入院には、さまざまな費用が必要になります。そのため、長期間の治療を行う「長期入院」においては、経済的な負担も大きくなりそうですね。
長期入院に備える方法のひとつとして、医療保険が挙げられます。しかし、医療保険が本当に必要なのかについては、議論が分かれるポイントでもあります。
もしものときのために備えておきたい一方で、月々の保険料を支払う決断もしづらいのが悩みどころ。
医療保険に加入すべきなのか、納得できる結論を出すためには
- 長期入院に必要な費用
- 利用可能な公的制度
- 医療保険に加入すべき人の特徴
についての知識が必要です。
今回は、長期入院に必要な費用や医療保険の必要性について、詳しく解説していきます。
長期入院する人はどれぐらいいる?
長期入院によるリスクについて考えていくために、まずは
- 長期入院とはなにか
- 長期入院となった人の割合はどれくらいか
について確認してみましょう。
あなたの周囲でも、病気や怪我で入院する人は意外と少なくないでしょう。しかしその中で「長期入院」とされる期間を超える人は、一体どれぐらいいるのでしょうか?
実際の統計データに基づき、長期入院の実態に迫ってみたいと思います。
入院日数の平均は32.3日
まずは、入院日数の平均から確認してみましょう。厚生労働省の「令和2年 患者調査」によると、入院日数の平均は32.3日となっています。
参考:令和2年 患者調査
しかし、これは全ての病気や治療を通しての平均。病気や治療の種類によって、必要な入院日数は大きく異なります。
長期入院とは?
入院日数について確認したところで、比較的入院期間が長い「長期入院」の割合についても確認していきましょう。
とはいえ、長期入院は何日以上の入院のことを指すのかについて、明確な定義はありません。
そのため、この記事では入院の平均日数をもとに「31日以上の入院」を長期入院としてご紹介していきます。
31日以上入院する人は16.9%
厚生労働省の「令和2年 患者調査」において、31日以上の長期入院をする人は約17%にのぼると報告されています。入院する人のうち、6人に1人が長期入院ということになりますね。
引用:令和2年 患者調査
患者調査の対象となった入院者数は124万6,500人。そのため、単純計算で年間約21万人の人が1ヶ月以上の入院を経験しています。
長期入院をすることは、実はあまり珍しいことではないことがわかりますね。
3ヶ月以上入院する人は4.0%
1ヶ月よりもさらに長い「3ヶ月以上」の入院をする人の割合は、4%です。3ヶ月以上の大がかりな治療が必要になる人の割合は、やはり少数にとどまっているようです。
しかし、人数にすると約5万人。決して少なくない人が、長期入院で治療に励んでいることがわかります。
長期入院になりやすい病気や治療
長期入院となる人の割合についてお伝えしてきましたが、どのような理由で長期入院となるのでしょうか?長期入院の主な原因となる病気や治療について、実際の統計データをもとに確認してみましょう。
以下の表は、令和2年 患者調査を基に、生命保険文化センターが作成したものです。比較的長期間の治療が必要な傷病の平均入院日数を示しています。
引用:生命保険文化センター「入院した場合、入院日数は何日くらい?」
これらのデータをみると、病気や治療によって長期入院のリスクが大きく異なることがわかります。例えば、心疾患や骨折は平均が1ヶ月程度ですが、統合失調症等やアルツハイマーの治療の場合は長期間の治療となることが一般的です。
また、年齢が上がるにつれて長期入院のリスクが高まります。65歳以上になると、平均入院日数が高くなるのがわかりますね。
長期入院による経済的負担はどれぐらい?
入院が長引くほど、経済的な負担も大きくなります。長期入院に必要な費用のシミュレーションをもとに、長期入院に備えるための方法を考えてみましょう。
入院する際は、主に以下の費用が必要になります。
- 治療費: 傷病の治療に必要な費用
- 入院基本料: 入院中の基本的なサービスにかかる費用
- 食事代: 入院患者の食事に関する費用。病院によっては特別な食事療法を必要とする場合もあり
- 差額ベッド代: 一般的な病室よりもプライベートな部屋や特別なサービスを利用する際の追加料金
- お見舞いに来てくれる人の交通費
- 衣服や消耗品、娯楽品にかかる費用
- 逸失収入: 入院による収入の減少額
具体例をもとにシミュレーション
上記のような費用によって長期入院の経済的負担がどれぐらいになるのか、具体例をもとにシミュレーションしてみましょう。
統計によると、逸失収入と入院費用の総額の平均は1日あたり25,800円(厚生労働省「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査《速報版》」)。しかし実際の入院費用は、治療費や差額ベッド代などによって大きく異なります。
出典:厚生労働省「2022(令和4)年度生活保障に関する調査<速報版>」
そのためあくまで参考程度の数値ですが、逸失収入と入院費用の総額を下記日数で単純計算すると、
- 30日間入院する場合: 約77万4,000円
- 60日間入院する場合: 約154万8,000円
- 90日間入院する場合: 約232万2,000円
という結果になります。入院日数によっては、かなり高額になってしまうことがわかりますね。※高額療養費制度の適用を考慮しておりませんので、金額がそのまま自己負担や損失となるわけではございません。
長期入院する人の割合は減少している
長期入院の経済的な負担についてお伝えしてきましたが、実は平均入院日数は年々減少傾向にあります。
引用:厚生労働省「令和2年 患者調査」より
入院日数が減少している理由として、医療技術の進歩や国の政策が挙げられます。
- 医療技術が進歩したことにより、治療に必要な日数が減少している
- 少子高齢化対策として、入院日数をなるべく減らす施策がとられている
上記の理由から、今後も入院日数の平均は減少していくと考えられています。
長期入院時に役立つ公的制度
シミュレーションした結果、長期入院時の逸失収入と入院費用の総額は高額になることがわかりました。
「でも貯金するのも時間かかるし……」 「突然入院することが決まったらどうすればいいんだろう……」
とお悩みの方も多いかもしれません。ですが、さまざまな方法で長期入院に備えることができます。
長期入院に備える方法は大きく2つ。
- 公的制度を活用する
- 医療保険に加入する
まずは、長期入院する際に役立つ公的制度について解説していきます。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、1ヶ月あたりの医療費の自己負担額に上限を設定し、上限額を超えた分の差額が支給される制度です。
「長期入院による経済的負担はどれぐらい?」で紹介した費用のうち、主に治療費と入院基本料が高額療養費制度の対象になります。
通常であれば、窓口ですべての医療費を支払ってから3ヶ月後に差額分の支給を受けることが可能です。しかし高額な費用が必要だと事前にわかっている場合、あらかじめ手続きをしておくことで、差額分の費用を直接医療機関に支払ってもらうことも可能。
つまり、事前の手続きをすれば窓口で高額な支払いをする必要がありません。設定された上限額までの出費に抑えることができます。
参考記事:高額療養費制度とは?制度の内容や受け取れる金額、申請方法について解説
傷病手当金
長期入院する人が企業に勤めるサラリーマンや公務員である場合、傷病手当金の対象になります。
通常であれば、長期にわたって仕事を休んだ場合、その期間の給与は発生しません。しかしサラリーマンや公務員が業務外の病気やケガで療養中である場合、報酬の3分の2を受け取ることができます。
企業に所属していないフリーランスや個人事業主は傷病手当金の対象外であるため、注意が必要です。
関連記事:傷病手当金とは?支給期間やいくらもらえるのかなど気になるポイントを分かりやすく解説
長期入院のために医療保険に加入すべき?
さまざまな公的制度がある中で、医療保険に加入すべきかについては多くの方が悩むポイントでしょう。
長期入院となると費用が高額になる可能性がありますが、公的制度でカバーできるのであれば医療保険は必要ないかもしれません。しかし、本当に医療保険は不要だと言い切れるでしょうか。
長期入院のために医療保険が必要なのかどうかについて、より詳しく考えてみましょう。
公的制度でカバーしきれない費用
先ほどご紹介した通り、公的制度によって医療費をある程度カバーすることはできます。しかし注意が必要なのは、すべての医療費が対象ではないという点です。
高額療養費制度の対象となるのは、公的医療保険が適用される費用のみ。それ以外の費用は、すべて自己負担となります。
そのため、医療費を大きく左右する「差額ベッド代」や「先進医療の技術料」は自力で支払わなければなりません。
厚生労働省が発表した「主な選定療養に係る報告状況」によりますと、令和4年における1日あたりの差額ベッド代の平均は6,620円です。もし1ヶ月の長期入院が必要な場合、差額ベッド代だけで20万円近くにのぼります。
また公的医療保険が適用されない治療である「先進医療(技術料部分は公的医療保険適用外)」も、費用が高額になる場合があり、中には治療費が数百万円にのぼるものもあります。。
したがって、公的制度だけではまだ不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。
関連記事:差額ベッド代とは?払わなくても良いケースや保険適用の有無、相場について解説
医療保険に加入することで受けられる保障
一方で、医療保険に加入することで入院費用をさらに幅広くカバーすることができます。
医療保険の主な保障内容について、簡単にご紹介します。
- 入院給付金:あらかじめ設定した1日あたりの金額を入院日数分受け取ることができる。給付金の使い道は自由であるため、差額ベッド代や食事代もカバー可能
- 入院一時金:入院日数に関わらず、一定金額の給付を受けることができる
- 手術給付金:所定の手術を受けた際に、給付金を受け取ることができる
- 先進医療特約:公的医療保険が適用されない先進医療の技術料を保障する
公的制度よりも、さらに手厚い保障を受けることができます。公的制度だけでは不安だと感じる方も、医療保険に入ることで安心感が得られそうですね。
関連記事:【毎月更新】医療保険の選び方・人気おすすめランキング
医療保険に加入すべき人の3つの特徴
特に医療保険に加入するのがおすすめな人の特徴について、以下の3つが挙げられます。
- 預貯金が充分ではない
- 大きなライフイベントが発生する可能性が高い
- 医療費に関する不安が強い
預貯金が充分ではない
長期入院に必要な費用をまかなえるほどの預貯金ができていない場合は、医療保険に加入しておくのが安心です。
特に若い世代や家庭を持ったばかりの方々は、充分な預貯金額にまだ達していないことが多いでしょう。そのため、もし長期入院となった場合は大きな負担となってしまいます。
経済的な備えができるまでのお守りとして医療保険に入っておくだけで、安心感も大きくなりそうですね。
大きなライフイベントが発生する可能性が高い
出産や子どもの進学といったライフイベントを控えている方は、医療保険に入っておくのが安心でしょう。
結婚や出産、進学など、大きなライフイベントには多額の出費がつきものです。そのようなタイミングで長期入院による多額の医療費が必要になってしまった場合、家計に大打撃を与えてしまうでしょう。
そのような経済的リスクを軽減するためにも、医療保険に加入するのがおすすめです。
医療費に関する不安が強い
将来、誰がどのような病気になるかはわかりません。その中で医療費について不安を強く感じる方は、医療保険に入っておくのが無難です。
医療保険の必要性については、さまざまな意見が存在します。ですが、自分や家族がこの先どのような病気になるか、どれだけの医療費が必要になるのかは予測不可能。
上記でご紹介したように、病気や治療によっては公的制度でカバーしきれないこともあります。そのため、「高額な医療費を支払うことになっても大丈夫だろうか」と不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。
そのような方は、医療保険に入っておけば安心できるはずです。ご自身のリスク観に応じて、医療保険の加入を決めましょう。
医療保険に加入する際の注意点
医療保険に加入する際には、知っておくべきポイントがいくつかあります。自分にぴったりな保険を見つける上で重要になるため、これから医療保険に入ろうと考えている方は要チェックです。
1入院の定義に注意
医療保険の入院給付金を受け取れる日数を決める際、「1入院の定義」について理解しておく必要があります。
医療保険では、入院給付金を受け取れる限度日数について「60日」か「120日」のいずれかを選択するタイプが一般的です。
一方で医療保険には、保険会社によって異なりますが、複数回入院した場合、まとめて1回の入院とみなす「1入院の定義」があります。
例えば60日の入院を終えてから1ヶ月以内に同じ病気で40日の入院をすることになった場合、「100日の入院を1回した」とみなされる場合があります。もし入院給付金の日数の限度を60日にしていた場合、40日分の入院費用はすべて自分で負担しなければなりません。
短期入院を繰り返す場合、1回の入院とみなされる可能性は思わぬ落とし穴になってしまいます。そのようなリスクを考慮しつつ、保障内容を決めるようにしましょう。
入院給付金の日額はバランスを考慮して決めよう
入院給付金の金額も、保障内容と保険料のバランスを考えて決める必要があります。
医療保険では、入院給付金の1日あたりの金額も選ぶことができます。給付金の日額は高いほうが安心ですが、月々の保険料もその分高くなります。かといって給付金額を安くしすぎても、入院時の負担が大きくなってしまいますね。
保険料の高さと保障の手厚さを天秤にかけて、自分に合ったベストな選択をする必要があります。
保険のプロに相談してみよう
保険会社や保障内容など、なかなか決めるのが難しい医療保険。専門知識を持ったプロに相談することで、ぴったりな保険商品を簡単に見つけることができます。
みんかぶ保険では、保険のプロに無料で相談することができます。
「こんな持病があるけど、保障はどれぐらい手厚いほうがいいのかな」 「ライフプランに沿ったベストな選択がしたいけど、どうやって決めたらいいんだろう」
などなど、迷いがちなポイントについてアドバイスを受けながら決めることができるので、納得のいく保険選びが可能です。
無料で何度でも利用でき、しつこい勧誘もありません。これから医療保険を検討する方は、是非活用してみてください。