医療保険に加入すべきかについては、以前からさまざまな意見が交わされています。
しかし、本当に医療保険は必要ないのでしょうか?
この記事では、高齢者に医療保険が必要ないのかどうかについてわかりやすく解説していきます。医療保険があまり必要ない人や、逆に加入すべき人の特徴についても紹介しているため、気になる方は要チェックです。
高齢者は医療保険がいらないと言われる理由
高齢化社会が進む中で、医療保険に加入すべきか悩む高齢者も増えているでしょう。医療保険は、病気やケガの治療費をカバーするために加入するものですが、高齢者になっても保険料を支払ってまで加入すべきなのでしょうか?
これまでさまざまな議論が交わされてきましたが、中には「高齢者は医療保険に加入しなくても良い」という意見も多く見受けられます。
まずは、高齢者に医療保険はいらないと言われる理由について確認してみましょう。
公的医療保険が充実しているから
高齢者は医療保険が必要ないと言われる大きな理由は「公的医療保険が充実しているから」です。
日本の公的医療保険制度は、世界でも類を見ないほど充実しています。このあと詳しく解説しますが、中でも高齢者は若年層よりも医療費の自己負担割合が低く抑えられています。
公的医療保険で十分にカバーできるから高齢者がわざわざ医療保険に入っても恩恵は少ないのではないか、と考える方も多いでしょう。
保険料が高くなるから
高齢になると病気やケガのリスクが高まるため、医療保険の保険料は若年に比べて高額になりがちです。
例えば、令和2年の患者調査にもあるとおり、心疾患や脳梗塞などのリスクは年齢とともに増加します。それに伴い高齢者は「保険金を請求する確率」も高くなるため、保険料も高くなります。
また過去の病歴や持病によっては、さらに保険料が引き上げられてしまいます。そのような経済的負担の大きさから「高齢者は医療保険に入ると損をする」と考えられることがあります。
高齢者は公的医療保険だけで十分?
先述したように、高齢者に医療保険が必要ないと言われる理由のひとつに「充実した公的医療保険」が挙げられます。
でも、本当に公的医療保険だけで問題ないのでしょうか?もしものときにしっかり備えるためにも、後悔しない選択をしたいですよね。
ここからは、高齢者が利用できる公的医療保険のカバー範囲や公的制度について、わかりやすく解説していきます。
高齢者が利用できる公的制度
まずは、高齢者が利用可能な公的制度にはどのようなものがあるのかチェックしましょう。
高齢者を対象とした代表的な公的制度
- 公的医療保険による自己負担額の減少
- 後期高齢者医療制度
- 高額療養費制度
公的医療保険による自己負担額の減少
公的医療保険によって、医療費の自己負担額は大きく抑えられます。
国民健康保険や健康保険などの公的医療保険のおかげで、幅広い医療費の自己負担割合は原則3割以下で済みます。自己負担割合は年齢によって決められており、収入額によっては70歳以上になると2割まで減らされます。
非常に広範囲な医療費をカバーしていますが、一部の費用は対象外となります。
後期高齢者医療制度
75歳以上になると、国民健康保険や健康保険から「後期高齢者医療制度」へと自動的に切り替わります。
後期高齢者医療制度では医療費の自己負担割合がさらに小さくなり、原則1割となります。
高齢になると病気やケガのリスクが高まりますが、一方で医療費の自己負担割合は小さくなっていきます。そのため、高齢になったからといって医療費の支払い額が大きく増えるとは限りません。
高額療養費制度
高額療養費制度は、医療費が毎月の上限額を超えた場合に、その超過分が支給される制度です。
公的医療保険によって自己負担割合が小さくなっても、支払いが重なればトータルの金額が大きくなってしまうかもしれません。しかしそのような場合でも、高額療養費制度のおかげで一定金額以上は負担せずに済みます。
高額療養費制度における上限額は、年齢や所得によって異なります。
例えば「80歳で月給25万円の男性」の場合、1ヶ月の通院にかかる医療費が3万円であっても実際の支払いは18,000円で済みます。
ただし、高額療養費制度は「公的医療保険の対象となる費用」のみ計算に含めることが可能。公的医療保険の対象外となる費用は、たとえ上限額を超えても自己負担となります。
公的制度の対象外となる費用
ここまで説明してきた通り、公的医療保険によって医療費の自己負担額は大きく減らせそうですね。
しかし、だからといって「医療保険は必要ない」と結論づけるのはまだ早いでしょう。すべての医療費が公的医療保険の対象となるわけではなく、全額自己負担となる費用もあるからです。
公的医療保険の対象外となる費用の例
- 差額ベッド代
- 先進医療の技術料
- 公的医療保険の対象ではない治療
差額ベッド代
差額ベッド代は、一般病棟よりも快適でプライベートな個室入院を選択した場合に生じる追加費用です。差額ベッド代の金額は、病院や設備によって異なります。
入院リスクが高まる高齢者においては、差額ベッド代を支払って快適に過ごしたいと考える方も多いでしょう。
厚生労働省が発表した「主な選定療養に係る報告状況」によると、1日あたりの差額ベッド代の平均は「6,613円」です。入院が短期であれば負担は少ないかもしれませんが、入院した日数分の差額ベッド代は掛かりますので、入院が長期化するほど支払う差額ベッド代はどんどん膨らんでいきます。
先進医療の技術料
先進医療を受ける際に必要な技術料も、公的医療保険の対象外です。
先進医療とは、公的医療保険の対象ではないものの、一定の安全性や実績を認められ、厚生労働大臣に承認された医療技術のこと。特定の新しい薬剤や治療機器の使用料が含まれることも多いため、治療費が高額になるケースもあります。
先進医療技術 | 技術料(1件当たり平均額) | 対象となる病気やケガ |
---|---|---|
陽子線治療 | 269万2,988円 | がん |
重粒子線治療 | 316万2,781円 | がん |
高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術 | 30万1,951円 | 子宮腺筋症 |
中央社会保険医療協議会「令和4年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」
公的医療保険の対象ではない医療行為
ほかにも、公的医療保険の対象外となる治療や処置を受ける場合、費用は自分で全額支払わなければなりません。
具体例
- 予防接種
- 日常生活による疲労を解消するための整体治療や鍼治療
- 健康診断・人間ドック
上記以外にも、厚生労働省による認可を受けていない治療法や処置は、多額の支払いが必要になる可能性があります。
公的医療保険の適用外となる治療を選択する際は、費用と治療効果を慎重に検討し、無理のない選択をするよう心がけましょう。
公的医療保険ですべての費用をカバーできるわけではない
ご紹介してきたように、公的医療保険はすべての医療費をカバーするわけではありません。特に高齢者は、治療や入院が必要になるリスクが高まるため、公的医療保険の範囲外となる費用にも注意が必要です。
特定の薬剤や治療法、快適な入院環境のための追加費用が支払えない場合、治療の選択肢を狭めてしまうかもしれません。そのようなリスクを踏まえた上で、医療保険の必要性を考えましょう。
実際に加入している高齢者はどれぐらい?
では実際に、どれくらいの高齢者が医療保険に加入しているのでしょうか?生命保険文化センターによる2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、65歳以上の世帯のうち医療保険に加入している割合の平均は89.9%でした。
出典:2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」(生命保険文化センター)
年齢層 | 加入している世帯の割合 |
---|---|
65~69歳 | 94% |
70~74歳 | 92.2% |
75~79歳 | 91.8% |
80~84歳 | 85.3% |
85~89歳 | 92.9% |
90歳以上 | 83.3% |
平均 | 89.9% |
医療保険の必要性についてはさまざまな意見があるものの、多くの高齢者が医療保険に加入しているのがわかりますね。
ですが実際に医療保険が必要かどうかは、個人の状況によって異なります。次の章から、医療保険の必要性が高い・低いのはどんな人かについて詳しく解説していきます。
医療保険がいらない高齢者の特徴
ここまでご紹介してきた内容を踏まえて、いよいよ医療保険が必要ない人の特徴についてご紹介していきます。
医療保険の必要性は低い人
- 十分な貯蓄がある人
- 年金以外にも収入がある人
- 保険料を支払う余裕がない人
十分な貯蓄がある人
十分な貯蓄を持つ高齢者は、医療保険はあまり必要ないでしょう。
ご紹介してきたような費用を十分にカバーできるのであれば、保険料を支払ってまで保障を受けてもあまりメリットは得られません。
ただし、貯蓄を医療費以外の目的(旅行や相続など)で使いたいと考えている方もいらっしゃるでしょう。その場合、医療保険に入っておくことで予想外の医療費が掛かったとしても貯蓄が大きく削られるのを防げます。
「多くの医療費が必要になっても困らないかどうか」は、医療保険の必要性を考える上で重要な指標です。
年金以外にも収入がある人
不動産収入や投資からの配当金など、年金以外のお金を受け取れる高齢者は、経済的にも余裕が生まれやすいでしょう。そのため、年金以外に安定した収入が得られる人も、医療保険の必要性が低いと考えられます。
年金以外にも医療費を補填するための収入がある場合は、医療保険に加入する効果は薄いです。ただし、ご自身の生活費や収入額によって医療保険の必要性が異なるため、本当に必要ないかどうかは慎重に考えましょう。
保険料を支払う余裕がない人
医療保険に加入することで毎月必要になる「保険料」を支払う余裕がない方は、医療保険への加入は避けておくのがおすすめです。
もしものときの出費をカバーするために、毎月の生活費を切り詰めてしまっては元も子もありません。そのような場合は、医療保険よりも自身の生活や貯蓄を優先させましょう。
医療保険は加入すれば確実にお得になるわけではなく、あくまで「お守り」としての役割が強い金融商品です。もしものときの不安があるとしても、まずは生活の安定を優先しましょう。ただし、「保険料」を支払う余裕がない状況で病気やケガになってしまった場合、医療費を支払うことが困難になることは認識しなければなりません。
医療保険に加入すべき高齢者の特徴
逆に、医療保険に加入するのがおすすめな高齢者の特徴についてもしっかり確認しておきましょう。「あのとき医療保険に入っておけば……」と後悔しないためにも、医療保険の必要性は慎重に考えるのが重要です。
医療保険への加入がおすすめな人
- 貯蓄や年金額に不安を感じる人
- 治療の選択肢や治療環境を充実させたい人
- 無理なく保険料を支払える人
貯蓄や年金額に不安を感じる人
貯蓄や年金の額に対して不安を抱いている人は、医療保険の必要性が高いです。
生活費を貯蓄や年金に依存している高齢者の中には、お金に対する不安を強く感じている人が少なくないでしょう。そのような高齢者は、医療費の支払いが突発的に必要になった際、精神的・経済的負担が一気に大きくなる可能性があります。
医療保険に加入すれば、そのような経済的なリスクを軽減できます。「もし高額な医療費を支払うことになっても大丈夫」という安心感が得られるため、不安も大きく減らせそうですね。
治療の選択肢や治療環境を充実させたい人
「治療の選択肢はあまり狭めたくない」「なるべく快適な環境で治療を受けたい」と考えている方も、医療保険に加入するメリットが大きいです。
医療技術の進展に伴い、多様な治療が可能になっています。しかし先進医療のような最新の治療法や、個室での快適な入院生活を希望する場合、追加の費用を支払わなければなりません。
医療保険を活用すれば、そのような出費にもしっかり備えられます。治療や入院環境において妥協したくないと考えるのであれば、医療保険への加入を検討してみましょう。
無理なく保険料を支払える人
毎月の保険料を支払ってもあまり負担に感じないのであれば、医療保険に入って安心を買っておくのもひとつの手です。数十万〜数百万の出費に備えられる医療保険は、入っておくだけで大きな安心感を得られるでしょう。
ただしこの後詳しく解説しますが、高齢者が医療保険に加入した場合、保険料は若年と比較して高めに設定されます。そのため、手続きを始める前にきちんと保険料を確認しておきましょう。
高齢者が医療保険を選ぶポイント
医療保険は長期に渡って支払いが必要になりますし、もしものときの経済状況を大きく左右します。そのため、加入する際は慎重に選ぶ必要がありますね。
次の2つのポイントに留意しながら、最適な保険商品を選びましょう。
高齢者が医療保険を選ぶ2つのポイント
- 保障内容と保険料のバランス
- 保険期間は長めに設定する
保障内容と保険料のバランス
医療保険において「保障の手厚さ」と「保険料の安さ」はトレードオフ。そのため、保障内容と保険料のバランスに気をつけましょう。
過度な保険料は毎月の生活費を圧迫してしまいますが、一方で保障が足りないといざというときの負担が大きくなってしまいます。退職後の収入や貯蓄、年金額を考慮しつつ、支払い可能な保険料の範囲内で保障を選びましょう。
保険期間は長めに設定する
高齢者の場合、保険期間を長めに設定するのがおすすめです。
保険期間とは、保障を受けられる期間のことを指します。保険期間を短めにしたほうが保険料も安く設定されますが、一定の年齢になったら更新ができなくなり、保障を受けられなくなる可能性があります。
亡くなるまで保険期間がずっと続く「終身型の医療保険」であれば、何歳まで長生きしても安心ですね。年齢が上がるほど保険に加入することが難しくなるため、早いうちに長期の保障を確保するのがおすすめです。
高齢者が医療保険に加入する際の注意点
高齢者が医療保険に加入する場合、若年層とは異なるいくつかの注意点があります。「こんなずじゃなかった!」となる前に、以下2つのポイントについてしっかり確認しておきましょう。
高齢者が医療保険に加入する際の2つの注意点
- 医療保険に加入できない可能性がある
- 保険料は若い年代よりも高くなる
医療保険に加入できない可能性がある
一定の年齢を超えると、医療保険に加入できない可能性が高くなります。
多くの保険会社では、加入者の年齢も審査基準に含まれています。そのため、高齢になるほど加入できる医療保険の選択肢は限られてしまいます。なるべく早めに医療保険に入っておくのが重要ですね。
もし既に高齢であっても、保険会社によっては高齢者向けに設計された保険商品が用意されている場合があります。加入したいと考えているのであれば、早めに手続きを済ませておきましょう。
保険料は若い年代よりも高くなる
一般的に、高齢者は若い年代よりも病気やケガのリスクが高いです。そのため、年齢が上がるにつれて保険料は高くなる傾向にあります。
そのため、加入する前に保険料の金額を忘れずに確認しておきましょう。そのうえで、長期に渡って問題なく支払える金額かどうか、慎重に考えるのがおすすめです。
どうしても必要な保障は何かを考えた上で、保険料とのバランスに注意しながらプラン内容を決めましょう。
まとめ
この記事では、高齢者に医療保険が必要かどうかについてお伝えしてきました。
高齢者になっても医療保険に入るべきかどうかについては、個人によって異なります。どんな費用を医療保険でカバーしたいのか、無理なく保険料が支払えるかなど、さまざまな観点から検討する必要があるでしょう。
そのようなときに頼りになるのが、みんかぶ保険の「一括見積もり」です。多くの人が迷いがちな医療保険について、専門知識を持つプロに無料で相談できます。
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