五大疾病のひとつでもある「うつ病」。6人にひとりが発症すると言われ、現在も多くの人がうつ病の治療を受けています。
うつ病の治療は長期間に及ぶ可能性があるため、収入の減少や治療費の支払いに伴いお金の不安を抱く方も多いでしょう。
医療保険を活用できれば、治療に必要なお金をカバーすることもできます。ただし、うつ病になってから医療保険に加入できるかについては、いくつか注意すべき点があります。
今回は、
- うつ病になっても医療保険には加入できるか
- うつ病の人が加入しやすい医療保険
- うつ病による保険金給付の有無
について、わかりやすく解説していきます。うつ病の人でも利用できる公的制度についても解説しているため、経済的な不安を抱えている方は要チェックです。
うつ病の人は医療保険に入りづらい
結論から申し上げると、一般的に「うつ病」と診断された人は医療保険に入りづらく、手続きの段階で断られてしまうケースが多いです。
うつ病の人は入院や手術リスクが高いと判断されるから
うつ病の人が加入しづらい理由は「入院や通院、手術が必要となる可能性が高いから」です。
うつ病に限った話ではなく、種類問わず病気リスクが高い人は、医療保険に加入できない可能性が高いと言われています。病気リスクが高い人は保険金を請求する可能性も高く、医療保険を存続させることが難しくなってしまうからです。
また、入院や手術のリスクが高い人たちへの保険金支払いが増加すると、加入者の保険料も高くしなければなりません。健康な人たちからすれば「不公平」な状態となってしまいます。
そのため「入院や長期間の治療が必要になりそうだから、医療保険に加入しよう!」と考えてもなかなか契約させてもらえないでしょう。
うつ病であることを隠して医療保険に加入するとどうなる?
しかし、加入が難しいからといって、契約時にうつ病であることを隠すのはおすすめできません。もし嘘をついて契約したとしても、加入後にばれてしまう確率が高いです。
保険金を請求するタイミングで、保険会社は契約者について本格的に調査します。病院での診察記録や健康診断の結果、国民健康保険の履歴などを詳しく調べるため、病気を隠して契約していることは高確率で発覚してしまいます。
そのような「告知義務違反」が認められた場合、保険金を受け取ることができません。お金がほしいタイミングになっても保険金がもらえず、経済的に大きなダメージを受けてしまうでしょう。
うつ病が治ってから5年が経てば加入しやすくなる
ただし、過去にうつ病を発症しても完治してから5年が経過すれば、健康な人と同様に医療保険に加入できる可能性が高くなります。
保険の引受審査に関する健康状態の告知質問事項については、過去5年間の「既往歴」を問う質問が一般的です。そのため完治してから5年が経過しているのであれば、うつ病が質問に該当しないケースがあります。
また診断から数年たっているが完治から5年が経っていない場合でも、すでに完治した、もしくは快方に向かっていることを医師が証明することで、医療保険に加入しやすくなります。保険会社へ提出する診断書に、治療状況を医師にしっかり記入してもらいましょう。
うつ病と診断された後でも加入しやすい医療保険とは?
うつ病を発症中の方は、医療保険に加入しづらいとお伝えしてきました。しかし、うつ病の人でも比較的加入しやすい医療保険があります。
- 引受基準緩和型医療保険
- 無選択型保険
- がん保険
上記に該当する医療保険を選べば、通常の医療保険よりも加入できる可能性が高まります。必ず入れるわけではありませんが、経済的に不安がある人は手続きをしてみるのがおすすめです。
引受基準緩和型医療保険
「引受基準緩和型医療保険」は、通常の医療保険よりも告知項目が少なく、加入条件がゆるやかな医療保険です。持病があったり、加入前に発症した病気が悪化したりしている場合でも、条件を満たせば保障が受けられます。
ただし通常の医療保険よりも保険料は割高で、加入してから一定期間は保険金額が抑えられているものもあります。加入条件や保障内容を確認した上で、契約するかを検討しましょう。
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無選択型保険
病気や健康状態に関する告知項目がない医療保険である「無選択型保険」であれば、引受基準緩和型医療保険よりもさらに加入しやすいでしょう。何らかの病気を発症中であっても、保険会社に報告することなく加入できるケースが多いです。
そのかわり、保険料は割高。引受基準緩和型医療保険よりも保険料が高い商品が一般的です。
また引受基準緩和型医療保険と同様に、契約してから一定期間は保険金額が低く設定されているものもあるため、加入前に保険金額や保障範囲を必ずチェックしましょう。
がん保険
がん保険は、がんの保障に特化している保険です。うつ病に対する保険金はもらえないものの加入自体はしやすいため、うつ病の人でもがんに備えることはできます。
がんは、多くのひとが発症しやすいメジャーな病気。早めにがん保険に加入し、準備しておくのが賢い選択でしょう。
うつ病の人でも審査自体でがん保険に加入することは可能ですが、告知義務はあるため絶対に入れるとは限りません。ただし、がん保険で重視されるのは「がんに関連する疾病や疑いの有無」です。
そのため、うつ病の人でも医療保険より加入しやすいでしょう。
医療保険に加入してからうつ病になったら保険金はもらえる?
では、うつ病と診断される前に医療保険に加入している場合、うつ病になったら保険金はもらえるのでしょうか?
保険金がもらえると思っていたのに給付されなかった場合、お金の不安はより一層大きくなってしまいますよね。
保険金をもらえるケースがもある
うつ病になる前に加入した医療保険であれば、うつ病の治療のために保険金をもらえるケースがあります。一般的に、保険金の給付条件を満たしているのであれば、うつ病が理由であっても保険金がもらえます。
告知義務違反があったら保険金はもらえないので注意
ただし先述した通り、うつ病を隠して加入してしまった場合、告知義務違反と判断されて保険金がもらえなくなります。
保険金の請求をすると、保険会社によって詳しい調査が行われます。場合によっては強制的に医療保険を解約させられてしまうため、虚偽の告知は絶対にやめましょう。
うつ病のときに利用できる公的制度
うつ病の人が医療保険に加入するのは難しいとお伝えしましたが、利用できる公的制度は複数あります。医療保険だけでなく、公的制度を活用して経済的負担を抑えることも可能です。
ここからは、うつ病のときに活用すべき公的制度を7つご紹介。数が多いので、対象となる人や対象範囲を表にまとめました。
制度名 | 当てはまる人の属性 | 内容 |
---|---|---|
傷病手当金 | 会社員や公務員 | 標準報酬月額の平均額の2/3を1日当たりの金額として支給 |
労災保険 | 会社員や公務員 | 医療費の全額と休業補償給付(平均賃金の6割)を支給 |
障害年金 | 国民年金または厚生年金に加入している人 | 障害の程度によって1級から3級までの障害基礎年金(厚生年金に加入している人は障害厚生年金もプラス)を支給 |
自立支援医療 (精神通院医療費の公費負担) |
精神疾患の治療のために、指定医療機関で通院医療を継続的に受ける人 | 医療費の9割を公費で負担し、自己負担は1割とする。所得に応じて月額自己負担上限額を設定 |
重度心身障がい者医療費助成制度 | 重度の心身障がい者 | 自己負担分を1割にする。入院時の食費は自己負担 |
精神障害者保健福祉手帳 | 精神障害のある方 | 障害者割引や税制優遇などの各種サービスや支援を受けられる |
特別障害者手当 | 精神または身体に重度の障害を有している人 | 所得に応じて月額27,980円を支給 |
傷病手当金
傷病手当金とは、会社員や公務員が病気や治療のため長期間休む場合に、一定の金額を受け取れる制度です。報酬の2/3に相当する金額を、最長1年半受け取れます。
傷病手当金の対象となるのは「仕事と関係ない病気やケガ」です。仕事と関係ない要因でうつ病になり、長期間休む必要があるのであれば、傷病手当金をもらうことができます。
労災保険(療養補償給付)
一方、仕事が原因でうつ病を発症してしまった場合は、労災保険を利用できます。労災保険の場合、治療費・後遺障害に応じた費用が受け取り可能です。病院で診断書を作成してもらい、申請書とともに労働基準監督署に提出しましょう。
ただし、うつ病で労災認定を受けるためには一定の条件をクリアする必要があります。
- 特定の精神障害を発病していること
- 精神障害を発病するまでの6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
- 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
また労働基準監督署によって、うつ病の原因に関する調査も行われます。そのため、客観的証拠を残すのが重要です。労働時間や周囲の人の発言を記録し、うつ病の要因として提出できるよう準備しておきましょう。
障害年金
障害年金は、一定の障害により日常生活が制限される場合にもらえる年金です。高齢者だけでなく、現役世代の方でも受け取れます。
障害年金を受け取るためには、次の3つの条件をクリアしている必要があります。
- 国民年金に加入している
- 保険料を納付している
- 一定の障害状態(障害の程度1級・2級)にあること
障害年金の対象となる障害状態については、日本年金機構のウェブサイトで確認できます。
また障害年金の金額については、加入している年金の種類や障害の程度によって異なります。国民年金にのみ加入している人は「障害基礎年金」を受け取れますが、厚生年金に加入している人は「障害基礎年金」に加えて「障害厚生年金」をもらうことが可能です。
自立支援医療
自立支援医療とは、うつ病や不安障害などの精神疾患に関する治療を受ける人を対象に、医療費の自己負担額を安くする制度です。公的医療保険が適用される医療費の自己負担割合は3割程度ですが、自立支援医療によって年齢に関係なく1割まで抑えられます。
市区町村の窓口で申請し「受給者証(自立支援医療受給者証)」を受け取ることで利用できます。必要書類を揃え、窓口に提出しましょう。
必要な書類は以下のとおりです。
- 自立支援医療(精神通院)支給認定申請書
- 医師による診断書
- 世帯の所得状況等が確認できる資料(課税証明書、障害年金の振込通知書の写しなど)
- 健康保険証
対象となる医療費には上限額が設けられており、上限を越えた分は通常の自己負担額で医療費を支払う必要があります。また入院は対象外であるため注意が必要です。
重度心身障がい者医療費助成制度
重度心身障がい者医療費助成制度は、一定の障がいを抱える人に対し、医療費の助成を自治体が行う制度です。
どのような障がいが対象となるか、どの程度の助成が行われるかは自治体ごとに異なります。気になる方は、お住まいの自治体が公開しているウェブサイトをチェックしてみましょう。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害保健福祉手帳とは、精神障害によって日常生活や社会生活が制限される方に交付される手帳です。一定の障がい状態にあることを証明でき、税金の免除や公共料金の割引などさまざまなサービスを利用できます。
お住まいの市区町村に設置されている窓口にて申請することで、障がいの程度に応じた手帳を受け取れます。
必要書類は次のとおりです。
- 申請書
- 診断書(精神障害による障害年金を受給している場合は、証書等の写しも可)
- 本人の写真
特別障害者手当
精神疾患が悪化し、日常生活において介護が必要な状態である方は、「特別障がい者手当」が受けられます。お住まいの市区町村の窓口で申請することで、月額27,980円を受け取れます。
まとめ
ここまで、うつ病になってから医療保険に加入できるかどうかについて解説してきました。
うつ病を発症してからでは、通常の医療保険に加入するのは難しいです。しかし、うつ病の治療中であっても加入しやすい医療保険は存在します。また利用できる公的制度も複数あるため、治療中のお金に関する不安が強い方は積極的に活用しましょう。
ですが、うつ病の治療中はなかなか医療保険を探すのが難しいという方も多いはず。多くの保険会社をチェックし、保障内容や保険料を比較してベストな医療保険を探すのは困難な作業です。
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