医療保険

先進医療とは?費用の目安や種類、利用可能な医療保険について分かりやすく解説

著者:みんかぶ編集室

2023年07月28日 掲載

日本には公的健康保険制度があり、多くの医療費が3割以下の自己負担に抑えられています。そのため医療機関で支払う金額が大幅に安くなり、世界的にも優れた保険制度であると言えるでしょう。

ですが、全ての治療において公的保険が適用されるわけではありません。今回ご紹介する「先進医療」も保険が適用されない治療に該当します。

では、先進医療とはどのような治療を指すのでしょうか。また、実際に先進医療を受ける時にどれぐらいの費用が必要になるかも気になるところ。

今回は、先進医療とは何なのかについて、費用面や治療の種類などよくある疑問点を中心に解説していきます。先進医療にかかる費用を抑えるための方法についてもご紹介しているので、気になる方は是非ご覧ください。

先進医療とは?簡単に分かりやすく解説

まずは、先進医療とは何なのかについて分かりやすく解説していきます。

先進医療とは、新しい技術や治療法を評価するための制度で、「ある程度の実績」と「厚生労働省からの認可」を持つ治療技術のことを指します。

公的医療保険が適用される治療法は、すでに効果が十分に確認されており、幅広く利用されているもの。それに対して先進医療は、まだまだ治療の効果や安全性の確認が十分に取れているわけではないものの、これから一般的になっていく可能性が高い新技術や治療法ととらえてよいでしょう。

とはいえ、公的医療保険が適用されない治療がすべて先進医療というわけではありません。先ほどもご説明した通り、先進医療として認められるためには、治療の効果や安全性に関する一定の実績をもとに、厚生労働省による認可を得る必要があります。実績や認可を満たしていない治療法は、先進医療には該当しません。

先進医療に該当する治療の種類と費用

次に、具体的な先進医療の例をいくつかチェックしてみましょう。具体的な治療や費用などの例を以下にまとめました。

先進医療技術 技術料(1件当たり平均額) 平均入院期間  年間実施件数
高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術 301,951円 9.7日 82件
陽子線治療 2,692,988円 14.9日 1,293件
重粒子線治療 3,162,781円 5.3日 562件

引用:公益財団法人 生命保険文化センター「先進医療とは?どれくらい費用がかかる?」

実際の費用や入院期間は、治療を受ける医療機関によって異なります。そのため、あくまで参考程度の数値としてご紹介しております。

先進医療として認定されている治療は80種類以上

2023年6月現在で、先進医療として認定されている治療は80種類以上あります。多岐にわたる治療が先進医療として認められているといえますね。

具体的にどんな種類の先進医療があるのかについては、厚生労働省の「先進医療の各技術の概要」にて一覧表が公開されています。どのような治療が先進医療に該当するのか、気になる方はチェックしてみましょう。

厚生労働省:「先進医療の各技術の概要」

先進医療は公的医療保険が適用されない

先進医療を受ける上で最も注意すべきポイントは、先進医療は公的医療保険が適用されないこと。つまり、先進医療に該当する治療を受ける場合、治療に必要な技術料は全額自己負担となります。

上記でご紹介した先進医療の例の通り、先進医療の技術料は数十万円〜数百万円に上ることもあります。それらの費用が自己負担となるため、大きな経済的負担となってしまうこともあるでしょう。

一方で、先進医療の場合、その他の診察や検査・投薬・入院など、公的医療保険が適用される治療においては公的保険が適用されます。そのため、必要な費用のすべてが自己負担というわけではありません。

先進医療は公的医療保険が適用されない

公的医療保険が適用されず、先進医療にも該当しない治療の場合は、診察や治療に必要な費用すべてが自己負担となってしまいます。

医療保険やがん保険の「先進医療特約」でカバーすることができる

「そんな高額な先進医療、自分には無理かも……」と思ってしまう方も多いでしょう。ですが、公的医療保険ではなく民間の医療保険やがん保険を活用すれば、先進医療の費用も大きくカバーすることができます。

多くの医療保険やがん保険においては「先進医療特約」が用意されており、先進医療を受けた際の治療費を保障してくれます。特約を付帯させることで、安心して先進医療を受けることができそうですね。

特約をつけた場合、保険料の変化はひと月あたり数百円程度と言われています。詳しい金額は保険会社やプラン内容ごとに異なりますので、先進医療の治療費が不安な方は検討してみましょう。

先進医療を利用する際の注意点

先進医療は、最新の医療技術を活用して病気を治す手段として注目を浴びています。しかし、この先進医療を利用する際には、いくつかの注意点が必要です。

  • 治療内容や医療機関が先進医療として認可されているか要チェック
  • 領収書は大切に保管する
  • 医療保険の契約内容を確認する

上記について、さらに詳しく解説していきます。

治療内容や医療機関が先進医療として認可されているか要チェック

先進医療は、有効性や安全性が確認された上で、国によって認可されているものです。しかし、先進医療のリストは定期的に更新されます。

たとえば、新たな治療法が開発されたり、既存の治療法が改良されたりすると、その一覧に追加されることがあります。逆に、ある治療法が有効でないと判明した場合や、安全性に問題が見つかった場合は、リストから外されることも。

したがって、自分が受けようとしている治療が、治療時点で先進医療として認可されているか確認する必要があります。認可されていない場合、公的医療保険が適用できるはずの費用もすべて自己負担となってしまいます。

領収書は大切に保管する

先進医療にかかる技術料は自己負担となります。しかし、先進医療を受ける際に支払った費用は、医療費控除の対象となります。

したがって、控除の申請に必要な領収書は捨てずに大切に保管しましょう。

医療保険の契約内容を確認する

先進医療特約を付帯している医療保険に加入している場合、保険の契約内容についても以下のような確認が必要になります。

  • 治療開始日が責任開始日以降になっているか
  • 先進医療特約が重複していないか
  • 保障範囲は適切か
  • 支払い方法について把握できているか

治療開始日が責任開始日以降になっているか

先進医療による治療開始日が、保障開始後でなければ保障は適用されません。そのため、先進医療を受ける日と保険の契約日が近い場合は、保険の責任開始日がいつなのかあらかじめ確認しておくのがおすすめです。(責任開始前に医師から勧められていた治療や既に受けることを予定していた治療は当然ながら保障対象外となる可能性があります)

先進医療特約が重複していないか

先進医療特約は、多くの医療保険やがん保険に付帯させることができます。ですが、複数のがん保険や医療保険を契約し先進医療特約が重複していても、保険金が二重に支払われない場合があります。

重複していても保障が受けられるかどうかは保険会社によって異なりますが、契約内容によっては支払う保険料が無駄になってしまうことも。

保障範囲は適切か

医療保険に付帯する先進医療特約であれば一般的にすべての先進医療が保障の対象となりますが、がん保険の場合はがんに関連する先進医療のみが対象となることも多いです。その場合、がん治療以外の先進医療には特約の保障が適用できなくなってしまう場合があります。

先進医療を受ける場合は、ご自身が加入している保険の保障範囲を確認し、保険金が対象になるかどうかをチェックしましょう。

支払い方法について把握できているか

先進医療特約には、保険金の支払い方法が2つあります。ひとつは、医療機関に直接保険金を支払ってもらえる「直接払い」、もうひとつは自分で医療費を支払った後に保険会社から保険金を受け取るタイプです。

「直接払い」は治療を受ける人が費用をほとんど負担せずに済みますが、保険会社が指定した医療機関でしか治療が受けられないことも多いです。そのため、支払い方法に応じた指定医療機関がないか、事前に確認しておきましょう。

先進医療を受ける際に利用できる制度

先進医療にかかる費用は公的医療保険が適用されず、負担が大きくなってしまう場合があります。しかし、費用を抑えるために使える制度が存在します。

利用可能な制度は以下の通り。

  • 保険外併用療養費
  • 医療費控除
  • 家族療養費

保険外併用療養費

「保険外併用療養費」は、先進医療の技術料以外に必要な費用のうち、公的医療保険の対象となるもの(診察、投薬、入院など)に対しては保険を適用させることができる制度です。

一般的に、公的医療保険適用外の治療を受けた場合は、必要な費用すべてが自己負担となります。しかし、治療内容が先進医療に該当するものであれば、先進医療以外の治療費の一部に公的保険が適用できる場合もあるでしょう。

治療内容によっては大きな負担軽減になるため、事前に費用を計算したい場合は保険外併用療養費も考慮しましょう。

医療費控除

医療費控除とは、1年間で支払った医療費の合計が一定の金額を超えた場合、金額に応じて所得税の控除が受けられるという制度です。

先進医療の技術料は公的医療保険の対象外となってしまいますが、その一方で医療費控除として申告することは可能です。

そのため、年末調整や確定申告のタイミングで申請することで、所得税が安くなり、一定金額の還付を受けることができます。

家族療養費

先進医療は、家族療養費の対象にもなります。家族療養費は、家族(被扶養者)が公的医療保険に該当する医療費の支払いが必要になった場合、被保険者と同じように公的医療保険が適用されるという制度です。

そのため、あなたの家族が先進医療を受けることになった場合、治療に必要な費用の一部が公的医療保険の対象となり、出費額が減る可能性があります。

高額療養費制度は対象外

ひとつ注意が必要なのは、先進医療は「高額療養費制度の対象外である」ということです。

高額療養費制度とは、ひと月当たりの医療費が上限を超えた場合、超えた金額分が支給されるという制度です。技術料が高額になりがちな先進医療においては、高額療養費制度が使えれば費用負担が大きく軽減されますが、残念ながら適用させることはできません。

そのため、先進医療の費用負担を軽減させるためには、これまで紹介してきた制度を利用するか、「先進医療特約」を付帯させた民間の医療保険・がん保険に加入する必要があります。

先進医療についてよくある質問

がんの治療で先進医療に該当するものはありますか?

がん治療において先進医療として認定されているものは数多くあります。たとえば、2023年6月現在で先進医療に該当するがん治療としては次のようなものがあります:

  • ラジオ波焼灼療法:波の熱で切除部分を焼き切る方法
  • 重粒子線治療:がんが進行した部分に限定してダメージを与え、周囲の健康な組織を守る治療法
  • 集束超音波治療器を用いた前立腺がん局所焼灼・凝固療法:超音波を使ってがんを破壊する治療法

他にも様々ながん治療が先進医療としての認可を受けています。詳しくは厚生労働省のサイトにて公開されているリストをご確認ください。

厚生労働省:先進医療として認可されている治療

医療保険やがん保険の先進医療特約がいらないと言われる理由は何ですか?

先進医療特約がいらないと言われる理由としては

  • 先進医療を受けること自体が難しい
  • 先進医療を受ける機会が少ない

といったものが挙げられます。

先進医療を行える医療機関は数が限られており、さらに担当する医者が「先進医療に該当する治療を行う必要がある」と判断しなければなりません。また、そもそも実際に先進医療を利用する機会がそれほど多くないという意見もあります。

しかし、いつ先進医療が必要になるかはわからず、いざという時に高額な費用を負担する余裕があるかどうかについてきちんと考慮する必要があるでしょう。結論、先進医療特約を付帯するかどうかは、個人の状況やリスク観などによります。

治療したい病気の種類ごとに先進医療に該当する治療を調べることは可能ですか?

厚生労働省が公開しているリストにおいては、該当する病名に応じた治療を調べることができます。

厚生労働省:先進医療の各治療

また株式会社ウェルネスが運営する先進医療情報サイトでは、病名や治療名ごとに先進医療を検索することも可能です。探したいキーワードで検索できるため、膨大なリストの中から自力で探す手間が省けますね。

ウェルネス:先進医療情報サイト

先進医療を受けられる医療機関を調べることはできますか?

先進医療が受けられる医療機関については、厚生労働省が先進医療を実施している医療機関の一覧を公開しています。

厚生労働省:先進治療を実施している医療機関の一覧

先進医療の種類ごとに都道府県と「医療機関の名前」が掲載されているため、医療機関を探す際は活用してみましょう。

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資産形成メディア「みんかぶ」を中心に、金融商品の記事の執筆を行っています。資産運用のトレンド情報や、初心者が楽しく学べるお金の基本コラムなど、資産形成をするすべての人に向けた記事を提供します。

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