赤ちゃんの出産前に医療保険は必要?メリット・デメリットや出産前に加入すべき人の特徴を解説

著者:みんかぶ編集室

監修:

杉本 大輔

2級ファイナンシャル・プランニング技能士 / シニア・ライフ・コンサルタント / フィナンシャル・エージェンシー所属

2024年05月10日 掲載

赤ちゃんが生まれるのは人生最大の喜びのひとつですが、出産や育児にはお金がかかるもの。

出産にはどのくらいの費用がかかるの?
公的制度だけで賄える?
万が一の事態に備えたいけど、どうしたらいいの?

このように、出産費用に関して不安に感じる方も多いでしょう。

しかし、民間の医療保険に加入すれば、出産前後の費用を手厚くカバーできます。

とはいえ、医療保険に加入すべきかどうかは人それぞれ。そこで今回は、出産前の医療保険加入について、

  • 出産のために備えるべき費用

  • メリットとデメリット

  • 加入すべき人の特徴

など、気になるポイントについて詳しく解説します。

赤ちゃんの出産前後に考えられる経済的リスク

赤ちゃんの出産前後に考えられる経済的リスク

赤ちゃんを授かることは大きな喜びですが、同時に経済的な不安を感じるのも自然なこと。特に、出産や子育てにはある程度の費用がかかるため、事前の準備が大切です。

そのためには、具体的にどんな費用が発生するのか、いくらくらいかかるのかを把握するのが大切。まずは出産時の経済的リスクについて確認していきましょう。

出産にかかる多額の費用

出産には、多額の費用がかかります。

病院によって差はありますが、一般的な通常分娩の場合、出産にかかる費用は「50万円前後」であると言われています。

費用の種類 金額
入院料 115,776円
分娩料 276,927円
新生児管理保育料 50,058円
検査・薬剤料 14,419円
処置・手当料 16,135円
室料差額 17,255円
そのほか 47,622円
妊婦合計負担額 538,263円

厚生労働省「出産育児一時金について」

上記に加えて、無痛分娩を希望する場合は「10万円程度」の費用が必要です。

もし異常分娩となり帝王切開や吸引分娩といった処置をする場合、さらに追加費用が発生します。

帝王切開で出産する人の割合は4人に1人と言われているので、決して他人事ではないでしょう。

出産前後に発生する治療費・検査費用

出産前後は、母体の体調が不安定になりやすいタイミング。出産以外にも、妊娠中のさまざまな症状に対する治療費が必要になるでしょう。

名称 症状 処置方法

妊娠悪阻(重度のつわり)

食欲不振、吐き気 食事療法、薬物療法、点滴、入院
貧血 だるさ、息切れ、めまい 鉄剤摂取、食事療法
妊娠高血圧症候群 高血圧(自覚症状なし) 食事療法、降圧薬の服用
切迫早産 下腹部の張り感、腹痛、出血 安静、投薬、重度の場合は入院
前置胎盤 出血 安静、入院、場合によっては帝王切開
出血過多 大量の出血、めまい、ふらつき 子宮のマッサージ、投薬、輸血

症状によっては、通院だけでなく入院が必要になるケースもあります。何が起こるかわからないからこそ、妊娠中の病気にかかる治療費や検査費にも、きちんと備えておきたいところですね。

生まれたばかりの赤ちゃんにかかる医療費

無事に赤ちゃんが生まれてきても、赤ちゃんの状態によっては治療や入院が必要なケースも考えられます。

新生児は抵抗力が弱いため、感染症にかかるリスクが高いです。状態によっては、手術や入院が必要なケースもあるでしょう。

赤ちゃんが入院する場合、入院費や治療費は多くの自治体で無料、もしくは大部分が支給されます。しかし入院時の食事代や入院用品、仕事を休む場合は減少する収入分など、必要なお金は意外と少なくありません。

公的医療保険だけでは出産前後の費用をカバーしきれない

通常、医療費の多くは公的医療保険によって大部分がカバーされます。しかし、出産においてはすべての費用が公的医療保険の対象とはなりません。

公的医療保険や公的制度によって受け取れるお金は以下のとおりです。

名称 内容 金額 支払い元申請先
出産育児一時金 出産の際に支給される 48万8,000円~50万円
(妊娠週数により異なる)
健康保険組合
出産手当金 出産休業中の給与の代わり 給与・報酬の2/3 健康保険組合
児童手当 子どもの成長をサポート 1万5,000円/月(0〜2歳の場合) 自治体
育児休業給付金 育児休業中の給与の代わり 給与の67%
(支給額 = 休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数(28日が上限)× 67%)
労働局
医療費控除 出産に関する医療費の控除 実費 税務署
高額療養費制度 異常分娩の医療費の一部補助 実費の一部 健康保険組合
乳幼児医療費助成制度 新生児にかかる治療費の支払いが免除される 治療費の大部分もしくは全額
(自治体により異なる)
自治体

通常の出産にかかる費用(分娩費用や検査費用)は、公的医療保険の対象外です。出産一時金で大部分が賄えるとはいえ、無痛分娩のように追加費用が発生すれば自己負担額は大きくなります。

一方で、以下のような症状・処置に対しては、公的医療保険が適用されます。

  • 異常分娩による処置

  • つわりや高血圧といった妊娠中の症状

  • 赤ちゃんが新生児集中治療室に入る場合

  • 死産

  • 産後うつ

しかし、それだけで十分であるとは限りません。公的医療保険ではカバーしきれない費用は以下のとおりです。

  • 出産育児一時金など公的制度でもらえる金額をオーバーする費用

  • 公的医療保険が適用されない治療の自己負担額

  • 入院が必要になった場合の差額ベッド代

  • 出産・入院による収入の減少額

差額ベッド代とは、少人数もしくは1人で入院できる個室を希望する際にかかる追加費用のことです。出産前後は精神的な負担が大きいため、個室での入院を希望する方も多いでしょう。

また出産で働けなくなる分、収入も減少すると考えられます。収入がある程度無くなっても生活できるよう、備えておく必要がありそうですね。

特に異常分娩となった場合、帝王切開のように大がかりな処置となることも少なくありません。その場合は入院や手術が必要なため、自己負担額も膨らんでしまいます。<

出産前に医療保険に加入するメリット

出産前に医療保険に加入するメリット

ここまでお伝えしてきた出産時の経済的リスクを踏まえ、出産前に医療保険に加入するメリットを考えてみましょう。主なメリットとしては、次の2つが挙げられます。

  • 公的医療保険でカバーしきれない費用を保障

  • 保険商品によっては赤ちゃんにかかる費用もカバー可能

公的医療保険でカバーしきれない費用を保障

先ほど説明したように、公的医療保険だけでは出産前後の費用をすべてカバーすることはできません。しかし民間の医療保険に加入することで、公的医療保険の対象外となる費用を補えます。

例えば妊娠中の検査費用や異常分娩にかかる費用など、さまざまな出費に備えられます。出産という人生の大きなイベントを、経済的な不安なく迎えられるのは大きなメリットですよね。

保険商品によっては赤ちゃんにかかる費用もカバー可能

医療保険の中には、生まれたばかりの赤ちゃんが入院する際に保険金が支払われる商品もあります。

先ほどご紹介した通り、赤ちゃんの治療費は大部分が自治体によって支払われます。とはいえ、治療費以外にもさまざまなお金が必要になるため、何かしらの備えをしておいたほうがいいと考える方もいらっしゃるでしょう。

保険商品によってはそのような費用もカバーできるため、より安心できそうですね。

出産前に医療保険に加入するデメリット

出産前に医療保険に加入するデメリット

ここまで読んでくださった方の中には「出産前に医療保険に入っておいた方がいいかもしれない…」と考える方も多いのではないでしょうか。しかし、医療保険に加入するのが必ずしもベストな選択とは限りません。

出産前に医療保険に加入することで、どのようなデメリットが考えられるのかについても、詳しく確認しておきましょう。

デメリットに関しては、以下のふたつが挙げられます。

  • 保険料が必要になる

  • 保障を受けられないケースも

保険料が必要になる

医療保険に加入すると、毎月一定の保険料を支払う必要があります。

出産や育児のためにも、できるだけ支出を抑えたいところ。もちろん医療保険によって多額の支払いに備えられますが、毎月保険料を払わなければならず、一定の経済的な負担が生まれてしまいます。

そのため、医療保険による保障がどれぐらい必要なのかだけでなく「無理なく保険料を支払えるのか」についてもしっかり考えてみましょう。

保障を受けられないケースも

保険会社によって、加入条件や保険金が支払われる条件が異なります。そのため場合によっては、医療保険による保障が受けられないため、注意が必要です。

このあとも解説しますが、妊娠が発覚してから医療保険に加入しようとしても、加入できない、もしくは保険金の請求期間や金額に制限が設けられているケースがあります。

そのため、医療保険を活用したい場合は、保険会社ごとのルールや条件をきちんと確認しましょう。

出産前に医療保険に加入すべき人の特徴

出産前に医療保険に加入すべき人の特徴

医療保険や出産費用についての情報を集めたところで、本当に医療保険に加入すべきなのかどうか、迷ってしまう方も多いはず。

そのような方に向けて、さらに一歩踏み込んで「出産前に医療保険に入るべき人の特徴」について詳しく解説していきます。

次の3つが当てはまる人は、医療保険への加入を前向きに検討してみましょう。

  • 貯蓄額や収入額に不安を感じる人

  • 通常の出産だけでなく異常分娩や妊娠前後の症状にも備えたい人

  • 赤ちゃんに対する保障も充実させたい人

貯蓄額や収入額に不安を感じる人

出産をひかえた段階で、貯蓄額や収入額が足りないのではないかと不安な方は、医療保険の加入を考えてみましょう。

ここまでお伝えしてきたように、出産には一定の費用がかかります。もし現時点で十分な貯蓄がない、もしくは収入が不十分だと思うのであれば、医療保険に加入しておくのも1つの選択肢です。

特にフリーランスや自営業の方は、休業中であっても出産手当金がもらえません。出産時の費用や利用できる公的制度をしっかり確認したうえで、医療保険に入るかどうか考えましょう。

経済的なリスクに備えておくことで、出産や育児に専念できるはず。お守りのような役割として、医療保険を活用してみるのもおすすめです。

通常の出産だけでなく異常分娩や妊娠前後の症状にも備えたい人

異常分娩やさまざまな症状に対する費用にもしっかり備えておきたいのであれば、医療保険への加入がおすすめです。

また妊娠中や産後には、つわりや貧血など様々な症状が現れやすいです。

異常分娩や妊娠中の病気にかかる治療費は、公的医療保険の対象になります。それでも、一定の自己負担額は追加で発生します。万全の備えをしておきたいという人は、民間の医療保険への加入を検討してみるのも良いでしょう。

赤ちゃんに対する保障も充実させたい人

生まれたばかりの赤ちゃんは、予期せぬトラブルに見舞われるリスクが高いです。赤ちゃんの治療や入院にもしっかり備えたい方は、医療保険を検討してみましょう。

赤ちゃんに何かあったとき、治療費は公的制度でまかなえますが、先述したとおり必要な費用はそれだけではありません。大切な赤ちゃんのためにも万全の備えをしておきたいと考える方には、医療保険を活用するのも選択肢のひとつでしょう。

出産前に医療保険に加入する際の注意点

医療保険に加入する場合、いくつか把握しておくべき注意点があります。気をつけておかないと、いざというときに保険金を受け取れない事態につながってしまうことも。

出産前に医療保険に加入する際は、以下の2つを意識しましょう。

  • 妊娠が判明する前に加入しておくのがベスト

  • 保障範囲をしっかり確認する

妊娠が判明する前に加入しておくのがベスト

出産前に医療保険に加入するのであれば、妊娠が判明する前に手続きを終わらせるのが最善です。

妊娠が発覚してから医療保険に加入しようとしても、断られてしまったり、保険プランや保険金額に制限が設けられたりする可能性が高いです。

「妊娠中でも加入が可能」と謳う医療保険であっても、妊娠中に加入したら「健康状態が基準に適合していない」と判断され、給付金が支払われない可能性があります。

妊娠・出産に備えて医療保険への加入を考えているなら、できるだけ早いタイミングで手続きを進めましょう。

保障範囲をしっかり確認する

医療保険の保障内容は、保険会社や商品によって異なります。ご自身が希望する保障が受けられるかどうか、きちんと吟味してから決めましょう。

医療保険の中には、出産や妊娠に特化した保障が用意されているものがあります。ただし、全ての医療保険がそのような保障を備えているわけではありません。

また入院給付金・手術一時金の金額や支払条件など、どんな状況でどれぐらいの金額がもらえるかといった基本的な部分も必ずチェックしましょう。

出産後の養育費を準備しておきたい人は学資保険も検討しよう

出産後の養育費を準備しておきたい人は学資保険も検討しよう

出産にかかる費用の準備は大切ですが、それだけで安心とは言えません。出産費用だけでなく、養育費の準備も進めるのが理想的でしょう。

しかし、貯金だけで養育費を準備するのはなかなか難しいという方も多いはず。そのような方は、学資保険を活用するのがおすすめです。

学資保険とは

学資保険は、子どもの教育資金づくりを主な目的とした、貯蓄型の保険商品です。毎月一定の保険料を積み立てていき、お子さんの入学時や進学時に、まとまった教育資金を受け取れるのが特徴です。

預貯金でお金を確保しようとしても、ついつい手を出してしまい、なかなか貯金が進まない方も多いでしょう。学資保険を使えば、積み立てたお金は簡単に引き出せないため、確実に資金を準備できるようになります。

また契約期間によっては、支払った保険料よりも高額なお金を受け取ることもできます。さらに親が亡くなってしまった場合は保険料の支払いが免除になることも多いため、いざというときでも安心ですね。

保険金を受け取れるタイミング

学資保険では、保険金を受け取るタイミングをある程度任意で設定できます。

子どもの養育費で特に多くのお金が必要になるのは、高校や大学の入学時でしょう。そのようなタイミングに合わせて保険金の受取タイミングを設定しておけば、経済的な負担は少なく済みそうですね。

中学や高校、大学への進学時に分割して受け取ることも、大学入学時に一気に受け取ることもできます。学資保険の中には、進学するたびに祝い金がもらえる保険もあります。

出産前に学資保険に加入するメリット・デメリット

学資保険に加入すると、どのようなメリットやデメリットがあるでしょうか?

まずは学資保険に入ることで得られるメリットから確認してみましょう。

  • 確実に養育費を確保できる

  • 親に万が一のことがあったら保険料の払込が免除されるケースが多い

  • 生命保険料控除の対象になる

  • 保険金を受け取るタイミングを指定できる

一方で、デメリットとしては次のようなものが挙げられます。

  • 途中で解約すると、支払った保険料よりも少ない保険金しか受け取れない

  • 物価変動への対応が難しい

ご自身の貯金ペースや収入状況を確認しつつ、学資保険への加入についても検討してみましょう

まとめ

出産前に医療保険に加入すべきかどうかは、判断が分かれるところ。公的制度で多くの費用をカバーできますが、出産費用の自己負担額や入院費用など、用意しておくべきお金も少なからず存在します。

出産にかかるお金を予想しつつ、ご自身の不安度の強さや経済状況に合わせて加入を検討してみましょう。「出産は何が起こるかわからないからこそ万全に備えておきたい」と考えている方には、医療保険は特におすすめです。

保険についてのお悩みはプロに相談

とはいえ、ご自身が医療保険に加入したほうが良いのかについて、客観的な意見がほしい方も多いでしょう。

「自分の貯金や収入で大丈夫だろうか?」「いざというときに困ってしまわないか?」など、なかなか結論が出せず迷ってしまいますよね。

そのようなときは、保険のプロに相談してみるのがおすすめです。みんかぶ保険では、保険に関する知識を豊富に持つプロに無料で相談できます。

回数に制限はなく、費用も無料。しつこい営業もないため、安心してご利用いただけます。

出産に備えて医療保険に加入しようか悩んでいる方は、まずは一度相談してみてはいかがでしょうか?

みんかぶ編集室

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