治療を受けると、医療扶助を利用できなくなるため注意が必要です。
利用可能な医療機関を知りたい場合は、担当のケースワーカーに確認しましょう。また自治体のHPに記載されていることもあるため、そちらもチェックしてみてください。
通院する前にケースワーカーへの申請が必要
また通院を希望する際は、病院に行く前にケースワーカーへ申請し「医療券」を受け取る必要があります。
医療券を受け取るまでのステップは次のとおりです。
- 福祉事務所に行く
- 窓口で渡される申請書にその場で記入し、窓口に提出
- ケースワーカーが内容を確認し、医療機関の受診が必要かチェック
- 受診が必要だと判断された場合、医療券が発行される
指定の医療機関へ行き、窓口で医療券を提出すれば、無料で診療を受けられます。同じ医療機関へ月に2度以上通院する場合、最初に医療券を提示すれば、同じ月の間は医療券無しで利用できます。
また緊急時や夜間、土日においては、福祉事務所が開いていないため医療券は受け取れません。その場合は、治療後にケースワーカーへ報告すれば大丈夫です。まずは指定医療機関に行き、医療券をもらえなかったことを伝えましょう。
生活保護を受けても民間の医療保険には加入できる?
公的制度に関しては「医療扶助」が使えますが、生活保護を受けている場合民間の医療保険には加入できるのでしょうか?
入院や手術の医療費を大きくカバーしてくれる医療保険。もしものことを考えれば、加入しておいたほうが安心ですよね。しかし公的医療保険のように、加入者から除外されてしまうのでしょうか?
生活保護を受給してから医療保険に加入するのは一般的に不可能
結論、生活保護を受給している人が医療保険に新しく加入するのは難しいです。
生活保護の受給中に医療保険に加入しようとした場合、保険金の支払いを生活費に充てるよう指示される可能性も少なくありません。
また医療保険によっては、お祝い金や解約返戻金がもらえる「貯蓄型」の保険商品も存在します。そのような医療保険を利用しようとしても「税金で資産形成する」とみなされてしまい、加入できない可能性が高いです。
また、生活保護の受給者は医療扶助によって医療費が無料になるため「医療保険に加入する必要がそもそもない」と判断されるケースも多いでしょう。
一部の医療保険であれば加入できる場合もある
ただし次のような条件を満たしていれば、医療保険に加入できる可能性があります。
- 掛け捨て型かつ保険料が安い医療保険:保険料が医療扶助を除く最低生活費の1割程度まで
- 解約返戻金が一定額以下の医療保険:解約返戻金が医療扶助を除く最低生活費の3ヶ月分以下
実際には、加入できる医療保険について明確な基準が設けられているわけではありません。しかし、医療保険によって支払う、もしくは受け取るお金が少なければ、医療保険への加入が認められやすいでしょう。
加入したい場合は自治体や担当窓口に相談
医療保険に実際に加入できるかどうかは自治体の判断に委ねられるため、事前の相談が必要です。
相談せず勝手に加入してしまうと、生活保護の受給額にも悪影響が及んでしまうかもしれません。そのため、無断で医療保険に加入するのはあまり得策ではないでしょう。
すでに医療保険に入っている場合は生活保護を受けられる?
しかし「生活保護を受給する前からすでに医療保険に加入している」というケースもありますよね。その場合、医療保険に加入したままでも生活保護は受けられるのでしょうか?
加入している医療保険を解約しなければならないケースが多い
すでに契約している医療保険を継続できるかについては、新規加入時と同じく、明確な基準があるわけではありません。しかし、医療保険を解約するよう求められるケースは決して少なくないでしょう。
とくに終身保険の場合、医療保険を解約し、解約返戻金を生活費に充てるよう指示されることが多いです。
また保険料が高いものや貯蓄性があるとされる医療保険も、同様に解約するよう指示されるケースが多いでしょう。
医療保険によっては継続して加入できることも
ただし、新規加入する場合と同様に「解約返戻金が少ない・もしくは存在しない保険」「保険料が少ない保険」は継続して加入できることもあります。
医療保険を解約すべきかの判断も自治体により異なるため、一概に結論を伝えるのは難しいです。医療保険を解約したくない場合、まずは福祉事務所のケースワーカーに相談してみましょう。
生活保護の受給中に医療保険の保険金は受け取れる?
医療保険に加入できたとしても、保険金等の受け取り時には注意が必要です。保険金等を受け取ること自体は可能ですが、ケースワーカーに報告せず無断で受け取るのは必ず避けましょう。
保険金等を受け取った場合、保険金などは生活費に充て、その分の生活保護給付金は返還する必要があります。
保険金を受け取る場合は福祉事務所への報告が必要
医療保険による保険金等を受け取る際は、必ず福祉事務所に報告しましょう。
無断で保険金等を受け取ってしまうと、場合によっては「生活保護の不正受給」に該当します。生活保護の受給状況に影響するだけでなく、罰金の支払いを命じられる可能性もあるため注意が必要です。
まとめ
生活保護を受給した場合、医療保険に加入できるかどうかについて解説してきました。
公的医療保険においては「国民健康保険」と「後期高齢者医療制度」は利用できなくなりますが、そのかわり「医療扶助」の対象となります。病院に行きたい場合、まずはケースワーカーに報告しましょう。
民間の医療保険は、自治体によって判断がわかれます。保険料が安く貯蓄性のない医療保険であれば加入できることもあるため、そのような保険を探しつつケースワーカーに相談してみましょう。
とはいえ、いくつもある保険商品の中から適した医療保険を選ぶのは骨が折れる作業です。各保険会社のプランに目を通し、保険料の見積もりを出してもらった上で、キャンペーン情報もチェックして……。
医療保険に関する知識がないと、必要な保障内容もなかなか決められないでしょう。
そこでおすすめなのが、保険のプロに相談してみること。みんかぶ保険では、保険に関する専門知識を持ったプロに無料で相談できます。
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