医療保険には「入院給付金」という保障制度が用意されています。治療のために入院する場合、決められた金額を入院日数に応じて受け取ることができる制度です。
しかし、近年では近年では短期間で退院されるケースもあります。中には、1日で入院から退院まで完了する「日帰り入院」というものも。
「日帰り入院は、通院と何が違うの?」
「日帰り入院になったら入院給付金は受け取れる?」
など、日帰り入院にまつわる疑問点は意外と多いもの。
今回は、日帰り入院と通院を判別するための方法や医療保険で保障されるかどうか、日帰り入院時の注意点など気になるポイントについて分かりやすく解説していきます。
日帰り入院とは?
まずは、日帰り入院の意味から解説していきます。どのようなケースが日帰り入院に該当するのか、どのように確認できるのかについて理解していきましょう。
日帰り入院の定義
「日帰り入院」とは、入院日と退院日が同じ日付である入院を指します。生命保険文化センターでは以下のように日帰り入院を定義付けています。
「日帰り入院」とは、入院基本料などの支払いが必要となる入院日と退院日が同一の入院をいいます。例えば、深夜3時頃緊急入院をしたが容態が落ち着いたため、その日の夕方に退院した場合などが該当します。
日帰り入院の例
小規模な手術
たとえば、視力矯正のためのレーシック手術や、皮膚腫瘍の除去などは、患者が手術後に直ちに回復し日帰りで処理されることがあります。
外来化学療法
がん治療の一部として使用される化学療法は、しばしば数時間かけて薬剤が体内に投与され、その後患者は帰宅します。
内視鏡検査
胃カメラや大腸内視鏡検査など、体の内部を観察するための内視鏡検査は通常、日帰りで行われます。
透析治療
慢性腎臓病患者は通常、週に数回病院に通い、数時間の透析治療を受けます。
物理療法またはリハビリテーション
例えば、脳卒中や手術後の患者は、日帰りで物理療法やリハビリテーションを受けることがあります。
※上記はあくまで一例です。患者の健康状態、治療の種類、医療機関の方針などにより、日帰り入院が可能かどうかは変わります
日帰り入院と通院の違いは?
日帰り入院と似たものとして「通院」があります。日帰り入院も通院も、「日をまたいで医療機関に滞在しない」という点では一致していますね。
一見すると違いが曖昧なように感じがちな、日帰り入院と通院。このふたつはどのように区別するのでしょうか?
領収証に「入院料等」の記載があるかどうか
日帰り入院と通院を区別する上で、領収証に「入院料等」が記載されているかどうかがポイントとなります。
一般的に、「入院料等」が記載されていれば入院、記載がなければ通院と区別されます。ただし、病院によっては入院ではなく外来での手術を受けた場合においても「入院料等」の診療報酬点数が記載されることも。
もし日帰り入院かどうか詳細に確認したい場合は、直接医療機関にて聞いてみるのが確実です。
「日帰り手術」は日帰り入院に該当しないこともある
また、日帰り入院や通院の他にも「日帰り手術」があります。「日帰り手術」を受けた際に「日帰り入院」にも該当するとは限らず、医師の判断によります。
外来で受けることが可能な手術は日帰り入院に該当しないこともあるため、気になる場合は医療機関にきちんと確認を取ることをおすすめします。
日帰り入院の費用は医療保険で保障される?
もし民間の医療保険に加入している場合、一般的な治療を目的とした約款所定の入院においては「入院給付金」や「入院一時金」が受け取れます。
ここで気になるのは、「日帰り入院は給付金の対象になるのかどうか」ではないでしょうか?
ここからは、日帰り入院に医療保険は使えるのかどうかについて解説していきます。
日帰り入院に対応する医療保険は多い?
医療技術の進歩により、日帰り手術になるケースも増加しています。結果として入院の平均日数が短くなっているというデータも存在します。
昭和62年 | 令和2年 | |
---|---|---|
病院 | 47.3日 | 33.3日 |
一般診療所 | 26.0日 | 19.0日 |
この「入院日数の短縮化」というニーズに答えるため、日帰り入院に対応している医療保険は増えてきているといえるでしょう。
ただし、日帰りを含め入院は初日から対象となる医療保険が出てきている一方で、5日以上の入院が対象となる医療保険などもあります。
何年も前に加入した保険の場合はプランの見直し・更新がおすすめ
契約してから何年も経つ保険は日帰り入院に対応していない可能性があります。
そのような場合、医療保険を切り替えることで、日帰り入院も保障範囲に追加される可能性があります。気になる方は、契約している保険商品の最新の保障内容について確認してみましょう。
契約している保険商品によっては、保険の見直しが必要かもしれません。
みんかぶ保険では、無料で保険のプロに相談することができます。医療保険の見直しは自力でやろうとしても意外と大変なもの。保険の知識にあまり自信がない、忙しくてじっくり保険について考える余裕がないといった方は、ぜひ活用してみてください。
日帰り入院として認められる具体例は何がある?
ここまで、日帰り入院の定義や医療保険との関係について説明してきました。では実際に日帰り入院に該当することが多い治療には、どのようなものがあるのでしょうか?
日帰り入院の具体例についてご紹介しつつ、さらに詳しく解説していきます。
日帰り入院に該当する治療の例
先ほどもご説明した通り、日帰り入院はその日のうちに治療や入院が完了するものを指します。例えば、以下が日帰り入院の治療例です。
下肢静脈瘤治療
足の血管に起こる疾患で、レーザー治療等の方法で治療します。治療時間は短く、手術後の痛みも比較的少ないため、日帰り入院として行われることがあります。
眼科手術
白内障や緑内障の手術は手術時間が短く、合併症のリスクも低いため、日帰り手術として行われることが一般的。
腱や靭帯の手術
腱や靭帯が損傷した場合、特に腱鞘炎やばね指などの手術は、その日のうちに帰宅可能なことが一般的でしょう。
ほかには、日帰り入院の例として以下のようなものが挙げられます。
- 抗がん剤等の化学療法
- 口腔内腫瘍切除術
- 手根管開放術
- 上肢骨折のインプラント固定手術
- 鼠径ヘルニア根治術
- 食道静脈瘤の内視鏡手術
- 神経剥離術
- 全身麻酔下における親知らずの両側抜歯
- 胆石などの腹腔鏡手術
- 痔核根治術
- 内視鏡的副鼻腔手術
- 内視鏡的ポリープ切除
- 鼻中隔矯正術
※上記はあくまで一例です。患者の健康状態、治療の種類、医療機関の方針などにより、日帰り入院が可能かどうかは変わります
日帰り入院には医師の判断が必要
しかし、日帰りで上記のような治療を受けたとしても、全てが日帰り入院となるわけではありません。個々の患者の状態や治療内容などを考慮した上で、日帰り入院とするかどうかについて医師が判断します。
そのため、上記に該当する治療だからといって、日帰り入院として医療保険の保障対象であるとは限りません。
日帰り入院に対応していない病院も
また、すべての医療機関が日帰り入院に対応しているわけではありません。入院設備がないとみなされる医療機関で治療を行った場合、一般的に入院として扱われないため、注意が必要です。
先程ご紹介したような手術や治療を受ける際には、病院や施設に関する情報を確認してみるのもひとつの手でしょう。
日帰り入院で入院給付金を請求する流れ
もし日帰り入院に対応している保険に加入している場合、支払事由に該当すれば入院給付金を受け取ることができます。申請する際に困らないよう、給付金の請求方法や必要書類について事前に確認しておきましょう。
保険会社に連絡する
まずは、保険会社に連絡をし、入院給付金を受け取りたい旨を伝えましょう。その際、治療の詳細や予定、および保険の証券番号について説明を求められる場合があります。
電話の場合、混雑していてなかなか繋がらないケースもあるため、保険証券を手元に用意し、時間に余裕を持って電話することをおすすめします。
また、保険会社からの質問に対して、事実を隠蔽してしまうと給付金が受け取れなくなってしまうこともあるため、聞かれた内容にはすべて正直に回答しましょう。
準備しておくと良いもの
- 加入中の保険証券番号
- 受ける手術の概要
- 病院の領収書
必要書類を準備する
その後、保険会社ごとに指定されている必要書類を準備します。保険会社に連絡を入れると、申請に必要な書類が送られてきます。
主な必要書類
- 保険会社が指定する給付金請求書
- 診断書
最近では、オンラインで手続きを完結することができる保険会社も多くあるため「郵送での手続きが面倒」という方はオンライン上で請求ができる医療保険を選ぶようにしましょう。
治療を受ける医療機関に診断書の作成を依頼する
保険会社から必要書類を受け取ったら、医療機関に診断書の作成を依頼しましょう。
一般的に、保険会社が指定するフォーマットでの診断書が必要になります。そのため、必要書類として保険会社から送られてくる診断書を医療機関に持参する必要があります。治療を受ける医師に該当部分を記入してもらい、診断書の作成を進めましょう。
書類を保険会社に提出する
必要な書類が揃ったら、保険会社に提出します。一般的には、保険会社に書類が到着してから5営業日で給付金を受け取ることが可能です。
日帰り入院で給付金を申請する際の注意点
日帰り入院で保険会社に入院給付金を申請する際には、いくつかの注意点があります。思わぬトラブルを回避するためにも、実際に手続きをスタートさせる前に確認しておきましょう。
入院給付金の適用条件は保険商品ごとに違う
入院給付金を申請するための条件は、保険商品によって異なります。日帰り入院に該当する治療を受けたとしても、それだけで給付金を受け取れるわけではありません。治療内容や条件によっては、給付金が受け取れないこともあります。
申請する際には、ご自身が加入している保険商品がどのような条件を設けているのか、詳細を確認してみましょう。
書類は指定されたフォーマットでの提出が必要
ほとんどの保険会社では、特定の形式に沿った書類を提出する必要があります。特に診断書については、各保険会社が指定する様式で作成・提出することが一般的です。
フォーマットを指定せずに医療機関に作成してもらった診断書では、申請に使えないこともあり、その場合は再度診断書を作成する必要があります。診断書の作成にも費用がかかるため、何度も医師に依頼するのは避けたいところですよね。
期限内に忘れずに申請する
給付金の申請には期限があります。多くの保険会社では、入院日から3年以内に申請しなければなりません。
申請期間を過ぎてしまうと、たとえ適用条件を全て満たしていても給付金を受け取ることができなくなります。日帰り入院が終わっても、申請期限だけは忘れずに確認しておきましょう。
日帰り入院に関するよくある質問
日帰り入院の費用はどのぐらいですか?
病院や施設、治療内容によって日帰り入院の費用は大きく異なるため、一概に費用をお伝えすることは難しいです。
参考情報として、2022(令和4)年度 生活保障に関する調査《速報版》によると、入院時の1日あたりの自己負担費用は平均で20,700円となっています(逸失収入はのぞく)。一般的な入院と異なり、日帰り入院においては食費やお見舞の費用が不要なことが多く、実際の入院費用はさらに安いと考えられます。
あくまで参考程度の数値ではありますが、入院費用の目安にしてみてください。
※生命保険文化センター:2022(令和4)年度 生活保障に関する調査《速報版》
日帰り入院で受け取れる給付金の金額はどのぐらいですか?
日帰り入院で受け取れる入院給付金については、保険の契約時に設定した1日あたりの金額を受け取ることができます。
契約内容によっては、入院時に一度にまとまった金額を受け取ることができる「入院一時金」が用意されていることも。条件を満たせば、給付金だけでなく入院一時金を受け取ることも可能です。
日帰り入院には公的医療保険は適用されますか?
日帰り入院においても、該当する費用については公的医療保険が適用されます。ただし、公的医療保険が適用されない先進医療などの治療に必要な技術料や、差額ベッド代、食費や娯楽費などの費用については、自分で支払う必要があります。
検査入院でも入院給付金は受け取れますか?
治療を伴う検査のための入院においては、入院給付金を受け取ることが可能な場合もあるようです。しかし、健康診断や人間ドックといった治療を目的としない検査入院は、給付の対象外となります。詳しくは、契約している保険の約款や保障内容を確認してみてください。