「自動車保険では保険金の支払いがあると保険料が高くなるけど、医療保険も同じように1度使ったら保険料が上がったり、保障期間が短くなったりするのかな?」
こうした疑問を抱いている人は少なくないと思います。では、医療保険を1度でも使うと保険料が上がる、保障期間が短くなる等の「デメリット」はあるのでしょうか。
この記事では、医療保険を使った場合の影響をわかりやすく解説します。
医療保険を1度使っても保険料は上がらない
結論、医療保険を使い給付金を受け取っても保険料は上がりません。
医療保険は、自動車保険のような等級制度もないため「保険を使ったから翌年から保険料が上がる」ということはありません。
医療保険の場合、給付金請求をしても「契約時の保険料」から変わることはないと覚えておきましょう。
例:終身医療保険に加入している場合
給付金請求をしても、契約内容は変わらず保険料、保障期間も変わらない。
例:10年契約の定期医療保険に加入している場合
給付金請求をしても契約内容は変わらない。また保険料も「更新時」までは増減しない。
医療保険を使ったからといって保障期間が変わることもない
保険料と同様に、医療保険を使ったからといって「保険期間が短くなる、契約更新を断られる」ということはありません。
ですから、医療保険を使っても途中で保障期間が終わることはなく、保障期間中であれば問題なく再度保障を受けることも可能です。
イメージとして「医療保険を使ったら健康リスクが大きいから更新を断られるのではないか」と不安に思う気持ちは分かります。
しかし、定期医療保険の「更新」の定義は以下のように定められています。
「更新」とは、定期保険や医療保険などの保険期間が満了したときに、健康状態に関係なく、80歳までなど所定の年齢の範囲内で原則としてそれまでと同一の保障内容・保険金額・保険期間での保障を継続できる制度のことです。
つまり、契約の更新と健康状態は関係しないということです。ですから、給付金請求をしたからといって契約更新を断られることは原則ありません。
医療保険を使っても更新時に不利になることはない
前述の通り、医療保険を使ったからといって「更新時」に不利益になることはありません。
ただし、以下のケースに関しては更新を断られてしまう可能性が少なからずあるため注意しましょう。
- 告知義務違反
- 一定の年齢を迎えた
とはいえ、上記は「医療保険を使ったこと」と直接は関係していないため、あくまで「更新できる年齢かどうか」が更新時のポイントであるといえます。
もし「一定期間ではなく、長く保障を持ちたい」という場合は「終身型の医療保険」にするという方法もありますよ。
医療保険を使った際に注意すべきは「入院給付金」と「手術給付金」の2つ
医療保険を使っても「保険料・保障期間・更新の可否」には原則影響がないと説明してきました。
しかし、医療保険を使う際、特に注意すべきことが「2つ」あります。それは「入院給付金」と「手術給付金」の2つです。
それでは「なぜ2つの給付金に注意が必要なのか」をそれぞれ確認していきましょう。
入院給付金には180日ルールがあるため注意が必要
入院給付金には「180日ルール」という制約があり、退院してから180日以内の再入院(同じ病気やケガに限り)は「1度の入院として扱う」とされています。※保険会社や商品によって異なります
では「なぜ1度の入院として扱われると不利益があるの?」と思う方もいらっしゃると思いますので、180日ルールによりデメリットが生じる例をひとつ紹介します。
前提
- 入院給付金の支払限度日数が60日
- 40日の入院をして退院、その後180日以内に同じ病気で30日の再入院をすることになった
この例の場合、180日ルールの適用により「70日間の入院」として扱われます。すると支払限度日数を超過している「10日分」に関しては、入院給付金が支払われなくなってしまうのです。
ですから、医療保険の請求の中でも「入院給付金の請求」をする場合は、こうしたリスクがあることを知っておきましょう。
関連記事:医療保険の180日ルールとは?再入院時に自己負担額を減らすための対処法を解説
60日以内の再手術は手術給付金の支給対象外になる可能性も
医療保険の商品により異なりますが、「施術開始日から60日に1回」というように「60日以内に受けた手術は複数回であっても1回分のみ支払います」という支払い制限があるケースがあります。
1回目の手術
手術給付金の支払いあり
2回目の手術(1回目の手術から60日以内)
手術給付金の支払い対象外になる場合有(ただし、60日以内に複数回の手術を受けた場合は、手術倍率の高いものが給付金支払いの対象になることがある)
こうした「支払回数の制限」が契約内容に記載されている場合は注意が必要です。
「支払い限度回数が決まっている特約」や「先進医療保障」にも注意しよう
医療保険を使う際、主に注意すべきことは「入院給付金と手術給付金」の2つです。
しかし、そのほかにも「支払い限度日数が決まっている特約」や「先進医療特約」を付保している場合にも注意が必要です。
医療保険を使っても「保険料・保障期間」などの大枠に関しては影響しないものの、「個別の給付金や特約」には影響があることを覚えておきましょう。
とはいえ、こうした細々とした契約内容を確認しながら医療保険を使うのは気が滅入ってしまいますよね。そうならないためには「自分が納得できる医療保険に加入すること」が求められます。
給付金・保険金がもらえる場合はその都度請求するのがおすすめ
ここまで「医療保険を一度使うとどんな影響があるのか」を説明してきました。
入院給付金や手術給付金などの気を付けるポイントはあるものの、請求できる給付金や保険金がある場合は、請求をすべきだと考えられます。
ずっと健康で保険金請求とは無縁な生活が一番ですが、万が一の事態に備えて「請求方法」も併せて覚えておきましょう。
【覚えておくと安心】給付金・保険金の一般的な請求方法
給付金・保険金の請求は、保険会社によって異なる場合がありますが、一般的な請求方法は、以下のとおりです。
一般的な請求方法
- 保険会社に請求書類を提出する
- 保険会社が給付金を審査する
- 給付金が支払われる
保険会社に請求書類を提出する
保険会社から請求書類が送付されてくるので、必要事項を記入して提出します。
請求書類には、以下のようなものが含まれます。
- 請求書
- 診断書
- 入院証明書
- 出院証明書
- 領収書(給付金の種類によって必要かどうかは異なる)
保険会社が給付金を審査する
保険会社は、請求書類に基づいて給付金を審査します。審査には、数日~数週間かかる場合があります。
給付金が支払われる
審査の結果、給付金の支払いが認められた場合、保険会社から給付金が支払われます。
給付金の支払い方法は、一般的に口座振込で支払われます。
給付金・保険金の請求をスムーズに行うために、以下の点を覚えておくと安心です。
- 請求書類は、必要事項を間違いが無いよう正確に記入する
- 診断書や領収書は、保険会社に提出する前に必ず確認する
- 請求書類は、保険会社に指定された期日までに提出する
また、給付金・保険金の請求には、以下のような注意点があります。
- 請求書類の提出期限を過ぎると、給付金が支払われない場合があります。
- 給付金の支払いには、保険会社によって定められた審査があります。審査の結果、給付金の支払いが認められない場合もあります。
- 支払事由が生じた日の翌日から3年以内が請求期限と請求できる期限が決まっている場合がある
給付金・保険金は、万が一のときの備えとして、とても大切なものです。いざというときに慌てないように、事前に請求方法や注意点をしっかりと確認しておきましょう。
また、請求期限がある場合がある為、病気やケガをして請求をする際はその都度請求しておくと良いでしょう。
医療保険の給付金・保険金請求に関するよくある質問
医療保険に複数加入している場合、それぞれに請求はできますか?
はい。複数の医療保険に加入している場合にはそれぞれに給付金・保険金請求が可能です。
複数の医療保険に給付金・保険金請求をした場合2重請求になりませんか?
以下の条件に当てはまらない場合、基本的に2重請求として扱われることはなく、罰則もありません。
(1)告知義務違反による契約解除の場合
(2)詐欺による契約取消、不法取得目的による契約無効の場合
(3)約款所定の免責事由に該当した場合
・契約者、被保険者または災害死亡保険金受取人の故意または重大な過失によるとき。
・被保険者の犯罪行為によるとき。
・被保険者の精神障害の状態を原因とする事故によるとき。
・被保険者の泥酔の状態を原因とする事故によるとき。
・被保険者が法令に定める運転資格を持たないで運転している間に生じた事故によるとき。
・被保険者が法令に定める酒気帯び運転またはこれに相当する運転をしている間に生じた事故によるとき。
・戦争その他の変乱、地震、噴火または津波によるとき。(ただし、その程度によっては、保険金・給付金の全額または一部を受け取れる場合があります。)
参考:生命保険文化センター「保険金や給付金が受け取れないのはどのような場合?」
医療保険を使う際に必要な書類を教えてください
医療保険を使う際に必要な書類は、保険会社によって異なりますが、一般的には以下のようなものが挙げられます。
- 請求書
- 診断書
- 入院証明書
- 出院証明書
- 領収書(保険金の種類によって必要かどうかは異なる)