入院時には、さまざまなお金がかかります。治療費、個室入院に必要な費用、食費など……。
日頃から預貯金をしておくことで備えることもできますが、突然の大きな出費は家計を圧迫してしまうことも多いでしょう。
そのような事態に備えるために活用できるのが「医療保険」です。中でも「入院給付金」がもらえる保険に加入することで、入院中の経済的負担を大きく軽減させることも可能です。
そこで今回は
- 入院給付金とは何なのか?
- 何円に設定すべきか?
- どのような手続きが必要か?
などなど、入院給付金にまつわるさまざまな疑問にお答えしていきます。
この記事を読むことで、入院給付金の制度内容から受け取り方まで、幅広く理解することができるでしょう。
入院給付金とは?
入院給付金とは、病気やけがの治療のため入院した場合に、保険会社から受け取ることができるお金のことを指します。
医療保険の契約時に、1日あたりの入院給付金の金額(=日額)を決めることができます。5,000円や1万円、2万円などいくつかの選択肢があり、その中から選ぶのが一般的です。
1日あたりの金額と一緒に決めるのが、何日分まで受け取り可能かを示す「支払限度日数」。こちらも契約時に選択肢から設定することができ、設定した日数分までの入院給付金を受け取ることができます。
入院給付金と入院一時金の違いは?
入院給付金とよく混同される制度が「入院一時金」。入院一時金とは、入院時にある程度まとまった金額を受け取れる制度です。
入院給付金は1日あたり何円もらえるかであるのに対し、入院一時金は入院日数に関係なく一定金額を受け取ることができます。
入院給付金と入院一時金は両方もらえる?
これら2つの保障は、両方とも付帯させることが可能です。ただし、どちらもつける場合はその分保険料も高くなります。
自分の経済状況をしっかりと考えて決めることが大切です。
入院給付金はいくらに設定すべき?
入院給付金の金額は自分で選ぶことができるため、「いくらに設定すればいいのか?」と迷ってしまうことも多いでしょう。
この章では、入院時にかかる費用をもとに、入院給付金をいくらにすべきかについて詳しく解説していきます。
入院するとかかる自己負担費用の目安はいくら?
まず、自分が入院した場合にどれくらいの自己負担費用が発生するのかを把握することが大切です。具体的には、以下のような費用が発生すると考えられます:
- 通常の部屋ではなく個室に入院する際に必要な「差額ベッド代」
- 入院によって働けなくなり、収入が減少することによる「逸失収入」
- 食事代
- 消耗品や娯楽品にかかる費用
- お見舞いに来てくれる人の交通費
「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査《速報版》」によれば、逸失収入があった人の「自己負担費用と逸失収入の合計」は、1日あたり平均25,800円。
引用元:2022(令和4)年度 生活保障に関する調査《速報版》
関連記事:医療保険は日額5000円の保障で十分?実際の入院費用や日額の決め方について解説
そのような自己負担費用の中でも特に大きい割合を占めるのが「差額ベッド代」と「逸失収入」です。
- 差額ベッド代:平均6,613円/日
- 逸失収入:平均21,000円/日
しかし、差額ベッド代や逸失収入は人によって大きく異なります。差額ベッド代は個室入院を希望しなければ支払う必要はありません。逸失収入についても、会社員や公務員は傷病手当を受け取ることができますが、フリーランスや自営業の場合はそのような手当がなく、逸失収入の金額が大きくなってしまいます。
差額ベッド代とは?払わなくても良いケースや保険適用の有無、相場について解説
傷病手当金とは?支給期間やいくらもらえるのかなど気になるポイントを分かりやすく解説
貯蓄・入院による経済負担・保険料の3点を加味して給付金日額を決めよう
自己負担額をどこまで減らすべきかは、人それぞれの経済状況や生活環境によります。そのため、入院給付金を決める際には以下の3点を考慮するのがおすすめです。
- 貯蓄がどれだけあるか
- 入院時の自己負担額がいくらになりそうか
- 保険料は高すぎないか(家計を圧迫しないか)
これらを考えた上で、無理のない範囲内で入院給付金を決めてみましょう。以下の表は、入院給付金の金額によって自己負担額がどれだけ変わるかを示しています。(自己負担費用と逸失収入の合計の1日あたりの平均額25,800円をもとに、30日間入院したと仮定した場合)
入院給付金 | 1日あたりの自己負担額 | 1ヶ月(30日)あたりの自己負担額 |
5,000円 | 20,800円 | 624,000円 |
1万円 | 15,800円 | 474,000円 |
2万円 | 5,800円 | 174,000円 |
金額を決めたら「支払限度日数」も決めておこう
1日あたりの金額を決めたら、次は「支払限度日数」を決めていきましょう。これは1回の入院で入院給付金を最大何日分受け取るかを指します。支払限度日数には、30日や60日、120日などがあり、保険商品によって異なります。
ただし、支払い限度日数を増やすと保険料も高くなるため、ここでも保険料とのバランスを考慮する必要があります。
入院給付金のよくある質問「5,000円で十分って本当?」
やはり保険料はなるべく安く抑えておきたいところ。そのため、「入院給付金は日額5,000円で十分なのか?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。
実際のところ、入院時の自己負担額や貯蓄額によって、日額5,000円でも足りるのかどうかは変わってきます。そのため、一概に結論をお伝えするのは難しいです。入院給付金の決め方やメリット・デメリットについて詳しくは、以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
参考記事
医療保険は日額5000円の保障で十分?実際の入院費用や日額の決め方について解説
保険はあくまで「リスク対策」のひとつ。そのため、自己の経済状況やリスク許容度にマッチした選択をすることが大切です。保険を契約する際は、自身のライフスタイルや生活環境を考え、じっくりと考えましょう。
入院給付金の請求手順|いつもらえる?必要書類は何がある?
ここからは、実際に入院することになった時における入院給付金の請求手順についてご紹介していきます。いつもらえるのか、どのような書類が必要か、具体的な手順はどのようなものかについてご紹介していくので、入院予定のある方は特に必見です。
入院給付金はいつもらえる?
入院給付金を受け取ることができるタイミングは、多くの保険会社が「必要書類が保険会社に到着してから5営業日以内」としています。
実際には、請求時の状況や保険会社ごとに異なる可能性もあるため、加入している保険会社の約款をチェックしてみましょう。
入院給付金の請求に必要な書類一覧
次に、入院給付金の請求に必要な書類の一例は以下のようになります。
必要書類 |
内容 |
保険証券 | 保険会社への連絡時に手元に置いておくと、必要な情報をスムーズに進められる |
給付金申請書 | 入院給付金を請求するために保険会社に提出する書類 入院給付金を振り込んでもらう口座の情報を記入する |
診断書 | 医師に診断書を作成してもらい、保険会社に送付する保険会社によってフォーマットが決まっている場合もある |
具体的な必要書類や様式は保険会社ごとに定められているため、手続きをする際には必ず保険会社のホームページや保険会社から受け取った資料をご確認ください。
多くの保険会社では、給付金を受け取るための口座を指定するための「給付金申請書」や、入院を証明するための「診断書」が必要になります。
また、手続きをする際には証券番号が必要です。そのため、保険証券を手元に準備しておくことで、手続きをスムーズに進められるでしょう。
入院給付金の請求手続き【3ステップ】
では、具体的にどのような手続きが必要かについて、「公益財団法人 生命保険文化センター」が公開している情報をもとに解説していきます。
公益財団法人 生命保険文化センター のサイト
保険会社への連絡
まずは、契約している保険会社に連絡しましょう。その際には
- 証券番号
- 被保険者の氏名
- 入院理由
- 入院期間
について伝えることで、スムーズに手続きを進められるようになります。
入院給付金の支払い対象外になってしまう可能性もあるため、正式な病名や治療方法、入院期間など、治療内容についてきちんと伝えることも大切です。
必要書類の提出
保険会社に連絡すると、必要書類についての案内が届きます。案内に従って、必要な書類を準備し、保険会社に提出しましょう。
保険会社による審査と給付金受け取り
保険会社に提出書類が到着すると、入院給付金の支払い対象かどうかについて審査が行われます。審査を通過した場合、指定した金融機関に入院給付金が振り込まれます。
要注意!入院給付金がもらえないケースはある?
入院給付金の請求手順についてお伝えしてきましたが、入院給付金がもらえないケースも存在します。請求したのに受け取れない!となってしまう前に、どのような項目に該当すると入院給付金がもらえないか確認しておきましょう。
保険を契約する前の入院には支払われない
たとえば、入院し始めてから「医療保険に入っておけばよかった」と思っても、保障の開始日が入院日よりも後になってしまうと入院給付金は支払われません。そのため、もし入院給付金を利用したい場合は、早めに加入することが重要です。
入院日数が足りない
保険会社によっては、入院給付金を受け取るために必要な最低入院日数を設定しています。その日数に満たない入院の場合、給付金は受け取れません。
入院が必要となった際には、自身が加入している保険の契約内容を確認し、最低入院日数が何日であるかを把握しておくことが大切です。
手術や治療が対象外
保険契約によっては、特定の手術や治療が対象外とされていることがあります。また、治療以外の目的(例えば、リハビリテーションや予防的な検査)での入院は、給付金の対象にならないことも。
契約内容をしっかりと理解し、どのような手術や治療が給付対象外となってしまうか確認することが重要です。
病気や怪我の原因が一定の条件を満たしている
病気や怪我の原因が保険会社が定める一定の条件を満たしている場合、入院給付金は支払われません。
例として、以下のような条件が設定されています。
- 契約者、被保険者または災害死亡保険金受取人の故意または重大な過失によるとき。
- 被保険者の犯罪行為によるとき。
- 被保険者の精神障害の状態を原因とする事故によるとき。
- 被保険者の泥酔の状態を原因とする事故によるとき。
- 被保険者が法令に定める運転資格を持たないで運転している間に生じた事故によるとき。
- 被保険者が法令に定める酒気帯び運転またはこれに相当する運転をしている間に生じた事故によるとき。
- 戦争その他の変乱、地震、噴火または津波によるとき。ただし、その程度によっては、保険金・給付金の全額または一部を受け取れる場合もある。
上記のような条件は保険契約の約款に明記されているため、契約時に詳しく読み、理解しておくことが必要です。
申込する際に特定の事実を報告しない、もしくは偽りの報告をした
保険契約時に健康状態や過去の傷病歴、職業などの事実を隠したり、偽った情報を提供したりした場合、「告知義務違反」となり給付金を受け取ることができなくなります。
場合によっては、医療保険の契約自体が無効となる可能性もあります。
詐欺目的で入院給付金を受け取ろうとしている
詐欺や不法行為を目的とした給付金受け取りが発覚した場合、もちろん給付金は支払われません。そのような行為は法律により禁止されており、発覚した場合は保険契約が解除されるだけでなく、法的な処罰を受ける可能性もあります。
入院給付金に税金はかかる?かからない?
入院給付金を受け取ることになった場合、その金額は決して少なくありません。ですが、入院給付金には税金はかかりません。
病気やケガの治療が理由で受け取る給付金は、非課税となります。しかし、確定申告で医療費控除を受ける場合は、「受け取った給付金」を「支払った医療費」から差し引く必要があります。つまり、実質的に自己負担した医療費から給付金を差し引いた額が控除対象となります。
まとめ
この記事では、入院給付金の制度内容や金額、請求方法についてお伝えしてきました。
入院は、多額の費用が必要になってしまうもの。いつ入院することになるかわからないからこそ、病気になる前に備えておくことが重要です。
入院給付金日額を決める際は、保険料や貯蓄状況とのバランスを考えることも大事。もし迷ってしまう方は、みんかぶ保険が用意している「保険のプロへの無料相談」がおすすめです。保険に関する悩みや疑問点について、保険のプロに無料で質問することができます。
また、入院給付金の日額の決め方についてはこちらの記事でも解説していますので、気になる方はぜひご覧ください。
参考記事