医療保険

高額療養費の自己負担限度額はいくら?計算方法や払い戻しのタイミングについてわかりやすく解説

著者:みんかぶ編集室

2023年07月24日 掲載

突然の病気や事故により、医療機関での治療が必要になることがありますが、治療の内容や期間によっては医療費が非常に高額になってしまうことがあります。

もちろん、公的健康保険制度によって医療機関での支払いが大きく抑えられることも多いです。とはいえ、回数や期間が多くなるにつれて、支払う金額も高くなってしまうでしょう。

そのような中で、「高額療養費の自己負担額には限度がある」といったことをお聞きしたことはありますか?「高額療養費制度」により、公的な健康保険の対象となる医療費は月毎の支払い上限額が定められています。

「とはいえ、何円までの支払いで済むの?」
「上限額より高い金額を支払った時の差額はいつもらえるの?」

そのような疑問を抱く方も多いはず。

そこで、高額療養費の自己負担限度額や払い戻しのタイミングについて、具体例を交えながらわかりやすく解説していきます。手続き方法についても解説しているため、すぐに利用したい方は要チェックです。

高額療養費の自己負担限度額とは?

高額療養費として加算できる医療費

まずは、この記事で紹介する「高額な医療費の自己負担限度額」とは何か?について説明していきます。

すでに自己負担限度額や高額療養費制度について理解している方は、「高額療養費の自己負担限度額はいくら?」までスキップしましょう。高額療養費の自己負担限度額はいくら?を読む

高額療養費制度によって自己負担限度額は決まっている

今回ご紹介する自己負担限度額とは、「高額療養費制度」によって決められている「医療機関で支払う医療費の上限額」のことです。

日本では「社会保険」「国民健康保険」への加入が義務付けられており、大部分の医療費の支払いが3割程度に抑えられています。それでも、支払いが重なったり治療が長引いたりすると、それに伴い支払いも増え、経済的な負担が大きくなってしまうかもしれません。

そこで、1ヶ月ごとに医療費の自己負担額に上限を設定することで、医療費の負担を軽減するために作られたのが「高額療養費制度」です。

高額医療費って具体的にいくらから?

69歳以下の場合、高額医療費として加算できる医療費には、同じ医療機関で支払った1ヶ月あたりの医療費が21,000円を超えたケースが該当します。

たとえば、

  • 病院Aで、一度に30,000円支払った
  • 病院Bで、同じ月に12,000円と16,000円を支払った

上記の場合は、どちらも同じ病院での支払いが21,000円を超えているため、高額医療費として計算することができます。
しかし、

  • 病院Cで12,000円を支払った

この場合は、高額医療費の対象外となり、自己負担上限額の算出の際に使用することはできません。

それに対し、70歳以上の方であれば、金額に関係なく全ての医療費を合算することができます上記の例においては、病院Cも対象となるため、医療費をさらに抑えることができますね。

高額療養費制度の対象となる人は?

1ヶ月の医療費が高額になってしまう人の強い味方となる高額療養費制度。社会保険や国民健康保険に加入している方なら、全ての人が利用できます。

一部の手当や制度のような条件が設けられていないため、あらゆる職種や年齢、収入の人が活用できます。

その一方で、対象となる医療費には制限がかけられているため、注意が必要です。詳しくは次の章で解説していきます。

高額療養費制度の対象となる医療費は?

高額療養費制度の対象となる医療費は?

医療費の負担を軽減してくれる「高額療養費制度」ですが、全ての医療費が対象となるわけではありません。

高額療養費制度の対象となるのは、国民健康保険もしくは社会保険が適用される医療費です。そのため、内科や歯科など幅広い種類の医療費を合算することが可能です。

 国民健康保険や社会保険の対象外(自由診療)となる医療費は自己負担

とはいえ、国民健康保険や社会保険の適用外となる医療費は、高額療養費制度においても対象外となってしまいます。

そのため、たとえ高額な最先端の治療であっても、国民健康保険や社会保険が適用されなければ、その費用は全額自分で負担しなければなりません。また、入院時の差額ベッド代や食事代、レーシックやインプラントなども対象外となります。

高額療養費の自己負担限度額はいくら?

高額療養費制度の説明が終わったところで、いよいよ「自己負担限度額の具体的な金額」について解説していきます。

高額療養費の自己負担限度額は、年齢ごとに大きく「69歳以下」と「70歳以上」の2つにわけることができます。

69歳以下の自己負担限度額

69歳以下の自己負担限度額

70歳以上の自己負担限度額

70歳以上の自己負担限度額

高額療養費制度の自己負担限度額は上記の表によって定義されていますが、項目や条件が一見複雑で、ご自身の金額を把握するのに多少の時間がかかってしまうでしょう。

次の章からは、自己負担限度額を計算する方法をステップごとにわかりやすく解説していきます。

自己負担限度額の計算方法【4ステップで完結】

自己負担限度額4ステップの計算方法

自己負担限度額を簡単に確認するためには、4つのステップを踏む必要があります。

  1. 年齢を確認する
  2. 収入の金額を把握する
  3. 対象となる医療費を合計する
  4. 計算して限度額を算出する

順を追って解説していきます。

年齢を確認する(年齢区分を把握する)

まずは、医療費の支払いが発生した本人の年齢を確認します。69歳以下70歳以上のふたつの区分があるため、該当する方の金額を参照してください。

収入の金額を把握する

次に必要なのが、ご自身の収入額の確認です。上記の表に書かれているとおり、収入の金額によって上限額が細かく分けられています。

会社員および公務員の方は「報酬月額」もしくは「標準報酬月額」、自営業やフリーランスの方は前年度の所得によって金額が変わります。

 報酬月額は基本給や各種手当の合計金額

会社員や公務員として働いている場合、基本給に残業手当や通勤手当、家族手当などの各種手当を含めた金額が「報酬月額」となります。報酬月額は健康保険料や厚生年金保険料の計算に使われます。

会社員で標準報酬月額がわからない方は、まずはご自身の報酬月額を確認しましょう。

標準報酬月額は保険料を計算するための区分

一方で「標準報酬月額」は、保険料の計算のために設けられた区分のことで、4月〜6月の報酬月額の平均をいくつかの等級に分けたものです。等級については「厚生年金保険料額表」にて確認することができます。

厚生年金保険料額表

引用:厚生年金保険料額表

会社員や公務員として働いている方は、ご自身の報酬月額に応じて記載された標準報酬月額を確認してみてください。例えば、4月〜6月の月額報酬の平均が252,000円の場合、当てはまる等級は17等級となり、標準報酬月額は260,000円です。

フリーランスや自営業は前年度の所得をチェック

一方で自営業やフリーランスなど、月額報酬がそもそも存在していない方は、前年度の所得に応じて自己負担上限額が変わります。

確定申告書に記入した所得金額の合計から、基礎控除額33万円を差し引いた金額をもとに、当てはまる区分の上限額を確認してください。

対象となる医療費を合計する

ご自身が当てはまる収入区分がわかったら、次に高額療養費制度の対象となる1ヶ月あたりの医療費を合算していきます。

対象となる医療費

  • 国民健康保険もしくは社会保険が適用される医療費で
  • 同じ医療機関で支払った1ヶ月あたりの医療費が21,000円を超えたケース

1ヶ月の医療費を合算する際のポイント

1ヶ月あたりの医療費を計算する際に注意すべきなのは、最初に医療費を支払ってから1ヶ月間ではなく、毎月1日〜月末日の期間が対象となる点です。

もし4月19日に80,000円、5月2日に12,000円支払った場合、2週間しか経過していませんが合算することはできません。

計算して限度額を算出する

1ヶ月あたりの医療費に対し、自身が当てはまる区分の計算式を当てはめていきます。

各区分に書かれている「総医療費」は、国民健康保険や社会保険が適用される前の医療費です。

保険による割引率

  • 6歳(義務教育就学前)未満の者は2割
  • 70歳未満の者は3割
  • 70歳から74歳までの者は、2割(現役並み所得者は3割)
  • 75歳以上の者は、1割(現役並み所得者は3割)

割引率に応じて総医療費を求めた後、区分ごとの計算式に当てはめましょう。

自己負担限度額の計算例

計算のための4ステップについて説明しましたが、計算方法の説明だけではいまいちイメージしづらいですよね。

そこで、より具体的な例をもとに、実際の計算の仕方について解説していきます。

高額療養費制度の対象になる場合【1ヶ月あたり】

たとえば、次のような人が高額療養費制度を利用するとします。

  • 30歳の会社員
  • 報酬月額は364,000円、標準報酬月額は360,000円
  • 1ヶ月間の医療費が96,300円(すべて社会保険が適用される)

この場合、69歳以下の自己負担限度額の表を確認してみると、区分ウに該当することがわかります。

区分ウの計算式

80,100円+(総医療費-267,000円)×1%

今回のケースでは、総医療費は321,000円となるため、上記の式の二項目は「54,000×1%」で540円とわかります。

自己負担限度額

80,100円+540円=80,640円

つまり、差額の15,660円を受け取ることができます

高額療養費制度の「多数該当」になる場合【1ヶ月あたり】

69歳以下においては、高額療養費制度を1年以内に3回以上利用した場合、4回目からは限度額が低くなる「多数該当」という仕組みが存在します。

上記の計算例に当てはめると、区分ウの自己負担限度額は44,000円となるため、52,300円の支給を受けることができます。

 自己負担限度額を超えた金額はいつ戻ってくる?

自己負担限度額を超えた金額はいつ戻ってくる?手続きの進め方

では、高額療養費制度を利用して自己負担限度額が確定した場合、その限度額を超えた分の金額が手元に戻るのはいつになるのでしょうか。

結論からお伝えすると、いつ差額をもらえるかについては手続きの進め方によって異なります。

限度額適用認定証を申請すれば窓口での支払いを抑えられる

すでに医療費が高額になりそうだとわかっている場合は、「限度額適用認定証」を発行することで窓口での支払い金額を自己負担限度額に抑えることができます。

先に請求された金額を全て支払い、自己負担限度額との差額を後で受け取ることもできますが、事前申請をすることで一時的な金銭負担も回避することが可能です。

限度額適用認定証の取得方法

「限度額適用認定証」の発行には、事前の申請が必要になります。必要書類を揃えて、健康保険証に書かれている保険組合に提出しましょう。

申請に必要な書類

  • 限度額適用認定申請書(社会保険に加入している場合)
  • 健康保険証のコピー
  • 保険限度額適用・標準負担額減額認定申請書(被保険者の市区町村民税が非課税の場合)

加入しているのが国民健康保険の場合、上記に加えて下記が必要です。

  • 本人確認書類(マイナンバーがわかるものと身分証明書の2点)のコピー
  • 領収書(非課税世帯において過去1年間の入院日数が90日を超える場合)

限度額適用認定申請書は、全国健康保険協会の公式サイトからダウンロードが可能です。

窓口で支払った後に差額を受け取ることも可能

事前の手続きが間に合わなくても、支払い後に申請すれば差額を後日受け取ることも可能です。

必要な書類

  • 高額療養費支給申請書
  • 本人確認書類(マイナンバーがわかるものと身分証明書の2点)のコピー
  • 医療機関で受け取った領収書のコピー
  • 負傷原因届(ケガによる治療を受けた場合)
  • 被保険者の(非)課税証明書(被保険者の市区町村民税が非課税の場合)

高額療養費支給申請書について、健康保険に加入している方は協会けんぽのサイト、もしくはコンビニのプリントサービスで入手可能です。協会けんぽ

また、国民健康保険に加入している場合は、自治体から申請書が郵送されてきます。各自治体の専用窓口で直接受け取ったり、自治体のホームページからダウンロードすることも可能です。

 申請から3ヶ月程度で差額を受け取り可能

窓口で実際に支払ってから申請した場合、差額の受け取りまで3ヶ月程度かかります。医療機関から提出される明細書の確認が必要になるため、ある程度の時間が必要になるからです。

そのため、支払い後に手続きをする場合は注意が必要です。

なるべく医療費の負担を抑えたいなら医療保険の併用がおすすめ

医療保険と高額療養費制度は併用がおすすめ

高額になってしまう医療費の負担を軽減するための高額療養費制度。医療保険を活用すれば、医療費をさらに抑えることができます。

医療保険に加入することで、公的医療保険では対象外となってしまう費用に対しても備えることができます。入院や手術の際に受け取ることができる給付金に加え、働けない期間の収入をカバーする保障など、より手厚く備えることが可能。

みんかぶ保険では、保険のプロに無料で相談できる「一括見積もり」をご用意しています。数多くの保険会社やプランから、ご自身にぴったりな保険を自力で見つけるのは困難でしょう。一括見積もりを活用すれば、ご自身の生活や状況に合わせた最適なプランを見つけることができます。

自己負担限度額についてよくある質問

よくある質問

 限度額適用認定証の申請が退院や支払いに間に合わない時はどうすればいいですか?

もし限度額適用認定証の申請が実際の支払いに間に合わなかった場合でも、申請をすることで差額を後で受け取ることができます。

とはいえ、高額な費用を支払ってから差額の受け取りまで3ヶ月程度必要になってしまうため、その間の経済的な負担が大きくなる可能性もあるでしょう。

限度額適用認定証の申請が間に合わない、でも金銭的な負担をなるべく早く軽減したいという方のために、2つの制度をご紹介します。

高額医療費貸付制度

医療費として使うことを目的に、無利子で高額療養費支給見込額の一部を借りることができる制度です。社会保険では高額療養費支給見込額の8割相当、国民健康保険では9割相当までの金額を借りることが可能です。

 高額療養費受領委任払制度(国民健康保険のみ)

自治体によっては、差額として後日払い戻される分の金額を、公的医療保険が医療機関に直接支払ってくれる「高額療養費受領委任払制度」が用意されていることもあります。この制度を利用すれば、限度額適用認定証がなくても、医療機関の窓口での支払い額を抑えることができます。

医療機関から月の1日から末日までの請求書を受け取った後、自治体の窓口で申請することで利用可能です。

高額医療費の自己負担限度額を超えた分は申請しなくても戻ってきますか?

基本的に、自身で申請しなければ自己負担限度額を超えた分が戻ってくることはありません。しかし、企業に所属している会社員のうち事業主に受領委任している方は、申請せずとも会社から高額療養費制度の支払いが受けられることもあります。

高額療養費の払い戻しの通知が来ない場合はどうすればいいですか?

通常、申請から払い戻しまでは3ヶ月程度かかります。しかし、それ以上の期間が経ってもなかなか振り込まれない場合は、保険組合に連絡してみましょう。

ご自身の健康保険証に書かれている保険組合に連絡することで、払い戻しや手続きの状況について確認することができます。

限度額適用認定証の申請書はコンビニでも印刷できますか?

社会保険における限度額適用認定申請書や高額療養費支給申請書は、全国のコンビニでも印刷が可能です。

  • セブンイレブンの場合はこちら

  • ローソン・ファミリーマートなどの場合はこちら

国民健康保険の場合は、お住まいの自治体のサイトからダウンロードや印刷が可能です。詳しくは、各自治体のホームページをご確認ください。

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資産形成メディア「みんかぶ」を中心に、金融商品の記事の執筆を行っています。資産運用のトレンド情報や、初心者が楽しく学べるお金の基本コラムなど、資産形成をするすべての人に向けた記事を提供します。

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